ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 黒衣の守護者

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雛苺「ぶゃおゎあぁあぁあぁんっ!!」
ある日の午後、水銀燈がラウンジでくつろいでいると、前から雛苺が走ってくるのが見えた。
それを見ながら、水銀燈はため息をつきながらこう考えた。
雛苺がこんなに大泣きする時は、ほとんどこんな理由のはず…。つまり…
水銀燈「…なぁに?また翠星石に苺大福を盗られたのぉ?」
いきなり水銀燈に呼び止められた雛苺は、力強く首を縦に振った。


雛苺「翠星石は酷いの!いっつも、ヒナの事ばっかりいじめて…」
頬杖をつきながら、雛苺の涙ながらの訴えに耳を傾ける水銀燈。
そして、大体の話を聞き終えたところで、雛苺にこんなことを聞いた。
水銀燈「…そんなに嫌なら、やり返せばいいじゃなぁい。あの子とは付き合い長いんだから、弱点の1つや2つぐらい知ってるでしょう?」
雛苺「でも…」
ためらいがちにそう呟くと、雛苺はこう続けた。
雛苺「でも…そんな事したら、ヒナ…翠星石に嫌われちゃうの…。翠星石とはいつまでも仲良くしてたいの…。」
水銀燈「…バカじゃない?何で、この期に及んでそんな事…」
そこまで言って、水銀燈は少し考えた。
まあ、昔から『お子様』な雛苺に復讐など出来るはずもないだろうし、仮にしたとしてもその罪の意識で押しつぶされてしまうかもしれない…。
翠星石のことを『親友』だと思っているのなら、なおさらだ。
終わりの見えない悪夢…それから抜け出すのは、この私でさえ数年かかった…。
あの時は、誰も私を助けてくれる人などいなかった…。でも雛苺の場合は…
水銀燈「…今日だけ、特別よぉ…。」
そう言うと、水銀燈は雛苺に何かを持ってくるよう指示した。


翠星石「おっ、今日も大量ですぅ♪さ、あのおバカなチビチビが来る前に、全部いただいてやるですぅ♪」
次の日、何も知らない翠星石は雛苺の鞄を無断で開けると、中にあった苺大福を手に思わずほくそ笑んだ。
そして、キョロキョロと周囲の様子を確かめると、おもむろに苺大福にかぶりついた。
翠星石「いっただきまーすですぅ♪…………ブッ!!」
そう、それはただの苺大福ではなかった。いつもと違う味に、食べていたものを吹き出し中身を確認すると、そこには苺やアンコの代わりに絵の具がびっしりと詰められていた。
翠星石「ま…まさか…そんな…!!」
急いで鏡で口の中を確認すると、翠星石の歯はすでに絵の具の赤一色に染まっていた。
翠星石「おのれチビチビ!大人しく食べられてればいいものを、小賢しい真似しやがってぇ!!」
怒りを込めて、食べかけの絵の具入り苺大福を職員室のドアに投げつける翠星石。
その時、そのドアがガラッと音を立てて開いた。
そして、そこに立っていたもの…それは、ブランド物のスーツで全身を着飾った水銀燈の姿だった。


水銀燈「…ん?」
いきなり真正面から飛んできた苺大福に対し、水銀燈は急いでドアを閉め直し、それを回避した。
そして、苺大福がドアにあたったのを確認すると、もう一度そのドアを開いた。
さっきより険しい顔で…。
水銀燈「…なぁにこれ?あなた、また私の服を台無しにしようとしてた訳ぇ?」
ドア一面に広がる絵の具を見ながら、水銀燈は翠星石に詰め寄った。
これはまずい、と翠星石は慌てて弁解し始める。
翠星石「ち、違うです!雛苺が、苺大福に絵の具なんぞを仕込んでいたのが悪いんですぅ!不可抗力ですぅ!!」
水銀燈「ふーん…そぅ…。」
翠星石「そ、そうですぅ♪…ま、でも何もなくてよかったですぅ♪おほほほほほ…」
そう言って、どさくさにまぎれて逃げようとする翠星石の襟首を捕まえると、水銀燈はこう言った。
水銀燈「…でもあなた、雛苺のを盗んで食べようとするぐらいだから、よっぽどこれが食べたかったんでしょう?だったら、最後までしっかり味わいなさぁい…。」
それは、翠星石にとって最も恐れていたことが現実に起こってしまった瞬間であった。


