ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

人は、人生という道を歩んでいる

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匿名ユーザー

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 人は、人生と言う道を歩いている。
 私たちは、道を歩き続けている。
 立ち止まること無く、休む事無く歩いている。
 だけど、私たち全てがずっと道を歩いて行ける訳じゃない。
 立ち止まる人も居る。
 私たちは、立ち止まる人を何度も見てきた。
 だけど、私たちは歩いている。
 それに、立ち止まった人が居なくなる訳ではない。
 後ろを振り向けば、立ち止まった人が手を振って私たちを見ている。
 私、水銀燈も道を歩き立ち止まる人を何度見てきた。
 それは、自分の親だったり。親友だったり。生徒だったり。
 恩師だったり。彼氏だったり。知り合いだったりする。
 まだ、若い頃。美しかった頃。
 私は、生徒達を笑いあいながら過ごした。
 色んな事があった。生徒達の喧嘩の仲裁に不良たちと戦った事もあった。
 色んな事があった。修学旅行で女子生徒たちを成り行きで助けた事に、自暴自棄になっていた生徒に未来を教えた事もあった。
 本当にいろんなことがあった。
 笑いあい。助け合い。時に泣き。時に喜び。時に悲しんだ。
 若さに任せて無茶な事もした。

 歳をとり、美しくはなくなったが、心は美しくあろうと思っていた頃。
 私は、相変わらず生徒達と笑い悲しみ楽しみながら過ごしていた。
 卒業生が、私に会いに来た。変わりませんね。卒業生はそう言った。
 新しい教員が、学園にやって来た。私は、新しい教員に色々教えた。
 何十回と見、やって来た卒業式に、涙する私が居た。
 卒業生が、私に会いに来た。結婚しましたと、卒業生ははにかんだ笑みを浮かべ私に告げ
 祝辞を頼みたいと言ってくれた。私は、了承した。
 私は、年老いても私のままだった。まぁ、多少丸くは、なったけど。
 ラプラス教頭が、校長になり私が教頭をする事になった。
 ローゼン校長は、道を立ち止まってしまった。馬鹿な事ばかりする人だったが、居なければ居ないで寂しいものがある。
 気がつけば、あの頃の同僚達は殆ど居なかった。
 立ち止まった同僚も居れば、学園を去り幸せな家庭を築いている同僚も居た。
 ふと、後ろを振り向けば立ち止まった校長や同僚達が、笑顔で手を振っていた。
 まだ、私は歩いている。まだ、立ち止まらない。
 私の後ろで手を振っているライバルであった同僚に、まだまだ私は歩くわよ。と、目で言うと
 その同僚は、苦笑しながら手を振ってくれた。

 さらに歳をとり、より美しくはなくなったが、相変わらず心は美しくあろうと思っていた頃。
 ラプラス教頭は、立ち止まり。私が、校長になった。
 新しく教頭になったのは、私の同僚。酷くムズ痒い感覚に襲われた。照れくさいのだろう。
 校長としての仕事は、つまらないものだった。今なら、遠い昔に立ち止まったローゼンの思いが分かった。
 つまり、私もローゼンに習って突拍子の無い企画を立ち上げたりして遊んだ。
 まぁ最初の頃は、教師達も生徒達も何を言っているのかと思っていたのだが、景品つきだとか色々やっているうちに
 それが、日常と化してしまった。教頭になった同僚も懐かしそうな顔をしながら苦笑して私を注意したが
 立ち止まる前のラプラスが、ローゼンにやっていた様な過激なモノではなく、やんわりとしたモノだった。
 企画を立ち上げていた時、卒業生が私を訪ねてきた。
 卒業生は、企画中の学園内の雰囲気を見て。あぁ、やっぱり有栖学園は、こうでなきゃ。そう私に言った。
 時間は、刹那の如く過ぎてゆく。
 春が来て。夏が来て。秋が来て。冬が来て。
 また、春が来る。
 何十回と見て、行ってきた卒業式。やっぱり涙が出た。
 ふう、そろそろ疲れたなぁ。立ち止まってもいいよね。
 そして、私は立ち止まる。立ち止まる瞬間に、呼びかける声が聞こえたが……よく聞き取れなかった。
 有栖学園に教師として、赴任し教頭になり校長になった。
 今思えば、もっと時間を大切にするべきだったかと思う。

 ふと、後ろから肩に手をかけられる。
 後ろを振り向けば、先に立ち止まったライバルの同僚だった。
「紅茶でもどう?」
 ライバルである同僚は、笑顔を浮かべながら私にそう言った。
 結構歩いてきたはずなんだけど……なぁんで、アナタがいるのよぅ?
「あら……私の立ち止まった場所とアナタの立ち止まった場所は、ほんの数センチよ?」
 同僚は、そう言って笑った。そんな同僚を見て私も笑う。
「それより、ほら……手振ってあげなさい。アナタは立ち止まったけど、アナタが大切にしていた者達はまだ歩いてるのだわ」
 そういわれ、私はまた前を向く。
 私のほうを見て涙を流しながら歩いていく生徒達。私が色々教えたあの教員たち。
 私は、手を振って大声で言う。
「さっさと前向いて歩きなさい! 石に躓いて転ぶわよぉー!」
 そして、私はまた手を振った。
「さ、紅茶にしましょう?」
「そうねぇ、私アールグレイがいいわぁ」
「ダージリンしかないのだわ」
「じゃぁそれでいいわぁ」
 私たちは歩いている。そして立ち止まる。
 立ち止まっても、歩いている人はまだ居る。
 それは、親友であったり同僚であったり、教え子であったり子どもであったり赤の他人だったり。
 立ち止まった人は、居なくなった訳ではない。歩いている人の後ろで、手を振り応援している。

「あ、水銀燈も来たですか。丁度スコーンを焼いたです。食べやがれですぅ」
「雛は、うにゅーをもってきたのー!」
「やぁ、水銀燈。結構歩いてきたようだね?」
「………銀ちゃん………どうだった?」
「…………スコーンが美味しい」
「やぁっとー水銀燈がきたかしらー! お茶会するかしらー!」
「さぁ、お茶会の準備をしましょう。あぁジュン。紅茶を淹れて頂戴」
「自分で淹れてくださいよ。先生。巴もそう思わないか?」
「あら……ジュン君の方が真紅先生より淹れるの上手じゃない。ねぇ? めぐ」
「そうそう。真紅先生たら、紅茶を淹れようとしてお湯零すのがしょっちゅう」
「貴方達!! 私を愚弄するの!?」
「「「真実です」」」
「ぐっ!?」
「あはははは、皆かわらないわねぇ」
 私は、久しぶりに皆を見て笑った。

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