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迷探偵クリフ=ヴァレンタイン 第2話

 
 
ミツキは、カーテンの隙間から漏れる朝日で目を覚ました。
まだ多少は眠たいが、ベッドの横の時計を見ると、朝の6時をまわっている。
そろそろ起きなければならない時間だ。
助手と共に、家政婦も兼ねているミツキの仕事は、朝早い。
毛布から出る決心を固めると、クリフの腕の中からするりと抜け出した。
その時に、ミツキの恥部から、クリフの萎えた肉棒がずるりと抜けた。
ミツキは一瞬ピクッと反応したが、なんとか抑えてベッドから出た。
替わりにクリフの腕の中に、さっきまでミツキの使っていた枕を抱かせる。
このタイミングが重要で、しくじるとクリフを起こしてしまう。
クリフの呼吸のリズムを見極め、彼にとって最も違和感を感じない瞬間に行動する。
幸い、今回はクリフを起こす事無く、ベッドから抜け出す事ができた。
もし起こしてしまえば『僕を一人にしないで欲しいな……』などと言ってベッドから出して貰えない筈だ。
今までも何度か、ベッドから出してもらえなかった経験がある。
 
「ん……」
「……ッ!!」
 
ミツキは忍び足で立ち去ろうとしていたが、不意にクリフが声を出したため、慌てて振り向いた。
もしや起こしてしまったのではと、不安になる。
しかし、その心配は取り越し苦労のようだった。
クリフは枕に頬擦りをして、口付けを落とし、強く抱き締める。
夢の中で、ミツキを抱いているのだろう。
 
「恥ずかしがる必要はないよ。
僕にキミの全てを曝け出してくれ。
僕は、その全てを丸ごと愛するから……。
さあ、今夜は寝かせないよ。僕の愛を受け止めて、同じくらい僕を愛して」
 
ミツキは、クリフの寝言を全て聞き終わるよりも早く、寝室を後にした。
行為の途中など、意識の昂揚しているときは聞き流せるが、平時に聞くと中々キツイ。
こんなセリフを素面で言ってくるクリフは、やはり凄い。
いや、よく考えればそれは単に、クリフの思考が常軌を逸しているだけかもしれない。
常識人だと自負しているミツキからすれば、クリフの行動は真似できないものばかりだ。
その可能性はかなり高い。
 
「なんて、分かりきった事考えても仕方ないか。
先生は、バカと紙一重の天才なんだから。
少しくらいの奇行は大目に見て、助手としての仕事をこなすべきね」
 
ミツキは自分の仕事をするべく、速やかに服を着た。
シャワーも浴びたいところだが、昨日の夜、クリフと一緒に浴びると約束したばかりだ。
クリフはあれで結構根に持つ方で、約束を破れば、相応の仕返しはある筈だ。
例えば、夜に驚くほどねちねちと責められて、3日間足腰が立てなくなるほどヤられるとか。
『僕も一つ約束を破らせてもらうよ』とか言って、買ってくれる約束をした本を、買ってくれないとか。
どっちも願い下げだ。下腹部に残る違和感には目を瞑ろう。
ちょっとくらいクリフの体毛が貼り付いてるとか、身体がべたべたするとか、ガマンだ。
なに、これくらいはいつもの事だし、さして苦になるワケではない。
 
ミツキはサンダルを履くと、階段を降りて一回へ向かう。
郵便物が来てるかのチェックをしなければならない。
直接会いに来て依頼をしてくれる客もいるが、こちらから出向かなければならないときは、郵便物で住所を提示してくる事も多い。
今まで何度もそういう依頼があったし、いつ来るかも分からない。
だから朝昼晩のポストのチェックは欠かせなかった。
 
そしてミツキがポストの中を覗くと、そこには煌びやかな封筒が入っていた。
無駄に金箔を使ってキラキラ光っていて趣味が悪い。
私はその封筒を取り出すと、まじまじと眺めた。
その封筒をの送り主の欄を見ると、“王立博物館”と書かれていた。
 
「……王立博物館から……?なんで私たちのところなんかに……」
 
 王立博物館といえば、犬国の首都にある大規模な博物館だ。
 古今東西から多くの文化財が集められ、展示されている。
 だが、“王立”だけあって入場料も高く、一般市民からすれば、気軽に立ち寄れるような場所ではない。
自慢じゃないが、いくらクリフの生まれが良くったって、あくまで昔の事だ。
親から勘当された今では、ただの一般市民でしかない。
そんなつたない自営業の探偵事務所へ、こんな“王立”だとか大層なところからの郵便が来るとは、正直な話し、呆気に取られている。
ミツキたちの名声も王まで届くようになったのか、それとも最近流行の詐欺だろうか。
 普通に考えても先に挙げたほうは有り得なさそうだし、これは詐欺を疑ったほうが良さそうだ。
 
「後でクリフ先生と一緒に調べとこ」
 
 しかしミツキはその封筒への答えを先延ばしにした。
 どっちにしろ、郵便物はミツキに宛てられたものでない限り、クリフが開けることになっている。
 ミツキがこの場で封筒を明ける権限はない。
 どーせ悪戯か何かだろうし、とりあえず持ち帰って、朝ごはんを食べながらクリフと一緒に読むことにしよう。
 
