ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

白き者の憂鬱

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お題 『雪華綺晶先生の保健体育の授業』


雪華綺晶「ごめん…また見つからなかった…。どうしよう…これで3日連続…」
薔薇水晶「ううん…気にしないで…。もう…銀ちゃんのバカ…!」
ある日の朝…パソコン画面を見ながら、ため息交じりにそう呟く2人。
その画面には、同じ教師である水銀燈の住むマンションの航空写真が映っていた。
…実は今まで語られてはいなかったが、水銀燈の対雪華綺晶・薔薇水晶の逃亡成功率は53.4%と意外に高い。
もっとも、2人が動ける時間は朝のわずかな時間と昼休みの時だけなので、それから考えれば上出来だと言えるだろう。
しかし、それでも「学校に来るのは当たり前のこと」と考える薔薇水晶にとっては、あまり喜べる数字ではないらしい。
「はぁ…」ともう一度大きくため息をつくと、彼女は姉に対しこんな質問を投げかけた。
薔薇水晶「今日…何時間目が空いてる…?授業…代わりに進めてあげて欲しいの…」
その質問に、雪華綺晶は「6時間目ならいいよ…。」と快諾し、急いで1時間目の授業の用意をし始めた。


雪華綺晶「…というわけで、今日はお姉さまが休みだから私が代わりに授業をします…。男子…うるさい…!えーと…前回はどこまでいったの…?」
女子A「えっと…前回は『健康被害と環境対策』までだから、次はP102の『働くことと健康』だと思います。」
その言葉に、保健の教科書を開き、雪華綺晶は音読を始める。
それにしても、なんというテーマなんだろう…。
お姉さま…つまり水銀燈が、実は妹をよく気遣ってくれるいい人だというのは十二分に分かったのは嬉しいが、それでもこのテーマだけは本人に読んで欲しかった。
…そういえば、何でお姉さまは学校に来たがらないんだろう…。出来れば、自分としても学校に来て欲しい…。彼女が学校に来なかった日の、妹の寂しそうな顔を見るのは本当に嫌な気分になるから…。
愛する妹の役に立てなかった悔しさ…それと、自分の無力さを痛感しなければいけないから…。
そんなことを考えながら教科書を読み進めていると、不意にこんな一文が雪華綺晶の目に飛び込んできた。
『…仕事上の責任の重さや職場の人間関係などが原因で、精神的ストレスや疲労を強く感じながら働いている人が少なくありません。 その結果、職場に対応できずに会社にいけなくなる、ノイローゼや情緒不安定になる、アルコール依存症になる、心身症になるといった人も増えています。』


女子A「…ど、どうしたんですか?先生…」
急に音読を止めてしまう雪華綺晶を前に、生徒たちは口々に心配そうな声をあげた。
しかし、その声は彼女の耳には届いていないようだった。
彼女の頭の中に、次々と色々な考えが浮かぶ。
いつも「学校に行きたくない」と言っていたのは、このため…?
昔、妹が言っていた…。お姉さまは、本当はガラスのようにもろく…弱い人なのだと…。
それに、お姉さまはお酒もよく飲むし…すぐ怒るし…何より、昔本当に…
何か解決策は無いかと、雪華綺晶は一心不乱に1人教科書を黙読し始める。
しかし、その先に書いてあった言葉はさらに非情な言葉…
『…中には、過労死にいたったり自殺をしてしまう人もいて、大きな問題になっています…』
という言葉だった。
雪華綺晶「お…お姉さまが死んじゃう…!?」
その言葉に思わずそう呟くと、彼女は教科書を持って妹が授業をしている教室へと走っていった。


薔薇水晶「…で、手遅れになる前に、もう一度銀ちゃんを探そう…そう言うこと…?」
一通り姉の話を聞くと、薔薇水晶は呆れたようにそう言った。
一方、雪華綺晶の方はというとコクコクと必死に妹の言葉にうなずいている。
その様子に、「昔はあんなに仲が悪かったのに…」と思わずクスッと笑うと、彼女はそんな姉の頭を撫でながらこう言った。
薔薇水晶「大丈夫…。銀ちゃんが学校に行きたくないって言ってるのは、一日中遊んでいたいだけなんだから…。」
雪華綺晶「でも…」
薔薇水晶「よしよし…。もう大丈夫だから…明日はきっと学校に来てくれるよ…。」
もはやどちらが姉か分からない…そんな様子で2人を見る生徒たち。
一方、姉である雪華綺晶を抱きしめる薔薇水晶の頭の中には、ある秘めた思いがあった。
それは、地中に流れるマグマよりも熱く、前に立ちふさがるもの全てを砕く竜巻のようなもの…
人はそれを、『怒り』と呼んだ。


それから数時間後…そんな事など何も知らず、水銀燈ほろ酔い気分で自宅へ帰宅した。
彼女にとって、今日は本当に幸せな日だった。
誰にも邪魔される事なく、ショッピング、エステ、食事など好きな事だけを満喫できたからだ。
こんな毎日が送れたら、どんなにいい事か…
そういえば、旅行にも最近…
水銀燈「…たまには、のんびりバカンスなんてのもいいわねぇ…」
そんな事を呟きながら、幸せな気持ちのまま玄関のドアを開ける彼女。
しかし、そんな彼女を待っていたのは、玄関で腕を組み、仁王立ちする薔薇水晶その人であった。
あまりの事に戸惑いながらも、水銀燈はその真意を彼女に問いただした。
水銀燈「な…何してるの!?人の家に勝手に上がりこんで…」
薔薇水晶「座りなさい…」
水銀燈「は…?」
薔薇水晶「座りなさい…!」
水銀燈「…バカじゃない?こんな大理石の上に座ったら、足腰冷えちゃうでしょう…?ほら、私はもう寝なきゃいけないの。さっさとそこを…」
そう言って、彼女は薔薇水晶の肩を押そうとした。しかしその手を掴むと、薔薇水晶はそれをひねり、さっきより厳しい口調でこう言った。
薔薇水晶「座りなさい…!早く…!!」
これには、流石の水銀燈も彼女に従うほかなかった。
今まで薔薇水晶が怒ったときは、せいぜい頬を膨らませて小言を言う程度だった。
だからこそ、今までは彼女を『口うるさいところもあるが、仲のよい後輩』ぐらいに考えていた…。でも、最近…特にランボルギーニを奪われた頃から何かが…
薔薇水晶「聞いてるの…!?姉さんや生徒たちがどんな思いで…」
午前2時…草木も眠るはずの丑三つ時に、薔薇水晶の声はいつまでも家の玄関に響き渡っていた。
それはまるで、厳格な父がその娘を叱る時のように…
薔薇水晶「…授業の時、銀ちゃんがいないって分かると、みんな…凄い残念そうな声出すんだよ?それなのに…」
薔薇水晶がそう言いながら後ろを向いたその隙に、水銀燈は足を崩したり、眠そうにあくびをする。
「だから何よ…うるさいわね…」などと考えながら…。
しかし…これが生涯続く、長い長いお説教のほんの一部に過ぎないことを、この時…彼女は知るよしもなかったのであった。


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