ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 庭園

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

そう…その日はとても蒸し暑く、何をするにもやる気の出ないような日だった。
しかしそんな天気とは対照的に、校舎内には生徒たちの元気な声が響き渡っている。
そう、一番の心配事である期末テストも終わり、後数日すれば待ちに待った夏休み。
大掃除と言う、『めんどくさい』一大イベントを前にしても、その陽気な声は決して絶えることはなかった。
…ただ1人を除いては…
水銀燈「…やぁめた。」
真紅「やめたも何も、まだ何もしてないでしょう?ほら、いいから立ちなさい。」
水銀燈「…大体、何でこの暑い時期に草むしりなんかしなきゃいけないのよ?しかも、この私が…!何故、こういう重要なことを前もって…」
真紅「知らせたら、逃げるでしょう?全く…小学校の時からそうなんだから…。そのくせ、自分に関わるところだけは完璧に仕上げるくせに…」
水銀燈「うるさいわね…全く、何で私がこんな事を…」
真紅「いいから手を動かしなさい。私は保健室の前を…あら?」
そう言いながら向かった先…そこには小さな、そして控え目ではあるがよく整備された花壇が、ひっそりと佇んでいた。
アサガオにオシロイバナ、それにスズラン…どれも手入れが行き届いていて、まるでプロが育てたかのような出来栄えである。
その光景にしばし言葉を忘れていた時、遅れてやってきた水銀燈は彼女に対し、こう注意を促した。
水銀燈「ちょっとぉ…。それ、私が育ててるんだから、勝手な真似しないでくれるぅ?」
真紅「…あなたが?」
それはあまりに意外な一言だった。
普段なら、そんなものに見向きもしない彼女が、しかも言っちゃ悪いがこんな地味な花を、わざわざ自らの手で…
水銀燈「…何よ。ブサイクな顔がますます変になってるわよぉ?何か文句でもあるわけぇ?」
その言葉に、ハッと我にかえると彼女は静かにこう言い返す。
真紅「…ま、何にしても、こういうことに興味を持つのはいいことだわ。その調子で、あっちの地区も綺麗にして頂戴。」
それだけ告げると、彼女は何か言いたげな水銀燈を残し、足早に職員室へと戻っていった。


真紅「…と言う訳なのよ。あの子にしては意外だと思わない?」
蒼星石「うーん…正直ちょっと意外…かな?あの人なら、胡蝶蘭とかそういう高価な花が好きだと思ったんだけど…」
女子A「しかも、自分で育てるなんて…。あの人がそんなめんどくさい事、わざわざします?絶対、何か裏が…」
男子B「いや、あの人は興味のあることはなんでも自分でやりたがるから…でも…」
真紅「…何か引っかかるのよね…」
真紅が水銀燈と別れてから10分後、職員室ではさっき真紅が見たものについての話で持ちきりとなった。
たまたま職員室に残り掃除をしていたものは、その手を休め、思い思いの考えを述べていく。
その時、それまで黙って話を聞いていた翠星石が、みんなに対しこう言い放った。
翠星石「おい、おめーら!そんな風に色眼鏡で見たら、水銀燈が可哀相ですぅ!!あいつだって、一応女の子ですよ!だったら、少しぐらい興味を持ってもおかしくは無いですぅ!!」
それだけ言うと彼女はほうきを構え、また掃除を開始する。
みんなに対し怒鳴った手前、不機嫌そうな顔をしてはいるが、どことなくその顔も嬉しそうだ。
多分、自分と同じように彼女が植物に興味を持ってくれたことが嬉しいのであろう。
その様子に、皆はそれ以上何も言えなくなると同時に、先ほど自分が彼女に対して言ったことを恥じた。
確かに、彼女は変わった。
たまに人を騙したり暴力を振るったりはするが、その一方で文句を言いながらもしっかり部活を切り盛りしたり、人助けも(本人は頑なに否定してはいるが)しているようだ…。
もしかしたら、彼女は本来のあるべき姿へ戻りつつあるのかもしれない…
女子A「私…今度からは怖がらずに、普通に接してみようかな…。」
その言葉に、皆はまるで自分自身の気持ちを重ねるように、「うん」と大きく首を縦に振った。
だが、一方で翠星石はこんな事を考えていた。