 ミツキはそう決めると、封筒を持ってさっさと階段をあがる。
 二階の事務所を通り過ぎ、三階の扉を開けて中に入る。
 そしてリビングのテーブルの上に手紙を置いた。
 ついでに、チェック柄をしたテーブルクロスのたるみを、パンパンと直す。
 後はキッチンに向かい、昨日のスープの残りを温めて、パンを添えれば朝食の出来上がりだ。
 結局、昨日は晩御飯も食べることができなかったので、そのまま余っているのだ。
 これ以上火を通せば、肉が完全にその面影をなくしてしまうかも知れないが、それはまあ、仕方のないことだろう。
 ミツキはスープをコンロの火にかけると、寝室で寝ているクリフを起こしに向かう。
クリフは寝起きの悪い方で、ミツキが起こすまでベッドから出ようとしない。
ミツキは寝室のドアを開けて入室すると、クリフの眠るベッドの前まで移動する。
クリフは相変わらず安らかな寝息を立てていた。
ミツキが抱かせた枕は、まだクリフの腕の中にいて、その役割を果たしてくれている。
次はその枕に役目を終えてもらわなくてはならない。
ミツキはむんずとその枕を掴むと、精一杯の力で引っ張った。
そうすると、枕はクリフの腕の中から脱出する。
 
「先生、いつまで寝てるんですか?もう朝御飯が出来ちゃいますよ」
「う……う~ん……。あと、5分でいいから寝かせてくれないかい……?」
「ダメです!先生はもうちょっと早起きできるようになってください。
さ、早く起きないと布団を引っぺがしちゃいますよ」
 
ミツキはそう言いながら、ベッドにかけてある布団を掴む。
毛皮があるくせに、布団無しでは寒いのか、クリフも負けじと布団を掴んだ。
 
「早く起きてください~~っ!!」
「嫌だね。眠ってる王子様を起こす方法は、お姫様のキスだけだよ」
「それは逆です~!だいたい先生は起きてるのにワガママ言ってるだけじゃないですか!」
「ワガママだろうが構わないねっ。僕はミツキ君のキスがないと起きれないんだよ」
「ワガママな子にキスなんてしてあげませんよー!先生こそベッドから出たらキスしてあげます」
「いーや。起きる前にキスしてくれないとだめなんだっ」
「先生の意地っ張り~!!」
 
布団を引っ張り合いながら、自分でも聞いてて耳の痛くなる会話だった。
クリフが相手では、ミツキが布団を引っ張ってもどうにもならず、会話で説得せざるえない。
しかし会話の方も、続けているだけでミツキにダメージを与えるような内容だ。
いくら自分の家の寝室でも、バカップルのような会話に、ミツキは顔から火の出る思いだった。
一刻も早くこの会話を終わらせて、クリフを起こしたい。
そう思ってしまうミツキは、今日もここで判断を誤った。
 
「はぁ…ハァ…ッ。じ、じゃあ、私がキスしたら、クリフ先生は起きてくれるんですね」
「ああ。キミの口付けのためなら、なんだってするさ」
 
ミツキは肩で息をしながら、クリフに確認を入れる。
クリフは尻尾を振りながら、待ってましたとばかりに答えた。
ミツキは溜め息を吐きそうになるのを答えながら、クリフの額にキスをした。
 
「これでいいですか?」
「……唇じゃないと、満足できないな。僕がお手本を見せてあげるよ」
「ひゃっ!? クリフ先生!?」
 
ミツキは油断してしまった。
一瞬の隙を突かれ、腕を掴まれると、一気に布団の中まで引きずり込まれる。
クリフから両手両足でしっかりと身体を固定され、ミツキは完全に身動き取れなくなった。
声を上げ様にも、クリフ曰くの“口付けのお手本”をされて、声が出せない。
息が詰まるほど長いキスをされて、ようやく唇を解放された。
 
「…もう、起きてくれますよね?」
「つれないねキミも。悪いけど、君があまりに美しくて、僕も燃え上がってしまったよ。
……昨日の約束、覚えててくれたんだね。まだシャワーを浴びてない」
 
クリフはミツキの首筋に鼻を当てて、くんかくんかと匂いを嗅いだ。
すると、クリフとミツキの匂いが混じっていて、なんだか微妙な感覚だった。
それを嗅いでる内に、匂いを嗅いでいるだけでは満足できなくなり、次は舌をはわせる。
べろべろとミツキの首筋を舐め上げ、たまに吸い付いて赤い跡を残した。
そして舌での愛撫は、首筋から徐々に胸元へずれていく。
 
「……だっ、だめぇ……! 今、朝ですってぇ~……」
「じゅ…じゅる、ちゅぱ……。ふぅ、仕方ないだろう?
男からすれば、朝だから我慢が出来ないんだ。
大丈夫。中には出さないよ。……………多分」
「多分じゃ……だめですよぉ……!」
 
