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ジュンと、その彼女が歩いているところを見てから、
ずいぶん時間がたったわ。
私は、大分落ち着いてきたわ。
紅茶も、ジュンほどとはいかないにせよ、
おいしく淹れれるようにもなったわ。
紅「あら、ダージリンの葉がもうないわね。」
たしか、友達から聞いた話だと、
大学から2駅のところに、いいお店があるらしいわ。
帰りに行ってみようかしら。
 
駅から、10分ほど歩くと、
こじんまりとした白を基調とした建物があったわ。
店の看板には、Teegesellschaftと書かれていたのだわ。
紅「たしか、お茶会って意味だったかしら。
  なかなか、素敵な名前ね。」
大学のドイツ語の授業を記憶から引っ張りだすのに苦労したわ。
あまり使わないものだけれども、
授業はもう少し、キチンと聞いたほうがいいみたいだわ。
?「いらっしゃいませ、ようこそ、Teegesellschaftへ」
右目に眼帯をした、白を基調とした服を着た店員は、
ハキハキとした声で迎え入れてくれたわ。
?「……いらっしゃい……」
左目に眼帯をした、紫を基調とした服を着た店員は、
抑揚のない声でつぶやいたわ。
二人とも、色の基調こそ違うけれども、
髪の長さや、結び方、顔立ち、体形まで良く似ているわ。

紅「双子……かしら」
?「残念ながら違いますよ。私は雪華綺晶。彼女は薔薇水晶といいます。
  でも、私達も驚くくらいそっくりですよね。」
白を着た、雪華綺晶と名乗った店員は、明るく答えたわ。
紅「えぇ、ほんとうにそっくりだわ。」
雪「はじめてのお客様には、
  まず、私達の店を知っていただきたいということで、
  紅茶をお出ししています。
  コチラが勝手に出すものなので、御代は結構です。
  お出ししてもかまいませんか?」
紅「ええ、よろしくお願いするわ。」
かなりの自信を持っているようだわ。楽しみだわ。
カウンターのほうに目を向けると、
薔薇水晶という店員が、お湯を沸かしていたわ。
店の内部を見渡す。
時間のせいかお客はいないけれど、
カウンターといくつかのテーブルがあるのだわ。
棚には茶葉が、産地と茶園ごとに分かれて、綺麗に並べられているわ。
雪華綺晶がお盆を持って出てきたわ。
お盆にティーポットとカップ、それに砂時計が載せられているわ。
雪「砂が落ち終わった時が飲み頃ですので、その後お飲みください。」
そういって、彼女は、カウンター内の定位置に戻ったわ。
砂が落ちたので、カップを口に運んだわ。
花のような芳醇な香り。
えぐみや青臭さもなく、口当たりのよい味。

雪「いかがでしょう?」
紅「ええ、素晴らしい紅茶だわ。
  淹れる人もかなりの腕前ね。
  葉は、……シャングリラかしら。」
雪「ご名答。お詳しいんですね。」
紅「日本では、珍しい茶葉なのに……、
  初見の客に出すなんて、なかなかできることではないわ。」
雪「誠心誠意、紅茶をお出しするのが、私達のポリシーですから」
紅「素晴らしいお店ね。」
薔「……えっへん……」
店の奥から抑揚のない声が聞こえたわ。
雪「ありがとうございます。」
カウンターの雪華綺晶は嬉しそうに答えたわ。
しばらく、紅茶を楽しんだのだわ。
 
茶葉の棚を覗いてみたわ。
お手ごろな値段のものから
100g1万円の茶葉もあったりと、
品揃えはかなり豊富なので、目移りするのだわ。
これは正直に聞いたほうがよさそうだわ。
紅「ダージリンの葉が欲しいのだけれども、
  オススメはあるかしら。」
雪「そうですね……。
  失礼ですけど、予算のほうお聞きしてもよろしいでしょうか?」
その後、予算と、私の好みを聞くと、
雪華綺晶は、予算にあった茶葉を選んでくれたわ。

かなりいい店だ、また来よう、そう思っていると、
奥から薔薇水晶がポスターを持って出てきたわ。
紅「あら、なにかしら」
薔「……私の力作……」
ポスターには、かわいらしいウェイトレスの絵と丸文字が並んでいたわ。
アルバイト募集のポスターみたいだわ。
雪「実は、東京に二号店を出す予定でして、
  人手が足りなくなるので募集中なんです。」
紅「私、このお店なら、働いてみたいわ。」
雪「え、本当ですか。」
紅「でも、紅茶をうまく入れたりできないわ。」
雪「そこは、薔薇水晶がきっちり教えてくれるから大丈夫です。
  基本的には、薔薇水晶が調理担当なので、
  アルバイトさんは、ウェイトレス的なお仕事がメインです。」
紅「雇ってもらえるかしら。」
雪「はい。もう、喜んで。よろしくお願いします。
  ………え~っと、」
紅「私の名は、真紅。」
雪「よろしくお願いします。真紅さん」
薔「……よろしく……」
ということで、私は、紅茶専門店、Teegesellschaftで働くことになったわ。
紅茶が好きだからと理由もあるけれども、
自分を変えたいからという気持ちもあったわ。
せめて、おいしい紅茶くらいは淹れられるようにがんばろう。

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