彼と私と水着と海水浴



そうだ海へいこう!
とコンビニで買ったチューペットを咥えながらの帰り道、突然ジュンが
言い出したのが今日の夕方。
明日は休日だから、久しぶりにどこか行きたいわね。
とは言ったはずだけど…なにも海に行こうだなんて。
水銀燈はお風呂の中で考えていた。
水「いきなり明日行こうなんて…水着去年のしかないわぁ」
水「もちろん日帰りよねぇ、日焼けしたくないからオイル持ってかないといけないわ」
水「あれ…オイルあったかしらぁ、ちょっと見てみないとわからないわぁ」
彼の考えはいつも突然だ、去年の冬もスノーボードに行こうなんていって
次の日には一面銀世界の冬の軽井沢にいたっけ…
付き合い始めて早三年目、ジュンの行動力にはたまに付いていけなくなるな、
と思いつつ洗面台の前ではにやける水銀燈が写っていた。

お風呂から上がった水銀燈は裸にバスタオルを巻いたまま、家の中を右往左往した。
水「ママー、サンオイルってどこにしまったぁー?」
水「ちょっとぉ、なんで水着がないのぉ!」
一階と二階を忙しくドタドタと移動する彼女は大変近所迷惑だろう。
いいから早くパジャマに着替えなさい!と我慢しきれなくなった母に
一喝されるまで彼女はバスタオルのままだった…
水「水着あったぁ…黒のビキニってまた大胆な選択をしたわねぇ」
去年の夏、同級生と買いに行ったのを思い出した。
自慢じゃないが同年代の女の子よりプロポーションに自信のある水銀燈は
ちょっと大胆な水着をチョイスしたのだ。
腰の部分が紐になってるデザインのその水着を手に取りながら、
水銀燈は去年の選択は失敗だったなと後悔した。
水「準備できた。明日なんて急すぎるから手間取ったじゃなぁい」
言いつつ、彼女は携帯を手に取る。
水「メールでも送ろうかしらねぇ…」

To:ジュン
Sub:準備できたわよ~
本文:こっちは準備できたわよぉ、明日はジュンの家に行けばいいのかな?
    
白馬の王子様なんて~♪
水「返信早いわねぇ」

From:ジュン
Sub:こっちもおkwwwwwwwwwww
本文:明日は家にいてくれれば迎えに行く。9時半頃かな?
    あ、あと水着楽しみにしてるから(笑)

水「楽しみにしてくれるのは嬉しいんだけど…エッチねぇ」
水「もうこんな時間かぁ…これ返して寝ようかなぁ」
準備やらなにやらで時間を忘れていたが、もう時計の針は日付が変わるころだった。

To:ジュン
Sub:わかったぁ
本文:じゃあそうする、水着は楽しみにしなくていいわよぉ。
   もう寝るからおやすみねぇ

水「さぁてと、寝ようかなぁ」
寝よう寝ようとは思っても、明日が楽しみで覚醒しっぱなしだった
水銀燈がようやく寝れたのはそれから2時間後の事だった。


ジリリリリリ
朝、セットしていためざまし時計から音がする。
水「ん…8時半かぁ」
まだ覚醒しない体を起しながら、目を擦りカーテンを開ける。
するとそこにはこれ以上ないくらい晴れ渡った空があった。
水「ご飯たべなきゃ…」
朝は低血圧な水銀燈は階段を踏み外さないように、1つ1つ慎重に降りていく。
階段を下りると、朝食のいい香りが漂ってくる。
水「おはよぉ」
J「おはよう、顔洗ってこい」
水「わかったわぁ」
居ないはずの彼がいるのを水銀燈はスルーだった。やはりまだ完全には
目が覚めていないのだろう。
水「……あれ?」
顔を洗っている途中、やはりなにかおかしい事に気がついた。
水「(さっきジュンがいたよう・・・な?)」
水「(あるあr・・・ねーよwwwwwwww)」
水「やっぱあるあるぅ!!!!!!」

