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今年も後数日となった頃。
薔薇姉妹もご多分に漏れず一年の大掃除を行っていた。
翠「う、重いですね……うんしょうんしょですぅ」
翠星石がダンボール箱を抱えふらつきながら廊下を歩いている。
翠「おやっ?」
ある部屋の前を通り過ぎようとしたとき、ドアが開いているのに気づき覗き込んだ。
翠「誰かいるですか?」
部屋の中にいた真紅はその声にはっと振り向く。

翠「真紅何をさぼってやがるです」
紅「ごめんなさい、ちょっと面白いものを見つけたのだわ」
翠「何を見つけたですか? 翠星石にも見せやがれですぅ」
紅「掃除の後のお茶の時間にしましょう。落ち着いて見たほうがきっと楽しめるのだわ」
翠「じゃあ、とっとと掃除を終わらせるです。真紅もさぼらずにやりやがれですぅ」

掃除の後。
姉妹達はリビングに集まり、お茶の時間を楽しんでいた。

銀「ふぅ、疲れたわねぇ」
翠「全くですぅ、どうしてたったの一年であそこまで汚れやがるですかねぇ」
蒼「あれ、真紅は?」
先ほどまで一緒にお茶を飲んでいたはずの真紅がカップを残していなくなっていた。
翠「多分、アレをとりにいったですぅ」
銀「アレ?」
翠「掃除の途中で真紅が何か面白いものを見つけたと言ってたですぅ。きっとアレを持ってきているに違いないです」
紅「待たせたわね」

そこに真紅がその腕の中に大きな本を抱えて戻ってきた。
他の姉妹達も皆、その本に見覚えがあった。

銀「それは……アルバムかしらぁ?」
翠「わぁー、懐かしいですぅ。いつ頃の写真ですか?」
紅「私たちが小学校に入ったころのだわ」
銀「へぇー、どんな写真があるのかしらぁ」

わいわい騒ぎながらページをめくりながら写真を眺めてはページをめくる。
しかし、あるページをめくったところで翠星石の手が止まった。
そのページの中に挟まれている折りたたまれた紙を見つめて翠星石が口を開く。


翠「これは何ですか?」
蒼「手紙……かな? 何だろうね、見てみようか」
蒼星石がその紙を手に取り丁寧に開く。
蒼「何か、書いてるね。えーと……『一ねんせいになったら、ヤクルト百ぽんのめるかな 水銀とう』」
姉妹「……」

翠「ぷぅくっはぁはははっはっはーーー! 何ですか、それは!」
蒼「ははは、水銀燈らしいや」
紅「全く、あれから何も変わってないようね」
銀「見ちゃダメ! 見ないで! 返してーーー!!」

蒼星石の手から紙を奪い取り胸に抱きかかえて小さくなる水銀燈。
顔を真っ赤にして俯いている。

翠「全く、水銀燈は小さい頃から乳酸菌好きで困ったものですぅ。百本も飲んだら取りすぎに決まってるです」
銀「……うるさいわぁ」
蒼「翠星石、それくらいにしてあげなよ」
翠「そんなこと言って、蒼星石も口元がひくついてるですよ」
銀「もぉ、そんなことどうでもいいでしょう! 次行くわよぉ」


水銀燈が次のページをめくる。
そこにも同じような紙が挟まれていた。
真紅が手に取りため息を付く。

紅「またなのだわ」
翠「今度はヨーグルトでも書いてるですか」
蒼「水銀燈が読む?」
銀「……貸して」

真紅から受け取り、水銀燈が中を見る。

銀「……ふふふ」
翠「嫌な笑い声たてるなですぅ」
銀「これを見てもそれがいえるかしらぁ?」

水銀燈は手に持った紙を読み上げる。
銀「えぇと、『いちねんせーに なったら ひとりでいぬさんのみちとおりたいですぅ すいせーせき』」
翠「な、なんですか! それは!」
蒼「ほら、あの道だよ。駄菓子やさんに行く道」
紅「ああ、あそこね。確か鈴木さんの犬が通ると必ず吠える道だったわ」
銀「翠星石が駄菓子やさんに行くとぉ、必ず時間がかかってたのよねぇ。もしかしてぇ、一人じゃ怖くて通れなかったんじゃない?」
翠「そ、そんなことはねぇですよ! 別に犬の前を通りたくないとか犬が怖いとかじゃ決してねぇです! 途中で吠えられたら行くことも引き返すことも出来なくなるなんてはことは一度もなかったですぅ!!」
蒼「翠星石……」
翠「そ、そんな目で翠星石を見るなですぅーーー!!」
銀「ふふふ」
翠「そこ、笑うなですぅ!!」


