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私達を乗せたバスは、大きな旅館の前で停まった。
バスを降りると、爽やかな木の香りが鼻に登ってくる。
旅館の名前は『白蛇館』。なんとなく、昔のお城を髣髴とさせる旅館ね(例えるなら『千と千尋の神隠し』の油屋よ)
玄関の看板には『薔薇学園高等学校ご一行様』と札がかけられていた。
不思議な事に私はこのとき、修学旅行に来ているんだと実感した。
なんてったって、『ご一行様』だからね。 

 

 

 

 


女将さんから旅館での注意事項が伝えられる。
それから、部屋へと案内された。私たちは、八人で十二畳の部屋を使う。
簡単な健康観察があり、荷物を置くと、休む間もなく夕食だ。
私たちは大広間に向かった。
テーブルにはずらりとお膳が並んでいる。

雪「お刺身に天ぷら……ジュルリ」
翠「うまそうですぅ……」
蒼「もう二人とも、自重しなよ」

並べられた沢山の料理を見てよだれをすする雪華綺晶に翠星石。
蒼星石の言う通りよ、自重しなさい。
でも、確かに美味しそうね……。急にお腹がすいてきたのだわ。
上座の方では、笹塚君が女将さんに挨拶をしている。
確か女将さんの名前は……斉藤さんだったかしら。
若くて活発で、とても綺麗な人だ。
しばらくすると挨拶も終わり、大広間に集まった生徒全員で手を合わせる。

笹塚「いただきます」

……楽しい食事が始まった。

 

 

 

 

 

食事も終わって、次はお風呂。
部屋に戻って着替えとタオルを持って大浴場へと向かう。
『女』と書かれた暖簾をくぐると、もわっとお湯の匂いがした。
まだ私たち以外には誰も来ていないらしい、貸しきり状態のようだ。

銀「貸切みたいねぇ。やったぁ」
薔「……チャンス」
翠「ちゃっちゃと入っちまうですよ!」

翠星石の言う通りね。
私も籠に着替えとタオルをいれて、服を脱ぐ。
タオルで厳重に体をガードして……っと。

苺「わぁー!ひろいのー!」

雛苺が歓声をあげる。
大浴場だからキンキン響くわ……。
かけ湯をしてから、乳白色のお湯に体を沈める。
一日の疲れが取れていくような感じがした……なんだか、オバサン臭いわね。

銀「真紅ぅ、まだお胸はまな板なままなのぉ?」
紅「何ですって!」

猫なで声でちょっかいをかけて来るのはやっぱり水銀燈。
私がにらみつけると、外国の女優さんのように肩をすくめる。
悔しいけど、タオル越しでもその胸の大きさが分かるのだわ。おまけにヒップやウエストも……。お風呂に入っている水銀燈は、女性の私から見ても、艶やかだ。
何故神は水銀燈にその体を与えたのだろう……断固抗議するのだわ!

 

銀「揉んでもらうと大きくなるって言うわよぉ~」

揉むように乳白色の湯を手で弄びながら水銀燈が言った。
それは私も聞いた事がある。
私は、ジュンに胸を揉んで貰う所をイメージした。……ボンと顔が熟れたトマトの様になっていく。

雪「顔が赤いですよ。カワイイですわ」
薔「エッチなこと、考えてる……?」
紅「そっ……そんな事……!!」

雪華綺晶と薔薇水晶がこっちにきた。
二人とも顔が上気していて、体が薄桃色に染まっている。
ベジータなら野獣のごとく襲い掛かっているでしょう。

雪「まだまだチャンスは沢山ありますわ。大切なのは、それを逃さない事ですよ」
薔「……ファイト、真紅」

そうね……みんなが応援してくれている。
頑張る以外に無いわね。

雪「部屋は空けておきましょうか?」
薔「……ゴム、買った?」
銀「別にカメラとか仕掛けてないから、安心してねぇ」

……そこまで心配してもらわなくても結構なのだわ!
この小姑共め!
ええい!もう! 私は髪を洗おうとお風呂から出ることにした。

 

 

 

 

 
洗い場に行くと、翠星石と蒼星石が髪を洗っていた。
翠星石は髪を丁寧に撫でるように洗っていた。真っ白なうなじがちらちらと見える。
蒼星石は翠星石の話どおり本当にシャンプーハットをつけていた。
私は吹き出しそうになるのをこらえ、蒼星石に話しかけた。

紅「蒼星石、貴方本当にシャンプーハットをつけて頭を洗っているのね」
蒼「水が怖いと言うよりも、泡がダメなんだよね……あはは」
翠「牛乳石鹸の泡を牛乳の味と思って、食べられると勘違いして顔に塗りたくっちまったですからね。それから――――」
蒼「そっ!それもばらしたらダメだよ!翠星石! 真紅、このことは……」
紅「ええ、分かっているわ」