翠星石「うー…もう食べられないですぅ…だから許してくださいですぅ…」
目を潤ませ、口の周りに色とりどりの絵の具を付けながら許しを請う翠星石。
そんな翠星石に対し、水銀燈は残っている苺大福を床に払い落とすと、こう言った。
水銀燈「…あ、ごめんなさぁい。めまいがしちゃったわぁ♪…でも、まだ食べられるわよねぇ?」
翠星石「え゛!?」
水銀燈「聞こえなかったのぉ?さぁ、犬みたいに這いつくばって食べなさぁい♪」
もう、それはいじめ以外の何物でもなかった。水銀燈は躊躇(ちゅうちょ)する翠星石の足を「早く…!」と言いながら蹴り飛ばすと、彼女を強引にその場に座らせた。
もはや絶体絶命かと思われたとき、翠星石にとっての救いの神が、昼食を終え職員室に戻ってきた。
蒼星石「ただい…うわっ!2人ともどうしたのさ!?」
薔薇水晶「…!?銀ちゃん…!一体何をやっているの!?」
水銀燈「チッ…邪魔が入ったわね…。」
そう言うと、水銀燈は薔薇水晶の「待ちなさい…!!」という言葉を無視して、どこかへと行ってしまった。


水銀燈「…全く、損な役回りだわぁ…」
屋上で寝そべりながら、水銀燈はついこんな愚痴をもらした。
過去、色々なことがあったとはいえ、翠星石のことはそんなに嫌いじゃない。
むしろ、過去に私がしたことを水に流して普通に接してくれたり、何気ないことで気遣ってくれたりと、どちらかと言えば好きな部類に入る。
しかし、その縁もこれで終わり。薔薇水晶も相当怒ってたし…。
さぁて、これからどうしようか…と考えていた時、ドアのところに蒼星石が立っているのが見えた。
向こうもそれに気がついたのか、つかつかと水銀燈の方に歩み寄ってきた。
水銀燈「…なぁに?『保護者』の登場って訳ぇ?」
蒼星石「水銀燈…。さっきの事だけど…。」
水銀燈「だから何よ…。今更、弁解する気も…」
蒼星石「…雛苺から聞いたよ…。」
そう言うと、蒼星石は寝そべったままの水銀燈の横に座り、話を続けた。


蒼星石「あれは全部、雛苺のためにやったそうじゃない。それに、美術室に口に入れても無害な絵の具が無かったから、わざわざ買いに行ってくれたらしいし…。」
水銀燈「…目の前で死なれちゃ、寝つきが悪くなるでしょう?それだけの事よ…。」
蒼星石「そっか…。あ…それで翠星石の事なんだけど、今、薔薇水晶に付き添われて雛苺のところに謝りに行ってるんだ。やっと自分が悪いことしたって気がついたみたい。だから、あんまり気にしないで…。」
水銀燈「…何で、この私が翠星石の事を気にしなきゃいけないのよ?バカじゃない?」
そう言うと水銀燈は立ち上がり、屋上を後にしながらこう言った。
「躾(しつけ)がなってないわよぉ…」と。


翠星石「うぅ…ごめんなさいですぅ…。もうしないから、いじめないでですぅ…」
水銀燈「分かったわよ…うるさいわねぇ…。」
放課後、しつこいぐらいに何度も謝りに来る翠星石をかわしながら、水銀燈は家路へと急いだ。
今日は雪華綺晶のヘリで学校に来たため、帰りは歩かなくてはいけない。
遊歩道を歩きながら「やっぱり面倒くさいから、タクシーでも呼ぼうか」と考えていた時、後ろから自分のことを呼び止める人物が現れた。
雛苺「すいぎんとー!待ってーなの!一緒に帰ろうよー!!」
水銀燈「…雛苺?あなた、車はどうしたのよ?」
雛苺「んー、今日は電車で帰るから大丈夫なの!それよりも、水銀燈と一緒に帰りたくて…」
水銀燈「…私と?」
雛苺「うんっ!あのね…あの後、翠星石がちゃんと謝りに来てくれたの!『もうしない』って!これも全部水銀燈のおかげなの!どうもありがとう♪」
そう言うと、雛苺はぺこりとお辞儀をして、水銀燈の手を握り締めた。
水銀燈「な、何!?」
雛苺「さ、お手手つないで帰りましょ~♪なかよしこよしで帰るのよ~♪」
水銀燈「ちょっと…!恥ずかしいから止めなさい!みんなに見られたら…」
雛苺「いいの!いいの!…でも絵の具なんかで、どうやって翠星石を反省させたの?」
水銀燈「…あなたには一生分からなくていい事よ。さ、いいから早く帰りましょう…。」
そう言うと、水銀燈は雛苺の手を引っ張り、前へ進みだした。
たまにはこういうのもいいか…と考えながら…。
そして、その行く手には綺麗な夕焼けがその顔を覗かせていた。