ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki Sと翠星石の車輪の唄

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   ある日の昼休み、
   翠星石が校庭の木陰で弁当を食べていると2人の生徒がやってきた。
  「翠星石先生、一緒に食べてもいいですか?」
  「お願いしま~す」
 翠「しょうがねえ奴らですねぇ。いいですよ」
   相変わらず口は悪いが、態度は柔らかなものだった。
   生徒が座るところをすぐに作った。
  「翠星石先生のお弁当おいしそうー。おかずもらってもいい?」
 翠「じゃんじゃんもらうですぅ。翠星石は気にしねぇです」
  「じゃあ遠慮なく。…んーやっぱりおいしい♪」
 翠「当たり前ですぅ。この翠星石の料理がまずい訳ねーです」
   そんな感じでご飯を食べていく。
   食べ終わった頃、生徒の1人があることを翠星石に尋ねた。
  「あそこにあるのって翠星石先生の自転車ですよね?」
   駐輪場を指差してそういう生徒。
 翠「そうですよ。それがどうかしたですか?」
  「なんかずいぶんと年季が入ってるなぁーと思って。いつ買ったんですか?」
 翠「ああ、あれは高校生の時にあいつに……」
   はっとする翠星石。しかし、もう遅かった。
  「あいつって誰ですか!?恋人ですか!?」
  「思い出の品ってやつですか?」
   2人の生徒はすっかり食いついてしまった。
 翠「そ、そんなんじゃねーです。もう!話してやるから落ち着けです!」
   生徒を静める翠星石。そして、話し出した。
 翠「あいつのことをSとするです。あれは高校3年の春のことです……」
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                ・
                ・

 翠「はぁ~!?引っ越すぅ!?何言ってやがるですか突然!!」
 S「いや、ホントなんだ。親の都合で…」
   Sの突然の報告に驚きを隠せない翠星石。まさに蒼天の霹靂。
   愕然としている翠星石を申し訳なさそうに見ながらSは続ける。
 S「引っ越すのは1週間後。あの駅から朝一で電車で行くから…」
   あの駅とは翠星石の家とSの家から比較的近い小高い丘の上にある駅だ。
   2人はいつもその駅から一緒に遊びに行っていた。
   あまりの急展開についていけない翠星石だったが、
   かろうじて1つの提案をした。
 翠「そ、その日の朝、翠星石が見送ってやるです…
   だから、家まで迎えにきやがれです…」
   非常に弱々しく言う翠星石。その声にいつもの覇気はなかった。
   Sは翠星石の気持ちを察し、ふふっと笑いながら返事をする。
 S「わかったよ。じゃあその日、家の外で待ってて。迎えに行くから。
   じゃあ、また明日」
   そう言ってSは自分の自転車に乗って帰って行った。
   翠星石はその姿をただ呆然と見るしかなかった。
   それからの1週間、翠星石は何をしても気が入らなかった。
   食事も喉を通らなかった。Sのことばかり考えていた。
 翠「あいつが引っ越すなんて…まだ信じられねぇです…」
   翠星石とSは小さい頃からの幼馴染で常に一緒にいた。
   いなくなった時の事など考えてもみなかった。
   そんな翠星石の思いとは裏腹にSは明るく過ごしていた。
 翠「あいつは翠星石と離れても寂しくないんですかねぇ…」
   ベッドの上でSとの写真を見ながら呟く翠星石。
   そして時間は刻々と過ぎていき、ついにその日がやってきた。

 翠「はぁ~昨日も一睡もできなかったですぅ…」
   目を真っ赤にした翠星石が自分の家の前に立っている。
   心なしか頬もやせこけている。
 翠「でも、別れる時までしんみりするのは翠星石らしくねぇです。
   あいつに心配かけないためにも明るくするです」
   これがこの1週間で彼女が出した答えだ。
   しばらく、すると向こうからSがやってきた。
 翠「おせぇーですぅ!何分待たせやがるですか!」
   いつもの調子でSに文句を言う翠星石。
   Sは少し驚いた風だったが、すぐに笑顔になり
 S「ははっ、ゴメンよ。…じゃあ行こうか。後ろに乗って」
 翠「わかったですぅ」
   そう言われSの自転車の後ろに乗る翠星石。
   2人を乗せた自転車は駅に向けて走り出した。
 翠「この自転車大丈夫ですかぁ?何かキィキィいってるですが…」
 S「大丈夫だよ。ボクの愛用なんだから」
 翠「理由になってねぇです!」
   そんな会話をしながら進んでいく。
 翠「静かですねぇ」
 S「まだこんな時間だからね」
   まだ朝も早い。あたりは水を打ったように静まり返っている。
 S「何か世界にボクとキミしかいないみたいだね」
 翠「そうですねぇ…って何いってやがるですか突然!」
 S「ははっ」
   顔を真っ赤にしながらSを見る翠星石。Sの背中はとても大きく見えた。
   そして、だんだんと駅に近づいていく。

