猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

蒼拳のオラトリア 第八話

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『蒼拳士』

 東方の海底に棲むという青き龍の住まいで修練を積み、その拳、あるいは爪を使うことを特別に
許されたシャコ族のことを、その蒼き戒めを砕くさまから『蒼拳士』と呼ぶ。
 彼らシャコ族の拳は破壊的な威力を誇るが、その力は青き龍によって誕生と同時に封じられる。
しかしその力を正しき行いのために用いると誓い、修練を積み一人前であると認められてはじめて
一時的にその戒めを解く『許可を申請』できるようになるのである。
 青き龍の薫陶を受け、さらに落ち物の書物からも積極的に闘術を取り入れる彼ら蒼拳士の実力は
凄まじく、封印を解除したその力は幾多の猛者を打ち破ってきたという。
 また、シャコのことを獅子国で『青龍蝦』と表記することがあるのも、この蒼拳士の存在が理由
であると云われている。

 しかしながら青き龍より印可を受けるまでに要する鍛錬は並大抵のものではなく、受け継ぐべき
シャコ族自体も、その閉鎖的な性向から徐々に衰退を余儀なくされており、『蒼拳』の伝承が将来
途絶えてしまうことが危ぶまれている。


  ――猫井書房『世界の伝承武術』より抜粋



  蒼拳のオラトリア 第八話「本当に、ありがとう」



「…バカじゃないの」
 目を覚ましてすぐにちゃっちゃとひとっ風呂浴び、いつものふてぶてしさを取り戻したフーラは、
いまだ寝台から起き上がれない俺の質問にただ一言だけそう返した。
 質問内容は当然あれである。『満足させたんだからなんか俺にいいことないの?』
「あんた何聞いてたのよ。あれはあんたを始末するための口実くらいのつもりで言ったセリフで、
どうしたところであんたをバラしちゃうつもりだったのよ。そのくらいわかりなさいよ真性バカ」
「いや、それでももしかしたらって思うじゃん…ていうか、ならどうして今は何もしてないんだ?
正直、昨夜ムリしすぎて俺いま全ッ然動けないんだけど…」
 相変わらず湿って気持ち悪いシーツに身を沈めて言うと、フーラの顔がちょっと赤くなった気が
した。…照れてる?
「ッ…もう、あんたバカすぎて殺す気にもなれないわ。こんなの海に撒いたら環境破壊よ、世界の
崩壊に一歩近付くわ」
「うわ、そこまで言うかお前…」
 ヒトを産業廃棄物扱いしやがって…その産廃男のナニでよがってたのはどこのどいつでしょうね。
「何いやらしい目で見てるのよ…もうサービスタイムは終わりよ、残念でした。今後ちょっとでも
あたしに触れようとしたら、そこだけは凶暴な××引っこ抜いて干し××にしてやるわよ」
 うぎゃあっ、想像するだけで痛そうな刑罰考えてんじゃねえ!
「でも……わかったわよ、一つだけ考えておいてあげる」
「…へ?」
「二人の従者の件よ……トリアが望むなら、それもいいかもしれない」
 なんだよ、急に(性根の)きれいなフーラになりやがって…。
「まあ、決めるのはトリアと龍王様よ。結局あんたはただの居候で落ちつくかもね」
「俺もそう願ってるよ、腕っ節にはあんま自信ないし」
 それを聞いてフーラがかちんと来た表情になった。
「…あんた、トリアのこと助けたくないの?」
「従者じゃなきゃ助けちゃいけないのか?」
 俺の言葉に、フーラが一瞬毒気を抜かれたような顔になった。
「俺がなりたいのは、トリアさんの……そうだな、家族なんだ。まあ、この世界的に言えば単なる
ペットになっちまうかもしれないけど、それならそれで構わない」
「どうしてよ」
「ペット…いや、家族っていうのは、いるだけでいいんだ。いるだけでその人の支えになる。損得
じゃなくて、なんていうかこう……うう、難しい上に恥ずかしいな、この定義」
「………」
「とにかくっ! トリアさんが傷ついてるのなら、そばでゆっくり見守ってあげる人が必要だろ。
フーラだって、そうなりたいからトリアさんの従者にこだわってるんだろ?」
 フーラは無言で俺の顔を見ていたが、やがてぽつりと呟いた。
「…あんたの言う、二人の従者ってそういうこと?」
「ああ…でも、多分三人だな。ノーマさんもきっと協力したいって言い出すだろうから」

