ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 第2次裏山攻防戦

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昼休み・・・1日の中で誰もが待ち遠しく思っている時間帯だ。
ここ、有栖学園職員室でもそんな昼休みを待ち遠しく思っていた教師が居た。
雪「今日のお弁当は何だろう」
有栖学園一、いや世界一と言っても良い位の大食い雪華綺晶だ。
雪華綺晶は自分の机の上に山の様に高く積まれた愛妹弁当の蓋を開ける。
雪「予想通り栗ご飯だったか・・・」
今朝、目を覚ますと家中に栗の良い匂いが立ち込めていたので、予想はできていた。
おかずの方を見ると、これまた秋茄子などの旬の野菜や肉、魚類をふんだんに使った豪勢な料理が雪華綺晶の食欲をそそった。
これだけの料理を作るには相当早起きしなければならないだろう事は、普段あまり料理をしない雪華綺晶にも容易に想像ができた。
雪「いただきます」
そんな妹の愛情がこもった弁当に箸を入れ、栗ご飯を口の中へと運ぶ。
雪「ん?」
この時初めて、雪華綺晶はこの栗ご飯の米がただの米ではなくもち米だという事に気づいた。
雪「栗おこわだったか・・・でも、朝は普通のご飯だった。わざわざ2回炊いたのか」
そんな妹の細やかな気配りに、今すぐにでも駆けつけて抱きしめたい衝動に駆られるが、今はご飯が先決であった。
すぐに次の料理に箸を入れ、口に運ぶ。その度に頬が緩みそうになる。
そんな幸せな雪華綺晶に一人の人物が背後から近づいていった。

ダン!ガシャン!

雪「私の背後に立つな」
ロ「今の弾は僕じゃなかったら避けられなかったよ・・・」
雪「で?用件は何だ?見ての通り、私は『ばらしー』が作ってくれた料理を食べてるんだが」
ロ「やっぱいつ見ても『薔薇ちゃん』の作った料理は美味しそうだねぇ」
雪「・・・・・・やはり、貴様とは決着をつけねばならないようだ」
ロ「はっはっは、遠慮しとくよ。命が幾つ有っても足りないだろうから」
雪「・・・・・・・・・もう一度聞く。用件は何だ?」
ロ「あ、そうそう忘れるところだった。実はさ、雪華綺晶先生に折り入って頼みが有るんだけど・・・」
ローゼンは雪華綺晶にある事を頼み込んだ。

雪「了解した。全力で持って任務にあたる」
ロ「そうかい?いやぁ、助かるよ。期限は今度の文化祭までで良いからさ。射撃部にも・・・」
雪「いや、それでは私の取り分が・・・もとい、その程度なら私だけでも十分だ」
ロ「そう?じゃあ、よろしく頼むよ。あと、事が事だけに爆破とかは駄目だよ?」
雪「分かっている。非殺傷兵器の扱いは私の最も得意とする分野だ」
ロ「まあ、その言葉を信じよう。そんじゃ、よろしくね~!」
そう言って、ローゼンは弁当箱から茄子の天ぷらをひょいと摘んで立ち去ろうとする。
雪「待て!それは私が楽しみにしていた・・・」
ロ「じゃあね~」
雪「待て!返せ、私のお弁当」
走り出したローゼンに対して、雪華綺晶も追いかける。
そして職員室には誰も居なくなった・・・・・・はずだったが。