私は微笑みながらそう言った。
蒼星石がほっとした表情になる。翠星石はすまなそうに蒼星石に何か言った。
シャワーの音に混じって私には聞こえなかったけど、きっと謝罪の言葉だ。
二人ともすぐに謝る事ができ、そして互いを許す事ができるから、仲の良いままで居続ける事ができるのだろう。
私も見習わないといけない所だわ。

 

 

 

 

 

髪を洗い終えた私が露天風呂に行くと、金糸雀と雛苺がゆったりと露天風呂を満喫していた。
雛苺の胸がたゆんたゆんと浮いている。
くっ……羨ましいのだわ。
私も露天風呂に身を沈めた。すぐに体がほっこりした。
上を見ると満天の星空だ。

紅「……綺麗ね」

しばらく湯につかっていると、蒼星石や翠星石、水銀燈たちも露天風呂にやってきた。

銀「やっぱり温泉といえば露天風呂よねぇ」
蒼「こういうのが、旅の醍醐味だよね」
雪「星空が美しいですわ」
翠「どっひゃあ~~!! 凄いですぅ」
金「卵焼きがあればいう事なしかしら」
苺「ヒナはうにゅーと緑茶があればいいの」
紅「誰か紅茶を淹れて頂戴」
薔「……葉っぱがないよ」

 

 

 

 

 

ベジータ「ナッパ号! 発進!」
ジュン「おい止めろバカ。覗くなら覗くで静かに……」
ベジータ「うるせーっ!俺はコソコソしたことが嫌いなんだー!」
ジュン「じゃあやめろよ……。ああもう知らね」

星を眺めながらまったりしていると、男湯の方から風情もクソもない声がした。
竹で出来た柵で仕切ってあるだけだから、向こうの大きな話し声は全部こちらに聞こえてくる。
ジュンたちね……。後で叱っておかなくちゃ。
ベジータの叫び声と同時に、こっちに向かって振動音を立てながら小型のラジコンヘリが飛んできた。
ビデオカメラが装着されている。しっかし、随分おおっぴらに仕掛けてきたわね……。
私たちはタオルを体に巻きつけ、ガードする体勢にはいった。

翠「へ、変態ですぅーー!」

翠星石が金切り声を上げながら近くに置いてある盥を投げつける。
しかし、ヘリはヒョイと翠星石の投げつける盥を避ける。

ベジータ「ハッハッハ!まさか翠嬢たちの裸体を拝む事になるとはな! タオル越しなのがまた想像力を掻きたてるぜ!」
翠「やーーーー!!」

また柵越しにベジータの声が響く。

金「機械は水に弱いかしら!えい!」
苺「とぉ! 雛苺スプラッシュなの!」

金糸雀と雛苺が水をヘリに向かって浴びせかける。
これはかなり有効なのだわ……金糸雀にしては良く考えたわ。

 

金「効かないかしら……」
苺「どうしてなの?」
ベジータ「ハッハッハ!! 防水対策は万全だぜ! この日のためにどれだけの準備をしてきたと思っているんだ! ……え?あれ?何も見えん!」
銀「フフフ……捕まえたわよぉ~」
薔「……ぶい」

水銀燈とVサインをしている薔薇水晶のほうを見ると、ラジコンヘリに濡れタオルがかぶせられていた。
調子に乗って低空飛行するからああなるのよ。
あれじゃあ何も見えないわね……しかもタオルが絡まってプロペラの動きが段々鈍くなってきている。

ベジータ「くそーっ! こうなったら一時退きゃk――――」
雪「させると思いますか?」
ベジータ「ああああああああ!! ヘリがあああああ!!」

雪華綺晶が動きの鈍くなったヘリに思いっきりたらいを叩き付けた。
カラカラと音を立ててヘリコプターが停止する。
蒼星石がさっとヘリに近寄ってビデオカメラを取り外している。
鮮やかでスピーディーな手つきだ。

 

紅「……やったわね」
薔「うん」
銀「ベジータぁ……」

水銀燈が猫なで声で男湯の方に声をかける。
その声は私に獰猛な肉食獣をイメージさせた。ものすごい迫力よ……。
ベジータがびくっと身を震わせたのがこちらからでも分かった。

銀「また後でねぇ」
ベジータ「ひいいいいいいぃぃぃぃ!」

 

 

 

 

 

 

 

真紅たちが浴場に向かったのと同時刻。
(side ジュン)

僕たちも夕食を終えて、すぐにお風呂に入る事にした。
今行けば、誰も居ないだろうからな。
そして案の定、男湯はすっからかんの貸切状態だった。

ベジータ「やった! チャンスだぜ!」
笹塚「……元気だな」

どたどたと音を立てて男湯に踏み込むのはベジータ。
ったく、うるさいなぁ……。
僕たちはさっさっと服を脱いで(もちろん腰にタオルは巻いたぞ)、大浴場へと足を踏み入れた。
もわっと湯気が僕らの顔にまとわりつく。
かけ湯をして、白くにごったお湯につかる。
あぁ~~……極楽極楽。