「わかってるじゃないか」

 びくうっ!と、フーラと二人して硬直した。とっても聞き覚えのある声だった。
「フーラが一晩中帰ってこないので心配してたんだが…なるほど、こういうことになっていたか」
「あ、あの…ノーマさん?」
「ち、違うのよ、これは…」
 扉の影から現れたノーマさんに、二人してうろたえる。対してノーマさんは落ち着いた声で一言。
「フーラ…なにか垂れているぞ、拭いてきなさい」
「ッ…!?」
 フーラは瞬時に股間をおさえ、パニックで慌しく体色を変えながら飛び出していった。あーあ、
やっぱ中出し放題はまずかったか…。
「…ヒトと我らの間には子が為せない」
 …相変わらずテレパシストかと思うようなタイミングですねノーマさん。
「だからこそ貴族連中の中には、君らヒトを好き放題できる性処理道具として扱う輩がいるのだ。
…とはいえ、出来ないにしても年頃の娘に好き放題するというのは感心できたことじゃないな」
 表情こそわからないが、ぎろりとかなりの迫力で睨まれた感じがした。うう、すみません…でも
俺を押し倒したのはあなたのかわいい養い子の方なんですよぅ…。
「冗談だよ……娘が、迷惑をかけたようだな」
「ああ、いえ…」
 わかってたのかよ…ほんと人の悪い。
「フーラが一番悩んでいたとき、私はそばにいてやることができなかった。若かった私は下される
任務とフーラのことをうまく両立できなかった…今も悔いているよ」
 沈んだ声でそんなことを言われ、俺はノーマさんに何も言う事ができなかった。無言で見ている
俺に、ぽんとドリンク剤のようなものが投げ渡された。
「効き目はヒト向けに弱めてあるが、それでもかなりの薬効がある。流石にその姿をトリアの前に
さらすわけにはいかんだろう?」
「あ、ありがとうございます…」
 素直に感謝して、コルク栓を抜き中身をあおる。
 ……うえ、あんっっっっっまっ。ドリンク剤を数本分鍋に煮詰めて一本分に凝縮したように甘く、
暴力的な甘味が頭のてっぺんに突き抜けてから全身に染み渡る。毒手を食らって衰弱し痩せ細った
肉体も湯気を立てて超回復しそうな劇物に、俺はベッドの上をのたうちまわりそうになった。
 ていうか、これが薄めたやつなら原液はどんな拷問よ? 想像するだけでザラメを噛み締めた時
のように背筋が凍る。そんなの飲んだら一撃で内臓が焼け落ちそうだ。
 だが、たしかに効果はばつぐんだった。さっきまで起き上がるのもつらかった筈の体が軽くなり、
多少だるさは残るもののちゃんと寝台から立ち上がることができた。

――復・活ッ! 岩原南、復活ッ!

「どうやら効いたようだな」
 無意味にガッツポーズしてるところを、ノーマさんに冷静につっこまれなんだか空しさが広がる。
 …バカやってないで俺も風呂入ってこよ。


「ふいぃぃ~…っ」
 海底温泉といった風情の湯船に浸かると、残っていた気怠さが湯に溶け出すような感覚を覚える。
なぜか湯船のど真中に浮かべられた小さな帆掛け舟に背中を預け、俺はゆったり気分にひたった。
「しかし、まさかフーラに童貞奪われるはめになるとは思わなかったな…気持ち良かったけど」
 こきこきんっと首筋の凝りをほぐしながらなんとなくひとりごちる。
「んんーっ!…どうせならあの時トリアさんに童貞もらわれてたら、また展開が違ったのかねっと」
 伸びをしながらそんなことを呟いたそのとき、

「…ミナミ?」

 背後からそんな声がした。
「と、とととトリアさんっ!?」
 慌てて立ち上がって振り向くと、帆掛け舟の陰から触角がつんつんと飛び出していた。入る時は
薄暗さと湯気で気付かなかったが、反対側で湯に浸かっていたらしい。存在を確認すると同時に、
今自分が裸であることを思い出して再びざぶんと湯に身を沈める。
「き、聞いてました…?」
「あの時私にどうとかって言ってたのはちらっと聞こえたけど…なんて言ってたの?」
「な、なんでもないっす、ただの独り言っすから! ははは…」
 最初の一番ヤバいあたりはどうやら聞かれてなかったと知り、俺はほっと胸を撫で下ろした。
 畜生、ここって混浴だったのかよ…あやうくフーラとイタしたことをトリアさんに知られるとこ
だった…。風呂に入って気が大きくなった俺も悪いけど、心臓に悪い一瞬だった。
「…ごめんね」
「いや、先に入ってたのに気付かなかった俺が悪いんですからそんな…」
「そうじゃなくて」
 水音がして、トリアさんが身じろぎするのを感じた。
「龍王様がミナミのこと、従者だとか言い出したこと…ろぼっとのことで来てもらっただけなのに」
「ああ、そのことも別に…」
 フーラにはあんなえらそうなこと言ったけれど、さてどう伝えたものか。
「俺は、その…トリアさんと…」

