昼休みの中庭。多くの生徒たちが憩いの場として利用する。
爽やかな陽光と、優しい風が吹き込む人気スポットである。わざわざここで昼飯を食べる生徒も少なくない。
あまりに心地良く、昼寝をしてしまい午後の授業に遅刻する生徒さえいる。
「おい昨日のテレビ見たかよ?」
「あぁあれだろあれ。かなり面白かったよなぁ」
2人の生徒が花壇に腰を下ろして談笑していた。
「おいあれ、翠星石先生じゃね?」
一人の生徒が指差す先には、確かに翠星石がいた。手には弁当を持っていた。
翠星石も昼の陽気に誘われ中庭で昼食をとろうとしていたらしい。
「呼んでみようぜ?おかずもらえるかも」
「いいねぇ。おーい!翠星石先生―!」
翠星石に対して手を振って呼びかける。その声に気付いた翠星石が、生徒のほうを向いた。
「お、気付いた」
「一緒に弁当食いませんかー?」
一直線に生徒たちの方へ歩いてくる。しかしそこには一切の笑顔は無く、むしろ険しい表情をしていた。
「おい、なんか怒ってねぇか?」
「ほ、本当だ…」
大股でズンズンと歩み寄ってきた翠星石は、生徒たちの前に来るなり思い切り二人の頭を叩いた。
中庭に乾いた心地良い音が響いた。
「痛ったー!!」
「な、なにするんですか翠星石先生!?」
翠「なにするんですかじゃねーです!!」
頭を押さえて文句を言う生徒の胸倉を掴み喝する。そのあまりの迫力に、2人とも黙り込んでしまった。
翠「おめーらその醜いケツの下に何があるか見やがれですぅ!!」
翠星石に言われるがまま立ち上がり、自分たちの座っていたところを見る。
そこには、2人の尻によって潰された花があった。無残にも茎から折れていた。
爽やかな陽光と、優しい風が吹き込む人気スポットである。わざわざここで昼飯を食べる生徒も少なくない。
あまりに心地良く、昼寝をしてしまい午後の授業に遅刻する生徒さえいる。
「おい昨日のテレビ見たかよ?」
「あぁあれだろあれ。かなり面白かったよなぁ」
2人の生徒が花壇に腰を下ろして談笑していた。
「おいあれ、翠星石先生じゃね?」
一人の生徒が指差す先には、確かに翠星石がいた。手には弁当を持っていた。
翠星石も昼の陽気に誘われ中庭で昼食をとろうとしていたらしい。
「呼んでみようぜ?おかずもらえるかも」
「いいねぇ。おーい!翠星石先生―!」
翠星石に対して手を振って呼びかける。その声に気付いた翠星石が、生徒のほうを向いた。
「お、気付いた」
「一緒に弁当食いませんかー?」
一直線に生徒たちの方へ歩いてくる。しかしそこには一切の笑顔は無く、むしろ険しい表情をしていた。
「おい、なんか怒ってねぇか?」
「ほ、本当だ…」
大股でズンズンと歩み寄ってきた翠星石は、生徒たちの前に来るなり思い切り二人の頭を叩いた。
中庭に乾いた心地良い音が響いた。
「痛ったー!!」
「な、なにするんですか翠星石先生!?」
翠「なにするんですかじゃねーです!!」
頭を押さえて文句を言う生徒の胸倉を掴み喝する。そのあまりの迫力に、2人とも黙り込んでしまった。
翠「おめーらその醜いケツの下に何があるか見やがれですぅ!!」
翠星石に言われるがまま立ち上がり、自分たちの座っていたところを見る。
そこには、2人の尻によって潰された花があった。無残にも茎から折れていた。
「あ・・・」
翠「あぁ!!か、可哀想ですぅ…」
翠星石はその場にへたり込んだ。そして折れてしまった花を根からそっと取り出した。
その瞳からはポロポロと涙が零れ出していた。
「え!?先生!?」
「お、俺たちが確かに悪かったですけど、たかが花一つでそんな…」
生徒はすっかり動揺してしまった。普段生徒の前では常に強情で強気な翠星石が、これほどまでに涙する姿は見たことが無かった。
胸が締め付けられる思いだった。
翠「花にだって命はあるです…」
すっくと立ち上がり、生徒と向き合った。その瞳は、まだ涙で潤んでいた。
