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あの大騒動の後……すべての争いを円満に終わらせた私たちは部屋へと戻ってきていた。
みんな手に手に一階の売店で買ったお菓子と飲み物を持っている。
寝る気はあるのかしら……

翠「はふぅ……疲れたですぅ」
苺「ヒナももうくたくたなの~」

翠星石と雛苺が布団に丸太のように倒れ込んだ。
雛苺の手には『ドアラのマーチ イチゴ味』が握られている。
どうやら、苺大福は売られてなかったようね。
私はお目当ての『くんくんビスケット』を買ったわ。若干割高だったけれど、仕方ない。

銀「何にも面白いのやってないわねぇ。つまらないのばっかりよぉ」

水銀燈がリモコンをピッピッと操作している。
隣で金糸雀が番組表を見ているようだ。
なんなのよ、この生活感溢れる光景は……今は修学旅行中よ。
薔薇水晶と雪華綺晶は早速お菓子にぱくついているわね。……ちょっと雪華綺晶、貴女はお菓子を買いすぎなのだわ。

蒼「お茶を淹れたんだけど、みんな飲む?」

蒼星石が湯飲みにお茶を入れて運んできた。
ああ、蒼星石はこういう時に本当に気が効くわね。まるで潤滑剤だ。

 

紅「私は頂かせてもらうわ。お願いね、蒼星石」
銀「ありがとねぇ。」
雪「すいません。頂戴させていただきます」

お礼を言いながら湯飲みを受け取る。
ズズ……温かい緑茶ね。お腹がカイロを入れたみたいに温かくなってくる。
しばらく私達は思い思いの事をして過ごすことにした。
そのまま三十分が経った頃、翠星石が突然立ち上がって言った。

翠「これから修学旅行恒例、怖い話大会を始めるですぅ!」
薔「……いいね」
金「やるかしらー!」

とたんにまったりムードだった部屋に活気が戻る。みんなかなり乗り気よ……。
怖い話……私は大の苦手よ。『オバケ使いのJ太郎』の再放送も怖くて見れなかったのに……。
ウルージ君の話のときも、ずっとばれない様にさりげなーく耳を塞いでいたのだわ。

翠「早くおめーら、布団の中に入るですよー」

 

布団の中でぬくぬくしながら怖い話……少しは恐怖が薄れるかもね。
私達はもぞもぞとヤドカリの様に布団に潜り込んだ。

紅「ひょえっ!」

突然部屋が薄暗くなった。……金糸雀が電気を切ったみたいね。
消すなら消すで一言かけて頂戴。素っ頓狂な声をあげてしまったじゃない……。

銀「真紅ぅ。今の悲鳴は何ぃ?」
薔「芸人の……リアクションみたいだった」
紅「び……びっくりしちゃっただけよ」
銀「ふぅ~~~ん」

水銀燈がニヤニヤ笑っている。
くぅぅ……こうなったら水銀燈が恐ろしさのあまり飛び上がってしまうくらいの話をしてやるのだわ!

翠「トップバッターはこの翠星石がやってやるですぅ! 先頭打者ホームランかっとばしてやる! ですぅ」

翠星石が押さえた大声(表現し辛いわね)でシャウトした。
怖いムードが薄れていくのを感じる。
これなら私でも乗り切れそうね。
―――甘かった
私は本気で後悔した。けれど、今更抜けることは出来ない。
薔薇水晶の『邪視』や雛苺の『呪われた刀』が本当に怖かった。夢に出てきそうよ。

金「真紅、次は貴女の番かしら」

金糸雀がぽんぽんと枕を叩いている。
もう私の番?

