ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 心に響く音楽

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~心に響く音楽~

「優勝は○○学園です。」

広いホールに結果を告げる声が響き渡る。
ここは合奏コンクール高等学校の部・全国大会の会場。大きなホールも人で埋め尽くされている。

「そんな・・・嘘でしょ・・・」

歓喜に沸く○○学園の傍らに信じられないといった表情の一団がいた。
彼女らは有栖学園吹奏楽部。毎年素晴らしい演奏で観客を魅了し、ここのところ四連覇という偉業を成し遂げていた。
今年は学園外からも特に優秀といわれている生徒が数多く入学し、優勝は確実と言われていたのだが・・・

「し、信じられないのかしら・・・」

中でも落胆の色が濃い小柄な女性が一人。
有栖学園吹奏楽部顧問・金糸雀だ。今年も確実と噂されていた筈の優勝を逃してしまった・・・
いつも明るい彼女の顔も今は曇っていた。

学園に戻り、結果を報告する。
無論ローゼンはこのことで金糸雀を責めるような校長ではないが、結果を聞いたときの

「そうか・・・残念だったね。」

という言葉には悲しみがこもっていた。
落ち込む金糸雀。しかしそんな彼女に追い討ちを掛けるような出来事が起こる。

生徒A「先生」
金「何、かしら?」
生徒B「私、明日の練習をもって部を辞めさせてもらいます。」
生徒C「僕もです。」
生徒D「あたしも辞めます。」

次々に告げる生徒たち。
総勢15人もの部員が部を辞めると言ってきたのである。
勿論金糸雀は驚く。

「ど、どぅしてかしら!?」

生徒B「私はあのコンクールで優勝するためにここに入りました。」
生徒D「絶対、勝てると思ったのに・・・」
生徒C「先生についていけば優勝できると思ったのですが・・・」

いかにも金糸雀のせいと言わんばかりの生徒たち。
その目には責めるような光がこもっている。

生徒A「それでは」
金「そんな・・・嘘かしら・・・」

生徒たちは出て行ってしまった。慌てて金糸雀が残った部員を確認すると・・・

金「あと・・・4人、かしら・・・」

何と残っていたのはたったの4人だった。部活動を存続する為には最低でも5人の部員が必要だ。
新学期でもないわけだし今から新入部員を確保するには非常に厳しい状況と言える。
その日はそのまま解散し、金糸雀は足取り重げに自宅へと戻った。
色々方法を考えるものの、今から部員を見つける方法は浮かばない。

金「大丈夫・・・かしら。カナは有栖学園一の策士の筈・・・きっと、きっと明日にはいい方法が浮かぶのかしら・・・」

前向きな言葉とは裏腹に金糸雀の顔に希望の光は無かった。


次の日。
金糸雀はいつも通りに授業をこなしていたが、無論その表情は暗い。
後から生徒に聞くと、「目に全く光が無かった」と言わしめるほどであった。
いつもが人一倍明るいためにその姿はとても痛々しかった。

そして授業が終わった。今日をもって辞めると言っていた部員たちが最後の練習に来る。

生徒A「あーあ、今日で終わりね。」
生徒B「そうだね・・・でも仕方ないよね。」
生徒D「あたしたちあそこで優勝するため入ったんだしね。」

それぞれの感想を漏らしながら音楽室に向かう部員たち。
そして彼女らが音楽室のドアを開けるとそこには金糸雀と・・・・・・・・・蒼星石がいた。

生徒B「あれ、蒼星石先生、どうしたんですか?」
蒼「僕はピアノが上手くないからね。金糸雀先生はすごく上手だから教えてもらおうと思って。」
生徒C「でも僕たちは優勝できませんでしたよ?」
生徒D「そのすごい先生について行けば優勝できるはずだったのに・・・」

他の部員も言葉には出さぬとも同意しているようだ。相変わらず責任は金糸雀にあると言いたげな態度である。
蒼星石は黙って彼女らの言い分を聞いていたが、やがて口を開いた。

蒼「・・・君たちに聴いてほしいものがあるんだ。金糸雀先生、お願い。」

その言葉を受け、金糸雀はある曲を弾き始めた。
無論音楽教師である彼女がピアノを弾けるのは当然といえば当然であるが、その技量は部員たちの度肝を抜くに十分であった。
力強さと繊細さを兼ね備え、まるで耳ではなく直接心に響くような音楽だった。

生徒B「何・・・これ・・・」
生徒A「いつもの先生じゃ無い・・・」
生徒C「嘘・・・でしょ・・・」

驚嘆を通り越して驚愕している部員たち。声もまともに出ない有様だ。
演奏が終わると、蒼星石は部員たちに語りかけた。

蒼「ね。すっごく上手いでしょ。」
生徒D「でも、金糸雀先生はいつもあんな演奏していなかった・・・」
まだ何か言いたげな部員たちに蒼星石は問いかける。

蒼「君たちは彼女がいくつの部の顧問を兼任しているか知っているかい?10だよ。金糸雀先生は10個もの部活を引き受けているんだ。」
生徒A「10も・・・」
蒼「この学園は割と夜遅くまで開いているれど、金糸雀先生は君たちの練習を終えてからも尚いくつもの部活に顔を出しているんだ。
  現に君たちより早く彼女が帰ったことはないだろ?」
生徒B「それは・・・無いです」
蒼「それだけではないよ。当然時間は足りないわけだし、早朝や昼休みをも使って指導しているんだ。
  そんな状況で常にベストなコンディションを保てる訳が無い。でも彼女は決して君たちの前で弱音を吐いたことは無い筈だ。
  知っての通り金糸雀先生の口癖は『楽して・ズルしていただき』だけど生徒を教えるのに楽して、ましてやズルをしたことなんて一度も無いよ。
  それが金糸雀先生という教師なんだ。」