水「聞いちゃった聞いちゃったぁ。秘密のお話聞いちゃったぁ」
職員室横の給湯室でいつもの様にヤクルトを飲んでいた水銀燈は、先ほどの一部始終を全て聞いていた。
水「まさか、あの裏山で松茸が採れるなんてねぇ。それにあの娘への報酬が30本・・・採れる量は3桁は間違いないわぁ」
そう、ローゼンが雪華綺晶に頼み込んだ内容とは裏山の警備であった。
先日、ローゼンが気晴らしに裏山を歩いていたところ、偶然松茸が群生していた場所を発見したというのだ。
裏山はローゼンの私有地だったのだが『皆に自然に触れてもらおう』と一般開放していた。
そのため、ボランティア部や射撃部などの協力により登山道などを整備し、今ではちょっとした観光地になっていた。
しかし、この事が広く知れ渡ると、松茸採りに来た人たちによって山が荒らされてしまう。
それを危惧したローゼンは文化祭に松茸を破格の値段で来た人たちに振舞おうと思いつき、それまでの警備を雪華綺晶に頼んだのだ。
水「ほぉんと、校長もお人好しって言うかぁ、お馬鹿さぁんって言うか・・・国産松茸を500円なんて馬鹿みたぁい」
そう言いながらも、頭の中では既に計算が始まっていた。
水「国産松茸なら、小振りな物でも1個あたり2~3000円、大きな物なら1万は堅いわぁ」
自分とめぐ、それにメイメイが食べる分だけを残して、残りを売り捌いても100~200万は儲かると結論付けた。
水「うん、我ながら名案ねぇ」
雪「何が名案なのですか?」
水「きゃあ!」
後からの突然の声に思わず可愛らしい声をあげる水銀燈。そして恐る恐る振り返る。

水「お、驚かさないでよぅ。思わず心臓が止まるかと思ったわぁ」
雪「申し訳ありません。ところで、名案とは?」
水「え?あ、ううん、何でも無いのぉ、こっちの話」
雪「そうですか」
水「それよりもぉ校長はもう良いの?」
雪「・・・・・・銀姉様がなぜそれを?」
その時、水銀燈はしまったと内心愚痴る。
『この娘、こういう時だけ鋭いのよねぇ』なんて思いながらも、必死に言い訳を考える。
水「ああ・・・だってぇ、さっき銃声が聞こえたものぉ。貴女が室内で発砲するなんてぇ大抵は校長でしょぉう?」
雪「なるほど・・・そうでしたか」
水「そ、そういう事よぉ。あんまり、誰彼構わず発砲するもんじゃないわぁ。いつか誰かを傷つけるわよぉ」
水銀燈はそう言って、職員室を後にした。

放課後、雪華綺晶は早速準備に取り掛かった。
地雷などの爆発物は使わず、古典的なトラップを幾重にも仕掛けて行く。
この時、雪華綺晶はわざと群生地とは反対方向に重点的にトラップを仕掛けていった。
人間の心理として、罠が沢山有るという事はその先に取られたく無い物が有るんだと思わせるためだ。
既にローゼンから聞いたポイントに行って存在を確認している。
文化祭まで後1ヶ月ほど。それまでこの松茸を死守すれば30本手に入る。
雪「どうやって食べようか・・・七輪で焼く、鱧と一緒に土瓶蒸し、松茸ご飯・・・ジュル」
頭の中は既に食べる時の事しか無かった。

ピー!ピー!ピー!

突如、右耳に着けていたイヤホンから警告音が聞こえてきた。
どうやら、早速不心得者がやってきたようだ。
こんなことも有ろうかと、山道から外れると無線で知らせるようにセンサーを仕掛けておいたのだ。
銃をホルスターから取り出し、現場に急行する。

雪「動くな・・・許可無く山道以外に入る事は認められない」
背後から声を掛けられた者は一瞬ピクリと反応するが、声を聞いて安心したのか振り向かずに返事をする。
?「私に銃を向けてただで済むと思ってるのぉ?」
雪「・・・む、その声は?」
慌てて銃を仕舞う雪華綺晶。その様子を察したか声の主である水銀燈は後ろを振り返った。
水「全く・・・珍しく裏山に来たら貴女に撃たれる所だったわぁ」
雪「申し訳ありませんでした。・・・ですが、何故ここに?」
この質問に水銀燈は再び焦った。
水「えっと・・・私は気分転換に来ただけよぅ。それとも私がここに来ちゃいけない理由でもある訳ぇ?」
雪「いえ・・・そういう事なら」
水「なら、私がどう行こうとぉ私の勝手でしょう?」
雪「それは困ります」
水「何故ぇ?射撃部の練習でも無いんでしょう?さっきグラウンドで走ってたから」
今度は雪華綺晶が答えに窮する番になった。恐らく中途半端な嘘なら即座に見破るだろう。
松茸が採れるなんて聞いたら、絶対独り占めして売り捌くに違いない。
なら堂々とした態度で嘘を突き通そう。一瞬の内に判断した雪華綺晶はこう答えた。

