ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 型抜きとくんくん

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文化祭の校内は、活気で満ち溢れていた。少しでも迷っている様子を見せると、客寄せの生徒たちに取り囲まれてしまう。
クラス展では、教師と一般客の投票により毎年グランプリが決められる。
特にこれといった賞品が贈られる訳ではないが、グランプリという名誉は有栖学院の生徒たちにとって憧れであり、一種のステータスでもあった。
体育祭と文化祭の両方でグランプリをとると、そのクラスはまるで歴史の重要人物であるかのように語り継がれてゆく。
故に、文化祭にかける生徒たちの情熱には凄まじいものがある。
そんな生徒たちが渦巻く廊下を、真紅は歩いていた。
真「すごい活気だわ」
クラス展は、実に様々である。喫茶店をやるクラスもあれば、劇をやるクラスもある。
汗を流しながらも一生懸命に仕事をしている生徒たちを微笑ましく眺めていると、客寄せの生徒に腕を掴まれた。
「真紅先生!!私たちのお店に来てくださいよ!!」
真「ちょ、ちょっと?私は見回りだから店に入るつもりは無くてよ!?」
「いいからいいから!!」
客寄せはこれくらいの強引さがないと勤まらない。真紅は、あっという間に教室の中に連れ込まれた。
「真紅先生のご来店でーす!!」
教室中に歓声が上がった。これほどまでに歓迎されると、無理矢理連れて来られたのも悪い気がしない。
真「不本意だけど、お邪魔するわ」
教室の中では、生徒による手作りのお面屋や、スーパーボール掬い、カキ氷屋などといった店が開かれていた。
真「ここは…?」
「私たちのクラスでは一昔前の夏祭りをイメージしたお店を開いてるんです!」
なるほど、確かにお店はどれも夏祭りの定番とも言えるものだった。内装も、どこか昔懐かしい雰囲気を醸し出している。

真「本格的ね」
「はい!!雰囲気も、私たちのお父さんやお母さんに聞いた話を基に忠実に再現しました!!」
所々で、子供を連れた親が子供以上に楽しんでいる。それが生徒たちの再現度の高さを物語っている。
真「あら、あれは?」
一般客の子供が何人もうずくまっているところを指差す。何かを一心不乱に削っている。
「あれは型抜きです!型も私たちのオリジナルですよ!!」
型抜きというのは、でんぷんでできた平たい板に型押しされた絵柄を、針でつついて抜き出すという遊びである。
お店によっては綺麗にくり抜いた絵柄を換金できたり、景品と交換してもらえる。
「お兄ちゃん!できたよー!」
今まさに一人の子供が、絵柄をくり抜き終えた。店番の男子生徒がそれを受け取り、まるで嘗め回すようにそれを見る。
「駄目だね!ここが欠けてる」
「えー!?そんなぁ!」
殆ど言いがかりに近い。そんなはずは無いと必死に食い下がる子供の後ろで、その父親がこんなオヤジもいたなぁと懐かしんでいる。
しかし、文化祭でここまで再現する必要があるだろうか。子供は今にも泣きそうである。
「先生もやってみます?」
真「悪いけど、そんな時間無いのだわ・・」
「まぁまぁ、先生好みの景品もありますよ?」
真「私好みの景品って…」
生徒に押されるがまま型抜き屋の前に来た真紅は、我が目を疑った。
真「こ、これは…!?」

銀「んもぅ、真紅先生ったらどこにいるのよぅ?」
生徒たちの客寄せをやんわりと断りながら、廊下を進む。
銀「何で自由時間を使ってまで真紅先生を探さなきゃいけないの?」
教師にも自由時間はある。教師は基本的に見回り、受付け、自由時間でローテーションを組んでいる。
交代する時間になっても真紅が一向に現れないと、受付の金糸雀が泣きついてきた。
真紅は見回りで校内にいるはずだから、見つけ出して連れて来て欲しいと言われた。
貴重な自由時間を真紅の為に割くことが、非常に腹立たしかった。
「あ、水銀燈先生!私たちのお店に来ませんか?」
銀「ごめんねぇ。今ちょっとそれどころじゃないのよぅ」
掴まれた腕を静かに振り解く。
「どうしたんですか?」
銀「真紅先生を探してるのよぉ」
「あ…」
生徒の表情が一瞬変わった。
銀「知ってるの!?今、どこにいるか分かる?」
「私たちの教室です…」


