「ふわぁ~~」
今日も目が覚めた。時刻は朝の七時ちょうど。
今日もいつもと同じ一日が始まる。
『いつか』
「リボンを結んで…う~、髪型がいまいちなの~」
いつものように鏡の前で四苦八苦。
毎日のことなんだからもっと早く起きればいいのに…
私って学習能力ないなぁ。
「雛苺!はやくなさい!遅刻してしまうわ!」
「まあまあ、そんなに急かさなくてもいいだろ」
いつもの二人の声が聞こえてきた。もうこんな時間?
「もう少し待ってなの~!」
「全く…そんなに時間がかかるならもう少し早起きしたらどうなの!」
また今日も真紅を怒らせちゃった。でも、なんだかんだ言って待っててくれるのよね。
「お待たせなの~」
「遅い!もう八時を三分も回っているのだわ」
「うい…ごめんなの」
「いつものことだろ。気にすんなって」
そして今日もいつものように三人で学校に行く。
いつものように昨日のテレビ番組の事、学校の事なんかの他愛のない話をしながら。
「……でさ…」
「…だわ……」
「なの………」
小学生の頃から変わらない毎日。
今日もいつもと同じ一日。
「それで……あら?あれ…」
「どうした?…うわぁ~桜か」
「今年もようやく咲いたのね~」
学校の少し前にある桜並木。
今年もいつもと同じように、他の桜より少し遅れて咲き始めたみたい。
「次の週末ぐらいが満開だな」
「きっとそうなの!」
「それじゃあ、今年もみんなでお花見をするように言っとかなくちゃね」
今年も同じ会話。きっと今年もみんなでこの桜の下で大騒ぎするんだろうなぁ。
ふと一本の桜の木が目にとまった。この並木道からは少し離れた場所にある、その木。
「あの木は……」
その木には二つの傷があった。見覚えのある傷が。
「あれ…?」
グッ…
「ほら!やっぱり僕のほうが少し大きい!」
「そんなことないの!同じくらいなの!」
「それはリボンの分だろ!僕のほうが大きいって」
「うー…」
「ちびどもが背比べですか?滑稽ですぅ」
「あっ翠星石!そんな言い方はひどいの!」
「お前だって大して身長変わんないだろ!」
「そのセリフは翠星石よりおっきくなってから言いやがれですぅ~」
「すぐにお前よりでっかくなってやるからな!覚えてろよ!」
「ヒナだって負けないんだから!」
「へ~んだ!もう忘れたですぅ~」
…そんなこともあったっけ。
あの頃はよくちびってからかわれてた。ふたりで。
「おい?どうした雛苺?」
「…う、うゆ?なんでもないの!」
「そうか?なんかボーっとしてたみたいだけど」
…今、JUMは翠星石よりもおっきくなったし、私なんかもう彼の肩にも届かない。
もうちびって言われることもない。
JUMは男の子だし、きっとそれは当たり前のことなんだと思う。
…でも、私はどうだろう。
ちびのまま…変わっていない?
「大変!?もうこんな時間よ!二人とも急ぎなさい!」
「お、おい!真紅!ちょっと待てよ!」
「雛苺!僕たちも急ぐぞ!ほら、手!」
「は、はいなの!」
彼に手を引かれて走る私。
いつもと、幼い頃と同じ。何も変わらない。
彼の背中を追いかけている。
見えるのは彼の後ろ姿だけ。
でも、いつか…いつか
彼に手を引かれてじゃなくて、ふたり手をつないで
彼の後ろじゃなくて、ふたりとなりに並んで…
fin