雪「ではお答えしますが、他言無用を願えますか?」
水「そうねぇ・・・内容にも因るわぁ」
水銀燈は返答をはぐらかす。既に理由は知っているので、聞いても聞かなくても同じなのだ。
雪「そうですか・・・では、お答えでき・・・」
雪華綺晶はこの時、勝ったと思った。後は機密事項という事で、強制的に排除しようと考えていたからだ。
そしてその空気を水銀燈は即座に読み取った。
水「分かったわよ・・・誰にも喋らないから言いなさぁい」
内心がっかりする雪華綺晶。『やはり奸智ではこの人に敵わないな』と内心思う
雪「仕方ありませんね・・・ではお答えします。実は校長から警戒を頼まれました」
水「警戒って・・・何の?」
雪「何でも、先日校長がこの山を散策していた所、蝮らしき蛇を見かけたと言いまして」
水「その警戒をするために1人でこの山に入ったって訳?」
雪「はい・・・射撃部の訓練を行わないのも蝮駆除が終わってないからです」
水「なるほどぉ・・・それなら皆に話すわけには行かないわねぇ」
雪「広い山道ならまだ安全ですが、こうして茂みの深い所では接近に気付くのが遅れてしまいます。だから退去願っています」
雪華綺晶の言い分は尤もだった。少なくとも、言い包めるには厳しいだろう。
即座に判断した水銀燈は大人しく引き下がることにした。

そしてその帰り道・・・。
水「あ、めぐぅ?いきなりで悪いんだけどぉ・・・ちょっとお願いできるかしらぁ」
め『何々?先生が私にお願いなんて珍しいね。・・・うん、うん、分かったよ。30人ぐらい集めれば良いんですね?分かりました』
水「ありがと、めぐ。日時はそうねぇ・・・日曜の朝9時でどう?場所は裏山の麓で」
め『裏山で何かするんですか?何だか楽しそう・・・まあ、先生と一緒なら何でも楽しいけど』
水「うふふ・・・嬉しい事言ってくれるじゃなぁい。それじゃあねぇ」
め『は~い。また明日学校でね』

ピッ・・・

水「これで兵隊は揃ったわねぇ。向こうは1人のようだし、数の力を見せ付けてあげるわぁ」

薔「・・・え?・・・夕方・・・銀ちゃんと裏山で会った?」
夕食時、何気ない会話から夕方水銀燈と出会った話を薔薇水晶にした。
雪「うむ、珍しい場所で会ったから私も驚いた」
雪華綺晶は率直な感想を述べるに留まったが、薔薇水晶は首を傾げる。
薔「・・・あの銀ちゃんが・・・理由も無く、そんな所に行くのかな・・・?」
雪「・・・どういう意味?」
薔「・・・だって・・・普段裏山に行く事なんて・・・絶対に無いから」
雪「・・・・・・・・・ばらしーには本当の事を言おう」
雪華綺晶は薔薇水晶に全てを話した。そして、感の鋭い薔薇水晶はすぐに水銀燈の行動の理由に納得した。
薔「・・・きっと・・・その事、銀ちゃん知ってるんだよ・・・」
雪「やはり・・・そうなのか」
何となく憂鬱な気分になる雪華綺晶だった。
薔「・・・お姉ちゃん・・・無理しないでね、色んな意味で」
雪「・・・・・・分かった」