言ったところで、クリフにはもう火が点いていた。
ミツキの着ている服のボタンを外し、乳房をちゅうちゅうと吸い上げる。
そうしながらも、ミツキのズボンをずり下ろし、パンティの中に指を入れた。
恥部に指先を突っ込むと、昨晩クリフの出した精液が、まだ残っていた。
シャワーを浴びないどころか、中に出されたのを掻き出さない、ミツキの律義さには恐れ入る。
今、自分が軽くミツキを騙しているのと比較して、クリフは少しだけ胸がチクリとした。
 
「あっ…」
「大丈夫。愛してるよ、ミツキ君」
 
だがそれも、偉大なる大自然の摂理、愛し合う男女の行き付く先と比べれば、些細なものでしかなかった。
2,3回指で慣らすと、ミツキの恥部から掻き出した精液を潤滑油にして、クリフは一気に肉棒を突き入れた。
性急に腰を動かして、ミツキの子宮口を亀頭で突付く。
その度にミツキの華奢な身体が、クリフの腕の中でビクビクと震えた。
やはり朝からロクに慣らさずにすれば、ミツキにも多少の負担は付き纏うようだ。
少しは加減しようとクリフも思っていたのだが、朝勃ちの勢いもあり、容赦できなかった。
これはもう、一気に射精まで持っていくしかないと、クリフは心に決めた。
だが、そんな情事を遮る事件が起こる。
寝室まで、何か焦臭い臭いが届いてきた。
不審に思い、ミツキを抱きかかえたままベッドの上を半回転して、クリフが仰向けになり、その上にミツキを乗せた体勢になった。
そして天井を見ると、煙が立ち込めている。
 
「み、ミツキ君! 煙が……!」
「うぅ……だからダメだって言ったんですよ……。
スープを温めてる途中だったのに、先生が無理矢理ベッドに引きずり込んだりしてるから……」
 
これはもう、えっちしている場合ではない。
大切な探偵事務所が燃えるか燃えないかなのだ。
クリフは慌ててミツキから肉棒を引き抜くと、丸裸のままキッチンへ走っていった。
そのあとを、おぼつかない足取りでミツキが追い掛けた。
 
クリフがキッチンへ着くと、そこは物凄い参上だった。
スープは吹き零れ、スープの具がコンロに焦げ付いて、煙を噴き上げている。
クリフはコンロの火を消し、ふぅ、と息を吐きながら額を拭った。
やはり約束は破るものではないなと、改めて思い知った。
 
「先生、キッチンは大丈夫でしたか?」
「ああ。なんとか大丈夫だ。掃除すればまた使えるよ。
幸いな事に、スープもまだ残っているし、朝御飯には足りるよ」
「良かった……。スープが無いと、今朝はパンとバターだけでしたよ」
 
ミツキが、肌蹴た衣服を着直しながら、安心した様子で言った。
クリフとしても、ミツキの言葉に改めて胸を撫で下ろした。
朝御飯がパンとバターだけでは味気無さ過ぎる。
せめてそこに、ハムエッグとジャムくらいはついていて欲しい。
 
「ミツキ君。僕が悪かったよ。君の忠告を聞きながらも、欲情を抑えられなくて……」
「いいんですよ。分かってくれれば。かわりに先生、後で一緒にお掃除してくれますか?」
「もちろんだよ。僕の失敗なんだから、キミだけに迷惑かける訳には行かない。
だから、一緒にシャワーを浴びる約束は、守って欲しいな」
「フフフ、いいですよ。私は約束を破りません。特に、先生との約束は絶対に」
「ありがとう。嬉しいよ」
 
ミツキは笑いながら朝食の準備を始めた。
 スープはグツグツと十分すぎるほどに温まっていて、後はパンを軽く焼くだけだ。
 オーブンの中にパンを入れると、パンを焼いてる間にスープをお皿に入れ、テーブルの上に並べる。
 そして牛乳を冷蔵庫から取り出し、コップを添えて、それもテーブルの上に置いた。
 そこまでしても、まだパンが丁度よく焼きあがるのには時間があった。
 その間に、ミツキは寝室まで移動すると、クローゼットからクリフの服を取り出して、またリビングまで戻った。
 
「先生、いつまで素っ裸のつもりですか?服を着てください」
「朝食の後は、すぐにシャワーを浴びるんだろう?なら、わざわざ今着なくてもいいじゃないか」
「よくないです。私が先生のヌードを見ながら、朝食を取るはめになるじゃないですか」
「僕は、キミのヌードを見ながら朝食を取れたら、食欲が増すなぁ」
「私と先生の感性を、同じ尺度で測らないでください!」
 
 ミツキは、ズボンとシャツをクリフに投げてよこすと、自分はキッチンへ向かった。
 オーブンの中から、美味そうに焼けたパンを取り出し、バターと一緒に食卓へ運んだ。
 そのころにはクリフも、渋々と言った様子だが、服を着ていた。
 しかしまだミツキに恨みがましい視線を向けていて、ミツキは目をそらした。
 
 クリフは外に出れば完全な紳士を装えるが、二人きりのときは、半端なく惚気てくるのが問題だ。
 少しでも油断していると、先ほどの如く付け入られ、押し倒されてしまう。
 もう何年も一緒にいるのだが、未だにクリフの扱いに失敗することがあるのだから、分からない。
 