紅「……話すわよ」

ゴクリ……と唾を飲み込む音が静かな部屋の中に響く。
水銀燈、見てなさいよ。絶対怖がらせてあげるわ。

紅「暗い部屋で怖い話をすると、霊を集めるのよ。ましてや今は午後11時……(私にとっては)夜中なのだわ。そこらじゅうに悪霊がうろうろしているかもしれないわね」
翠「ひぇー! 怖いですぅぅぅ!」
蒼「大丈夫だよ。翠星石、僕がついてるよ」

翠星石がきょろきょろと周りを見る。
そして翠星石を自分の方へと抱き寄せる蒼星石。
うんうん、怖がっているわね。けど私は平気よ。だってフィクション100%、私の完全創作だもの。

紅「案外、ノックでもしてきたりするかもね」

コンコン

紅「え?」

 

部屋をノックする音がした。
背中にツララを入れられた気分だ。皆が互いの顔を緊迫した表情で見る。
嘘でしょ? あの話は創作……実話ではないわ。

コンコン

もう一度コンコンと音がした。

銀「ちょっとぉ……真紅……本当に来ちゃったんじゃなぁい?」
翠「真紅があんな話するからですぅーー!」
紅「ちょ……ちょっと待って頂戴! あれは私の作り話よ」

翠星石や水銀燈が声を震わせながら慌てふためくので、仕方なく正直に話すことにした。
みんながほっと胸をなでおろす。

金「何だぁ、作り話だったかしら。ほっとしたかしら」
薔「……じゃあ、ノックしてるのは、誰?」
雪「『嘘から出た誠』という諺通りになってしまったんじゃあ……」

また室内がピリッと緊迫した空気に包まれる。
それにしても雪華綺晶の言った『嘘から出た誠』……確か嘘が本当になるという意味の諺だったはずよ。
まさか本当に悪霊が……。
布団に潜り込みながらおそるおそるドアの方の様子を伺うと、今度は声がした。

梅岡「みんなーー! 何で開けてくれないんだい? 担任の梅岡だよー!!」

え? えっ!? …………なぁんだ……梅岡先生か。

蒼「すっ、すいません!。今すぐ開けに行きます!」

蒼星石がトタトタとドアの所まで走り、オートロックを外す。
金糸雀が部屋の電気をつける。部屋が元の様に明るさを取り戻した。
ドアの向こうにいたのは正真正銘私たちの担任、梅岡先生だったわ。

梅岡「んもう、まいっちゃうね。どうも」
銀「何だぁ、梅岡だったのねぇ」
薔「……ほっ」

 

みんな安堵しているようだ。かくいう、私もそうよ。
その後、梅岡先生による健康観察が行われた。
私たちは先生に就寝準備が早いと褒められたわ。
そして電気を消してパジャマに着替えて布団の中に潜り込んだ。
男子はそのままジャージで寝るみたいだけど、私はそんな不潔な事は出来ない。
ちょっと荷物が増えたって良い、綺麗なパジャマで寝たいわ。
その後は布団にもぐりこんでガールズトーク。
誰が誰を好いているとか、その手の類の話よ。
薔薇水晶が翠星石と水銀燈に仗助君との仲を突っ込まれていたわね。
白い頬をリンゴの様に赤くしてたのが印象的だったわ。
とりとめも無い事をぐだぐだと話していたらいつの間にか午前2時。皆でワイワイするのも楽しいけれど、夜更かしはお肌の大敵。
私も寝る事にしたんだけど……すんなり寝かせてはもらえないのよ。
誰かが……私のパジャマのズボンを脱がしに来る!

 

紅「きゃっ!」

……悲鳴を上げて周りを見るとみんな息を潜めて、隙をうかがっている。
なるほど、今度はパジャマの脱がしあいという事ね……。やってやるのだわ!
私は、眠気を押入れの奥へと追いやり、抗戦することにした。
自分のズボンのすそを握り締め、隙を見つけて、ズボンを脱がしあう。

蒼「ひゃあっ! 止めてよ!」
薔「蒼星石……討ち取ったり」

薔薇水晶が蒼星石のパジャマのズボンを旗のように掲げている。
蒼星石は涙目ね……ご愁傷様。
こんなおばかなことをやっていたら、いつの間にか外が明るくなってきた……。

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