かくして、両者互いに必勝の策を練りつつ、決戦の日を迎えたのであった。


日曜日、午前9時02分 裏山麓にて
水「皆、よぉく集まってくれたわねぇ」
総勢31人の生徒達の前で水銀燈は満足げにうなずいた。
め「それで、今日は一体何するんですか?」
水「良い質問ね。今日はぁ普段真面目に勉強している皆にぃ、ご褒美をあげようかなぁって思ってるのぉ」
生徒達『ご、ご褒美・・・』
全員が生唾を飲み込む音が聞こえてきた。
水「そう、だから今日は特別授業をしようかなぁ~って」
生徒達『と、特別授業・・・』
水銀燈の『ご褒美、特別授業』という言葉に、集まった男子達の大半が前屈みになったり、鼻血を止めようと天を仰いだりした。
め「それで、どんな特別授業なんですか?」
そんな男子達の悶絶振りを知ってか知らずかあっけらかんとした表情で再び尋ねる。
水「うふふ・・・そ・れ・は~、き・の・こ・が・り」
生徒達『きのこ狩り!!?』
め「わぁ!私きのこ狩りなんて初めて~!・・・って、皆どうしたの?」
水「あらあら、若いって良いわねぇ・・・って、私まだそんな歳じゃないわよ!」
め「先生、誰に突っ込んでるの?」

ようやく復帰した男子達に改めて今回の『授業』の説明を行う。
水「実はこの間、ちょっと小耳に挟んだのよねぇ・・・。何でもぉ、校長がこの裏山で松茸が群生しているのを見つけたらしいのぉ」
め「ふむふむ」
水「それでね、校長ったらその松茸を独り占めして皆に高額な値段で売ろうとしてるのよぉ」
め「それは許せないね」
水「でしょう?だからぁ、それを懲らしめるためにも私たちで美味しく頂こうって話なのよぉ」
前半はともかく後半は嘘だらけだったが、それに疑問を差し挟む者はこの場には居なかった。
水「と言う訳でぇ、皆頑張ってねぇ?」
生徒達『おー!!』

午前9時23分、裏山の射撃部ベースキャンプにて
雪「A-2から4、B-1から3、人数はそれぞれ5人ずつか・・・動きは山に慣れていない者だな」
テーブル上に広げた地図と、警報センサーからの情報を基に侵入者の人数と侵入ポイントを確認する。
雪「群生ポイントとは遠く離れている。しばらくは安全だな」
雪(とは言え、相手はあの銀姉様・・・プロである私すら威圧出来るほどの実力、そして何より計略に関しては3枚も4枚も上だ)
雪「恐らく銀姉様は生徒達を全て囮にするつもりだ・・・しかも生徒達はそれに気付いてすら居ない・・・」
雪(ある意味尊敬に値します・・・ですが、負けるわけには行きません)
雪華綺晶は侵入者のうち、トラップから最も遠いグループに狙いを絞った。
そのグループの進行先を推定し、先回りをするための最短距離を確認する。
そして、ある物を持って現場へと急行した。

午前9時34分、裏山中腹にて
A「銀様のためにも何が何でも松茸を見つけなくてはな」
B「ああ、俺達が一番最初に見つけて褒めてもらおうぜ」
C「銀様に褒めてもらった上に、松茸食えるなんて・・・たまんねぇ」
D「とは言え、やっぱ山道はキツイなぁ」
E「登山道からは外れてるからな・・・登りが急でかなわ・・・ん?」
A「どうした?」
E「あれ見ろよ」
班員がEの指差した先を見ると、そこには道標が置かれていた。
B「何々?『この先、射撃部訓練地並びに地雷原。登山道は←』危ねえ所だったな」
D「左か・・・よし、こんな危険地帯はとっとと逃げ出そうぜ」
班は道標が指し示す方向へと進んでいった。
D「・・・おい、皆見ろよあれ」
A「今度はなんだよ」
Dが指差した方を見ると、道の真ん中に毟り取られた草が山積みになっていた。
D「あの不自然な草の置き方・・・落とし穴のつもりかな?」
E「今時小学生でもあんな真似しないぜ・・・やっぱ校長だな」
B「ああそうだな・・・誰がこんなのにひっかかるかつーの」
5人はそう言って、その脇を通り過ぎようとした。

ズボッ!!