翠「花にだって、命はあるです。人間と同じくらい、大きな、大切な命があるです。
でも、花は人間のように喋ったり、笑ったりできないです。
だから、だから花を咲かせて生きてることを証明するです…。
この子達も、もう少ししたら綺麗な綺麗な花を咲かせるはずです」
持っていた折れた花をギュッと抱き寄せる。
翠「でも、この子は茎から折れてしまったです…。もう、花を咲かせることはできないです…。もう…」
再び翠星石が大粒の涙を流した。その涙が、折れた花の蕾にかかって跳ねる。
「あの、翠星石先生…すいませんでした」
「本当にすいません!」
心の底から謝った。その2人を見て、翠星石の涙はようやく止まった。
翠「翠星石に謝ってどうするですか?」
「え?」
翠「この子に謝らないと意味がねーですぅ!」
二人の前に折れてしまった花を突き出す。
「す、すいませんでした…」
「ごめんなさい…」
花に対して謝る二人。だが、周りにいる生徒の中で2人を笑うものは誰一人としていなかった。
翠「あぁ!!か、可哀想ですぅ…」
翠星石はその場にへたり込んだ。そして折れてしまった花を根からそっと取り出した。
その瞳からはポロポロと涙が零れ出していた。
「え!?先生!?」
「お、俺たちが確かに悪かったですけど、たかが花一つでそんな…」
生徒はすっかり動揺してしまった。普段生徒の前では常に強情で強気な翠星石が、これほどまでに涙する姿は見たことが無かった。
胸が締め付けられる思いだった。
翠「花にだって命はあるです…」
すっくと立ち上がり、生徒と向き合った。その瞳は、まだ涙で潤んでいた。
翠「花にだって、命はあるです。人間と同じくらい、大きな、大切な命があるです。
でも、花は人間のように喋ったり、笑ったりできないです。
だから、だから花を咲かせて生きてることを証明するです…。
この子達も、もう少ししたら綺麗な綺麗な花を咲かせるはずです」
持っていた折れた花をギュッと抱き寄せる。
翠「でも、この子は茎から折れてしまったです…。もう、花を咲かせることはできないです…。もう…」
再び翠星石が大粒の涙を流した。その涙が、折れた花の蕾にかかって跳ねる。
「あの、翠星石先生…すいませんでした」
「本当にすいません!」
心の底から謝った。その2人を見て、翠星石の涙はようやく止まった。
翠「翠星石に謝ってどうするですか?」
「え?」
翠「この子に謝らないと意味がねーですぅ!」
二人の前に折れてしまった花を突き出す。
「す、すいませんでした…」
「ごめんなさい…」
花に対して謝る二人。だが、周りにいる生徒の中で2人を笑うものは誰一人としていなかった。
翠「お前ら本当に反省したですか?」
「はい…」
「反省しました」
翠「分かればいいです」
折れた花のようにすっかりしょげてしまった2人の頭をやや乱暴に撫でた。
翠「それじゃあお前らは、これからこの花壇の花が咲くまで、毎日放課後に翠星石と一緒に水遣りをするですぅ」
「えぇ!?」
「そんなぁ!」
翠「これはお前らが折った花に対する罪滅ぼしですぅ!ホレ、返事はどうしたです?」
「はい…」
「分かりました…」
2人は返事をするしかなかった。翠星石は満足気に微笑み、今度は優しく2人の頭を撫でた。
翠「よろしいですぅ」
「はい…」
「反省しました」
翠「分かればいいです」
折れた花のようにすっかりしょげてしまった2人の頭をやや乱暴に撫でた。
翠「それじゃあお前らは、これからこの花壇の花が咲くまで、毎日放課後に翠星石と一緒に水遣りをするですぅ」
「えぇ!?」
「そんなぁ!」
翠「これはお前らが折った花に対する罪滅ぼしですぅ!ホレ、返事はどうしたです?」
「はい…」
「分かりました…」
2人は返事をするしかなかった。翠星石は満足気に微笑み、今度は優しく2人の頭を撫でた。
翠「よろしいですぅ」
その年の花壇の花は、今までで一番綺麗に咲いたという。