ウルージ「あァ~~」
仗助「おめー 風呂入る時声だすタイプかよ」
ジュン「おっさん臭いな……ああ、おっさんかお前は」
ウルージ「別に良いではないか」
笹塚「ははははは」

 

湯につかりながら皆と雑談。
これも修学旅行の醍醐味だろう。
ん?あれ? ベジータはどこ行ったんだ?
……首を回してベジータを探していると、あの野郎は露天風呂のほうで何かをしていた。

仗助「おいベジータ なにやってんだ?」

仗助がゴソゴソ何かを組み立てているベジータに声をかける。
ベジータは手を止めてこちらの方を向き、手招きをしてきた。

ウルージ「ん? 呼んでおるのか」
ジュン「しょうがないなぁ」
仗助「行ってみようぜ」

僕たちはベジータの元へと駆け寄る。

仗助「何作ってんの? ……『ヘリコプター』か」
ジュン「何でそんなもの持ってきたんだ?」

ベジータはちっちっちと、あの指を振る動作をした。
ものすごくイラっと来るのは何故だろうか……。

ベジータ「何でって貴様ら……修学旅行恒例の『覗き』をするために決まってるだろう!!」

 

四人とも唖然とした表情になる。
何言ってんだコイツ……。

仗助「下らねー おれ頭洗ってこよ~~~~~っと」
ウルージ「おーおー好き勝手覗きなさる。私は知らないぞ」
笹塚「僕も乗り気にはなれないよ、ベジータ」

三人はヒラヒラと手を振ってさっさと浴場の方に戻っていった。
僕も戻ろうとしたんだけど……。

ベジータ「お前は……付き合ってくれるよな?」
ジュン「は? ……うおっ!」

凄い迫力だった。
例えるなら、牛と戦う前の大山倍達先生の様な……取り残された人を助けるために炎に突っ込むレスキュー隊の様な……。
そしてベジータは準備を終えたのか、真剣な表情でヘリコプターを石の床の上に置いた。

ベジータ「ナッパ号! 発進!」
ジュン「おい止めろバカ。覗くなら覗くで静かに……」
ベジータ「うるせーっ!俺はコソコソしたことが嫌いなんだー!」
ジュン「じゃあやめろよ……。ああもう知らね」

はぁ……。
ヘリの操作に夢中になったベジータを置いて僕も大浴場へと戻る。
頭を洗っているときにベジータの悲鳴がシャワーの音に混じって聞こえたが、聞こえなかった事にしよう。
仗助曰く、『バカはおれの能力でも治せない』らしい。

 

 

 

 

 

 

 

(side 真紅)
ベジータ「すいませんでしたorz」

私たちは男湯を出たベジータを捕まえ、取り囲んでいるわ。
ジュンや笹塚君が私たちの迫力に気おされたのか、遠巻きにそれを見ている。
私を含めて、みんなもうカンカンよ。

銀「私の裸は高くつくわよぉ。ほらほらぁ」
ベジータ「はぶぅ……ずみまぜん」

水銀燈はベジータの頬をぐりぐりとかかとで踏んでいる。ご満悦の表情だ。
そして、踏まれるほうのベジータが心なしか嬉しそうなのは何故かしら。

蒼「ビデオカメラは僕と翠星石で破壊したから良いけど、何か罰を与えないといけないよね」
翠「そーですよ! 変態には裁きを与えてやるですぅ!」

二人が皆に言った。
私達八人全員が、そうだそうだという顔になる。
ホントに、どうしてやろうかしら……。

雪「そうですね……修学旅行中ジュースを全て奢らせると言うのはどうですか?」
薔「梅岡に……差し出す?」
金「カナの発明の実験台にしてやるかしら」
苺「この前トモエが、良いれんしゅうだいが欲しいって言ってたの」
紅「今すぐ女湯に突撃させてやるのだわ」

私もそうだけど……皆恐ろしい事を考えるわね。
終わりが『死』だけのフローチャートをイメージした。

 

ベジータ「もうホント勘弁してください、おねがいします」

頭をさらに床に擦りつけ、拝むような手つきをするベジータ。
何だか哀れになってきたわ。

銀「分かったわぁ……勘弁してあげる。」

水銀燈が言った。貴方、まだベジータの顔を踏みつけているのね……。

ベジータ「本当に有難う御座います! あの映像は俺の頭の中だけにとどめておきますから」
銀「……忘れさせてあげるわよ。どうする?」
蒼「二度と思い出せないようにしてあげようか」

また余計な事を……仕方ないわ。忘れさせてあげるのだわ。
皆でベジータにじりじりとにじり寄る……特に蒼星石と水銀燈が殺気だっているようだ。
ベジータ……ご愁傷様……。

ベジータ「ここからが本当の地獄だ……あぎゃあああああああああああああああああああああ!!」

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