J「朝食、おばさんが作ってくれたから食べるよな?」
水「ちょ・・ちょっとぉ!なんでジュンがここにいるのよぉー!」
J「朝起きたら家に誰も居なかったから、水銀燈の家でご飯を食べようかなぁと」
言いながらジュンは台所に立っている水銀燈ママの方を向いた。
すると母はニヤニヤしながら親指を立てていた……
J「いやぁさすがおばさん、味噌汁美味しかったですよ」
あらやだ、と言いながらニヤニヤしっぱなしの母を尻目に水銀燈はテーブルにつく。
水「もういい!ママ早くご飯だしてよ」
今日の献立は、ヤクルト、ご飯、味噌汁、焼鮭、玉子焼き、
ほうれん草のおひたし、ウナギの蒲焼き……ウナギ?
ウナギと行ったら夏バテ防止、なるほどやっぱり体に気を使ってくれてるんだな
と思いながら箸を手に取る水銀燈。
J「ウナギってさ夏バテ以外にも、精力付くんだよね」
ボソっと、ジュンが呟いた一言で箸が止まる水銀燈。
あぁなるほど前言撤回、母は体のことじゃなくて「あっち」の方を
気にしたのか…ありえない母だ。

ご飯を食べ終わり、食器を台所に持っていくとき水銀燈は母に
ウナギのことを問いただした。
水「ママ…なんでウナギなんて出すのぉ?」
母「あらやだわぁ水銀燈ったら、今日は海水浴に行くんでしょう?
  だったら夏バテ防止のためにって作ったのよ」
頬に左手をあて、いかにも優雅なマダムを演出してるはずの母がどこか黒く見えた。
水「精力増強…」
この一言で、それまでオホホと笑っていた母の笑いがピタっと止まる。
水「あのねぇ、ママぁ」
母「がんばりなさいねぇ」
いつの間にか洗い物を終えた母はそういい残し、普段では考えられない速さで
リビングを出て行く。
水「(考えていても仕方ないか、とりあえず着替えないと)」
水「ジュン、私着替えてくるからちょっと待っててねぇ」
J「ん~わかった」

水「おまたせぇ」
水銀燈は黒のミニスカに赤いシャツと比較的動きやすそうな洋服を選んでいた。
銀色の髪をアップで纏め、普段の雰囲気とはまた違う、活発な感じがした。
J「髪そっちのほうが似合うかもね」
水「ん~、髪普段のでもよかったんだけど、風強いと後々大変だしぃ」
J「ふぅん、じゃあ行こっか」
水「そういえばぁ、何で行くのぉ?電車?車?」
J「車、最近乗ってなかったから久しぶりに」
水「今年とったんだっけねぇ」
今年の春に、ジュンが免許とったどー!と大喜びしてたのを水銀燈は思い出した。
水「荷物は後ろでいいのぉ?」
J「うん、じゃあ出発しますか」
キーを入れ、快調に動き出すエスティマ。
これはジュンの父のもので今日は無理言って貸してもらったらしい。
水「あ、途中でコンビニよってぇ。買いたいものあるのよぉ」
J「じゃあ高速乗る前のセ○ンイレブ○に寄るね」

J「で、なに買うの?」
水「飲み物とぉ、あとヨーグルト」
J「乳酸菌か、好きだね」
水「ジュンは?乳酸菌とってるぅ?」
J「おばさんにヨーグルト出されたから、それでちゃんと取ったよ」
乳酸菌と水銀燈は、切っても切り離せない関係だ。
水銀燈には内緒だが、家の冷蔵庫を開けたとき1つ目の段がビッシリと
ヤク○トやらヨーグルトが入ってた時は流石に冗談だろ?
と思う光景だった。というか人様の家の冷蔵庫を空けるのは行儀が悪い。
J「待ってるから、買ってきな。それとなにか飲み物頼む」
水「わかったわぁ」
車を駐車場に入れ、水銀燈を待つ。
辺りを見回すと、どの車もサーフボードや水上スキーで使う板を
車につけてるのがわかった。
J「今日が海水浴ピークなのかなぁ…駐車場大丈夫かな」
水「おまたせぇ~はい」
J「ありがと、周りの車だいたい海水浴とかだよ、ちょっと急ごうか」
水「お店の中もそれっぽいお客さんがいっぱいいたわよぉ」
J「やっぱりかぁ、渋滞してなきゃいいけど…」
J「水銀燈、ナビで渋滞情報見ておいて」

