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> お題『金糸雀が濃硫酸を使った実験で失敗』 金糸雀「えーと…今日は教科書53ページ!濃硫酸を使った実験を行うかしらー!!ちなみに、硫酸の化学式は…」 そう言いながら、金糸雀は黒板に硫酸の化学式を書き記した。 外は相変わらずの五月晴れ。そのせいもあってか、生徒の中にはこっくりこっくりと舟をこぐ者もいる。 しかしそんな陽気にもかかわらず、ある者は震えながら金糸雀にこんな質問を投げかけた。 男子A「の…濃硫酸って、よく漫画とかで出てくるアレのことですか…?」 彼の脳裏に、昔見たアニメの一場面が浮かんでくる。 触れたら最後…骨まで溶かす濃硫酸… それが彼の考える、濃硫酸のイメージだった。 そんな彼の様子に、彼女は笑いながらこう答えた。 金糸雀「そんなに心配しなくても大丈夫かしらー!!少し火傷になる程度で…おわっ!?」 彼女の手から滑り落ちる、硫酸入りのビン… その瞬間、誰もがこの後起こりうる事態を想像し、あるものは顔を背け、あるものは悲鳴をあげた。 しかし、間一髪のところでそれを捕まえると、金糸雀は引きつった笑顔を浮かべながら皆にこう言った。 金糸雀「セ…セーフ…!」 その様子に、今度は生徒全員が震えていた。 男子A「なぁ…本当に大丈夫か?」 男子B「何が?お前、まだビビってんの?」 スポイトを操作しながら、彼は呆れたようにそういった。 そして「大体、お前は漫画の見すぎなんだよ」と付け加えると、彼は声を潜め、こんな事を言い出した。 男子B「でもさ…火傷でも、十分危険だよな…。で、それについてイイ事思いついたんだけど…」 それはまるで、甘い蜜のような言葉…。 初めこそ眉をひそめて聞いていたものの、次第に彼の表情は当惑から期待へと、色どりを変え始めた。 男子A「他の先生ならともかく、金糸雀先生なら大丈夫そうだな…!その話、乗った!!」 そう言うと、彼は空いている試験管に水道水を入れ始めた。 男子A「先生ー!さっきの硫酸と銅に関する反応なんですけど、変な不純物が出てきたんですが、ちょっと見てくれませんかー?」 そう言うと、彼は金糸雀の元へやや早足で向かう。 それに対し、金糸雀は「どれどれー?」と呑気そうな声を声をあげ、彼の元に近寄った。 そして2人の距離が十分に縮まったことを確認すると、彼は転んだフリをしながら、金糸雀の服に先ほどの水道水を引っ掛け、こう言った。 男子A「あー!!やばいっすよ!!濃硫酸って、火傷になるんでしょう!?早く、その服脱ぎ捨てたほうがいいですよ!!」 金糸雀「え?え!?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」 最初は彼の言っている意味が分からなかった金糸雀も、ようやく事態が飲み込めたようだ。 確かに、このままほおって置けば火傷になってしまう…しかし… しかし、そんな葛藤を遮るように、もう1人がこう叫ぶ。 男子B「恥ずかしがってる場合じゃないですよ!!火傷って、一生跡が残るんですよ!?それでもいいんですか!?」 確かに、彼の言うとおりだ。 と、とにかく今はそんなことを気にしている状況では無い…! 金糸雀「ちょ…ちょっと、みんな後ろ向いててかしらー!!」 そう言って、彼女がブラウスのボタンに手をかけた瞬間、教室の後ろから「パンッ」という子気味良い音が聞こえてきた。 何事かと視線をそちらに向けると、そこには頭を押さえてうずくまる先ほどの生徒と、丸めた本を持ってその背後に立つ、親友のピチカートの姿があった。 彼女の登場…それは、彼らの計画が失敗に終わったことを意味していた。 男子A「あー…酷い目にあった…。これも全部、お前のせいだぞ!」 