「私は、もう従者をつける気はないの」

 …なんだって?
 思わず耳を疑うセリフに、俺は言葉を失った。
「私の未熟さのために、たくさんの人に迷惑をかけた…フーラにも、ノーマにも、龍王様にも…」
 いや、それは…トリアさんを陥れた裏切り者が悪いんじゃないのかよ…。
「今回の事件でもそう…私一人では力が足りず、結局たくさんの人の助けがあったから解決できた」
 だって、あんなの一人じゃどうしようもないに決まってるじゃないか。いきなり数十tの鉄の塊
が降ってきたのを、町中の力できっちり捌き切ったことの方が俺には十分驚きだ。
「私に蒼拳士である資格なんてない…ずっとひとりで、あの砂浜の掃除をしていられればそれで…」

 我慢できなかった。

 立ち上がり、ざぶざぶと湯を蹴立てながら帆掛け舟を迂回して、俺はトリアさんの前に立った。
「え…ミナミ、どうし」

  ぱんっ

 張り飛ばした勢いでトリアさんの遮光器が外れ、湯船に落ちた。
 頬をおさえ俯くトリアさんを見下ろし、俺は無性に腹が立っていた。
「たしかにないな、そんな資格……龍王様にさっさと返上しちまえ」
 フーラの想いを、港町の人たちの感謝を、龍王様の信頼を、彼女は踏みにじっていた。
「蒼拳士っていうのは恩知らずにつく称号じゃないだろ、いいから返しちまえ」
 俺の言葉に、水面にぽちゃりと波紋が広がった。
「俺は、トリアさんがどんなことをしてきたか知らない。俺が知ってるのは、こっちに落ちた俺を
助けてくれて、朝はいつも眠そうで、勇敢だけどちょっとセンスのおかしいトリアさんだけだから」
 …いや、だってあのネコミミはダメだろやっぱり。遮光器も、もうちょっといいデザインにして
もらえなかったんだろうかといつも思ってた。
「でも、フーラにちょっと異常なくらい慕われて、港町の人に感謝されてたトリアさんは、間違い
なく誇りに思える人だと俺は確信してるんだ」
 …だって、あの時。
「勝算なんかないのに、落ちてきた軍艦に真っ先に駆けつけたのは他ならぬトリアさんじゃないか」
 あのとき俺にまわりを見る余裕なんかなかったけど、その姿をきっと町中の人々が目の当たりに
していたはずだ。
「魔法のネットの積載量なんか確実にオーバーしてて、あと一瞬でちぎれそうで…でもその一瞬を、
トリアさんの一撃が浮かせて、かろうじてもたせた。だからみんなの魔法が間に合って、助太刀の
人たちも間に合って、軍艦をぶっ飛ばすだけの戦力が揃った…そうじゃないのかよ!?」
 トリアさんは無言だった。波紋がいくつも広がって、いつしか俺も泣いていた。
「あのとき、その団結の様子を見て…俺は泣いてたんだぜ。トリアさんの一瞬の行動が町中の人の
力をまとめあげる姿を見て、ああ凄いな、素晴らしいなって……だけど俺はこの中に入れないのか、
哀しいなって思ったら、涙が止まらなかったっ」
 ぎりっと拳を握り締めて、俺はトリアさんに問うた。
「蒼拳士っていうのはあれか、拳一個で世界を守んなきゃいけないのか! たしかにあんたらの拳
っていうのは、俺みたいなヒトのちっぽけな拳に比べりゃ力は強いのかもしれないよ。だけどな、
そんなもん一個で支えられるほど、この世界はちっぽけなのかよ!」
 俺の握った拳をトリアさんが見つめる。目は前髪に隠れて見えないが、たしかにそれを感じる。

「あのとき、町の人たちをひとつにした蒼い光。それが蒼拳士なんじゃないのかよ! 答えろよ、
オラトリア!!」

 互いに無言で対峙する。
 俺は鼻をすすり上げ、涙をぐいっと腕で拭った。…体表が冷たい、さっさと浸からないと湯冷め
しちまいそうだ。
 そのとき、トリアさんがくすりと吹き出した。あ、え、ちょっと…?
「…はだかで言ってるから、ちょっとかっこ悪いよミナミ」
「な……くっ、あえて忘れようとしてたことをっ!」
「でも……ありがとう」
 トリアさんも、ぐいっと涙を拭ってこっちを見た。
「本当に、ありがとう」

