ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki ゲーセンの蒼星石

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放課後の学校周りの見回りも教師としての大切な仕事である。
無断でアルバイトをしている生徒はいないか、パチンコなど学生が入ってはいけないお店にいる生徒はいないか等、常に目を光らせなければならない。
蒼「今日も何もなければ良いんだけど…」
問題のある生徒がいないかどうか見回りをしているわけだが、できればそんな生徒とは出会いたくなかった。
教師にとって、この見回りの時間は複雑で憂鬱な時間だった。
「あ、蒼星石先生。こんにちは」
横から声をかけられた。声のほうを見ると、一人の男性が手を振りながら近づいてきた。
蒼「これはY先生。こんにちは」
その男は、有栖学園の隣の学校の教師であった。何度か顔を合わせた事もある。
Y「今日はもうお帰りですか?」
蒼「いえ、今日は見回りです」
Y「そうですか。ご苦労様です」
蒼「Y先生は?」
Y「私は仕事が終わったので帰っているところですよ。いやぁ、今日も疲れた」
2人は世間話をしながら一緒に歩くことにした。教師同士の話となると、その内容は殆どが学校でのことになる。
苦労する生徒の話や、授業の内容についてなど。教師ならではの会話をしてゆく。

「うわぁー!!」
突然、少年の叫び声が聞こえてきた。2人は思わず顔を見合わせた。
Y「い、今のは…?」
蒼「こっちです!!」
向かった先は、先月閉店したゲームセンターである。機材は全て撤去されており、閑散としていた。
入り口のガラスが割られており、そこから中へ入れた。夜には不良たちの溜まり場として近所の住民から恐れられている。
薄暗い元店内に、一人の生徒がうずくまっていた。その制服は、間違いなく有栖学園のものだった。

蒼「W君!?」
Wの周りを、3人の不良が取り囲んでいた。うずくまっている生徒とは制服が違う。
それは、Yの学校の制服だった。
3人の不良が、うずくまっているWに対し笑いながら蹴りを入れていた。その度にWから悲鳴が上がる。凄惨な光景だった。
蒼「Y先生、行きましょう!!」
一緒にあの現場を止めよう、と促す。だがYは渋ってばかりで一向に動こうとしない。
蒼「どうしたんですか!?」
Y「いやぁ、子供たちの喧嘩に我々大人が割って入るのは…」
蒼「何を言っているんですか!?」
あれのどこが喧嘩というのだろうか。一方的なリンチではないか。教師としてこの現場を見過ごすつもりなのだろうか。
Y「それに…私はもう仕事の時間も終わっていますし…」
蒼「仕事の時間が過ぎれば教師じゃないとでも言うのですか!?」
いや、教師としてではなく、人間としてあの現場を止めなくてはならない。
Y「しかしですね…」
いかにも「面倒事には関わりたくない」という雰囲気を出している。
そうこうしているうちに、不良のつま先が生徒の鳩尾に入った。
W「うげぇ!!」
蒼「くっ…!!」
ここでこんな言い争いをしても意味がない。蒼星石は一人Wのもとへ駆けて行った。

蒼「やめるんだ!!」
不良たちの前に立ちはだかる。
不良A「あぁ!?なんだおめぇ?」
Wを踏みつけながら蒼星石を睨み付ける。
蒼「その足を退けるんだ!!」
不良B「だから誰だって言ってるんだよ!?コラ!」
W「そ、蒼星石先生!?」
踏みつけられていたWが、驚きの声を上げた。