紅「はいはい、次に行きましょう。あら、またね、今度は誰かしら」
真紅が次のページにも挟まれていた紙を開き目を通す。
紅「……」
銀「……」
紅「……」
翠「……」
蒼「……」
紅「な、何を皆で注目しているのだわ。これは何も書いてないのだわ、次に行きましょう」
翠「ちょっと見せるですぅ、真紅」
銀「怪しいわぁ」
紅「こ、こら! 待ちなさい、あっ!」
素早く後ろに回った蒼星石が紙を奪う。
翠「やったですぅ! 蒼星石、翠星石が読むから貸すです!」
奪い返そうとする真紅を水銀燈が羽交い絞めしている間に翠星石が読み上げる。

翠「えーと、『一ねんせいになったら、紅茶のおふろにはいりたいのだわ 真紅』。……紅茶風呂ですか」
銀「何か入ったら匂いがつきそうねぇ」
蒼「お風呂上がったら逆に汚れてそうだね」
翠「趣味最悪ですぅ」
紅「な、何を言うのだわ! 紅茶は浄水にも聖水にも勝る至高の液体よ! 紅茶は美容にも健康にもお勧めなのよ!」
翠「はいはいですぅ」
銀「真紅が一番変な夢じゃなぁい」
紅「あ、貴女達! 話を聞きなさい!!」
翠「後は蒼星石の紙だけですね、ここまで来たらないわけないですぅ」
蒼「あはは……やっぱり探すの?」
紅「もちろんだわ! 蒼星石の恥ずかしい過去を暴き立てないと気がすまないのだわ!」
蒼「恥ずかしいってことは決定なんだ……」
銀「やっぱりあるわぁ」


次のページにも紙は挟まっていた。
真紅がさっと手に取り、何も言わずに開く。
銀「……」
翠「……」
蒼「…………な、なにか書いてある?」
紅「読むわ。『一年生になったら、おけしょうにちょうせんするぞ 蒼星石』」
銀「……これは、また随分とませた一年生ね」
翠「今の飾りっけがない蒼星石からは考えられねぇですぅ」
紅「あら? この写真は……」
蒼「!! わ、わ、わ、わぁぁぁああああああ!!!」
蒼星石が必死に手を伸ばし真紅が指差した写真を塞ごうとするが、そこは姉妹のチームワーク。
真紅がアルバムを持って逃げ、水銀燈と翠星石が蒼星石の動きを止める。
蒼「お願いだから! 見ないでくれ!」

銀「真紅、写真を私たちにも見えるようにしてぇ」
翠「翠星石も見たいですぅ」
紅「はい、見るのだわ」

そこには、顔一面に口紅が塗られ、白粉を口の周りに付け自信満面で笑っている幼い蒼星石の姿が写っていた。
蒼「あうぅ///」
銀「……実行したのね」
翠「そして、お約束道理大失敗ですぅ」
紅「でもこんなに嬉しそうよ」
蒼「ううぅ……恥ずかしい」


銀「昔のアルバムっていいわねぇ、色々思い出しちゃったわぁ」
翠「そうですぅ、犬に追いかけられたのも今となってはいい思い出ですぅ」
紅「流石に、紅茶のお風呂はやり過ぎだったわ。実行しなくて正解ね」
蒼「……」
翠「蒼星石、元気出すですよー。可愛かったですよ?」
銀「そうよぉ、蒼星石。蒼星石の初めてのお化粧とーっても可愛かったわぁ」
紅「昔の失敗を今繰り返さなければそれでいいのだわ」
蒼「ごめん、そっとしておいて……」

三人は部屋の隅でひざを抱えて体育すわりをしている蒼星石から離れて小声で相談を始めた。
銀「随分ショックだったようね」
翠「慰める方法は何かないですかねぇ」
紅「そうだわ! 私にいい考えがあるのだわ」

(姉妹相談中……)
(姉妹準備中……)


翠「蒼星石ー、こっち見るですぅ」
蒼「……何? 翠星石」
翠「昔失敗したことなんて知ったことじゃねぇです。蒼星石は今成功すればいいですぅ」
銀「そうよぉ、普段から蒼星石って服装とか飾らないでしょぉ、だから……」
紅「私たちがコーディネイトしてあげるのだわ」

(姉妹は手をわきわき開きながら蒼星石に近づいていく)

蒼「ひっ、た、助けてーーーー!!!!!」
(少女着せ替え中……)
銀「あー、堪能したわぁ。蒼星石ってやっぱり可愛いわぁ」
翠「あたりめぇですぅ。翠星石の自慢の双子の妹です、可愛いに決まってやがるですぅ」
紅「本当ね、お化粧もばっちり決まっているのだわ」
銀「この写真もアルバムに入れないとねぇ」
蒼「……っ!」
翠「どうしたですか? 蒼星石」
蒼「み、みんな嫌いだーーーー!!!」
翠「そ、蒼星石!!」



翠「蒼星石~開けるですぅ~」
蒼「……フンッ」
翠「蒼星石~」

翠星石は蒼星石が機嫌を直すまで部屋から閉め出されてしまったとさ。


             終


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