全員『何っ?!』
5人は見事に『山積みの草の横に巧妙に隠された落とし穴』に嵌ってしまった。
深さは3メートルほど、しかし土が微妙に緩く、自力で登るのは不可能であった。
A「いてて・・・足挫いた」
D「そっちは大丈夫か?!」
E『何とかな!でも登れそうに無い』
B『救援の連絡入れてくれ!こっちは落ちた拍子に携帯壊れた!』
C『ちくしょー!この間買い換えたばっかなのに!!』
などと、喧々諤々と喚いて居た所で、穴の淵にすっと人影が現れた。
A「救援か?助かった」
?「残念ながら今日は救援ではない。携帯をこちらに渡せ」
D「その声は・・・雪華綺晶先生!!」
見上げるとそこには銃を構えた雪華綺晶が居た。
しかも言葉から察するに、どうやら自分達の敵のようだ。
Aは後ろ手に回した携帯で別の班にメールを送ろうと試みる。

雪「させるか!」
迷う事無く引き金を引く。打ち出された弾丸は見事Aの手に命中し、鮮血に染まる。
A「うわぁ!お、俺の手がぁぁ!!・・・って、あれ?痛くない」
雪「ペイント弾だ。しかし、これで携帯は使えまい」
勝ち誇った雪華綺晶にAは不敵な笑みを浮かべる。
A「いえ、間一髪でしたけど間に合いました」
確かに撃たれた時に携帯はペイント弾によって壊れたが、その直前にメールは送信されていた。
A「今に他の皆が松茸を見つけますよ・・・ふっふっふ・・・ぐはぁ!」
雪華綺晶は腹立ち紛れにペイント弾をフルオートで乱射して沈黙させる。
雪(・・・今ので、私のトラップの効率は下がるか・・・しかし、罠が有ると知ればより誘導しやすい)
雪華綺晶にとってトラップの存在を知られる事はむしろ好都合であった。

午前9時49分、麓にて
め「先生、A班が全滅したみたい」
水「どうやらその様ねぇ・・・A班に連絡は出来るぅ?」
め「無理みたい・・・メールの返信出来ないって言ってた」
水「はぁ・・・最悪私が出なきゃならないみたいね」
め「先生が行くなら私も行くよ」

それから20分ほど経過し、水銀燈が撤収命令を下した時、戻ってきたのはホンの11人だった。
水「はぁ・・・先生悲しいわぁ、皆なら必ず成し遂げてくれると思ってたのにぃ」
水銀燈の言葉に一様にしてうな垂れる生徒達。
水「でもまあ・・・相手があの雪華綺晶先生ならそれも仕方ないわねぇ・・・良いわ、次は私も付いていくわぁ」
T「あの山、色んな所に罠が仕掛けてあって危険ですよ?」
水「そうねぇ・・・か弱い私がトラップに引っかかったらぁ・・・軽傷で済まないわねぇ」
思案する振りをしながら生徒達を流し目で見回す水銀燈。そして言葉を続ける。
水「でもぉ、そんな私を守ってくれる素敵なナイトさんがこれだけ居るから安心よねぇ・・・?」
某店なら1万円は取られそうなスマイルを振りまく水銀燈。そしてその効果は覿面だった。
R「任せてください!もし先生に危機が訪れようものなら、体を張ってお守りします!」
Y「俺も守るぜ!」
I「俺もだ!」
などと口々に言う生徒達に、水銀燈は涙目になりながら感謝の言葉を述べる。
水「皆・・・ありがとぉう。それじゃあ、行くわよぅ!」
全員『おー!!』
男子達を先頭に一行は再び裏山へと突入していった。
め「わざわざ目薬を用意するなんて、先生もワルよねぇ」
水「良い女ってのはぁ、男を自分の掌で自在に操る事ができる女よぅ」
め「ふ~ん・・・」

午前10時13分、ベースキャンプにて
雪「侵入者の再突入を確認・・・ポイントはC-3・・・危険だな」
そこにはあまりトラップを仕掛けていなかった。即ち群生地に近い地点である。
雪「侵入者の人数は13人・・・ついに来たか」
逃げ出した人数は既に確認しており、そこに2人入ったと言う事は指揮官自ら出撃してきた事を意味する。
雪「直接対決も止むを得ないかもしれない」
水銀燈と戦う事を決意した雪華綺晶は到着予想ポイントへと向かった。

水「ふぅ・・・山の中はやっぱり歩きづらいわねぇ」
め「でも、ちょっとした運動になって良いかな」

クイッ・・・

め「きゃ・・・」
水「めぐ!」

ブォン!!