不良A「先生~?お前、教師なのかよ?」
蒼「そうだよ。ボクは有栖学園の教師。その子の担任だ」
不良C「で、その有栖学園の教師が俺たちに何の用?」
蒼「その子を放すんだ」
静かだが、怒りに満ちた声だった。
不良A「はい。分かりました。どうもすみません……」
Wを踏みつけていた足を後ろに下げる。そしてそのまま大きく振りかぶり、思い切りWの背中を蹴った。
W「あぐぅっ!!」
不良A「……なんて言うとでも思ったのかよ!?」
蒼「なっ…!!」
不良B「『あぐぅ!!』だってよ!!ははははは!!」
腹を抱えながら笑う。Wが激しくむせた。顔は、血と涙でくしゃくしゃになっていた。
蒼「やめろ!!」
力の限り叫んだ。もう怒りを抑えるのは限界だった。不良たちの笑いが止む。
不良A「やめて欲しいんだったらよぉ」
Wの顔を踏みつける。
不良A「俺たちを殴れよ」
蒼「何…?」
不良B「言っとくけど説得や脅しで止める俺らじゃないの。止めて欲しけりゃ俺らを殴れよ」
不良C「教師が生徒を殴る。しかも他校の生徒を。こりゃ体罰どころじゃないなぁ」
不良B「まず間違いなく教師はできなくなるぜ?」
再び笑いあう。どこまで性根の腐った不良なのだろうか。
蒼「それが…」
不良A「あぁ?」
蒼「それがどうしたと言うんだい?」
すたすたと不良の前へ歩み寄り、不良の数歩前のところで立ち止まる。
不良は呆然としたまま立ち尽くしていた。

瞬間、蒼星石は右足を高々と振り上げた。まるで一本の棒のようである。あまりに迅速な動きだったので、不良は反応できなかった。
そしてそれをハンマーのように振り下ろした。蒼星石の踵が不良の肩にめり込む。
不良C「ぐわぁっ!!」
肩から鈍い音がした。不良Cは、肩を押さえてうずくまった。
蒼星石はそのまま流れるように左足を軸にして、右足を旋回させた。踵が不良Bの脇腹を直撃する。
右足の踏み込みが無く、中途半端な威力なはずだったが、不良Bは軽く吹き飛んだ。
不良A「て、てめぇ!!」
パンチを繰り出す。蒼星石はそれを両手で受け止め、回転するように背中に回りこんだ。
不良Aは、腕を背中に回され押さえ込まれた。一瞬の出来事だった。
蒼「W君!!今のうちに逃げて!!」
不良Aを押さえつけながら倒れていたWに呼びかける。
W「え・・・でも…!!」
蒼「ボクは大丈夫だから、はやく!!」
W「は、はい!!」
ヨロヨロになりながらも、必死に逃げていった。蒼星石はその背中を見送って、安堵の息を漏らした。
不良A「て、てめぇ!!生徒を殴ったなぁ!?もう教師できねえぞ!!」
蒼星石の下で不良Aがわめき散らす。
蒼「言いたいことはそれだけかい?」
不良A「てめぇ…!!」
蒼「君たちはこれから学校に行くんだ。向こうの先生に指導してもらうためにね」
そう言って、ふとYのことを思い出した。Yの姿は、いつの間にか消えていた。
あれが教師としての姿だろうか。蒼星石は、少しだけ不良たちを哀れに思った。
突然、背中に何かを押し付けられたと思った瞬間、衝撃が体中を駆け巡った。
蒼「きゃぁっ!!?」
全身の筋肉が一瞬硬直し、途端に意識が遠退いた。

不良B「ふざけやがって・・・!!」
脇腹を押さえるBの手には、バチバチと閃光を放つスタンガンが握られていた。
不良B「おい、大丈夫か?」
蒼星石に押さえ込まれていた不良Aを起こす。
不良A「あぁ、俺は大丈夫だ…それよりも」
不良C「俺も大丈夫だ」
肩を押さえた不良Cが横に立っていた。
3人は意識を失って倒れている蒼星石を取り囲んだ。
不良A「この野郎…!!」

