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 東京は秋葉原にて。
 先日仕事でまとまった金が入ったので、休みの日に私と金糸雀でパソコンやらゲームソフトやらオーディオやらを買い込んだ。
 朝早くに家を出たうえに、重いものを持ち運びしているからさすがに疲れが溜まっていた。

「……さすがにここまで買ったら十分だわ」
「まったくかしら。おかげでかなりの量だけど、車に載せきれるか心配かしら!」
「大丈夫よ。後部座席に余裕で積み込んだらいけるのだわ」

 今日は車で来た。
 この間中古で買った白のステージア。
 5人乗りのステーションワゴンということもあって後部は大分余裕がある。
 金糸雀は何の心配をしたのか知らないが、洗濯機みたいな大きな荷物を買ったわけでもないので、案の定今日買った荷物はすべて後部座席に積み込めた。
 その後、近くの喫茶店でアフタヌーンティーを楽しんで疲れを癒そうとしたものの、それだけでは全て取りきれるわけがない。

「帰りは貴女が運転しなさい」
「え?何でなのかしら?」
「眠いのよ」
 昨日は仕事が遅くなり家に帰ってきたのは真夜中。
 十分な睡眠が取れないまま、朝早くから行きは私が運転して、挙句の果てに重い荷物を持って秋葉原を歩き回って……眠くならないわけがない。
 さすがにこの状態で神奈川県内の家まですぐに運転して帰る気にはなれなかった。
 下手したら途中で事故を起こしかねない。
 でもさすがに途中で寝て時間をつぶすわけにはいかない。
 私たちに買い物を頼んだ面々――特に水銀燈がそれを許すわけがない。
 依頼されたものの中に彼女がずっと欲しがっていたゲームソフトがあり、秋葉原のゲームショップで予約していたものを取りに行ってくれと頼まれていたのだ。
 そして「入手したら早く帰ってきてねぇ」という言葉を昨日からしつこく聞かされている。
 本来なら彼女自身が取りに行けばいいだろといいたいところだった。
 が、財布の紐を握っている彼女の機嫌を損ねたら、それこそ紅茶3ヶ月抜きなんてことをされかねない。
 で――だらだらしていたらいわゆる『イラチ』な彼女がどうするかは目に見えている。
 それだけはどうしても避けたい事態だ。

 対して金糸雀はまだまだ元気そうだった。
 普通に考えるなら彼女に運転してもらうのが筋だろう。
 もっとも彼女はあまり車を運転しない――いわゆるペーパードライバーというものだった。
 しかし、この間彼女に車を運転してもらったものの、そんなに問題はない。
 時々行き先が分からなくなって多少混乱するところはあったが、雛苺や薔薇水晶みたいに事故を起こしそうな危ない運転はしないから大丈夫だ。

「真紅、分かったのかしら。行きはカナずっと寝ていたから、帰りは任せるのかしら!」
「ええ、お願いするわ」
 金糸雀は車を走らせる。
 ただ、昼間という事もありどの道にいっても車で込み合っていた。
 ラジオの交通情報を聞いても主要道路は混みあっているとのこと。
 ふと目をやると首都高の入口案内看板が見える。交通情報では多少混んでいるものの、時間は掛からないようなことを言っていた。
「高速で行った方が早いのだわ」
「でも……カナ高速に乗ったことあまりないのかしら」
「大丈夫よ。私が案内するから」
「う……分かったのかしら」
 金糸雀は車を高速の入口へと向かわせる。
 料金所があったものの、ETCを車につけているので料金所を停まらずに通過する。

 難なく本線に合流できたものの、金糸雀は不安な面持ちだった。
「で、どこへいけばいいのかしら~?」
「とにかくここをまっすぐ進んで、江戸橋のジャンクションを右……って、左じゃないわ」
 車は左の進路へと進む。
「ああ、間違えたのかしら!」
「しっかりして欲しいのだわ。じゃあ、この先の辰巳で湾岸線を右に進んで行ったら……」
「地名で言われても分からないのかしら」