足下に張られた紐につまづいて転んだめぐの上を縄で括りつけられた丸太が通り過ぎる。
め「イタタ・・・えへへ、転んじゃった」
体を起こして頭を掻くめぐに通り過ぎていった丸太が戻ってくる。
水「めぐ!伏せて!!」
め「え?」

ドン!

鈍い音が響く。誰もが惨事に目を瞑った。
しかし、耳から聞こえて来たのは丸太に吹っ飛ばされたはずのめぐの声だった。
め「・・・先生!」
水「・・・くぅ・・・!それだけは・・・それだけは絶対に、やらせないわよぉ!!」
目を開けると、めぐの盾になるように水銀燈が体で丸太を受け止めていた。
どうにか両手で押さえ込んだが、無理な体勢で受けきれずにそのまま体にぶつけた形だ。
め「先生・・・先生!」
水「うふふ・・・何泣いてるのよぉめぐ」
Y「先生!大丈夫ですか!!」
水「何とかねぇ・・・でも、こういう事はぁ・・・貴方達がやりなさぁい」
痛みが引いたのか、少しは和らいだ声で返事をする。

ブォン!!・・・・・・ブォン!!

その台詞に反応するかのように、進む道の先でも丸太の振り子トラップが発動し始めた。
どうやら最初のスイッチが入ったことで、全ての丸太が動き出す仕掛けだったようだ。
水「・・・うふふ、どうやら、この先にお宝が有るようねぇ・・・」
め「どうして分かるんですか?」
水「簡単な推理よ、これまでの報告と比較してぇ、危険度が段違いだからよぅ」
これまで仕掛けられたトラップは落とし穴の他に投網などで身動きを封じられたり、接着剤によって動けなくなるなど
それほど命に関わるような物ではなかった。
しかし、この丸太トラップは当たれば怪我じゃすまない。
雪華綺晶もそれを見抜いた上で諦めるだろうと思ってこの罠を仕掛けたのだ。

水「それなら、しばらくはここで休憩しましょう?」
め「先生の怪我の手当てもしないとね」
水「それも有るけどぉ、単なる振り子だし、やがて止まるわぁ」
コールドスプレーで冷やしながら待つこと10分。
全ての丸太はその動きを止め、一行は先を目指した。

午前10時38分、裏山中腹の池にて
水「こんな所に池が有るなんて知らなかったわぁ」
め「向こう岸にはあの岩を飛んでかないと無理みたいね」
池には向こう岸に渡れるように点々と岩が顔を覗かせていた。
この池を回り込もうという案も有ったが、麓側も山頂側もちょっとした崖となっていて、それは難しかった。
U「なんか昔のテレビ番組にこんなの有ったな」
T「風○た○し城か。言わばこれは龍神池って所か」
Y「この先にガダルカナル海峡とか有ったりして・・・」
水「恐らくここにも罠は有るでしょうねぇ。今言った事から察するにこの岩の幾つかは偽物ね。という訳でぇ、皆よろしくぅ」
まずは1人が挑戦する。
I「まあ、最初の一個は幾らなんでも大丈夫だろう・・・」
一歩を踏み出し、一つの岩へと飛び移る・・・セーフ。
I「ふぅ・・・えーっと次は・・・これ!」
しかし、踏み込んだ先にあった岩は偽物であえなく池の中に沈んでいった。
I「うわ!意外と深いぞここ!あ!なんか突っついてる!俺の体を突っついてる!」
そう言いながらIの体は沈んでいった。