男子B「お前だって、大丈夫そうだって言ったじゃねえか!!大体お前が…!!」 彼女たちのお説教から開放されると、互いに陰謀めぐらせた者たちはその怒りの矛先を相手にぶつけた。 そしてひとしきり口論し終わると、1人がため息をつきながらこう言った。 男子A「やめたやめた。まー、あのぐらいで済んでよかったよな…実際。」 それに反応し、もう1人もこう答える。 男子B「確かに…。あ、そう言えば次は体育じゃん!今日は銀様が来てるはずだし、急ごうぜ!!」 過去のことより、今のこと…。そんな様子で喜び勇む彼らに、ある者がその首根っこをつかみ、静かにこう言った。 メイメイ「…あなたたちは、授業に出席しなくても結構です。というよりも、今後水銀燈先生の半径10m以内には立ち入らないでください。それと、3秒以上先生を凝視しないこと。あとは…」 男子A「え!?どうしてです!?今日は体力測定だから、ちゃんと…」 その言葉に、彼女は吐き捨てるようにこう言った。 メイメイ「…自分の胸に手を当てて考えてみてはいかがですか?この変態…!」 この瞬間、彼らはこの学園で今何が起こっているかを悟った。 無類のおしゃべり好きのピチカートが、今の『事件』を他の人に洩らさないわけが無い… ということは… 薔薇水晶「A君…。B君…。ちょっとお話があります…。こっちに来なさい…!」 その声に、彼らは青ざめた顔でこう弁明した。 男子A「ち、違うんです!僕達はただ…」 薔薇水晶「いいから来なさい…!早く…!!」 耳を引っ張られ、生徒指導室に連行される生徒たち。 その後、この事件に関する話はどんどん広がり、彼らは卒業まで肩身の狭い思いをすることになった。 このことに関して、後に彼らはこんな事を言っていた。 「…こんな事なら、最初から水銀燈先生に狙いを定めておけばよかった…」 と。 いつまで経っても成長しない2人の姿が、そこにはあった。 完
> お題『金糸雀が濃硫酸を使った実験で失敗』 金糸雀「えーと…今日は教科書53ページ!濃硫酸を使った実験を行うかしらー!!ちなみに、硫酸の化学式は…」 そう言いながら、金糸雀は黒板に硫酸の化学式を書き記した。 外は相変わらずの五月晴れ。そのせいもあってか、生徒の中にはこっくりこっくりと舟をこぐ者もいる。 しかしそんな陽気にもかかわらず、ある者は震えながら金糸雀にこんな質問を投げかけた。 男子A「の…濃硫酸って、よく漫画とかで出てくるアレのことですか…?」 彼の脳裏に、昔見たアニメの一場面が浮かんでくる。 触れたら最後…骨まで溶かす濃硫酸… それが彼の考える、濃硫酸のイメージだった。 そんな彼の様子に、彼女は笑いながらこう答えた。 金糸雀「そんなに心配しなくても大丈夫かしらー!!少し火傷になる程度で…おわっ!?」 彼女の手から滑り落ちる、硫酸入りのビン… その瞬間、誰もがこの後起こりうる事態を想像し、あるものは顔を背け、あるものは悲鳴をあげた。 しかし、間一髪のところでそれを捕まえると、金糸雀は引きつった笑顔を浮かべながら皆にこう言った。 金糸雀「セ…セーフ…!」 その様子に、今度は生徒全員が震えていた。 男子A「なぁ…本当に大丈夫か?」 男子B「何が?お前、まだビビってんの?」 スポイトを操作しながら、彼は呆れたようにそういった。 そして「大体、お前は漫画の見すぎなんだよ」と付け加えると、彼は声を潜め、こんな事を言い出した。 男子B「でもさ…火傷でも、十分危険だよな…。で、それについてイイ事思いついたんだけど…」 それはまるで、甘い蜜のような言葉…。 初めこそ眉をひそめて聞いていたものの、次第に彼の表情は当惑から期待へと、色どりを変え始めた。 男子A「他の先生ならともかく、金糸雀先生なら大丈夫そうだな…!その話、乗った!!」 そう言うと、彼は空いている試験管に水道水を入れ始めた。 