「先生、朝御飯出来ましたよ。それと、テーブルの上の封筒。今朝ポストに入ってました」
「ありがとう。……へえ、王立博物館から。僕たちも有名になったのかな」
「さ~、分かりませんよ。もしかしたら詐欺かなんかかもしれませんし」
 
クリフは嬉しそうに尻尾を振りながら、封筒を開けた。
あまりクリフに期待させて、それを裏切るような内容の手紙でも嫌なので、ミツキは今の内に悲観的な可能性を述べておく。
期待している方が、裏切られたときのダメージは大きい。
根が純粋なクリフは、傷付き易いところもあるので、ここまで嬉しそうにしていると、ミツキは不安になってしまう。
恐る恐る見守っていると、クリフはその封筒の中身を読み始めた。
 
―――拝啓、クリフ・ヴァレンタイン様へ。
ご機嫌のほどはいかがでしょうか、季節は秋から冬へと移り変わり、肌寒い毎日が続いております。
この度はヴァレンタイン殿の、探偵としての優れた能力を頼りにしたく存じ上げます。
実は当博物館に宛てて、昨今話題に上がる事も多い、“怪盗イレーネ”より予告状が届いた次第であります。
当博物館に展示してある、犬国建国当初の将軍の一人、『故ドレーベルト伯』が妻へのプロポーズの際に渡した、希少な魔法石の指輪を狙うとの予告状です。
しかしながら、博物館を閉めようものなら、王立の名に恥じます。
そこで、大規模な警戒網を敷き、平常通りの運営を行う予定です。
つきましては、ヴァレンタイン殿に、探偵としての知識を利用し、私服でその警戒網に参加してもらいたく存じます。
ヴァレンタイン殿は、その敏腕ぶりにも関わらず、地元以外ではそこまで知られておりません。
そのため、怪盗イレーネに警戒される事も無く、尚且つ有効な警備をしてくれだろうと期待しております。
召し使いのヒトの分も合わせて、犬国の国立鉄道、最高級車両の乗車券を同封しています。
もしも依頼を受けてくださるというのなら、この手紙を持って、王立博物館まで起こしください。
怪盗イレーネの犯行を見事阻止したあかつきには、それ相応の報酬を用意しております
 
王立博物館館長代理ミネルヴァ・メシュリーより――――
 
ミツキが先ほどの封筒をもう一度見てみると、中には二枚の切符が入っていた。
“国立鉄道”の文字は見紛う事無く、それが本物だと物語っている。
加えて、王立博物館のチケットまでが入っている。
どちらも相当に値の張る代物で、詐欺の為に用意できるものではない。
これはもう、本格的に喜んでしまって良いのだろうか。
手元の切符から、視線を徐々に上げていくと、クリフと視線が合った。
 
「先生、これって……」
「ああ。疑いようも無く、僕たちへの仕事だ。
キミを召し使い扱いされたのは気に入らないけど、でもこれは……っ」
 
お互いの目を見詰め合いながら、半ば呆けたような笑い顔を作る。
もうどうしようもなく、腹の底から嬉しさが湧いてきた。
これまで、偶然居合わせた(それにしては数が多いが、探偵の宿命だろう)事件などを地道に解決してきた、その努力が報われた。
クリフだって望んでいた筈だ。
大事件を華麗に解決する名探偵。
それがクリフの理想で、ミツキはその頼れる助手。
そんな夢幻(ゆめまぼろし)のような展開が、もう目の前かもしれないのだ。
 
「やったよ! 早速出掛けよう! 今すぐ出発しよう!」
「く、クリフ先生!まだ朝食も取ってなければ、シャワーも浴びてませんよ!」
「大丈夫さ。最高級車両には、三食が最高級のフルコースで運ばれてくるし、専用のシャワー室もある」
「そう言う問題じゃありません!大体ここ見てください!
この列車の出発時刻は、明日の朝なんです!!」
 
チケットをクリフの目の前に振りかざし、ミツキが言った。
クリフはその切符を受け取ると、まじまじと見詰める。
確かに列車の出発時刻は、明日の朝だった。
自分の早とちりに、クリフも恥ずかしいのか、さっきまでの勢いを消して椅子に座った。
 
「先生、今日1日かけて出発の準備です。
歯ブラシと歯磨き粉と、着替えも用意しなければなりませんね。
食事はあちらで出るんでしたっけ。じゃあお弁当はいらない。っと。
後は、ここから首都までだと結構ありますし、長旅になりそうですから、列車の中で読む本でも準備しましょう」
「ああ。そうするよ」
 
バターを塗ったパンを、スープに浸しながら、クリフが返事をした。
明日が待ち遠しくて堪らず、目の前の事が虚ろになってしまい、気の抜けた返事になった。
もう何年も一緒にいるのだし、ミツキにもクリフの気持が分かり、あえて何も言わずに放っておいた。
クリフは、自分からすれば決して多くはない朝食を、ぺろりと平らげた。
ミツキも、クリフが食べ終わったのに気付き、慌てて自分の分を食べた。
ミツキの方が量は少ないのに、いつも先に食べ終わるのはクリフの方だ。
口の大きさから全く違うので、ミツキでは歯が立たない。
 