…確かに皆が言うように、よくもまあこれだけ何の共通点も無いものばかりを集めたものだ…。
そりゃあ、あいつが花に興味を持ってくれるのはうれしいが、確かに真紅が言うように何か引っかかる…
さっきは、つい勢いであんなことを言ってしまったが…やっぱり、もうちょっと考えて行動を…それにもう少しだけ素直になったほうがいいのかなぁ…
でも、何かみんなうまく修まってるみたいだし、今更「やっぱり何か引っかかる」なんて言いだすのもちょっとまずいだろうし…
ああ…どうしようかなぁ…えーと、何かいい手は…
…あ…そういえば、以前メイメイがこんな事を言っていた…
「活け花では、どんな花を選ぶか…そして、その配置によってその人の心が大体分かるんです…。」と。
もしそれが正しいとするならば、あいつの花壇にはあいつの協調性の無いところがそっくりそのまま現れたのだろうか…?
でも、あいつがそんなミスをするとは到底思えない…
なら、見えっ張りのあいつが何故そんな地味なものを選んだのか…?
何か、もっと深い意味があるような…
翠星石「…あっ…!」
そう思わず声を洩らすと、彼女の顔がみるみる青ざめていく。
そう…これらの植物には、ある隠れた共通点があった。
ガチガチと、歯を震わせながら、彼女はこう続けた。
翠星石「す、すぐに止めさせるです…!と…特にスズランだけは、何が何でも処分するですぅ!!」
そのただならない様子に、真紅は急いで薔薇水晶の元へと向かった。
そして…


蒼星石「おかえりなさい。どう?あの子の様子は?」
薔薇水晶「うん…やっと事の重大性に気がついたみたい…。今、反省文書いてる…。」
真紅「5時間42分31秒…。本当に長かったわね、お疲れ様。」
翠星石「…それにしても、ろくでもないことばっかり考えやがって…。全く、どうしようもねぇ野郎ですぅ!」
真紅「ホント…今まで何も起こらなくてよかったわ…。でも、あんな身近なものにそんな毒があるなんて…」
そう…彼女が草花を育てていたのには訳があった。
彼女が選んだ植物にはどれも強い毒性があり、中でもスズランは、有毒物質コンバラトキシンなどを含む有毒植物で、過去には子供がスズランを活けた水を誤飲して死亡した例もあり、大変危険なものである。
どうやら、『冗談』で誰かに一服盛ろうとしていたらしいのだが…
翠星石「そう言えば、あいつは一体誰を標的にしようとしてたですぅ?」
薔薇水晶「…教頭先生。でも、何で銀ちゃんはそこまであの人の事を嫌ってるんだろう…」
真紅「…自分より上に立つものが嫌いなんじゃない?それに、この前も勤務態度の事で怒られてたみたいだし…」
翠星石「そうですか…でも、ちょっと残念だったですぅ…。やっとあいつもガーデニングの楽しさを分かってくれたと思ってちょっとだけ…ほ、本当にちょっとだけど嬉しかったですのに…」
薔薇水晶「…ううん、大丈夫…。銀ちゃん、『もうやらない』って約束してくれたし、きっと分かってくれる日が来るよ…。」
それだけ言うと、彼女は翠星石を優しく抱きしめた。
「あれだけきつく言ったんだから、もう大丈夫…銀ちゃんならきっと分かってくれたはず…」
そんな自身の希望を胸に抱きながら…
その頃、当の本人はと言うと…


水銀燈「…えーと、『これからは、生活態度と仕事への姿勢を改め、二度とこのようなことのないように努めます。』…こんなもんねぇ。あーあ…外真っ暗じゃなぁい…。全く…何であの子はこんなくだらないことに時間を…」
雪華綺晶「ばらしーは、そういうことには時間を惜しまないから…。」
水銀燈「チッ…せっかく、もう少しであの道化ウサギを始末できると思ったのに…。今度はどうしようかしら…。通常より大きいサイズのお餅を食べさせて、窒息死させるとか…正月まで待たないといけないからこれはパスね…。えーと、何か無いかしら…。なるべく私に足がつかないような…」
雪華綺晶「…。(ああ…こんな事を軽々しく言うから、この前相続税の話をさせてもらえなかったのか…)」
水銀燈「大体、みんなもあのウサギのこと嫌ってるはずなのに、どうしてこう邪魔ばっかり…」
雪華綺晶「イッポンシメジ…」
水銀燈「え…?」
雪華綺晶「イッポンシメジとかツチスギダケなら、毒性はあるけど素人には気付かれにくいよ…。今度の林間学校の時、きざんで鍋に入れちゃえば…」
水銀燈「まぁ…いい考えねぇ…♪でも、やるのならドクツルタケを使いたいわぁ♪生徒がマッシュルームと間違えて入れちゃったって事にしてぇ…」
雪華綺晶「あの『死の天使』を…!?面白そう…!お姉様、素敵…♪」
…全く反省していなかった。
そして、軽率な行動がのちにこの大変な事態を招こうとは、まだこの2人は何も気がついていない。
2006年7月…こうして彼女たちは、この学校に来て3回目…もしくは2回目の夏休みを迎えるのであった。