結局、ここで生き残りの11人が全滅し、残るはめぐと水銀燈だけになった。
水「はぁ・・・一端戻って回り込もうかしらぁ」
め「先生、私挑戦して良い?」
水「だ、ダメよめぐ!もし池に落っこちたら風邪をひくわぁ」
め「大丈夫だよ、私運が良いし」
めぐは水銀燈の静止を振り切って、岩へと飛び移っていった。
め「よっ、ほっ、はっ、とっ・・・」
見ているこっちがハラハラする様な危なげな足運びだったが、見事に向こう岸へとたどり着いた。
め「せんせ~い!私、渡れたよ~!早く来て~!」
水「分かったわ~!今行くわぁ~!」
水銀燈はめぐの通った後を辿って向こう岸へとたどり着いた。

午前11時24分、裏山松茸群生地直前にて
雪「・・・・・・ついにここまで来ましたね」
水銀燈たちに背を向けたまま声を掛ける雪華綺晶。
水「・・・ええ、松茸を頂きに来たわぁ」
雪「どうしても手に入れたいのですか?」
水「ええ、是非とも欲しいわぁ」
ここで、雪華綺晶は水銀燈たちの方へ振り返った。
雪「残念ですが、ここを通すわけには行きません」
いつもの無表情でそう答える雪華綺晶だったが、めぐから見るとそれは虚勢を張っているようにしか見えなかった。
水「・・・そう・・・なら、取引しなぁい?」
雪「・・・・・・」
水「貴女、校長に松茸30本でその依頼を受けたのでしょう?なら、私に協力すれば40本あげるわぁ」
雪「・・・40本・・・」

水「そう・・・10本多く出すわぁ。話から察するに100本以上は採れるんでしょうし」
雪「・・・・・・」
水「貴女もわざわざ校長につく必要なんて無いんじゃなぁい?」
雪「・・・・・・」
水銀燈の言葉は雪華綺晶に深く突き刺さる。確かに普段敵対している校長に忠義立てする必要は無いのではないか?
彼女の側につけば40本も手に入る。何より、彼女を敵に回すのが恐ろしい事は身に持って分かっている・・・。
しばらく熟考した後、雪華綺晶はこう答えた。
雪「恐縮ですが、お断りします」
水「・・・・・・・・・そう。せめて理由だけでも聞かせてもらおうかしら」
すぅーっと水銀燈の眼光が鋭くなる。彼女が相手を敵と判断した時の癖だ。
雪「確かに貴女につけば40本手に入ります・・・ですが、校長の側なら確実に30本食べられる上に文化祭でより多く食べられます」
水「それが貴女の下した判断ね・・・うふふ、お馬鹿さぁん。大人しく私に従っていれば良かったのにぃ・・・」
雪「・・・ただし、提案があります。単なる力では互いを傷つけるだけ・・・それは不本意です」
水「なら何で決着を付けようって言うのぉ?」
雪「・・・それはこれです!」


午前11時30分、有栖学園中庭にて
翠「さぁ、おめーらたっぷり水をやるですよぉ。蒼星石、そっちはどうですかぁ?」
蒼「ああ、もう少しで刈り取りは終わるよ」
翠「了解ですぅ。健やかに、伸びやかに、緑の葉っぱをキラキラ広げて・・・」
如雨露から注がれる水を浴びて花々がキラキラと輝く。
もしかしたら、あの如雨露には不思議な力が宿っているのかも知れない・・・。
そんな風に思っていた蒼星石の視界の隅で何かが映った。
蒼「あ、白崎さん。こんにちは」
白「おや、蒼星石先生じゃないですか。あら、翠星石先生も」
翠「服、土で汚れてるですよ。何してたですか?」
白「いやぁ、実はですね・・・」