蒼「う、うぅ・・・ん」
意識を取り戻した時には、両手両足を縛られていた。
不良A「ようやくお目覚めかよ」
蒼「くぅ…」
不良B「教師のくせにふざけた真似しやがって…」
不良A「今からたっぷりとお返ししてやるよ」
不良たちの手には鉄パイプや金属バットが握られていた。蒼星石は一瞬にして血の気が引いた。
不良C「まずはそのキレイな面を…ん?」
蒼星石の顔を覗き込んだ不良Cが驚きの声を上げた。
不良C「おい、こいつ女だぜ!?」
不良A「なに?」
不良C「やけにキレイな顔してると思ったら…。ボクとか言ってるから男だと思ってたぜ」
不良A「女か…へへへ」
3人の表情が一瞬にして変わった。不良Aが笑みを浮かべながら蒼星石の腹に馬乗りになる。
そして蒼星石の胸を鷲掴んだ。
蒼「え…!!」
不良A「意外とでかい胸してんじゃんかよ」
蒼「や、やめて・・・!!
蒼星石は必死に抵抗したが、スタンガンのせいか、力がでなかった。
不良Aはポケットからナイフを取り出すと、蒼星石の上着を切り裂いた。

蒼「やあぁ…!!」
下着が露になった。不良たちが歓声を上げる。
不良B「立派なブラジャー着けてんじゃねえかよ。へへへ」
不良C「なぁ、こいつの裸写真に撮って有栖学園にばら撒いてやろうぜ?」
不良B「いいねぇ」
不良A「それよりも、俺たちとヤッてるところ撮ってやろうぜ。もちろん俺が1番な」
不良B「いいねぇ!!じゃあ俺その次!」
不良C「げ、じゃあ俺最後かよ」
蒼「こんなこと、やめるんだ…!!お願い やめてぇ」
不良A「うるせえよ!恨むんなら、お前が逃がしたあいつと、自分の馬鹿な行動を恨むんだな」
蒼星石の顔に唾を吐き掛ける。そしてブラジャーに手をかける。
その時
「そこの男たち!!何をしている!!」
間一髪のところで数人の警察官が駆け寄ってきた。
不良C「やべぇ!!サツだ!!」
不良B「逃げろ!!」
不良たちは散り散りに逃げ出したが、警察によってあっさりと取り押さえられた。
W「先生ーー!!」
警察官と一緒に、逃げたはずのWが駆け寄ってきた。
蒼「W君…?君が警察を呼んできてくれたのかい?」
W「先生…!先生…!!」
泣きながら蒼星石の手足を縛っていたロープを解く。
蒼「ありがとう…」
W「先生…なんであいつらを殴ったりしたんですか…!!先生、教師できなくなっちゃうんですよ…!!
僕のことなんか放っとけば良かったのに…!!先生、馬鹿ですよ…」
Wの目から大粒の涙が流れた。それをまだ痺れの残る手で拭う。
蒼「うん、馬鹿かもね…。でも、生徒を見放すような愚か者よりはましだよ…」
W「え…?」

蒼「ボクは『教師』という肩書きを守るために働いてるんじゃない…。ボクは君たちを守るためにいるんだ…。
生徒を守れない教師なんて要らない…。生徒を守るためなら、ボクは喜んで肩書きなんて捨てるよ…」
W「やだです…!!先生が辞めちゃうなんて僕、嫌です…!!」
蒼「大丈夫、W君がボクの事を先生と呼んでくれる限り、ボクはずっと君の先生だよ…」
W「先生…」
蒼星石はWに微笑みかけた。そうしてこんな状況で笑いかけていられるのだろうか。
自分にはとても真似できない。
W「先生、これ・・・」
学生服を脱ぎ、蒼星石に着させた。
蒼「ありがとう」
W「蒼星石先生は、どんなことがあろうとも僕たちの先生です…」
蒼「うん、ありがとう」



しかし結局、蒼星石が教師を辞めることは無かった。
Wの証言と、問題の不良たちが学校や地元でも札付きの悪として、何度も警察に捕まっていたという事実が蒼星石の暴力を打ち消した。
不良たちの学校は、蒼星石の行動を不問のものとする変わりに、今回の事件を無かったことにしようとしていた。
蒼星石は、それが何よりも悔しかった。
しかし、とりあえず今は生徒たちの笑顔をこれからも見れるという幸せを、胸いっぱいに感じることにした。