ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 水銀燈と屋上

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 ぼぅっと一人の男子生徒が、屋上に居た。
 フェンスの金網をつかみじーっとはるか下のグラウンドを見ている。
 このフェンスを超えて見たい。男子生徒は、そんな事を思う。
水銀燈「何やろうとしてるのぅ?」
 ふと、男子生徒の後ろからいつの間にか居た水銀燈がそう声かけた。
 金網から手を離し水銀燈の方を振り向き別に。と、そう漏らす男子生徒。
水銀燈「ふぅん……言っておくけど、そのフェンス。鉄片にワイヤー引っ張って電流流してるから超える事は無理よ?」
 と、水銀燈の言葉に、別段焦った様子も無くそうっすか。と答える。
水銀燈「アナタ暇そうだから、ちょっと私の話聞いていきなさい」
 別に暇って訳でも……のつぶやきは、水銀燈の「此処でぼぅとする暇あるんでしょ」と、言われて何もいえなくなる。
 観念したのか、なんすか? と、屋上に設置されているベンチにおもむろに腰を下ろしてそう尋ねる。
水銀燈「アナタ死にたいなぁ~とか考えてる節ない?」
 男子生徒と同じようにベンチに、腰掛けてタバコを胸ポケットから取り出し一本加え火をつけ吸う。
 水銀燈の言葉に、そうかもしれません。と、ポツリと漏らす。
水銀燈「ぶぁっかねぇ……死んでもなぁんもかわらないわ。あぁ、アイツ死んだの? それで終わり」
 まるで、体験してきたかのように話しますね? と、コメントする。
 そのコメントが、まさにその通りと言うように水銀燈は、苦笑する。
水銀燈「アナタと同じ頃。私は転校したのよで、ちょっと用事があってもとの学校の地域に行って……当時同じクラスだったヤツとすれ違ったわ」
 ふーん。と、詰まらなさそうに相槌を打つ男子生徒。
水銀燈「まったく私に気がつかないのよ。で、当時から付き合いがあった薔薇水晶先生に電話したら」
 【銀ちゃん……死んだって……】
水銀燈「私はその地域で死んだ事になってた。だから、すれ違ってもあぁよく似ている人だとかだれ? とか認識されないのよ」
 だから、私は一度死んだような物だと苦笑する。
 それが、俺になんの関係があるんです? と男子生徒は相変わらず無表情で言う。

水銀燈「もう一回言っておくけど、死んでも何も変わらないわよ?」
 別に変わんなくてもこんな日常から抜けられるならいいです。と、呟く。
水銀燈「確かに何も変わらない。人が一人死んでも地球は回ってるし景気が良くなる訳でもない」
 あぁ、そうですね。と、めんどくさそうに相槌を打つ。
水銀燈「ただ、残された人の事考えた事ある?」
 別に。ダレも泣かないでしょ? 俺が死んだって。と、そんな言葉。
水銀燈「親に友人そして私たち。十分泣く人が居るわ。まぁ腐った親なら泣かないかもしれないけどね」
 タバコを吸い紫煙を吐く。紫煙は、空に昇り消えてゆく。
水銀燈「アナタは今自分の存在価値を見出せて無い。何をすればいいのか分からない」
 そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれないです。と、言葉を返す。
水銀燈「なら、何かを探すために何かをすればいいのよ」
 また、水銀燈はタバコを吸い紫煙を吐く。
水銀燈「なんで、私が教師やってるとおもう?」
 さぁ? 考え付きませんね。先生のいつもの行動みてると……と、男子生徒は毒舌気味にそう言う。
 その言葉に、苦笑する水銀燈。
 タバコを、携帯灰皿で火を消し吸殻を入れポケットにしまう。
水銀燈「何かを探すために何かをしてたら教師になってたのよ」
 なんすか、その理由。と、男子生徒はあきれた表情になる。
水銀燈「十分な理由でしょ? 何かをして探す為に何かをして見つけたのがこの仕事。生徒たちの面倒を見て生徒たちの笑顔をみて生徒たちと話す」
 託児所で十分じゃないっすか? んなの。
水銀燈「あら、一応託児所も保育園も小学校も中学校も高校もやったわよ?」
 ……アンタ、一体何歳だ。と、真剣に思う。
水銀燈「さぁ? 誕生日は覚えてるけど数えるのめんどくさくて覚えてないわ」
 なんだそりゃ。
水銀燈「それにレディに年齢は聞かないものよ?」
 頭の片隅にでも覚えておきますよ。と、手をヒラヒラさせてそう言う。

水銀燈「無駄な事だって思ってるかもしれないけど、何かを探す為に何かをやってみたら?」
 自殺するよりいいモンでしょ? と、水銀燈は笑う。
水銀燈「自分が何をしたって何も変わらないし何かを見つけたとして何になる? だなんて思ってたら間違い」
 熱中できるもの。暇をつぶせる物があるだけで人生ってのは大きくかわるのよ。と、水銀燈はそう言ってベンチから立ち上がる。
 そして、男子生徒が一人だけ取り残された。
 太陽が落ち、周囲が暗くなってもジッとベンチに座っていた。
 【何かを探す為に何かをする】
 死ぬ事ばかり考えてた自分にとって、それはしなかった行為。
 こんな自分に何が出来るのか……何かしてもいいのか……
 死んでも何も変わらない。あぁ確かにそうだ。
 詰まらない日常から開放はされるかもしれない、だがその後はどうなる?
 輪廻転生や天国とか地獄とかに行くとでも言うのか?
 存在するかも曖昧。
 そして、空に星が輝く頃。
 男子生徒は、ベンチから立ち上がると屋上を後にした。
 数年後。
水銀燈「あら……」
 食堂でテレビを見ながら日替わり定職を食べていた水銀燈の目に、少々老けてはいたがあの時の男子生徒が映っている。
TV『今の腐った政治は終わらせ、国民の為になる様な国を作らなくてはいけない! 政府の上役連中は腐って甘い蜜をすすっている! 許せない事だ!』
 しばらくそのテレビを食い入る様に見ている水銀燈。
 何かを探して何かを見つけた男子生徒が、其処に居た。
TV『金不足に対しても、我々政治家が率先して無駄金の消費を押させ国民に対して増税などと言う事をしないようにしなくてはならない!』
 熱弁を振るうスーツを着た男。
 その顔は何処か晴れ晴れとしていた。