午前11時35分、裏山にて
水・雪『じゃ~んけ~ん、ポン!!』
真剣な表情で互いの右手を見つめる・・・両方ともチョキだ。
水「く、またあいこ?何かズルしてないでしょうねぇ?」
雪「それは無いです」
雪華綺晶が提案した方法・・・それはじゃんけんだった。
力では傷つけてしまうが、頭を使った勝負では分が悪い。それならばと選んだのがじゃんけんであった。
そして2人は先ほどから10回以上あいこが続いていた。
水・雪『あいこで、しょ!!』
グー同士で再びあいことなった。
水「こんな所で時間を食う訳には行かないのにぃ・・・!」
め「先生、交代しましょうか?」
水「う~ん・・・なら、めぐおねがぁい」
め「は~い」
水銀燈と交代してめぐが雪華綺晶と対峙する。
め「それじゃ、始めましょうか」
にこにことした表情で言うめぐに対し、若干険しい表情の雪華綺晶。
どうやらめぐの手が読めないようだ。
しかし、いつまでも待つわけにも行かず始める事にした。
め・雪『じゃ~んけ~ん、ポン!』
めぐはチョキ、雪華綺晶はパーだった。
水「やったわぁ、めぐ!流石は私の生徒よぉ!!」
ひしっと、めぐを抱きしめる水銀燈。めぐの方も満更では無さそうだ。
雪「参りました・・・仕方ありません、ご案内します」

午前11時38分、有栖学園中庭にて
白「今朝、裏山を散策してたら立派な松茸を見つけたんですよ」
翠・蒼『松茸!?』
白「うんうん、良いリアクションありがとう・・・それはさておき、これは是非とも収穫しないと、と思いましてね」
蒼「採って来たという訳ですか」
白「そういう訳です。・・・あ、良かったらお昼ご飯、これ使って作ってもらえませんか?」
白崎はそう言って、松茸の入った籠を翠星石に渡す。
翠「良いですよ。しかし、沢山採れたですねぇ・・・ん?」
何かに気付いたのか、一本の松茸を手に取り鼻に近づける。
白「どうしました?」
翠「・・・松茸特有の匂いがしねーですぅ。これ・・・松茸じゃねーですぅ」
蒼「え?!でも、見た目は松茸だよ?」
翠「ちょっと待ってるです」
翠星石は一端家庭科準備室へと向かい、きのこ関係の本を持って中庭に戻ってきた。

翠「えーっと・・・あったです」
白「何々?『マツタケモドキ』?・・・確かに写真とこのきのこは同じですねぇ」
蒼「じゃあ、松茸とは違うんだ・・・残念だなぁ」
翠「まあ、茎の歯ごたえは良いですから、天ぷらや炒め物には最適ですぅ。じゃあ、これで炒め物を作るですぅ」

午前11時47分、裏山群生地にて
雪「・・・・・・無い・・・松茸が・・・無い・・・」
水「まさか、嘘の場所に連れてきた訳じゃないでしょうねぇ?」
雪華綺晶は首をぶんぶんと横に振る。
水「なら、どうして無いのよぉ?」
雪「・・・・・・分からない」
水「分からないじゃないでしょ~~!私の松茸はどこに消えたのよぉ!!」
一通り叫んだ所で、雪華綺晶を睨む。雪華綺晶はそのプレッシャーに思わず一歩下がった。
水「食べたんでしょう・・・・・・?」
雪「・・・・・・!!」
水銀燈が一歩進み、雪華綺晶は一歩下がる。
水「どうせ奪われるなら、全部食べてしまえって食べたんでしょう・・・?」
完全に目が据わっていた。恐らく全力で否定した所で言う事は聞かないだろう。
そう判断した雪華綺晶は脱兎の如く駆け出した。すぐさま水銀燈も後を追う。
水「待ちなさぁぁい!!きらきしょぉぉう!!」

午後12時32分、有栖学園家庭科室にて
3人『ごちそうさまでした!』
白「いやぁ、美味しかった~」
蒼「うん、本物じゃないのがちょっと残念だけど、なんだか贅沢した気分だったよ」
翠「そう言ってもらうと嬉しいですぅ。・・・流石にあれだけのきのこは3人じゃ食べきれないですねぇ」
白「明日、他の先生たちにおすそ分けしましょうよ。本物だって言って・・・」
蒼「ふふ・・・皆どんな反応するかなぁ?」
翠「雛苺が見抜けなかった時は同じ家庭科教師として情けねーです」
などと、和やかな1シーンが繰り広げられているとは、壮絶な追いかけっこをしている2人には知る由も無かった。

水「待ちなさぁい!私の松茸を返しなさぁい!!」
雪「だから、私は食べていません!」