ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 昔の水銀燈と薔薇水晶  その2

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水銀燈「…というわけでぇ、今日からここの副担任として新しい教師の方が来られました。…えーと、名前は?」
薔薇水晶「あ…薔薇水晶…」
水銀燈「…だそうよぉ。まあ、仲良くしてあげてねぇ…。」
初めて薔薇水晶が生徒と対面した時、放った言葉はこの5文字だけだった。
本当はもっと色んな事を喋りたかったのだが、元々あまり感情を出すほうではなかったので、そのタイミングを逃してしまったようだ。
初めてのことに戸惑いながらも、「まあ、これからいっぱい接する機会あるんだし…」と、薔薇水晶はその時、ある程度気楽に考えていた。


そして、チャンスはすぐに訪れた。
朝のホームルームが終わった後、緊張でのどが渇いたので自販機を探していると、1人の生徒が話しかけてきた。
生徒A「あ…あの、薔薇水晶先生…ですよね?何してるんですか…?」
薔薇水晶「…のど。(注:のどが渇いたんだけど…)」
生徒A「…は?」
薔薇水晶「水…。(注:水とか、どこかに売ってないかしら?)」
生徒A「え…!?もしかして買って来いって事ですか!?」
あまり喋らないので、もしかして怒っているのでは勘違いする生徒。
大急ぎでミネラルウォーターを買ってくると、薔薇水晶に手渡した。
生徒A「こ…これでいいですか!?まあ、パシリは慣れてますから、いつでも…」
薔薇水晶「違う…。(注:違うの…そんな意味で言ったんじゃなくて…)」
生徒A「こ、これじゃダメですか!?す、すいません!!」
そういって走り去る生徒。
…こうして、誤解も解けぬまま、薔薇水晶と生徒との始めての交流は終わりを告げた。


生徒B「なぁ…あの新任の先生、怖くね!?」
生徒C「ああ…初日から、生徒をパシリに使ってたぜ…!もしかしたら、水銀燈先生よりおっかないかも…」
瞬く間に、生徒の間に広がる薔薇水晶のイメージ…
うわさはどんどん大きくなり、いつしか薔薇水晶の周りには誰も寄り付かなくなっていた。
本当は、生徒たちと一緒に学食でも…と思っていた薔薇水晶だったが、1人寂しく屋上でご飯を食べる羽目になってしまった。
購買部で買ってきたパンを、ただ無言で食べる薔薇水晶。
姉の行方は依然として分からないし、せっかく入った学校でも生徒たちから避けられる存在になってしまった…。
途中から、涙で味もよく分からなくなってきた。
「やっぱり、私には教師なんて向いてないのかも…」と考えていた時、不意に後ろから声が聞こえてきた。
「あらぁ?あなたも1人なのぉ?」と。


薔薇水晶「水銀燈…先生?」
水銀燈「なぁに?泣いてるの?…まあ、あなたの事はこの学園でちょっとした噂になってるから無理も、無いけどぉ…」
薔薇水晶「噂…?」
水銀燈「そうよぉ…。いつも不機嫌で、人を道具としか思わない冷血女とかねぇ…♪」
そんなことを噂されていたなんて…とショックを受ける薔薇水晶。水銀燈は続ける。
水銀燈「…もしかして、学園ドラマとかの世界を夢見て、教師を選んだのぉ?だったら、1つだけアドバイスしてあげるわぁ。生徒に期待なんかしないほうがいいの。そうすれば傷つかずにすむからねぇ…。」
薔薇水晶「それって…どういう意味ですか…?」
水銀燈「そのままの意味よ。理想と現実は違うって事。ただ機械的にこなせば、1日なんてあっという間に過ぎるわよぉ…?あとは…」
薔薇水晶「…でも、私はもっと生徒たちと…」
水銀燈「…これだけ忠告してやってるのに、ほぉんとあなたってお馬鹿さん…。今にどうなっても知らないわよぉ…。」
でも…と反論しようとする薔薇水晶。しかし、それ以上言葉が出てこない。
そんな姿を見て、水銀燈はため息混じりにこういった。
水銀燈「…今日だけ特別よぉ…?」


そして、その日最後のホームルームの時間、水銀燈はこんなことを言い出した。
水銀燈「あー…何か、薔薇水晶先生がみんなに言いたいことがあるってぇ。」
何を話すのだろう…と思わず身構える生徒たち。
薔薇水晶「…あ、あの…えっと…」
水銀燈「あー…まどろっこしいわねぇ…!はい、好きな食べ物は!?」
薔薇水晶「えっ!?デ、デザート…とか…。」
水銀燈「ジャンルが広すぎるのよぉ…!具体的には!? 」
薔薇水晶「…ケ、ケーキ…とか?」
水銀燈「休みの時のすごし方は!?」
薔薇水晶「えっと…掃除したり、映画見たり…」
水銀燈「…だそうよぉ。他に何か言いたいことあるぅ?」
薔薇水晶「あ…えっと…。こんな私ですけど…よろしく、お願いします…。」
そう言うと、薔薇水晶は深く頭を下げた。
一瞬の間ののち、生徒たちの間から、一斉に拍手がわき起こる。
生徒A「こっちこそ、よろしくお願いします!!」
生徒B「先生ー!映画って、どんなジャンルのー!?」
その声に、薔薇水晶は思わず涙ぐんでしまった。


薔薇水晶「水銀燈先生…!今日は、本当にありがとうございます…!」
放課後、急いで帰ろうとする水銀燈を呼び止め、丁寧にお礼をいう薔薇水晶。
そんな姿を見て、水銀燈はそっけなくこう言った。
水銀燈「…別に。あのまま、屋上から飛び降りでもされちゃかなわないから、手を貸してあげただけよ。それに、あなたも先生なんだから、いちいち『先生』なんて呼ばなくていいわぁ…。」
薔薇水晶「…水銀燈さんて、優しいんですね…。」
水銀燈「…別に、褒めたところで何もでないわよ。むしろ、こっちが何か貰いたいぐらいだわぁ…。」
薔薇水晶「あ、じゃあ今日の朝話題になってましたけど、夜みんなで飲みにいくらしいんです…。だから、お礼って訳じゃないですけど…その時のお代は私が出しますから…是非一緒に…。」
水銀燈「…結構よ。私は1人の方が気楽なの…。お友達ごっこがしたいのなら、私抜きでやってくれるぅ?」
そう言うと、水銀燈はその場を立ち去った。

…この時のことを思い出すたびに、水銀燈はいつもこう言っている。
「あの時、薔薇水晶を助けたりしなければ、私の人生を狂わされることはなかったのに…」と。
それは時に自嘲気味に、時にはにかんだ様子で…。
そして、今朝も水銀燈の携帯電話に1本の電話が入る。
それを手に取ると、水銀燈はぶっきらぼうにこう言った。
水銀燈「そんなに鳴らさなくても、起きてるわよぉ…。うるさいわねぇ…。」
薔薇水晶「ごめんね…。学校、行く時間だよ…。」
あれから2年…いつもと変わらない朝が、今日もまた始まろうとしていた。