「ふぅ、御馳走さま。待たせちゃってすみませんね」
「いいよ。キミが御飯を食べている姿は、とても可愛かったしね」
「もう、先生ったら。ジロジロ見られてたら御飯食べ難いですよ」
「おっと、これは失礼」
 
これはまあ、いつものやり取りだった。
ミツキは食べ終わった皿を集めて、台所の流しに入れた。
そこには予め水を張っていて、付けおき用の洗剤も混ぜてある。
2,30分もすれば、水を流して軽く濯ぎ、水を拭き取って終わりだ。
 
「先生、じゃあ私シャワーを浴びますけど、先生も一緒に入る約束でしたよね」
「その言葉を待ってたよ。じゃあ早速行こうか。
服は今朝着たばかりだし、洗濯しなくてもいいね?」
「ええ。シャワーの後にそのまま着てください。
私もこの服は着たばかりだから、今日1日着ますよ」
 
言いながら、ミツキはクリフを連れて寝室まで歩いて行く。
そしてベッドからシーツを引っぺがし、洗面所へ向かった。
シーツには昨晩の形跡がハッキリと残っていた。
シャワーを浴びるついでに、シーツを浴槽に投げ込み、その中に薄くお湯を張った。
 
「いつ見ても、キミは手際が良いね」
「そりゃ、何年もこうして家事をしてますしね」
 
もうずっとこうして、クリフと2人で暮らしてきたのだから、自然に家事も上達する。
落ちてきたばかりのときは、料理も掃除も出来ないただの少女だったが、今はもう違う。
 
「先生、脱がないんですか? シャワー浴びますよ」
「おっと。そうだったね。キミの服も僕が脱がそうか?」
「いいですよ。そんな恥ずかしいですし、服が毛だらけになっちゃいます」
 
クリフが自分の服を脱いでいる横で、ミツキも自分の服を脱ぎ始めた。
すぐにシャワーを浴びるつもりだったし、どちらも軽く羽織っているだけで、脱ぐのに時間はかからなかった。
クリフに至ってはパンツすらはいておらず、ズボンとシャツだけだった。
 
「随分と時間をかけるね」
「男と違って、女の裸はそうあっさり見せられるもんじゃないんです。
先に入っててください。私は脱ぎ終わったあとに入りますから」
「そうか。じゃあ待っているよ」
 
 先にクリフはシャワー室へ入った。
 ジャーとシャワーを出す音が聞こえ、続いてクリフのびっくりしたような悲鳴が聞こえた。
 大方、熱水を薄めずに、直に浴びてしまったのだろと、ミツキは考えた。
 ここのシャワーは、ワンタッチで温度を調節できるほど、便利ではない。
 熱水が出てくるので、お湯と同時に水も出して、温度を調節する仕組みだ。
 日本の古い銭湯でも、そんな仕組みになってる場所があったはずだ。
 
「ふぅ、やっとシャワーを浴びれる。
今朝からずっと、下腹部の違和感が気になってたのよね……」
 
 ミツキは、鏡に映る自らの裸体を眺めながら、自分の下腹部を手でさすった。
 そのまま少し押してみると、中に出されたものが、恥部から少し出てきた。
 次に、腰の辺りをさすってみる。
 昨晩は、そこまで激しい動きはされなかったし、腰痛などはなかった。
 最後に、肩についた歯形を指でなぞった。
 傷は完全に治っているが、跡は一生消えないだろう。
 
「まっ、いっか。……せんせーい、入りますよー!」
「さあどうぞ。お湯は丁度よくしておいたよ」
 
 シャワー室の戸を開けて、ミツキは中に入っていく。
確かにお湯の温度は、少し熱いくらいのミツキ好みの温度だ。
汗でベトベトになっていた身体をさっと洗い流すと、何とも言えない充実感が芽生える。
やはりシャワーを浴びているときは、人生の至福の瞬間だと、ミツキは改めて認識した。
 
「ふぅ~っ、気持ちいい。先生、ちょっとシャンプーとって下さい」
「これだったね。どうせなら僕が洗おうかい?」
「いえ。髪の毛の中に先生の毛が混じっちゃいますから、遠慮しておきます」
 
あっさりと遠慮され、クリフはミツキが自分の髪を洗う様子を、未練がましい視線で見詰めた。
確かにクリフの指でミツキの髪を洗えば、髪の毛の中に犬の毛が混じってしまう。
同じ理由で今までに何度も拒否されたし、そろそろ諦めても良いところだが、今でも一緒にシャワーを浴びる度にこうして尋ねていた。
しかし、まだ次が有る。
ミツキが髪を洗い終わり、石鹸を手に取ったとき、タイミングを合わせて言う。
 
「ミツキ君、僕の身体を洗ってくれないかい?
自分でやると、どうにもキミにしてもらうような艶が出ないんだ」
「ん、分かりました。ブラシは……ああ、先生が持ってますね」
 