 強い意志を取り戻した瞳は、蒼穹に、或いは晴れた日の海原にも似た、透き通るような蒼だった。


「ん…ふ……ちゅ…」
 湯船に浸かって体をあたためながら、俺はトリアさんと唇をかわした。抱き合いながら、水面下
で互いに体をまさぐりあう。
「ん…はあっ…」
 トリアさんの細身の肢体を後ろからかき抱き、彼女の首筋にキスを降らす。ヒレ耳に唇が達する
と、トリアさんの体がふるっと震えた。
「あっ……かたく、なってる…」
 昨夜あんなに酷使されたのに節操のない俺の分身は、トリアさんの痴態に暖気を終えてしまい、
いつでもいけるとばかりにすでに彼女の腰を突ついていた。
 …ていうか元気すぎないかお前。よもや、ノーマさんにいただいたドリンク剤にはそういう成分
も入ってたんだったりして……うう、なんかすべての展開が読まれていたような気分になってきた。
 のぼせかかっているトリアさんを帆掛け舟の上に寝かせ、あらためてトリアさんの肢体を眺める。
腕を包む篭手と、あと胴体と腿の何箇所かに甲殻が点在しているものの、上気して色めいた絹肌は
どうみてもヒトと変わりなかった。
「見ない、で…恥ずかしい、から…」
「恥ずかしい? いっつもほとんど裸みたいな水着を着てたのに?」
「それは…だって……はうっ」
 双丘の上にくちづけると、トリアさんの体が撥ねた。
「はっ……あ…や……くうっ…」
 胸からへそ、太股……時折甲殻の継ぎ目などにも舌を滑らせると、そのたびトリアさんが弓なり
になり快感に震える。…水揚げされたシャコってこんな感じかなぁ、などと埒もない考えが浮かぶ。
「俺の裸同然の姿を、毎日見てたんでしょ…今ぐらい俺にも愉しませてよ」
「は、ん……いじわるだ、ミナミ…」
 薄明かりの中に光るようなトリアさんの肢体を存分に味わうと、俺ももう我慢できなくなった。
「ほら、俺の……わかる?」
 もうすっかりぬかるんでいるトリアさんのそこに押し当てると、顔を紅潮させ、黙って頷いた。
「ミナミ……いいよ…」
 同意とみて、俺はゆっくりと腰を進めた。
「はっ…あぁ…!」
「くぅっ…!」
 きつく、それでいて潤った膣内で、俺の分身が無数のひだに撫で上げられる。
 独立した生物のように蠢くそこは、俺のモノを歓迎してるのか追い出そうとしているのか盛んに
蠕動して、俺はあっという間に余裕を失ってしまった。
「…動く、よ」
「あ、う……ふあっ…!」
 トリアさんの返事も待てず、俺は腰を動かし始めた。もう止まりそうになかった。
「は、ふ、あ…ミ、ミナミっ…ミナミぃっ」
 必死に両手を伸ばされ、俺は彼女の上体を抱きしめて答えた。対面座位で互いの唇を求めあう。
 二人とも昂ぶっていたので、限界はすぐだった。
「トリ、ア……中に…!」
「うん、きて……なかに、なかにたくさんっ…!」
 承認された以上、もう我慢の必要はなかった。最後の10mを泳ぎ切るときのように、俺はトリア
の中を全力でかきまわし…一番奥に、タッチした。
「っ……ぁ……ぁぁ……ッ!!」
 トリアの声にならない掠れた叫びを耳に感じながら、俺は俺の全部をトリアの中心にぶちまけた。

「っ…はあっ……はぁっ……は……」
「…ふぅ……ふぅ………あ…」
 互いに荒い息をつきながら、俺は自分の主人になるだろう女(ひと)を抱きしめた。
 もう、ただの居候ではいられそうにない。ペットだか従者だかは今後次第だけど、俺はこの人の
そばにいたい。
 …まあ、うるさいタコ女のおまけつきになるだろうが、そのくらいは我慢するさ。
 トリアさんの蕩けたような蒼い瞳を見つめながら、俺はそんなことを考えていた。


――そんな、至福の瞬間を俺が味わっている頃。

≪第一次情報収集、完了と判断……プロテクト解除≫
 …これまでで一番の面倒事が、
≪テスラコイル、ヴァンデグラフ・ジェネレーター、対磁シールド……すべて正常≫
 客間の隅でひっそりと、目を覚ましていた。


≪『モントーク・ボーイ ナンバー5』……帰還シークエンス開始≫



(つづく)

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