生徒たちは黙って話を聞いている。さらに続ける蒼星石。

蒼「話してもいいかな?金糸雀先生。実は、僕がここに来たのは君たちが来る30分くらい前なんだ・・・」

30分前。
授業を終え、蒼星石は廊下を歩いていた。
「今日も終わったね。でも仕事はまだまだ・・・ん、これは・・・誰かの泣き声!?」
その声は音楽室より聞こえてくる。慌てて音楽室に向かった蒼星石の目に映った光景は・・・

ピアノに突っ伏して泣いている金糸雀の姿であった。

蒼「金糸雀先生!一体どうしたの!?」
金「蒼星石先生・・・吹奏楽部が・・・吹奏楽部が・・・無くなってしまうのかしら!」

そう言いまた泣き出してしまう金糸雀。

蒼「落ち着いて。良ければ詳しい事情を教えてもらえないかい?」
金「実は・・・」

詳しい事情を聞いた蒼星石は勿論驚く。

蒼「そんなことが・・・」
金「全部カナの、カナのせいなのかしら!カナがもっと上手く教えていたら・・・カナがもっと頑張っていたら・・・
  こんなことにはならなかったのかしら!」
あくまで自分の責任だと言う金糸雀。蒼星石は金糸雀の話を黙って聞いていたが、やがてゆっくりと語りかけた。
蒼「金糸雀先生、ちょっと耳を貸してもらえませんか?」

・・・・・・・・・と言うわけでこの状況に至る。

蒼「という訳なんだ。君たちは知らないかもしれないけど金糸雀先生は元全国ピアノコンクールのチャンピオンなんだ。
  そしてさっきの曲はそのときの曲だよ。」
生徒A「そんな・・・金糸雀先生がそんなすごい人だったなんて・・・」
蒼「聞くところによると君たちはあのコンクールで優勝するために部に入ったと言ったそうじゃないか。」
生徒B「え、えぇ・・・」
蒼「君たちは本当にコンクールで優勝するための努力を怠らなかったかい?自分たちの才能に驕っていい加減な練習をしていなかったかい?
  君たちが他校からの選りすぐりの優秀な生徒だというのは勿論僕も知っているよ。でも自分たちの才能に溺れているようじゃ栄光は掴めるはずも無い。」
生徒C「うっ・・・」

狼狽する部員たち。どうやら蒼星石の予想は当たっていたようだ。

蒼「・・・これを見て欲しい。」

懐から一通の手紙を取り出す蒼星石。

金「そ、それは・・・」
蒼「ごめんね、金糸雀先生。この部屋のゴミ箱にあったのを拾わせてもらったよ。
  これは辞表だ。下書きだろうけどね。
  君たち、これが誰の、そして何のためにここにあるのかもう分かるだろう?」
生徒D「まさか・・・」
蒼「そのまさかさ。金糸雀先生はこれで吹奏楽部が廃部になってしまったら責任を取って学校を辞めるつもりだったんだ。
  全ての責任を一人で背負って・・・ね。」
生徒B「そんな!」
蒼「さっき話したとおり、金糸雀先生はけっして君たちに責任があるとは言わなかった。全て自分のせいだと言っていたんだ。」
生徒たち「・・・」
蒼「もうわかっただろう?金糸雀先生の想いが。君たちをどれだけ大事に思っていたか。・・・今度は君たちの思っていることを聞かせてもらえないかい?
  まさかこのままおめおめと金糸雀先生を辞め・・・『先生!』ん?」

蒼星石の言葉が終わらぬうちに一人の部員が金糸雀の下へ走り寄った。

生徒A「先生!私たちが間違っていました!どうか、どうか許してください!」

深々と頭を下げる。間髪入れずに他の部員も後に続く。

「先生、ごめんなさい!」
「辞めると言ったのは取り消しますので、どうか先生も辞めないで!」
「許してください、先生!」
「お願いします、辞めないでください!」

口々に謝罪の意を示し、辞めないでと懇願する部員たち。中にはしゃくりあげている部員もいる。
金糸雀は無言で部員たちを見ていたが、やがてぽつりぽつりと語り始めた。

金「みんな、辞めないでいてくれるの・・・かしら?吹奏楽部は廃部にならなくて済むの・・・かしら?
  そしてカナはこれからもみんなの先生でいてもいいの・・・かしら?」
生徒たち「勿論です!これからもずっと私たちの先生でいて下さい!」

金「ありがとう・・・かしら」

金糸雀の頬に一筋の涙が伝う。しかしその表情は太陽のような輝く笑顔であった。
部員たちから歓声が挙がる。中には金糸雀に抱きつく部員もいた。


蒼「よかったね、金糸雀先生・・・」

蒼星石の目にも光るものがあった。

後日。

あの一件により吹奏楽部の団結力は学園一といっても過言で無いほどになっていた。
懸命に教える金糸雀。その技術をものにしようと努力する部員たち。
元々才能のある生徒ばかりなので飲み込みは非常に早かった。

そして翌年のコンクールで有栖学園は圧倒的な差をつけ再び栄光の座を手にした。
その時の部員たちの顔は皆金糸雀に負けないほど輝いていたという。

~FIN~