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打ち捨てられた教会の中。
古ぼけたステンドグラスをおぼろげな月明かりが照らす。

聖堂内は荒れ果て、朽ちかけた長椅子が何列も続く。
その中ほど。
唯一形を保った椅子の隅に、彼女は座っていた。


「  Who killed Cock Robin.
  I, said the Sparrow,With my bow and arrow,I killed Cock Robin. 」 


囁くように、彼女は唄を歌う。

祈るでもなく、楽しむでもなく。
彼女はただ静かに、遠い異国の古い唄を口ずさむ。
子守唄のように穏やかな声で歌い続ける。

だがその歌声も、小さな呻き声によって遮られた。

彼女は首だけを動かし、声の方向に顔を向ける。
視線の先には十字にかけられた聖人のブロンズ像とステンドグラス、それと椅子に縛り付けられた少女の姿。

少女の手は背中で縛り上げられ、足は椅子に括り付けてある。
壁にでも打ち付けられたのか、額には薄く血がにじんでいた。

意識を取り戻した少女の顔には、何が起こったのか理解できない戸惑いが浮かぶ。
だがそれも、すぐに理解し始めたが故の恐怖に塗りつぶされ始めた。

そんな少女の姿を見て、彼女はゆったりとした足取りで立ち上がる。
そして、ダンスでも申し込むかのように優雅な動作で、少女へと手を差し向けた。 

「可哀想……こんなに怯えてしまって……」 

伸ばした手で少女の頬をなぞりながら、彼女は小さな声で告げる。

少女は、自分が何をされるのかは分かってはいないだろう。
それでも、恐怖に震え声の出ない喉で、必死に何かを訴えようとしていた。

彼女は撫でていた手を離し、静かに頷くとその背後に回る。
そして、そっと。
まるで慈しむかのようにゆったりとした動きで、少女の喉にナイフを当てた。

震えていた少女の体が、緊張感からか硬直する。

「―――!!」

少女が何かを叫ぼうとした瞬間。

彼女は幸せそうに目を細める。

そしてその表情のまま、ナイフを横に滑らせた。


声無き悲鳴が朽ちた教会に響き渡る。
裂けた喉から、鼓動にあわせて鮮血が噴き出し、床板を汚す。
切っ先は気管にまで届いていたのだろう。
少女の痙攣に合わせ、笛の音のような音が少女から奏でられる。

その音色に、彼女は滑稽なものでも見たかのように可笑しそうに表情をほころばせた。 


「  All the birds of the air Fell a sighing and a sobbing,
  When they heard the bell toll For poor Cock Robin. 」


再び取り戻された静寂の中。
彼女は再び唄を口ずさみながら教会の出口へと向かう。

足音だけが小さな音を立て、程なくして扉が閉まる音が重々しく響いた。 

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