今度は成功した。
クリフは心の中でガッツポーズをし、ミツキにブラシを渡すと、床に置いてある、風呂場用の小さな椅子に腰掛けた。
ミツキはその後ろに立つと、クリフの身体にシャワーを満遍無く浴びせる。
そしてクリフから受け取ったブラシに石鹸を付けると、クリフの頭からゴシゴシと洗い始めた。
犬というのは、シャワーを浴びる度にこうしてブラッシングをしなくてはならないので大変だと、ミツキは思う。
公共の場に出るとなると、抜けかかった毛を放っておけば、身形がなってないと思われてしまう。
だから、こうして毎朝ブラッシングするなりして、手入れをしなければならない。
手入れを怠れば、艶は消えて毛は逆立ち、見てられないような外見になってしまう。
庶民ならばそれもいいだろう。
だがクリフは、心はいつまでも上流階級のままで、それを許さない。
 
「痛くありません?」
「いや、気持ち良いよ。流石はミツキ君だ」
「フフ、良かった。そう言ってもらえて、私も嬉しいですよ」
 
垂れた耳の裏をブラシで擦り、デリケートな部分は手で直接洗った。
クリフの耳の中には水が入らないように気を付けながら、一度洗った頭にシャワーをかける。
もう随分と手馴れた手付きで、ミツキは一連の行為をこなしていた。
(なんかなー。私もスッカリ板についちゃってて。
これじゃもう、探偵と助手って言うよりも、まるで夫婦だわ)
自分の考えた事に、ミツキは首を振った。
まだ自分は17歳の筈だと、誰かとそんなディープな関係になる歳ではないと。
例えこの相手に満足していても、この相手が心の底から好きでもだ。
 
「先生、頭と背中が終わったから、次は尻尾ですよ」
「ああ、頼むよ。尻尾はよく見られる部分だし、念入りにね」
「ガッテンです。痛かったら言ってくださいね」
 
考え事をしている内に、背中も終わった。
次いでクリフの尻尾を丹念にブラッシングする。
犬の場合は特に、喜怒哀楽がシッポに出てしまう事が多い。
だから、尻尾はある意味で、他犬の感情を知るための重要な個所だ。
そのため、誰かと会うときはこの尻尾が注目され易い。
だから、尻尾は特に気合いを入れて手入れする必要が有る訳だ。
 
「絡まったりしてません?」
「そんな事ないよ。君はとてもブラッシングが上手いからね」
「毎朝、先生にブラッシングしてますからね。何年一緒にいると思ってるんです?」
「違いない。もう6年だからね。
僕等も、探偵と助手と言うより、寧ろ夫婦のような感じだよ」
「ふぇっ!?」
 
クリフの言葉に驚いて、ミツキは思わず手元を狂わせた。
滑らかに動いていたブラシは、動きを変えてクリフの尻尾の毛を絡み取る。
そのまま引っ張られ、クリフは尻尾をピンと突っ立て、痛みに悲鳴を上げた。
 
「あっ、すみません! 少し驚いて・・・・!」
「……痛ゥ~……。あ、いや……構わないんだ。
僕が変な事を言ってしまったから。キミにはまだ早かったね」
「いえ、私がちょっと……。と、とにかく尻尾。大丈夫ですか?」
 
ミツキはクリフの尻尾を手で撫でながら、クリフを気遣った。
いくら頑丈な獣人でも、毛を引っ張られれば痛い。
ミツキのような女性が、細腕で叩いたところでダメージは与えられないが、毛を引っ張れば簡単に痛がる。
だからついミツキも不安になってしまい、クリフの目を覗き込んだ。
 
「平気さ。少し毛が抜けただけだよ。気にしないでくれ」
「はぁ、良かったです。アハハ、セーフ~」
「そうだね。セーフだよセーフ。……それで、これってどういう意味だい?」
「セーフはセーフって意味ですよ~」
「う~ん……キミの“セーフ”という言葉の使い方からすると、ギリギリで大丈夫だという事らしいけど」
「まあ、そんな感じです。使い方は会ってますよ。
もう和製英語になってて、本来と使い方は違うと思いますけど……。
……っと、今度こそブラッシング終わり」
 
最後に尻尾にもシャワーのお湯をかけ、ブラッシングはやっと終わる。
ミツキも、流石にクリフの正面に立って腹部やらをブラッシングするつもりにはなれない。
それにそういうところは、どーせ服で隠れるし、服を脱ぐ頃には、汗で蒸れて大変な事になっている。
気合いを入れてブラッシングしても、見る相手なんてミツキぐらいのものだ。
 
「ありがとう。これで何処へ出ても恥ずかしくないよ。
それと、前から気になっていたんだけど、キミ達の世界には公用語というのが無いのかい?
キミの話しだと、色んな国にそれぞれの言葉があるようだがね」
「うーん……話すと面倒ですし、首都行きの列車の中で。
とりあえずまだ、私は身体も洗ってないんですよ」
 
ミツキは困ったように笑いながら、ブラシを棚に置いた。
髪の毛を洗っただけで、まだ身体の彼方此方がベトベトしてる。
うへぇ、とジェスチャーでやって見せ、ミツキは石鹸を手に取った。
 