生徒の言うとおり、真紅は教室の中にいた。子供たちに混ざって何かを一心不乱に削っている。
銀「…なにしてるの、真紅先生は?」
「型抜きです…。もうかれこれ1時間くらい削りっぱなしなんです」
生徒が困惑の表情を見せた。
真紅の足元には、失敗したのであろうでんぷんの板の残骸が山のように積まれていた。
何回失敗したらこれほどの山になるのだろうか。
銀「ちょっと真紅先生ぃ!?もう交代の時間よぉ!?」
真「・・・・静かにして頂戴」
振り返ることなく言い放つ。交代時間など知るかと言うかの如くである。
銀「な…!?」

真「できたわ!!今回は完璧なのだわ!!」
削り終わった絵柄を店番の男子生徒に突き出す。それを男子生徒が嘗め回すように見る。
「駄目ですね!ここが欠けてる!」
最早いちゃもんである。
真「な、なんですって!?これのどこが欠けてるというの!?」
真紅も負けじと食い下がる。
「駄目といったら駄目なんですよ。ここでは俺がルールですよ?」
真「くぅ…!!」
2人はすっかりヒートアップしていた。子供の喧嘩のようである。
「先生、これで23回目ですよ?本当に不器用ですね?もう諦めたらどうです?」
真「私は諦めるわけにはいかないのだわ!!もう一枚よこしなさい!!」
「はい毎度ありー」
店番の男子生徒に50円玉を投げつける。その代わりに型を受け取る。
銀「真紅先生ったら!!金糸雀先生が受付の交代を待ってるのよ!?」
真「受付なんて、ずっと金糸雀先生にやらせておけば良いのだわ!!」
キッと振り返る。何を言われようと、ここを離れないと目が語っていた。
銀「なんでそんなにむきになってるのよぅ!?」
真「私は…私はあの景品を手に入れなければならないのだわ!!」
銀「景品…?」
水銀燈はふと机の上に並べられた景品を見た。その中に、一つだけ光を放つものがあった。
実際は光っていないのだが、水銀燈にとっては直視できないほど光り輝いていた。
銀「あ、あれは・・・!?」
水銀燈の視線の先には、くんくん探偵のぬいぐるみがあった。しかし、ただのぬいぐるみではない。
銀(あれは…去年の11月26日に行われたくんくん探偵イベント
『くんくんファン感謝祭 ~くんくん!僕に解けない謎はない!!』にて
小学生以下の入場者のみに配布された幻のアイテム…!!それが何故ここに…?)
「水銀燈先生?」

銀(これを手に入れるためにくんくんのファンでもない子供を連れてイベントに参加したファンがいるほどのアイテム…。
まさかこんな所で出会うなんて…!!)
「あのー、水銀燈先生?」
銀(なるほど、真紅先生はこれが目的でここにずっといるって訳ね…!
真紅先生にこれを渡すわけにはいかない!!これを手に入れるのは私よぉ!!)
「水銀燈先生!?」
銀「私もやるわぁ」
「え?」
銀「た、たまにはこういうのも悪くないんじゃなぁい?」
「は、はぁ…」
銀「で、いくらぁ?」
突然の挑戦に戸惑う店番の男子生徒。まさか水銀燈が挑戦するとは思わなかった。
「え、えっと一回50円です…」
銀「そう、それじゃあ、はぁい」
千円札を差し出す。
「毎度!えっとおつりが950…」
銀「おつりはいらないわぁ」
「へ?」
銀「失敗する度にお金渡すの面倒だしぃ」
既に何度も挑戦するつもりである。
型を受け取り、真紅の横にしゃがみこむ。いつの間にか、型抜き屋の前には真紅と水銀燈しかいなくなった。
真「あら?水銀燈先生、私を連れ戻しに来たんじゃなくて?」
銀「受付なんて、金糸雀先生に任せればいいのよぉ」
真「その通りなのだわ…」


この日、金糸雀に自由時間が訪れることはなかった。