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私達は二人でテーマパークの中を歩いている。
ジュンが興味を持ったアトラクション……いったいどんなものかしら? ちょっと楽しみなのだわ。

ジュン「おっ、ここだ」

ジュンが指差した方向には、大きなお城が建っていた。
入り口の上にデカデカと『カートゥーントラベラーズ』とカラフルに描かれていて、レンガで組まれている壁面にもコミカルなアメコミ風の絵が、これも沢山描かれていた。
今にも絵の世界から飛び出てきそうで、とっても面白そうだ。

紅「ここ……どんなアトラクションなの?」

私はジュンに聞いてみた。すると、ジュンはにやりと笑って言った。

ジュン「『アニメの世界を旅する』アトラクションさ。裏人気スポットとして、ネットでも有名なんだ」

へぇ~……
よく調べてきてるわ……。手元に『へぇ』ボタンがあったら押していただろうに。

ジュン「ま、とりあえず入ろうぜ」

歩き出したジュンが手招きしてくる。いけない、またポケーッとしていたみたいね。
今日はなんだか考え込む事が多い日だ。
私はジュンの所に駆け寄り、腕に抱きついた。

ジュン「なんだなんだ?」
紅「たまにはこうしたいときもあるのよ。黙って抱きつかれてなさい」
ジュン「……やれやれ」

 

 

 

 

 

係員「ようこそ『カートゥーントラベラーズ』へ!」

中に入ると、制服を着た係員さんに案内される。
建物の内装も可愛いアニメキャラで埋め尽くされていた。
私達は細い通路をしばらく歩く。しばらくすると道が開けて、ズンチャカとマーチが聞こえてきた。

紅「何か聞こえてきたわ」
ジュン「うはっ! 情報どおりじゃないか!」

そして私達は、少し開けた空間に出た。

前にモニターがあって、その手前には座るためなのだろうか、シートが据え付けられていた。

係員「このアトラクションは――」

ハイ、省略。説明が長いから割愛よ。……要は、特殊なヘッドホンとめがねをつけて、リアルなアニメの世界を体験しましょう。ってところね。
ジュンの選んだものにしては、案外面白そうだ。

紅「あら、中々いい選択をしたわね」
ジュン「お褒めに預かり恐縮です。」

ジュンがおどけて答える。
そして二人並んでシートに腰掛けた。ふかふかしていて、中々のすわり心地だ。

右側の手元にはボタン……一体何に使うのかしら?

係員「お手元にあるボタンを押してください」

赤いボタンをポチっと押す。

ちょっと柔らかい感触がした。

係員「それでは、よい旅を」

私達が準備を終えたのを確認した係員さんが、壁に据え付けられていたレバーを下に下ろす。
あれ? なんだか眠たくなってきた……

 

 

 

 

 

目覚めたら、大草原にいた。 一体何を言ってるのか私も(ry……じゃなくて。
周りを見ても、さっきのモニターのある空間では無い。
足をくすぐる草の感触も、現実となんら遜色なかった。
服装が全く変わってないのは、ちょっと残念だわ。

紅「凄い……」
ジュン「予想以上だなぁ」

私もジュンも感嘆の声をあげることしか出来ない。
しばらく周りを落ち着きのない子供の様にキョロキョロと見渡し、状況を確認する。
うん。どうやら大丈夫みたいだ。私達はのそのそと立ち上がる。

紅「よいしょ……。ふぅ」
ジュン「よっこらせ。……んん~!? 何だあれ」

え? ジュンが指差した方に私が目を向けたのと同時に、草むらからガサガサと音がした。
段々こっちに向かって……来てるのだわ!

紅「ジ、ジュン!?」

い、いい一体なにかしら?
私はジュンの大きな背中の後ろにこっそりと回りこんだ。
いざとなればジュンを盾にして逃げてやりましょう、と言わんばかりにジュンを音のする方に向かって押し出す。
しばらく二人で向かってくるそれをじっと見ていると、それはついに私達の前に姿を現した。
……ピエロ?
ピエロみたいなそれは、私達がそこに立っているのを確認した後、ついてこいとばかりに手招きをしてきた。

ジュン「……とりあえず、追うぞ」
紅「そうね。それがいいわ」 

 

二人で後を追う。
着かず離れずのスピードで、スキップをしながらピエロは先に進んでいく。
うぅむ、案外速いわね……。
そのまま五分くらい、ジュンと私はゆっくりと走り続けた。すると、小高い岡を登ったところでピエロは急に立ち止まり、くるりとこっちを振り向いた。
私達もピエロの隣に立つ。ゼェゼェと機関車みたいに荒い呼吸をしているのはジュン。全く、私よりも体力がないんだから。
しばらく、私達は大きく深呼吸をして呼吸を整える。
そして顔を上げた瞬間、私は目の前の光景に目を奪われた。

紅「きゃあーっ! 凄いのだわ!」

そこは、アメリカンコミックの中のキャラクター達のオールスターだった。
虹色の鳥が空を舞い、デフォルメされたクマがのっそのっそと歩いている。
私たちの足元を小さなリスがサササッと横切っていった。
なによりも凄いのは、全てがまるで本物みたいに感じる事だ。
ジュンも口をぽかんと開けて、目の前の光景に見とれている。私達が我に帰ったときには、ピエロは既に消えていた。
どうやら案内してくれたみたい。……私はピエロさんありがとう、と心の中でお辞儀をした後、試しに目の前を歩いているクマに触ってみる事にした。
お腹に触ってみると、柔らかな毛の感触がした。そのままゆっくりと撫でていると、クマは気持ち良さそうに唸り声を上げた。う~ん! とっても可愛い。

紅「ジュン、このクマさん、とっても可愛いわよ。」
ジュン「そうか? 僕はこのリスの方が……」

ジュンはリスを抱きかかえている。デフォルメされているので、可愛らしさがぐっと増している気がする。
みつさんじゃないけれど、お持ち帰りしたいわね。

 

 

 

 

 

しばらく、私達はアニメの世界を楽しんだ。
川辺で斧を持ったワニとお話したり、本の世界のコミカルな悪魔や愛らしい魔術師も見たわよ。
魚の群れに乗せてもらったときは、もう大感激だったわ。

紅「ふふ、とっても面白いのだわ! ジュン!」
ジュン「喜んでもらえて嬉しいよ。調べた甲斐もあったってもんだ」
紅「ありがとう」
ジュン「どーいたしまして」

私達はバカップル特有の(自覚できているだけマシね)イチャイチャを繰り広げていた。
……あれ? なんだか眠くなってきた。ああ、時間切れか。

 

 

 

 

 

目を開けると、そこは元のモニターのある部屋だった。
んっ……眩しいわね。私は瞼をゴシゴシとこすりながら、ヘッドホンとめがねを外し、大きく体を伸ばした。

係員「お楽しみいただき、どうもありがとうございました!」

係員さんが、私達を出口まで案内してくれた。
外に出ると、太陽の光が私達に降り注いだ。今まで薄暗い空間にいたからか、若干眩しく感じる。
時計を見ると、もうお昼どき。お腹もぺこぺこだ。

紅「ジュン、お腹がすいたわ。お昼にしましょう」
ジュン「そうだな。それにしても……はー疲れた」
紅「女性の前で疲れを顔に出すものではないわ。しゃんとしなさい」
ジュン「何で?」
紅「全く。私が……心配するからよ」
ジュン「なんだよそれ」

 

もう……。これだから鈍感な彼氏を持つと苦労するのよ。
私はケラケラと笑うジュンの手を掴んで、前へと歩き出した。

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