「そうか。なら、今度は僕がキミの身体を洗ってあげるよ」
 
クリフは立ち上がると、石鹸をミツキの手から掠め取りながら言った。
そのまま有無を言わさず抱きすくめ、ミツキの背中を撫でる。
ここまで来れば、今までの成功率は8割以上だ。
 
「ほら、こんなにべとべとになって。ここは、自分じゃ届かないだろう?」
「た、タオルを使えば届きますって!」
 
ミツキが顔を赤くしながら言うと、クリフはその唇に人差し指を当て、ゆっくりと首を振った。
体中の毛皮が濡れてベッタリとしている様子は、あまりカッコイイとは言えないが、それでもその姿にミツキは見惚れた。
なんだかんだで、ミツキも自分がバカップルの片割れだと自覚する。
 
「いいじゃないか。僕はね、一時でも多くキミに触れていたいんだ。
愛しいものに、少しでも長く触れていたいのは、当然の感情だろう?」
 
クリフはミツキに口付けると、壁に背中をつけ、ミツキを抱きかかえたまま、少しずつ腰を下ろしていく。
やがて床に腰掛けてあぐらをかき、その足の間にミツキを座らせた。
もう一度口付けながら、舌を差し込み、ミツキの胸を掴む。
胸は揉まれると大きくなると聞くが、ミツキの胸は、初めて会ったときに比べてどうだろうか。
改めてマジマジと見詰めると、大した変化だった。
落ちて来た時は子どもだったという事も有り、貧乳の化身のような感じだった筈だ。
それが今では、大きさこそ平均よりやや上に留まるが、形といえば文句無しの美乳だ。
 
「かぷっ」
「ひゃぁっ!?」
 
胸をいきなりかぷっとくわえられ、ミツキは驚いて嬌声をあげた。
クリフはただ、その胸を見ている内にかぶりつきたくなったのだった。
かぶりついたまま、乳房を舌でベロベロと舐め、ちゅうちゅうと吸う。
ミツキは中々の反応をしてくれて、クリフは調子に乗って更に愛撫を繰り返した。
 
「ん……次は、こっちかな?でもその前に、古いのを掻き出してしまおう」
「ッ……せ、せんせ…い…、待っ……!」
 
わざとミツキに見えるように注意を向けさせて、ミツキの恥部を指で刺激する。
少し馴らすと、恥部に指を突っ込んで、昨日出したあとそのままの精液を掻き出した。
ミツキの下腹部を手で押しながら、中で指を動かして掻き出すと、古いのが出てくる。
これだけたくさん出してるというのに、子どもができないと思うと、クリフは少々残念になった。
 
「こんな所でいいかな。ミツキ君、まだ中には残っているかい?」
「うぅ……。も、もう分かりませんよぉ~……」
「そうか……。でも、こんなに濡れてるなら、挿れても大丈夫そうだね」
 
クリフがミツキを腰を掴んで持ち上げる。
ミツキはなんとかバランスを取ろうとして、クリフの首にしがみついた。
クリフはミツキの腰を、自分の股間の上まで持ってくる。
そして、そそり立つ肉棒の上に、ゆっくりと降ろしていった。
 
「うっ……」
 
まず先の方が入り、そこで一旦固定する。
一気に奥まで突き入れたりすれば、ミツキが痛い思いをするので駄目だ。
機嫌を損ねて禁欲生活でも発動された日には、クリフは生きていけなくなる。
 
「もう奥に挿れて大丈夫かい?」
「少し……ずつですからね…」
 
ミツキに確認を入れた上で、さらに奥へ進めて行く。
少しずつ少しずつ、なるべくミツキに負担がかからないように。
中ほどまで差し込んだところで一休みし、また奥まで挿れてゆく。
根元まで全部を挿れるには、2,3分を要した。
 
「動いても平気だよね?」
「大丈夫…ですよ」
「そうか。じゃあ、動くよ……ッ」
 
最初はゆっくりと、それを少し続けた後、少しずつ腰の動きを激しいものにしていく。
狭いシャワー室の中に、ミツキの嬌声が木霊した。
腰を打ちつける音も、その嬌声と重なって木霊し、とてもエロい効果音が出来上がっている。
そんな音を聞いてると、クリフは更に昂奮させられ、ミツキは恥ずかしさにギュッと目を瞑った。
クリフはまたミツキの胸にかぶりつき、血が出ない程度に噛み締めた。
痛みとも快感ともとれない微妙な感覚に、ミツキの体がビクリとはねた。
いつまで経っても初々しいミツキの仕草に、クリフはほくそ笑んだ。
クリフが口を開けると、ミツキの胸には歯形がついていて、少し赤くなっていた。
いたわるようにその胸を舐め上げると、ミツキがビクビクと締め上げてきた。
 
「フフ、愛してるよ。ミツキ君。
キミが死ぬまで……。いいや、死んでも放しはしない。
ずぅーっと、僕の側にいてもらうからね。
最後には、僕と同じ墓に骨を埋めてもらうよ」
 