「ETC最高wwっうぇwっうぇww」
水「料金場で止まらないでいいのは快適ねぇ」
J「見ろwwwww他の車がごみのようだwwwっうぇw」
水「それってぇ、校長の口癖じゃなかったっけぇ?」
J「一度言ってみたかったんだよ」
水「あ、この先4km渋滞ですってぇ」
ナビの情報を見ながら水銀燈が言う、表示されたマップの先は確かに
渋滞の意味を指す赤い色で染まっていた。
時間は10時半、ちょっと早めに出たが上手く渋滞は避けられなかった。
J「4kmか…まぁ近いしいいかな」
水「ねぇ…ジュン」
J「こら引っ付くな、事故るだろ!」
水「だってぇ…暇なんだもぉん」
J「渋滞してるのが見えたら、なにかするから」
水「まだ先じゃないのぉ?」
J「いや、見えたよ」
前の車がハザードを点滅させる、渋滞が起きてるという意味だ。
この渋滞ならあと1時間半くらいでつくだろう、ナビの目的地到着時間を
見ながらジュンは思った。

水「ジュン、キスしてぇ」
J「(おまwwwwww)」
水「なにかするんでしょぉ?キ~ス」
J「他の車の人に見えるよ?」
水「見せ付けるのよぉ」
J「わかったよ…チュ」
水「ん…」
J「(あぁ~見てるよ見てる、こんな堂々とイチャついていりゃそら見るわなぁ…)」
水「ふふ、ありがとぉ」
J「ん~、あとは海水浴で我慢しろ」
だからこれで我慢しろと言わんばかりに水銀燈の頭を撫でながら、
ハンドルに手を戻す。
水「いろいろやりたいわねぇ」
J「ボートでも借りる?」
水「そうねぇ」

そんなこんなで渋滞を切り抜け、目標の海に到着した二人。
さすが海水浴場、どこの駐車場も車でいっぱいだ…とは言うものの
絶対どこか開いてるはずだ。
水「ん~、潮風が涼しいわぁ」
車の窓を半分開け、海から運ばれる塩の香りを楽しむように水銀燈は言った。
J「お、ここ入れる」
スムーズに車を駐車場に入れ、夏独特の刺すような日差しと、
太陽で温められた浜辺の砂の熱さを感じながら二人は更衣室を目指す。
J「じゃあ着替えたらここで待ってるから」
水「わかったわぁ」
そういいジュンは更衣室に消えていく。
水「(ついにこのときがきたわ!!!)」
ある意味女の勝負だ、心臓がいつもよりちょっと早く動いてるのを水銀燈は感じた。

水「またせたわねぇ」
10分後、黒の紐ビキニを着た水銀燈がジュンの前に姿を現した。
その姿にジュンは釘付けだった、いつも見ている水銀燈とはまた一味違った色気がある。
水着は偉大だ、これを作った人は神かもしれない…
J「・・・・」
水「どこみてるのよぉ…早くいくわよぉ」
J「ぁー(海水浴に行こうといった俺GJ!wwwwうぇw)」
揺れる胸に肉付きのいいお尻、黒の柄がまた一層エロスを漂わせていた。
水銀燈が歩く先々で男女が振り返る、たとえそれが彼氏彼女持ちでもだ。
誰もが振り返るその美貌とプロポーション、そして銀色の髪を水銀燈は誇らしげに思った。
子供の頃はこの髪のせいでイジメにあって憎いと思ったこともあった…
だがジュンだけは違った、イジメっ子を追い払い、いつも一緒にいてくれた。
「その髪の色かっこいいな!」と褒めてくれるのは彼だけだったっけな…
そのときから水銀燈は彼を無意識のうちに目で追うようになった。
水「んふふ~」
J「いきなり抱きついてきて、どうした」
水「昔のことを思い出しただけぇ」
念願叶って付き合いだした彼はきっと覚えていないだろう、
だって遥か昔の思い出じゃない。

