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金糸雀と死闘」(2006/03/12 (日) 22:58:35) の最新版変更点

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放課後の教室。茜色の夕日が差し込み、教室全体を淡く染める。 その中で、一人の教師と生徒が対峙していた。教師は黒板に指をなぞらせて、チョークの粉を取っている。 金「い、一体用ってなんなのかしら?」 教室のちょうど中心の位置に一人の男子生徒が立っていた。男子生徒は両の拳を握り締めたまま立ち尽くしていた。 金「な、何か言って欲しいかしら。呼び出したのはS君かしら!」 両の拳をもう一度握り直し、Sが教室が震えるほどの声で叫んだ。 S「俺は、金糸雀先生のことが大好きです!!付き合ってください!!」 金「え、えぇー!?」 生徒に告白されてしまった。予想外の展開に、すっかり動揺してしまった。 金「じょ、冗談は止めて欲しいかしら!!そんなこと言ってもカナは騙されないかしら…」 S「俺は本気です!!本気で金糸雀先生のことが好きなんです!!」 Sが食い下がる。その声の様子から、本気であることがひしひしと伝わった。 まさかSから告白されるとは思わなかった。Sは顔も良く勉強もでき、女子生徒の間ではSのファンクラブがあるほどである。 教師の間でも時々話題になる。そんなSが自分なんかに…。金糸雀はまさに夢心地だった。 金「で、でもカナは教師、S君は生徒なのかしら…」 S「そんなの関係ない!!」 説得を試みようと思ったが、無理なようであった。 金「カナは背がちっちゃいし、胸も全然無いし、そのくせお尻は大きいし…」 自分で何を言ってるのかよく分からなかったが、とりあえず嫌われようと自分の欠点を次々と言ってみた。 S「そういう所全部含めて金糸雀先生のことが好きなんです!!」 しかし、駄目だった。Sはどんどんと金糸雀に近づいてくる。 金「で、でもぉ…」 Sに背を向けて黒板に『の』の字を書いてモジモジとする。それがいけなかった。 S「先生…!!」 後ろから抱きしめられた。Sの鼓動が、背中を通じて伝わってくる。 金「S君!?」 S「俺、もう我慢できません…!!」 力ずくで向き直され、黒板に押し付けられた。チョークの粉が舞い上がり、夕日に照らされて輝く。 金「ちょ、ちょっと駄目かしら…!!」 Sの腕の中で暴れたが、男子の力には敵わなかった。 S「先生…!!」 金「S君…」 2人の顔が近付く。Sの息遣いが顔に伝わってくる。唇と唇が近付く。 唇が重なろうとした瞬間、一人の男子生徒が教室に転がり込んできた。 「ちぃっと待てよ!!」 金「U君…!?」 S「U!!」 U「俺だって、俺だって金糸雀先生が好きなんだよ!!抜け駆けは許さんぞ!!」 Uはスポーツ万能で明るく、ムードメーカーでもある。もちろん顔もSに負けず劣らず格好良い。 部活の試合では他校の女子生徒が応援に来るほどである。 そのUがズンズンと歩み寄り、Sの胸倉を掴む。 U「金糸雀を賭けて、今ここで勝負だ!!」 S「ああいいとも!!負けた方は二度と金糸雀先生に近付かなくなよ!!」 2人の拳が炸裂する。一人の女を賭けた男と男の真剣勝負。全く容赦が無い。 2人の顔は血だらけになる。それでも2人は止めない。 学校を代表する美男子が自分を賭けて殴りあう。まるで夢のような出来事であるが、止めなくてはならない。 こんな争いは終わらせなくてはならない。金糸雀は2人のところへ駆け寄った。 金「やめるかしらー!!カナの為に争うのはやめるかしらー!!」 金「やめるかしらー!!」 気付いた時には虚空を掴んでいた。目の前は、自室の天井だった。 自室のベッドの中。もちろんSもUもいない。 金「夢…だったかしら」 なんと言う夢を見ていたのだろう。金糸雀は思わず赤面した。 しかし、こんな夢を見たということは現実でもなにかあるかもしれない。 金糸雀はそんな期待にも似た感情を抱いて学校へ向かった。 教室の中で、夢に出てきたUとSが談笑していた。夢の中で金糸雀を取り合った2人が。 金糸雀は2人の許へ歩み寄った。 金「お、おはようかしらー」 U「あ、金糸雀おはようございます」 S「おはようございまーす」 しかし、そこにいるのはいつもの2人だった。そこで金糸雀は2人にかまをかけた。 金「ふ、2人ともカナになにか言いたいことがあるんじゃないかしらー?」 U「え?言いたいこと?」 S「いや、別に…」 金糸雀などには全く興味が無いという雰囲気がひしひしと伝わってくる。 金「そ、それならいいかしらー…」 すっかり肩を落とし、去りかける金糸雀に2人が声をかける。 U「あ、待ってください!そういえば前から言いたいことがありました!」 金「な、なにかしらー!!」 S「先生って、身長の割にお尻大きいっすよね」 金「・・・・・・・・・・!!!!」 夢の中ではそんなところが好きだと言ってくれたではないか。 金「・・・・・・」 U「金糸雀先生?」 小刻みに震える金糸雀を覗き込む。 金「もーう怒ったかしらー!!カナはちょっと本気だったかしらー!!」 S「な、何言ってるんですか!?」 金糸雀はこの日見た夢のことを誰にも語ることは無かった。

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