ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 護衛役

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「頼むぞピチカート」

10畳はあろうか和式の居間に
二人の男が座っていた。
片方は初老の男性。
柔らかな物腰に一見優しい祖父に見えるが、
その目には獰猛な光が宿っている。
向かいに座るは、緑色の髪をした青年。
美青年、と形容してもよい容姿をしている。
背筋をシャン、と伸ばし、視線は彼を見つめるまま。
老人は青年の表情をちらりと伺うと、
投げ捨てるように言った。

「あいつはこの結菱組の次期組長だ。
……何を血迷ったか、教師という職に就いてしまっているがな」

ふん、とその白いYシャツの胸ポケットから
荒々しく煙草をだすとそれをくわえる。
すると、どこから現れたのか、漆黒の長髪を揺らしながら、
眼鏡の女性が姿を表した。
「………私からもお願いするわ」
煙草に火を付けたあとに女性が呟く。
「私、心配でならないわ。
だってあの子がいつ、自身を
バラしてしまうのかわからないじゃない。ドジっ子だから。
…でもそれが萌えぇー!!」
先程までのりりしさはどこへやら。
何もない空間でひたすら首を振り続ける。
みつ……。と老人が戒めるが女性は動きを止めない。
ため息を付きながら彼は再び青年を見た。
「組長、お任せください。
お嬢は必ず俺がお守りいたします」
青年がテノール声で静かに、はっきりと言った。
うむ、と頷くと、老人は改めて直り、こう宣言した。
「結菱組2代、結菱一葉勅命。
本日より、補佐ピチカートを次期組長金糸雀の護衛へ任命する」

青年はただ深々と頭を下げた。

「あ、あれピチカートさんじゃない?」
「本当だ!はぁ、いつ見てもかっこいい……」

有栖学園事務室へ向かう長身の男性。
事務室の扉を開くと同僚達がそこにいた。
「お帰り」
ホーリエがまず彼を迎える。
真紅と同じ髪の色をしているが、違うのは長さ。
「金糸雀先生、またやらかしたん?」
スィドリームがその特徴ある口調でにやりと呟く。
それを一睨みすると、彼女は「うっ」と腰を引いた。
「失敗は誰にもあるだろうが」
「だ、けど…」
押し黙ったスィドリームを継いで、机から声がかけられた。
「……頭が痛いな。
ピチカート、薬品もそんなに安いものじゃないんだよ」
レンピカが電卓から顔をあげる。
主人の二人が瓜二つなら、やはりスィドリームとレンピカも瓜二つである。
互いに焦茶の髪をしていて、オッドアイ。
「それは俺も重々承知だよ」
ピチカートは呟くと自分の席についた。
「………って、ベリーベル、なんでここにいるの」
椅子を引いたところで、そこに押しこまっていた彼女に気付く。
「ピチカート?」
「そーだよ、早く出てきな」
ぴょこん、と姿を現したのは雛苺の精霊。
「うぅ、アタシやっぱ事務員なんて無理だよぉ」
泣きべそをかきながらベリーベルはピチカートにすがり付く。
「そんな弱気吐いちゃだめよベリーベル。
雛苺先生の人工精霊でしょう?」
ホーリエがやんわりと嗜めた。
「まぁ、ベリーベルは筋金入りの人見知りやけぇな。」
「人にも苦手なもんとかあるし、気にすることないと思う」
そう、例えば……とピチカートは
自分の引き出しに眠る『モノ』に想いを馳せる。
「……アレの使い方とかね」
誰にも聞こえないくらいの小声で彼は呟いた。

「お嬢」
帰り際、ピチカートは自身の主人へ出会った。
足を止め膝を付く。
「……ピチカート、ここは学校かしら」
対する彼女――金糸雀は苦笑しながら言う。
生まれてこの方、ピチカートは次期組長である彼女をずっと守ってきた。
守る力、それは時には人を殺める力へ変わる。
だが、金糸雀のためならどれだけ汚れても厭わない。
ピチカートは強靱な意志で組まれていた。
「俺は貴方に忠誠を誓っていますから」
精霊として仕える自分に場所は必要ない。
「……せめて膝つくのはやめろかしら」
彼女はため息をついた。
普段からドジをしまくる金糸雀。
それに似たのか、ピチカート自身も
どこか抜けたところがあったりもする。

だが、二人が『仮面』を脱いだとき、その癖は遥か遠くへ消えていく。

一瞬、それを脱いだ時の瞳をピチカートに向けて、
「帰るかしら」
一言。
「はい」
すくっ、と立ち上がるとピチカートは先に歩きだした金糸雀の後を追った。

真実の姿をみていたのは、二人を照らしていた夕日だけ。