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水銀燈と『商談』

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ある日の昼休み、いつものようにファッション雑誌をペラペラとめくる水銀燈。しかし、その手が急に止まる。
水銀燈「いいわね、これ…。」
そういうと、おもむろに電話を取り出し、誰かと話しだした。
水銀燈「もしもぉし。うん…で、今日はお願いがあるんだけどぉ…ありがとぉ♪やっぱりあなたは世界一だわぁ♪
実は、『フランクミュラー』って言う時計のぉ、ロングアイランドって種類なんだけど…私のお金じゃ、どうしても買えなくてぇ…。 実はそれ、1個70万ぐらいするのよぉ…」
唖然とした様子で、水銀燈を見る一同。そんなのお構いなしに、水銀燈は話を続ける。
水銀燈「…でも、こういう高いものつけるたびに、あなたの事思い出せるしぃ…うん、ちゃんとしたところで買わないとダメよ?ありがとう、じゃ、よろしくねぇ♪」
どうやら、『商談』は成立したようだ。
しかし、大して喜ぶそぶりも見せず、また雑誌を見始める水銀燈に、真紅が重い口を開いた。


真紅「…有栖学園の一員ともあろう者が、そんな物乞いみたいな事して恥ずかしいと思わないの!?」
水銀燈「あらぁ…?それって、私に対するひがみかしらぁ?自分が出来ないからって、そういうこと言うのやめてもらえなぁい?」
真紅「何ですって!?私はあなたみたいに卑しい真似は…」
蒼星石「お、落ち着きなよ、真紅。…水銀燈、これは僕らがあんまり口をはさむ問題じゃないかも知れないけど…」
水銀燈「そうね…だから何も言わないでくれるぅ?」
聞く耳持たずといった感じで、水銀燈は次のお宝を探す。
何か言おうとする真紅を制止させ、3人目の挑戦者が現れた。


薔薇水晶「銀ちゃん…こういうの、やっぱりダメだよ…」
水銀燈「なぁに?あなたまで、私に忠告する気ぃ?」
弱々しげな薔薇水晶の言葉に、水銀燈は面倒くさそうにそう問いかける。
それに対し、彼女はこう答えた。
薔薇水晶「うん…こういうの、よくない…」
水銀燈「いいじゃなぁい。私とひと時の夢を楽しめるんだから。別に文句言われる筋合いは無いわぁ。…ま、流石に体までは許さないけどぉ…」
薔薇水晶「だめ。相手の人は本気なんだよ?それを弄ぶような事して…」
水銀燈「それが恋愛ってもんよぉ…。元々、騙し騙されの世界なんだから、仕方のない事よぉ…。」
薔薇水晶「それでも、あんな酷い…わざわざ高いものを買わせるためだけに電話して…。」
そう言いながら、薔薇水晶の目つきがだんだんと鋭くなる。
薔薇水晶「…本気で接してくれる人には、誠意を持って接しないと…銀ちゃんだって、ホントに好きな人が出来た時、そんなことされたら嫌でしょう…?」
水銀燈「わ、私はそんなヘマしないわぁ…」
薔薇水晶「とにかく、だめ。今すぐさっきの電話の…取り消しなさい…。」
水銀燈「い、嫌よぉ…何でせっかく捕まえた獲物を…」
そこまで言った段階で、薔薇水晶が顔を近づけてこう言った。
薔薇水晶「…銀ちゃん、そんなことばっかり言ってると、今に酷い目にあうよ…?さ、早く…!」
その迫力に負けたのか、しぶしぶと電話をかけ直す水銀燈。
普段は物静かな薔薇水晶がここまでやるとは…と、皆一様に驚きを隠せなかったという。


電話を終えると、水銀燈は酷く落胆した様子で頭を抱えだした。
そんな彼女に、薔薇水晶が続けてこう言った。
薔薇水晶「あと…今日ので確信が持てたけど、あの高い車…あれも買って貰ったやつでしょう?」
水銀燈「ランボルギーニ!?あれはダメよ!!私の大切な…」
薔薇水晶「…姉さん…今すぐ購入者リストと、支払った人の名前調べて…多分すぐ見つかるはず…。で、見つかったらその人の家まで運んでもらえる…?」
雪華綺晶「おっけー。」
水銀燈「いやぁぁぁぁぁぁ!!お願い!!あれだけは!!あれだけは!!!」
額が額だけに、もう身の降りなど構っていられない…!
そんな様子で、水銀燈は後輩であるはずの…そして今まで『格下』に見ていたはずの薔薇水晶に必死に頼み込む。
しかし、そんな説得もむなしく、車は水銀燈の元を去ってしまった。

…夕日を背景に背負い、ヘリで輸送されるランボルギーニ…。
それは、「彼女の天下の終わり」を象徴するもののようであった。


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