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ジュンが東京にいって、2週間が経ったわ。
私は、地元の大学に進学したの。
講義も決して悪くはないし、友達もできたわ。
でも、満ち足りないのだわ。
ジュンがいないから。
私はいまだにジュンが東京に行ったとは、思えない。
いまでも、彼の「真紅」と名を呼ぶ声が聞こえるがする。
………いいえ、思いたくないだけね。
ジュンの夢のため、仕方のないことはわかってる。
けれども、それでも、ジュンには、私のそばにいて欲しかった。
私のためにおいしい紅茶を淹れて、
私のそばに座って、いつもの憎まれ口を叩きながら、
私のことをあのやさしい目で見て欲しかった。
………なんて、自分勝手なのかしら。
本当は、笑ってジュンを送り出すべきだった。
それは、わかっている。でもできなかった。
私は、駄目な女だわ。
………紅茶でも飲みましょうか。
ジュンに紅茶の入れ方を教えたのは私。
でも、ジュンは、どんどんうまくなっていって、
私が淹れる紅茶よりもおいしく淹れれるようになったわ。
私にだって、そう思って、淹れた紅茶は、
ジュンの味には到底及ばなかったわ。
僕が学校にいって1週間が経った。
まだ、授業はそんなに受けたわけではないけれども、
なかなか興味深かった。友達もできた。
けれども、なんか寂しい。
我ながら、未練がましくて、嫌になる。
………紅茶でも飲も。
真紅を思い出すけど、まぁ、紅茶中毒者として
こればっかりはやめられないし。
いつもどおり、淹れて……、
あー、もう、二人分淹れちゃったよ。
……ホンット重症だなぁ……。
銀「ジュンいるかしらぁ」
水銀燈がノックしてきた。ちょうどいいかも。
ジ「どうしたんだ?」
銀「特に用事はないんだけどぉ、
暇だから、ちゃんと生活できてるか見にきただけ」
律儀に様子を見に来てくれたらしい。
また、イジめてもいいけど、後が怖いので、
普通に誘うことにしようかな。
ジ「そっか、ありがとう。
実は、今、紅茶入れすぎちゃってさ。
よかったら、飲まないか?」
銀「ふふっ、私をあなたの部屋に連れ込んでなにするつもりぃ?」
ジ「や、え、あ、べ別にそんなこと考えてないよ……」
人をからかうことに関しては、水銀燈のほうが、上手みたいだ。
おかしそうに笑う水銀燈をみてそう思った。
銀「ふふふっ、やぁねぇ、あなたがそんなことするようには、見えないわよ。
もしかして、力も私のほうがつよいんじゃないかしらぁ?」
ジ「そんなことはないよ」
と、口ではいったものの、
運動に関しては、僕は凡人以下もいいところだからな。
真紅にも、腕相撲で負けたし、
水銀燈にも、普通に負けそうだ。
腕相撲勝負を提案されないことを祈る。
銀「まぁ、せっかくだし、紅茶いただくわぁ。」
ジ「そっか、助かるよ。」
祈りが天に通じたのか、提案されずに済んだ。
いろんな意味で助かったよ。
ジ「ハイ。どうぞ」
水銀燈は、優雅に紅茶を口に運ぶ。
銀「……あらぁ……おいしいじゃない」
ジ「そういってもらえると嬉しいよ」
やっぱり、自分の作ったもので喜んでもらうのは素直に嬉しいものだ。
銀「驚いたわぁ。お裁縫だけじゃなくて、
お料理とかもできるのねぇ……
意外に部屋もキレイにしてるし」
ジ「いや、料理のほうはあんまり……。
僕ができるのは、お茶を入れることくらい。」
料理のほうは、姉ちゃんがずっとやってくれてたからな。
コッチ来る前に少しは練習したけど、まだまだ、ヘタだし。
銀「あらぁ、そうなの。
じゃぁ、ちゃんと乳酸菌とってるぅ?」
ジ「…え、何でそこで乳酸菌なんだ?」
銀「あらぁ、おばかさんねぇ。
乳酸菌は生きていく上で欠かせないものよぉ。
乳酸菌があれば、人は生きていけるわぁ。」
いやいやいや、聞いたことない。
というか、僕、ヤクルトとか全然飲まないのに生きてるぞ。
もしかして、新手の新興宗教か。
などとつまらないことを考えているうちに
水銀燈がバックから何か取り出した。
銀「しょうがないわねぇ。はぁい、ヤクルト。ちゃんと飲みなさいよ。」
水銀燈は、いつもヤクルトを持ち歩いてたりするのか。
…………まぁ、受け取らない理由もあるまい。
ジ「ありがとう。水銀燈」
銀「ご飯は、ちゃんと食べてるぅ?」
ジ「まぁ、自炊のほうは頑張ってる。
水銀燈は、ずいぶん慣れてるみたいだけど、
高校生くらいからここで一人暮らしなの?」
銀「えぇ、そうよぉ。
話を聞くかぎりじゃ、お料理の腕は勝てそうねぇ」
ジ「うん。昨日も、焦がしちゃったしな。
材料が多いし、火の使い方、切り方も色々あるし…
いろいろ考えなきゃいけない分、
紅茶いれるより、難しい。」
銀「まぁ、カップラーメンに走らないだけマシかしら。
でも、私は、こんなおいしい紅茶入れるほうが難しいと思うわぁ。
ホント、ヘタなお店よりもおいしいわぁ。
時々、飲みに来ていいかしらぁ?」
僕も、別に褒められて悪い気はしないし、二つ返事でOKした。
その後、近所にある安い店とかの話をして、水銀燈は帰っていった。
ふと、思った。
もしかしたら、彼女も寂しいのかもしれない、と。
けれども、わざわざ僕のこと見に来てくれるぐらい
面倒見のいい彼女のことだ、友達は多いに違いない。
そうだよな、彼女が寂しいってわけないよな。
自分が、真紅を恋しがってるだけで、
他人が寂しいとか勝手に思う自分に嫌気が差した。
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最終更新:2006年05月05日 22:30