   2人を乗せた自転車は長い坂の前にさしかかっていた。
   この坂を登りきった所にSが電車に乗る駅があるのだ。
   坂道に入り立ちこぎをするS。2人乗りでこの坂道はさすがにきついだろう。
   だんだんと頂上に近いてきた。Sの顔には汗が浮かんでいる。
 翠「がんばるです!あとちょっとですよ!」
   後ろから声をかける翠星石。その応援が効いたのかはわからないが
   Sは一気に加速して坂を登りきった。
   そして目の前に開けた光景に2人は圧倒された。
 翠「キレイですぅ…」
 S「はぁ、はぁ…ホントだ…」
   2人の目には美しい朝焼けが映っていた。
 翠「神様と翠星石からおめーに餞別ですぅ」
 S「ありがたくいただくよ」
   そうしてSは駅の駐輪場に自転車を止め、ホームに向かう。
   それについていく翠星石。電車を待つ間、ホームのベンチに座って話す翠星石とS。
 翠「いろんなことがあったですねぇ」
 S「そうだねぇ~…キミが窓ガラスを割った時、ボクが代わりに怒られたりとか、
   修学旅行で迷子になったキミをボクが探しにいったとか、他にも~…」
 翠「だぁ~!!人の恥ずかしい思い出ばかり思い出すんじゃねぇです!!」
 S「ふふっ、しょうがないよ。事実なんだし」
 翠「ぐっ…」
   それを言われては反論できない。黙ってしまった翠星石を見てSはさらに笑う。
   しかし、こうしている時間もあとわずか、電車の時間は刻一刻と迫っていた。

   そして、ついに電車がやってきた。それを見て立ち上がるS。
   その服の袖をつかむ翠星石。目からは涙があふれていた。
 翠(ダメです…いつものように別れるって決めたです…絶対泣かないって…
   でも、涙が…涙が止まらんです…)
   その手をゆっくりとSがほどく。
 翠「ひっ…こ、これで…ひっく…お別れなんで…いやですぅ…」
   顔を涙と鼻水でグシャグシャにしながら翠星石は言う。
   するとSは翠星石に背を向けてこう言った。
 S「そ、そうだ…あの自転車をキミに…預けよう…」
   そう言われSの方を見る翠星石。Sの肩は震えている。
 S「でも…預けるだけだからね…必ず…必ず取りに来るから…いつの日か…必ず」
 翠「…わがったですぅ…約束ずるですぅ…」
 S「よし、約束だよ…」
   そして電車に乗り込むS。すると、翠星石は駅から飛び出し駐輪場に向かった。
   Sを乗せた電車がゆっくりと走り出す。それを見て翠星石も自転車で走り始めた。
   下りになった坂道を思いっきり飛ばしていく翠星石。精一杯電車に並ぼうとするが
   ゆっくりと離されていく。そして、
 翠「約束ですよー!!絶対いつの日か取りに来るですよー!!
   取りに来なかったら許さんですー!!」
   電車のSに見えるように大きく手を振る翠星石。
   そしてSを乗せた電車はすっかり見えなくなった。
   自分の家に帰る翠星石。街には活気がでてきた。しかし、
 翠「世界に翠星石しかいないみてぇですぅ…」
   と小さく呟いた。
 翠「相変わらずキィキィうるさいですぅ。でも…これでいいです…」
   翠星石が乗っている自転車にはSの温もりがあった・・・

 翠「…と、まぁこんな感じですぅ」
  「きゃー何かロマンチックですねー」
  「でも、まだ乗ってるってことはその人はまだ取りに来てないってことですか?」
   生徒の問いにニヤニヤしながら答える翠星石。
 翠「さぁー?それはどうですかねぇ?」
  「えー!?教えてくださいよー」
   キーンコーンカーンコーン
   ここで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
 翠「ほらっ!予鈴のチャイムですよ。さっさと授業に行くですぅ」
  「ケチー!」
   そう言って生徒を追い払う。弁当を片付けながら自転車を見る翠星石。
   そして、微笑む。その笑みは一体何を表しているのか…

   FIN