恥ずかし気な素振りも見せずに、そんな言葉を口にするクリフを、ミツキはやはり変だと思った。
そんな事を言われても、ミツキにはどう答えたら良いか分からなくなる。
もしクリフと同じテンションで答えれば、バカップルの片割れを自称するようで、気恥ずかしい。
だが、無垢な目で返事を期待するように見詰められたら、答えない訳にもいかなかった。
ミツキは、呂律の回らない舌を精一杯動かして、言葉を紡ぐ。
 
「そんな、そんな当然の事……今さら言わないでも、分かって……ますよ…。
先生の所為で、私…元の世界とか、どうでもよく…なっちゃったんだから。
責任取って、ずっと、ずっと側に置いてもらいますからね……!!」
 
涙目になりながら、クリフの耳を引っ掴んで言った。
あまり大きな声ではなかったが、耳の間近で言われて所為で、クリフは少し耳がキーンとなった。
だが、言われた言葉の喜びに、そんな感覚は直ぐに忘れた。
 
「流石は、僕のお姫様だ。本当に愛しているよ。いつまでも一緒さ。
いつか、ウエディングドレスを着たキミをお姫様抱っこして、バージンロードを歩くのが僕の夢だよ。
ヒトを相手にそんな事をしようものなら、多分変質者扱いされるだろうけど、だけど気にならない。
君が一緒にいてくれたらそれで良いんだ。
キミは頼れる助手であり、そして僕の最愛の相手なんだ……」
「……先生……」
 
クリフはもう一度、『愛してるよ』と言いながら口付けを落とす。
そしてミツキの体を優しく抱き締めると、ミツキも抱き締め返し、クリフの頬にキスをしてくれた。
毛皮の上からでも分かるほど、ヒトの唇というのは柔らかい。
その感触は気持良かった。
しかし、唇で感じるのが一番気持良いとクリフは思う。
 
「今度は唇に、いいかな?」
 
そう尋ねると、ミツキは無言で唇を近寄せてくる。
クリフは、そのミツキの唇を自分の唇で受け止めた。
そして舌で舐め回すと、その舌を口内に差し込む。
口を丸ごとくわえて、声を出せなくなったところで、腰を一気に動かして、肉棒を奥まで突き入れる。
さっきまではラブロマンスをしていたが、やはりクリフも男だ。
ギリギリまで我慢していたのだが、もう迫り来る絶頂を先延ばしにする事は出来ない。
 
「ふがふがっ……!」
慌てるミツキを強く抱き締めて動きを封じ、腰をガッシリと密着させる。
「ふがうっ!」
 
そしてミツキの中に、白濁色の液体を吐き出した。
その瞬間、クリフを抱き締めるミツキの腕に力が入り、背中に軽く爪を立てた。
だがその程度では、毛皮も有るしクリフの背中に傷はつかなかった。
 
「ふぅ……。平気かい? ミツキ君」
「ん……あんまり……。 疲れましたよ」
 
クリフはミツキを気遣って聞いてみると、返ってくる言葉は予想通りのものだった。
『悪かったね』と謝って、触れるだけの軽いキスをする。
そうやって時間を稼いで、ミツキを逃げる事が出来なくする作戦だ。
少し抱き合っている内に、突っ込んでいた肉棒は大きさを増し、抜けなくなった。
 
「疲れてるところで悪いけど、抜けなくなってしまったんだが……」
「『早く抜きたかったら、もっと出さないとね』」
 
2人の声が完全に重なり、クリフは驚いた表情をした。
ミツキの方はと言うと、口を尖らせて不満そうにしながら、クリフの胸に顔を埋めた。
彼女にすれば、シャワーを浴びたのになんでわざわざ汚れなきゃならないのか。と言う訳だ。
今さら抜こうとしたところで、無理だと言う事は分かっている。
大きくなる前に抜こうにも、クリフに抱き締められてキスされていては、ムード的に動けなかった。
 
「もう好きにしてください。私は諦めてますから」
「フフフ、ミツキ君は物分かりが良いね。
また後で、ちゃんと僕が身体を洗ってあげるから。
それとも、今洗ってあげようかい?」
 
ミツキはゆっくりと首を振った。
自分で洗う方が上手く洗えるし、クリフに洗わせたら何をされるか分かったものではない。
経験から言うと、手に石鹸を付けてミツキの体中を撫で回すとか、そんな所だと思うのだが。
 
「そんな顔をしないで。愛は身体を張って表現するものだろう?」
「身体を張り過ぎると相手に負担をかけるんで、次から注意してください」
「僕だって注意はしているさ。ただ、キミを前にすると理性のタガが外れるんだよ」
 
クリフはまた『愛してるよ』と言って、口付けをした。
ミツキはその言葉を数え切れないほどに聞かされたが、今でも嬉しがってる自分が、少し恥ずかしかった。
 
「先生。私も愛してますから、明日にはひびかないようにしてくださいね」
「もちろんだよ。今日は前祝いさ」
 
今が前祝いなら、明日は本番の祝いが待っている筈だ。
ミツキはそれを考えると、少々だが頭が痛くなった。
(今日は、夕方から明日の朝まで、先生の相手をしないで寝てやるんだから)
そう誓って、ミツキはクリフに体を預けた。
出しっぱなしのシャワーの水道代が、頭を掠めた。
 
 
 
 
 
Fin.