水「つめたぁ~い」
J「でも気持ちいいだろ?」
足を海の中にいれ、水銀燈がはしゃぐ。
J「よし、準備できた。乗っていいよ」
海の家から空気で膨らむタイプのボート借りてきたジュンはボートを海に浮かべる。
J「どこへ行きますかお姫様」
水「うふふ、じゃあねぇ、あっちの方に行こうかしらねぇ」
J「かしこまりました」
水銀燈を乗せたボートをジュンが泳いで漕ぐ。
小さいながらも二人にはどこか豪華に思えるボートは
人気があまりない場所へと向かった。
J「ちょっと疲れた」
水「こっちおいでぇ」
ポンポンとボートの上を叩く水銀燈。
J「おじゃましま~す」
ジュンが勢いをつけてボートに乗った瞬間、ソレは起こった。
水「あれ・・・?きゃーーーーーーーーーーーー!」
ジュンが乗った反動で水銀燈が海に落ちたのだ。
それはもうお笑い芸人みたいにまっ逆さまの状態で頭からドーンと。
J「ちょwwwwwwww水銀燈ごめん!だいじょう……ぶ…じゃな…いね」
そしてジュンは気づいた…水着の上が取れて露になった水銀燈の胸を…
水「さいってい!!!」

J「   _  ∩
   ( ゜∀゜)彡 おっぱい!おっぱい!
   (  ⊂彡
    |   | 
    し ⌒J 」
胸を片腕で隠しながら首の上だけ水上に出しながら水銀燈が怒鳴る。
水「もぉ…なんでよぉ…水着どこよぉ」
J「ごめん、ちょっと探すから我慢して」
いたって冷静なジュンは海に潜り周辺を探す…
あった!黒いビキニの上だけが主人の気も知らず水中をゆらゆらと泳いでる。
J「プハッ!水銀燈あったよ」
水「はやくかしてぇ…恥ずかしいじゃない」
J「…」
水「あ…」
そっと水銀燈をジュンは抱きしめる。
いくら人気は無いといえ、彼からしてみれば水銀燈のこの姿を
見せるのだけは絶対に避けたかった。
それは独占欲なのかもしれない、意外と自分はそういうのが強いなと
抱きしめてる最中にジュンは思った

水「出来たわぁ…ありがとう」
J「ごめんね」
水「うぅん、ジュンがちゃんと抱きしめてくれてたから…」
J「実を言うとね、水着見たときはあまり他の奴に見せたくなかったんだよね」
J「なんか悔しいじゃん」
水「ふふ、これ以上見せるのはジュンだけよぉ」
チュと触れるだけのキスをし、ボートの上に戻る水銀燈。
水「さぁ今のチャラにしてあげるから、全力で戻ってねぇ」
J「サーイエッサー!」
J「あ~~もう泳げない!」
水「もぉ、だらしないわねぇ」
ゼーゼーと肩で息をしながらジュンは砂浜に倒れる。
結局あの後水銀燈に遅いわねぇと言われ、肉体の限界までバタ足をして
ボートを加速させたのだ。
いくら体力があろうとも、疲れるのは疲れる。
J「あぁ~とにかくもう夕方だし帰る準備しよう」
水「そうねぇ…シャワー浴びてくるからさっきの所で待っててぇ」
J「じゃあ俺ボート返してくるから」
ボート返却口の近くでなにか聞いたことがある声が聞こえたが、
疲れているジュンの耳には入らなかったようだ

水「おまたせぇ」
J「よし、じゃ帰るか」
手を繋ぎ、今日は楽しかったねと二人で会話しながら車に乗り込んだ。
帰宅途中、水銀燈は疲れて眠ってしまった。
その寝顔を見ながらジュンは事故を起さないように慎重に運転して帰ったとさ。

オマケ
母「でぇ?どうだったのぉ?」
水「なにが?」
母「なにがって、ジュンちゃんとはしたんでしょ~?」
母「早く孫の顔が見てみたいわぁ~」
水「ママ、私達はまだ高校生なの!将来見れるようになるからいらない心配はしないで!」
母「まぁ水銀燈ったら~おほほほほ」
水「うふふふふ」
二人の乾いた笑いがその日、水銀燈邸に響いたとか響いてないとか…

彼と私と水着と海水浴 END

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最終更新:2006年02月27日 21:57