ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 世は数に満ちて

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生徒K「数学なんて社会に出たら役に立たないと思うんだけどなぁ・・・」
Kの言葉に思わず微笑む蒼星石。
K「何がおかしいんですか?」
蒼「長い事教師をやってきたつもりだけど、その台詞を言う子は初めてだなぁって思ってね」
そう言って再び笑う蒼星石。
夕暮れ時の教室で二人は向かい合っていた、と言っても先程まで何人か居たのだが。
Kは目の前にあるプリントを再び見つめる。そこには彼にとって暗号とも思える文字や数字が並んでいた。
そう、彼は数学の補習授業を受けていた。
他にも何人か受けていたのだが、皆プリントを提出してとっくに帰っている。
傍から見れば羨ましいのかも知れないが、彼にしてみれば拷問である。

蒼(さて、どうしたものかな?)
蒼星石は悩んだ。実はKの成績はそれほど悪い物ではなかった。むしろ、英語や国語は平均以上である。
しかし、彼にとって最大のネックは数学とそれを活かした物理であった。
おそらく勉強が出来ないわけではなく、数学に関する興味等が薄いのだろう。
それが先程の「社会に出たら数学なんて・・・」という言葉に繋がった。蒼星石はそう考えた。

蒼「社会に出たら本当に数学は必要ないと思うかい?」
K「だってそうじゃないですか?今までこんな事しなくても生活できたんだし・・・」
蒼「なるほど、確かに普段の生活なら買い物をする時にお釣りの計算とかができれば充分だね。
  そう考えたら、四則演算と小数と分数の計算がちゃんとできれば問題無いね」
Kは少し驚いた。自分自身甘えた言葉だなと思っていたのだが、小言を言うどころか肯定されるとは。
蒼「けれど・・・」
と、言葉を繋げる蒼星石。ああ、やっぱり小言かと内心思うK。
だが、蒼星石は意外な事を言ってきた。

蒼「ところで、K君は野球ゲームとかやった事あるかい?」
K「え?テレビゲームの?それなら幾つか持っていますよ」
いきなり何を言い出すんだろうかと思うK。蒼星石は構わず続ける。
蒼「それじゃ、ピッチャーが投げる球やバッターが打った球はどのように決まると思う?」
K「それは、コントローラーで球種やコースを決めて・・・」
蒼「もっと根幹の部分だよ」
K「それなら、プログラムで・・・」
蒼「では、そのプログラムにはどんな事が書かれていると思う?」
K「えーと、・・・打球の計算式とか?」
蒼「そこまで分かれば上出来だね」
そう言って黒板に放物線を描いていく。
その放物線の下に人らしきものを描く、あまり上手では無かった。

蒼「放物線の軌跡を描くのに、最も簡単な式は何だと思う?」
K「えーと・・・二次関数ですか?」
蒼「そうだね。だから今描いたこの放物線も左右対称なら二次関数で表す事が出来るよ」
ちょっと綺麗じゃないけどね、と笑う蒼星石。
蒼「実際の野球はもちろん、ゲームでも物理が関わってくる。その辺もちょっと考えてみようか」
そう言って、今度は大きな円と少し小さな円を繋げて描く。小さな円は大きな円の少し右上に描かれた。
蒼「大きい方はバット、小さい方はボールだと思って。ボールはピッチャーからキャッチャーに向かうから、左方向に
  バットは反対に右方向に移動するとしよう」
今度はそれぞれの円の中央に矢印を描いていく。
蒼「この時、もしバットとボールが正面からぶつかった時はライナー性の当たりになるね。でも少し上に当たっているから
  放物線を描くわけだけど、それを知るためにはどんな計算をすれば良いと思う?」
K「う~ん、分かりません・・・」
蒼「角度を使用する計算に必要になってくる物と言えば?」
K「三角関数?」
蒼「ご名答。それじゃあ、分かりやすく45度にしようか」
バットの円の中央に先程の矢印と重なるように矢印を描き、45度と書き加える。

蒼「後はベクトルの計算だね。仮にボールを7、バットを10として考えてみよう」
そう言いながら数式を書いていく。コサインを使ってバットの力(約14)を求め、ボールとの計算を行う。
バットa(10,14)、ボールb(-7,0)を足して打球c(3,14)が導き出される。
蒼「後はこのcの大きさを求めてあげると・・・約14.31だね。先程のバットのベクトルとのアークコサインを使えば・・・
  まあほぼ45度で打ち返されるね。最後に先程のベクトルの大きさを速度として角度、重力(9.8)をなどを考慮して
  飛距離の計算をすると・・・20.89になるね」
本当はもっと複雑な計算をしなくちゃならないんだけどね、と言ってチョークを置く蒼星石。

その後も、3DCGにはベクトルや行列式、シミュレーションゲームには確率や独自の計算式があると説明する。
Kは聞き入っていた。普段特に気にすることなく操作していたゲームに、それほどの数学が集約されていたとは・・・。
蒼「どうだい?これでも社会に数学は役に立たないって言うかい?」
K「いえ、その・・・すごいなぁって思いました。ただそこまで出来るようになるかは自信ありませんけど」
蒼「一歩ずつ進めば良いよ・・・って、今何時?!」
気がつけば下校時刻をとっくに過ぎており、それに気付いた蒼星石は「プリントは明日提出して」と慌てて教室を出て行く。
職員室へと向かう蒼星石の顔は笑顔だった。
蒼(これで彼も数学を好きになってくれるかな)

蒼星石の予想通り、その後のKの数学の成績は見違えるほど良くなった。
ただ、職員室に質問に来るたびにゲームで例えなくてはならなかったのが玉に瑕だった。
それでも蒼星石は数学好きな生徒がまた1人増えた事を心から喜んだ。