男子A「先生ー!さっきの硫酸と銅に関する反応なんですけど、変な不純物が出てきたんですが、ちょっと見てくれませんかー?」 そう言うと、彼は金糸雀の元へやや早足で向かう。 それに対し、金糸雀は「どれどれー?」と呑気そうな声を声をあげ、彼の元に近寄った。 そして2人の距離が十分に縮まったことを確認すると、彼は転んだフリをしながら、金糸雀の服に先ほどの水道水を引っ掛け、こう言った。 男子A「あー!!やばいっすよ!!濃硫酸って、火傷になるんでしょう!?早く、その服脱ぎ捨てたほうがいいですよ!!」 金糸雀「え?え!?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」 最初は彼の言っている意味が分からなかった金糸雀も、ようやく事態が飲み込めたようだ。 確かに、このままほおって置けば火傷になってしまう…しかし… しかし、そんな葛藤を遮るように、もう1人がこう叫ぶ。 男子B「恥ずかしがってる場合じゃないですよ!!火傷って、一生跡が残るんですよ!?それでもいいんですか!?」 確かに、彼の言うとおりだ。 と、とにかく今はそんなことを気にしている状況では無い…! 金糸雀「ちょ…ちょっと、みんな後ろ向いててかしらー!!」 そう言って、彼女がブラウスのボタンに手をかけた瞬間、教室の後ろから「パンッ」という小気味良い音が聞こえてきた。 何事かと視線をそちらに向けると、そこには頭を押さえてうずくまる先ほどの生徒と、丸めた本を持ってその背後に立つ、親友のピチカートの姿があった。 彼女の登場…それは、彼らの計画が失敗に終わったことを意味していた。 男子A「あー…酷い目にあった…。これも全部、お前のせいだぞ!」 男子B「お前だって、大丈夫そうだって言ったじゃねえか!!大体お前が…!!」 彼女たちのお説教から開放されると、互いに陰謀めぐらせた者たちはその怒りの矛先を相手にぶつけた。 そしてひとしきり口論し終わると、1人がため息をつきながらこう言った。 男子A「やめたやめた。まー、あのぐらいで済んでよかったよな…実際。」 それに反応し、もう1人もこう答える。 男子B「確かに…。あ、そう言えば次は体育じゃん!今日は銀様が来てるはずだし、急ごうぜ!!」 過去のことより、今のこと…。そんな様子で喜び勇む彼らに、ある者がその首根っこをつかみ、静かにこう言った。 メイメイ「…あなたたちは、授業に出席しなくても結構です。というよりも、今後水銀燈先生の半径10m以内には立ち入らないでください。それと、3秒以上先生を凝視しないこと。あとは…」 男子A「え!?どうしてです!?今日は体力測定だから、ちゃんと…」 その言葉に、彼女は吐き捨てるようにこう言った。 メイメイ「…自分の胸に手を当てて考えてみてはいかがですか?この変態…!」 この瞬間、彼らはこの学園で今何が起こっているかを悟った。 無類のおしゃべり好きのピチカートが、今の『事件』を他の人に洩らさないわけが無い… ということは… 薔薇水晶「A君…。B君…。ちょっとお話があります…。こっちに来なさい…!」 その声に、彼らは青ざめた顔でこう弁明した。 男子A「ち、違うんです!僕達はただ…」 薔薇水晶「いいから来なさい…!早く…!!」 耳を引っ張られ、生徒指導室に連行される生徒たち。 その後、この事件に関する話はどんどん広がり、彼らは卒業まで肩身の狭い思いをすることになった。 このことに関して、後に彼らはこんな事を言っていた。 「…こんな事なら、最初から水銀燈先生に狙いを定めておけばよかった…」 と。 いつまで経っても成長しない2人の姿が、そこにはあった。 完

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