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雛「今日は家庭科の授業の一環で近くの有栖保育園に訪問するの」 雛苺の発言に教室は微妙な空気に包まれる。 家庭科の授業、と言うと大抵は裁縫と調理実習を思い浮かべるが、こうした授業も有るのである。 とは言え、流石にこの年で園児と遊ぶというのも何だか照れくさい。 それがこの微妙な空気の原因だった。 雛「さぁ、皆付いて来るのよ。途中でサボったりしたら、めっなのよ~」 この空気に気付いているのか居ないのか、いつも通りの雛苺だった。 保母「は~い、みんな集まって~。今日は近くにある有栖学園からお兄ちゃんお姉ちゃんが    みんなのために遊びに来てくれたわよ~」 保母さんの言葉に子供達は喜んだ。どうやら大分前から楽しみにしていたようだ。 保母さんに代わって雛苺が挨拶する。 雛「有栖保育園の皆、今日はこんにちはなの~」 子供達『こんにちは!!』 雛「・・・・・・皆の元気な声にちょっとびっくりしたの」 こほんと咳払いを一つ。 雛「今日は有栖学園の生徒が皆と一緒に遊ぶの。皆は実のお兄ちゃんお姉ちゃんだと思って思いっきり遊んで欲しいの。    でも、お兄ちゃんお姉ちゃん達は恥かしがり屋さんが多いから皆の遊びに誘って欲しいの」 子供達『はーい!』 雛苺の後ろで生徒達はちょっと苦笑いをする。雛苺は後ろを振り返る。 雛「お兄ちゃんお姉ちゃんたちも積極的に遊んであげて欲しいの」 生徒達『・・・はーい』 保母「それじゃあ、みんな分かれて一緒に遊びましょう!」 子供達『はーい!!』 かくして、有栖保育園での訪問実習(実際は遊ぶだけ)が始まった。 最初、男の子は男子生徒と、女の子は女子生徒と一緒になって遊ぶ事になった。 女子生徒の方は次第に馴染んで一緒に遊ぶのだが、男子生徒の方は気恥ずかしさで積極的にという訳には行かなかった。 雛(毎年の事だけど、もう少し遊んであげて欲しいのよぅ) 思春期の男心というのは難しいものである。 しかし、そんな男子の中の1人だけ積極的に子供達と遊ぶ者が居た。 生徒K「よーしお前ら、次は何する?」 子供A「えーと、鬼ごっこ」 生徒K「よし、じゃあ俺が鬼をやろう。10数えるから早く逃げろよ」 そう言って1、2、3と数え始める。子供たちはきゃっきゃと逃げ出した。 生徒K「8、9、10・・・よし、それじゃ追いかけますか」 追いかけ始めるK。当然身体的に差が有るので子供達に合わせて小走りである。 生徒K「よし、捕まえた。これで全員かな?」 子供B「ねえ、またやって」 生徒K「結構疲れたなぁ、どうしようっかなぁ?」 子供C「もっとやって、もっとやって!」 生徒K「仕方ねえなぁ。じゃあ、もう一回だけだぞ?」 そう言って再び数え始めるK。子供たちが逃げ出したのを見て雛苺はKに近づく。 雛「K君凄いの。子供たちとここまで一緒になって遊ぶ子初めて見たの」 生徒K「え?そうですか?これぐらい普通だと思うんだけど」 雛「ん~ん、いつもはあそこに居る皆みたいな男子がほとんどなの。K君は弟か居るの?」 生徒K「いいえ、妹が居るくらいですよ。でも、従兄弟達の中で俺が一番年上でしかも他は子供ばっかだから     その所為で扱いに慣れてるんですよ」 雛「そうなんだ。でも十分立派だと思うの」 生徒K「そうですかねえ。あ、いけね、もう10過ぎてるな。それじゃ、行って来ます」 雛「行ってらっしゃいなの」 その後、雛苺は女子の方も回って子供たちと一緒に遊んだ。 その時一緒に居た女生徒は後にこう述懐した。「雛苺先生と園児達の区別がつかなくなった時があった」と。 雛苺は再び男子の方へと向かう。そこでは、Kが両腕・両足に子供達をしがみ付かせて歩いていた。 雛「何やってるの?」 生徒K「さあ・・・?気がついたらこんな事に・・・」 Kが言うには、子供たちを一人一人持ち上げてぐるぐる回っていたら、いつしか周りを囲まれていたという。 その内、一人一人では対応しきれないと思ったKは一度に満足させる方法を聞いてみた。 その結果が今の5人合身状態である。なんでも今の戦隊のロボがこんな感じだとか。 雛「それって辛くないの?」 生徒K「かなりキツイです・・・」 いくら園児とはいえ、大きい子なら25Kg近くある。それを片腕で持ち上げるのだ、その労力は計り知れない。 雛「K君気をつけるのよ。皆もこのお兄ちゃんだけじゃなくて、他のお兄ちゃん達とも遊んであげて欲しいの」 そう言って促すが、子供たちの一番人気はKだった。 それから一時間経ち、訪問実習の時間が終わった。 Kはその時保育園の遊戯室に汗だくになって大の字に寝転がっていた。 最終的に男の子達の大半を彼が引き受けて遊んでいた。 保母「それじゃあ、みんなでちゃんとお礼を言いましょうね」 子供達『ありがとうございました!!』 雛「こっちもありがとうなの~。また来週違うクラスの皆を連れてくるの~」 元気な子供たちの言葉に元気に返す雛苺。 雛「ほらK君、そんな所で寝たら風邪ひくの。早く起きるの」 生徒K「・・・・・・」 雛「K君?」 生徒K「・・・・・・あ、今起きます」 よろよろと立ち上がるK。流石に体力の限界なのだろう。 雛「それじゃあ、皆さようならなの~」 子供達『さようなら!!』 かくして、有栖学園一行は保育園を後にした。 その道すがら、雛苺はKに話しかける。 雛「随分子供たちに人気だったの」 生徒K「・・・そうっすね」 雛「保父さんとか似合うと思うの」 生徒K「保父さんですか。どうかなぁ、第一たった1時間半ぐらいでこんなにバテてるんじゃ勤まらないんじゃあ・・・」 雛「そんな事無いの。大切なのは子供たちと真剣に向かい合えるかなの。K君はその点大丈夫なの」 生徒K「保父さんねぇ・・・」 そう言って空を見上げる。雲ひとつ無い快晴だった。 生徒K「先生はどうして先生になったんですか?」 雛「うぃ?・・・小さい頃からの夢だったの」 今でも十分・・・と言いそうになったが、ぐっとこらえる。 雛「いつも優しくて何でも知ってる先生を見て、ヒナも先生みたいな先生になりたいなぁってずっと思ってたの」 生徒K「そして、その夢が叶った・・・って訳ですか」 雛「まだまだなの。今でも失敗ばかりなの・・・でも、少しずつ向かっているの」 そう言った雛苺の横顔に見とれるK。 生徒K(夢・・・か) そんな彼の背中を押すように、一陣の風が通り過ぎていった。 それから数年後、どこかの保育園にとある保父さんが赴任したそうだが、それはまた別の物語である。

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