ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 私も教師なのですよ

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ラ「悠久の時の流れから見ればほんの些細な時間ですが、無駄にする訳にも行きません。早速授業を始めましょうか」
そう言って教卓に置いた教科書を開くラプラス。生徒達もそれに合わせて教科書を開く。
ラプラス・・・有栖学園の教頭である。主な仕事は馬鹿(校長)を追いかける事・・・では無く、
教育委員会や職員会議に提出する書類の作成や、保護者や学校外の企業・団体との折衝(例えば宿泊型の校外活動など)、
他の教員たちへの指導や助言など、かなり多岐に渡る。
更には、校長があまりにも仕事をしないため、校長の仕事も兼務する事が有る。
彼が居なければ、有栖学園は教師の所為で学校運営が立ち行かなくなるという、大変不名誉な業績を残していただろう。

そんな多忙な教頭も、実は授業を受け持っていたりする。科目は「倫理」という実に彼らしい教科であった。
週1時間のみという事と、政経と倫理は選択授業で大抵は雪華綺晶の政経を選択するため、
教頭でもそれほど負担にならずに授業を行えるのだ。

ラ「では、本日は教科書32ページ『自己への問い』を進めましょう。I君、読んでもらえませんか?」
指名されたIは席を立ち、教科書を朗読する。
『自分とは何なのか?自分が自分であるという事への不安、アイデンティティ、社会の一員としての自分』といった
如何にもという内容であった。

ラ「自分とは一体何なのであろうか?どこから生まれ、そしてどこへ行くのか?それを理路整然と述べる事は
   大変難しい・・・。現にこの私も君達に私がどういった存在なのかを明確に述べる術を持っていません。
   君達の中には考えた事も無い人も居ると思います。そして、仮に述べる事ができたとして、それは果たして
   自分が思っている自分と、周りの人たちが思っている自分と果たして同じでしょうか?」
例えば・・・、そう言ってラプラスはテープレコーダーを取り出す。
ラ「Ⅰ君、君には申し訳ないが、先程の朗読を録音させていただきました。では、これを再生してみましょう」
再生ボタンを押す。レコーダーから流れてきたのはⅠの本を読む声だ。
ラ「さて、Ⅰ君。今流れた声は、果たして君の声だったでしょうか?」
I「はい」
ラ「・・・良く耳にする『自分の声』でしたか?」
Ⅰ「・・・いえ、少し違います」
ラ「なるほど・・・、もう座って良いですよ」
Ⅰが座るのを確認して、話を続ける。
ラ「今、Ⅰ君はこのテープレコーダーから流れた声を少し違うと答えました。君達はどう思いましたか?」
教室を見渡す。10人ほど居る教室で、生徒達は互いの顔を見合わせた。

ラ「N君、君はどう思いましたか?」
N「え~っと、普段と同じだったかと・・・」
ラ「S君はどうですか?」
S「同じだと思うんですけど」
ラ「なるほど・・・君達は大変良い耳を持っているようだ。先程I君は自分の声とは違うと言いました。
   しかし、周りに居た君達は普段の声と変わらないと答えました。これが、先程言った差です」
ラプラスは黒板に図を描き始める。
ラ「人は誰しも、自分自身が思う自分と、他者が思う自分とでは異なっているものです。先程の声の様に
   同じ自分の声でも録音したものを聞けば違和感を覚えるのと同様にね」

ラ「『自分とはこういう者である』と思っていても、他者は必ずしもそうだとは思わない。違う言い方を
   するならば、一人一人の中にそれぞれ違う自分が居るということ・・・。恐らく、皆さんから見た私は
   私自身が思う私とはまた違った存在なのでしょう。また、君達がこうでありたいと思う自分と現実の自分と
   違う場合も有るでしょう。では、一体どれが本物なのか?」

ラ「全ては虚であり実である。何が本物で何が偽物か・・・それは何人たりとも決める事はできない。
   まるで真夏の夜に見る夢物語の様に、その実態は酷く曖昧なものです。ですが、大切な事はそういった真贋
   では無く、様々な自己を統一する核を見つけること。そしてこの核の事をエリクソンはアイデンティティと
   名づけました。アイデンティティを確立する・・・すなわち『自分は何ものであるか、自分はどこにどう立ち、
   これからどういう役割と目標に向かって歩いていこうとするのか』を掴む事だと言えましょう」
黒板にアイデンティティの文字とその確立について記入する。
ラ「アイデンティティの確立について、イギリスの精神分析学者レインは、「補完性」という言葉で、
   他者との関係の上に立ったアイデンティティを説明しています。彼は、『女性は、子供がなくては母親になれない。
   彼女は、自分に母親のアイデンティティを与えるためには、子供を必要にする。…<アイデンティティ>にはすべて、
   他者が必要である。誰か他者との関係において、また、関係を通して、自己というアイデンティティーは現実化されるの
   である』といっています。しかし、このままでは自分が自分であるという証明を自分以外の存在が不可欠となり、
   それが自分は何者であるか?という問いに対する不安の最大の原因なのかもしれません・・・」
この他にも、精神分析学者ラカンが提唱した鏡像段階についても説明する。要約すると、結局人間は
他者を鏡として自己を形成していく。自分の理想も欲望も他者を鏡として作り出されるというのだ。

ラ「学生の時期は何かと自分を見つめなおす良い機会です。家族や友人と大いに語らい、自分とは一体何なのか?
   それを考えてみてはいかがでしょうか」
キーンコーン、カーンコーン・・・
ラプラスの言葉が終わると同時にチャイムが鳴る。絶対に時間きっかりに終わるのが他の授業には無い特徴である。
ラ「では、これで授業を終わりましょう」


昼休み、職員室において
ロ「やっほー、今日も可愛いねえ。良かったら、今日でー・・・」
ジャキッ・・・
雪「・・・イッペン死ンデミル?」
ロ「・・・そう言えば、今日は教育委員会の人と会合だったなぁ。すっかり忘れてたよ、ははは・・・それじゃ!」
窓から颯爽と外へと飛び出すローゼン。ここ・・・2階なんだけど・・・・・、と見つめる薔薇水晶。
雪「逃すかっ!」
タン、タンタン・・・!!
逃げるローゼンに対して、窓から発砲する雪華綺晶。

ラ(・・・・・・あの馬鹿校長が、私が思うとおりの人間になってくれれば・・・少しは楽になるのですが。
   ・・・・・・いつかは他の教員達も含めて、教師とはどう在るべきかを授業しなければなりませんね)
そんなささやかな野望を胸に、彼はその日のデスクワークへと取り掛かった。