「学園008」(2008/12/22 (月) 16:44:05) の最新版変更点
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<h3>水泳部の野望(仮)</h3>
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部室棟2階。<br />
黄昏迫る水泳部部室。<br />
つんつんとしたトゲヒレが、窓際で、フェンス越しに外に見えるプールを見下ろしていた。<br />
「失礼します」<br />
入ってきた浅黒い肌の女生徒は、艶やかな笑みを浮かべる。<br />
会議机にとん、とファイルを置いて、動かない後ろ姿に声をかけた。<br />
「……首尾よく、予算を昨年度より多くもぎ取りましたわ」<br />
「規模を広げた甲斐があったじゃないか」<br />
先に居た人影は振り返らずに答える。<br />
「規模、といっても、男子一人ですけれどね」<br />
女生徒は、椅子を引いて腰掛けながら、艶やかな黒銀の髪をトゲヒレ耳にかけ、ファイルをめくった。<br />
「十分さ」<br />
喉が鳴る音が部室に響く。<br />
「ええ。……更衣室の拡張、大会への出場出張費、……いろいろ稼げますわ」<br />
ページを繰る音が響く。<br />
「それで、肝心のあいつはどうなんだい?」<br />
「それなりに適応していらっしゃるのでは? トリアにぞっこんみたいですし」<br />
「……色恋沙汰ねえ。あの子がらみだと、蛸娘がうるさくて敵わないね」<br />
「ふふ……珍しく、男だなんていって勧誘していらしたのに、ずいぶんな事」<br />
「……この前、普通に水着姿だったら、妙に驚かれていたけどねえ」<br />
人影は首をすくめた。<br />
「あら、サカナ族が、トリ族と同じように、外性器をしまえる事をご存知でなかったのではなくて?」<br />
「うなされているのが面白かったから、そのままにしておいたけれどねえ」<br />
二人の笑い声が部室に響く。<br />
予鈴がなる。<br />
「あ、……そろそろ迎えの来る時間ですので、失礼いたしますわ」<br />
「ああ」<br />
帰ろうとする女生徒に、人影が振り向いて、声をかけた。<br />
「……ところで、今も黒真珠の枷はつけているのかい?」<br />
「もちろんですわ♪」<br />
「他の、部員に仕込むんじゃないよ。……特にフーラあたりに」<br />
くるっと、制服のスカートをまわして、女生徒が振り向いた。<br />
「なんで、分かりましたの? せっかくお仕置きしてこようと思いましたのに」<br />
「お仕置きは、飼ってるものだけにしておきな」<br />
眼下に、暮れ始めたプールサイドが見える。<br />
ひとり、ちょこんと、飛び込み台にビート板を抱えて、競泳水着ではなくスクール水着を来ているおかっぱ頭が見える。<br />
「わかりましたわ。失礼いたします」<br />
忍び笑いを零しながら、女生徒が去っていった。</p>
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部室棟は静けさを取り戻す。<br />
おかっぱ頭がこちらをちらっと見上げた。<br />
人影は、笑って、窓際から離れ、プールサイドへと足を向けた。</p>
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学園の夜はまだまだこれから。</p>
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