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 春の陽気と共に聞こえる小鳥のさえずりは柔らかい目覚まし時計
それよりも一足先に鳴り響く、不快で無機質な音
そして、それが止まった時、今日が始まる
「翠……星石、朝たよぉ」
「蒼星石……もう少し……」
翠星石と蒼星石
双子の二人の一日は寝惚けながらも始まる
酷く、寝惚けてはいるが、二人とも極端に朝に弱い訳ではない
その訳を簡単に説明すると今二人はとある家庭に、ホームステイしている
それが、彼女らに少し過酷な朝を、向かえさせている理由だ
「ん~」
「ほら、翠星石行くよ」
「あと5……1分だけでも……です」
「いいから、起きて翠星石」
「ん~」
なかなか、布団から出てこない、翠星石に、しびれを切らしたか、蒼星石は布団を奪い取った
「あ~」
「はい、起きる」
「そんな事を言ってもまだ暗いです」
翠星石が言ったように太陽はまだ頭すら見せていない

「それは……仕方ないよ」
「う~、でも流石に寝みーです」
蒼星石を責めても仕方ないのは分かっている
だから、毎日こんな風にだだをこねながら起きるのが日課になっていた
「顔を洗えば目が覚めるよ」
「分かった……です」
翠星石だけではなく、蒼星石も、頭はまだ眠ったまま
だが、これが習慣のせいか、いつものように翠星石を洗面所まで連れていく

「あ~目が覚めたです」
「ふふっおはよう」
「おはようです」
布団から出てから、少し経ってからの゙おはよゔは、最高の笑顔の挨拶だった
「おはよう」
二人が朝の挨拶を交し終わると、横から声が聞こえた
「おばあさん、おはようございます」
「おはようです」
本日二度目の挨拶の相手はおばあさん
この家で暮らしている老夫婦の片割れ
そして、もう片方は……

「オジジは今日も朝から時計イジりですか?」
「翠星石っ」
「ふふっ今日も時計イジりですよ」
また今日も時計イジり、そんな風に呆れる翠星石
居候の身であるのにオジジ呼ばわりした翠星石を見て呆れる蒼星石
そんな二人を見て笑みを浮かべるおばあさん
なんとも言えない、のどかな光景である
「おじいさんに朝御飯が出来ましたよって呼んで来てくれないかしら」
「わかりました」
蒼星石は二の次の返事で、おじいさんがいる仕事場へと向かっていった

この家はおじいさんが、営むしている時計店でもある
今の世には高級な時計店など多ヶあるが、ここはおじいさんが若い頃に開店し、今ではアンティークと言われる物しかない
時代の荒波か、今まで続いてきたものも、経営難なことには違いはない
この店もきっとおじいさんが、最初で最後の代になるだろう

だから、と言うわけではないが、それもあっておじいさんは、太陽が昇る前から仕事をしている

おばあさんもその生活に慣れているのはいいが、居候したばかりの翠星石と蒼星石にしたら迷惑に違いはない
けど、常に人のことを考える蒼星石に翠星石も口は悪いが蒼星石に似たのかそれともその逆か
どちらにしても、二人ともそれを受け入れようと努力をしている
この町でなければ、すぐにでも居なくなっても構わないなに努力をする
彼女等はいつもそうだ

「おじいさん、朝御飯ですよ」
真剣な眼差しで時計をイジるおじいさんの背中に蒼星石は語りかけた
「すぐに行くよ」
おじいさんは振り向くこと無く、背中で返事を返した
「はぁ」
蒼星石の吐いた、ため息はおじいさんの耳には届くこともなく、蒼星石は食卓へ向かった

「また一人ですか」
食卓で腰を駆けていた、翠星石が今日もそう呟いた

「うん」
「まぁったく情けねーです」
そう言うと今度は、翠星石がおじいさんの所へ向かって行った
翠星石が行くと、必ず、おじいさんを連れてくる
結局、蒼星石が呼びに行き、それでも来ないおじいさんを翠星石が連れてくる
それが、ここでの日課になっていた

「おじじ、朝御飯です」
「もう少ししたら……」
その、もう少しが長い事を知っているから、翠星石も意地になる
「食うもん食わねーとくたばるですよ」
いつもの決め台詞をいい、翠星石はおじいさんの腕を引っ張る
「分かった、分かった」
無理に引っ張られて時計を落としそうになると
おじいさんは必ず観念する
それを聞くと、翠星石は、どこか勝ち誇った顔をする
「ほら、行くです」

太陽の優しい光が、差しこめる食卓で、普通よりも早くけれども、遅い四人の朝が始まる
「今日の味噌汁、いつもより薄くないか?」
「年寄りには塩分ひかえめで十分です」
「翠星石ったら」
「そうですよ、おじいさん」

楽しそうな笑い声の響く食卓は、
古き良き日本の光景かもしれない
血の繋がらない者の集まりだからこそ
゙礼゙ど義゙が深い絆になっている

早くて遅い朝食
笑顔の絶えない食卓
彼女等が学校へ行くまでのこの時間はおじいさんとおばあさんには
とても大事な一時だろう

そして、今日も始まる

~翠星石(双子編)・完

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