 ……そうだったわ。この子は東京にはあまり行っていないのだったわ。
 東京都内の地名を言ってもそんな彼女に分かるわけがない。
「だったら、次の分岐で右の方向に進んで頂戴。で、あとはひたすらまっすぐ行けばいいわ」
「それで大丈夫なのかしら?」
「その道が横浜方面へと繋がっているから分かるはずよ……」
 そこまで言うと眠気が急激に襲ってくる。
「ちょっと眠くなってきたのだわ……。
 とにかく、今言ったとおりに進みなさい……」
「了解なのかしら」
「じゃあ、私は寝るわ……おやすみ……」
 私は助手席を倒すとそのまま横になった。

「……右は有明・羽田……間違いないのかしら。計算によればこのまま『まっすぐ』行けば川崎にいくのかしら……」

「ああ、車がいっぱいで隣の車線に行けないのかしら……とにかく『まっすぐ』行くかしら……」

 眠りに入って意識に薄れていく中で、彼女のそんな呟きが聞こえたのだった……。

 目を覚ます。 
 ――ここは……?
 
 暗闇の中をオレンジの光が整然と並びながら前から後ろへと流れていく……。
 どうやらトンネルの中を走っているようだった。

 ――東京港トンネル……いや、違うわ。
 トンネルの形状が私の記憶と違う。本来なら角型のはずが今走っている所は丸型だった。
 かなり長いトンネルらしく出口は全く見えない。
 
「……おはよう……ここはどこなの?」
 運転席にいる金糸雀に話し掛ける。

「……分からないのかしら……」
 彼女はどことなくおろおろしながら答える。

 どういうこと?
 私はふと時計に目をやった。

 ――5時48分。

 時間が掛かりすぎている!
「貴女、どこをどうやって走っているの?」

「うう……そんなこと言われても分からないかしら……?」
 私が今にも掴みかかりそうな勢いだったものだから、金糸雀は体をびくつかせる。
 それがハンドルの動きにも伝わったのか、車が左右に揺れる。
 危うく左の車線を走っていた車に接触しそうになった。
「危ないのだわ!
 ……とにかく、本当に分からないの?」
 とにかく心を落ち着けて尋ねる。
 何も言わず、ただ首を小さく縦に振る金糸雀。

 話を聞くと前を走っている車に付いていって、ただ『まっすぐ』走っていたのだという。
 行き先案内は……ろくに見ていなかったようだ。
 自称策士の勘に従って進んでいたのだという。
 で、行けども行けども家どころか高速の終点にも着かないと。

 ――まったく、方向音痴もいいところなのだわ。

 とにかく、今いる所を推測してみる。
 出発してから4時間半……少なくとも東京都内ではないだろう。
 さらに話を聞くと料金所を2つ通過し、山の中に入って数個のトンネルを抜けて――

 窓の外に目をやる。
 5分経ってもまだ出口が見えない。
 ――横須賀道路に入ったって思ったけど……こんなに長いトンネルはないはずだわ……。

 その時、トンネルの壁にこんな文字が矢印とともに書かれているのが見える。

 ←9km・2km→

 ……あれ?
 私は思わず唖然とする。
 全長11km?
 ――とんでもない所に来ている予感がするのだわ……?

 ようやく出口が見えたかと思うと、車はトンネルを抜けた。
 外はすっかり日が暮れていた。
 そして、出てすぐの所にあった看板には記されていたのは――

 『新潟県』

 ……か、金糸雀……何を考えているのか本当に分からないのだわ……。
 ……どこをどうやったら……こんなところにたどり着くのか本当に分からないのだわ……。
 全身から力が抜けていくのを感じた。

「ここは本当にどこなのかしらー?」
 そんな彼女には先程の看板は目に入っていなかったようだ。
「貴女……さっきの看板見えなかったの……。ここ、新潟なのだわ……」
「ほ、本当なのかしら~?ど、どうしょうなのかしら~?」
「とにかく、次の出口で降りなさい。話はそれからよ」

 その後、湯沢インターを出た時に家から私の携帯に着信が入る。
 掛けたのはもちろん水銀燈。
 時間は6時ジャスト。
 帰りが遅い……いや、ゲームの到着が遅いことに、当然彼女はブチ切れていた。

「首都高から外環と関越通って湯沢ですってぇ? なぁに考えてるのよぉ、貴女たち!!
 ……まぁ、仕方がないから気をつけて帰ってらっしゃぁい。
 もちろん、このことのペナルティーは分かってるでしょうねぇ?」
 最後の方がいやに猫なで声で話していることに嫌な予感がするのを感じた。

 結局家に帰ったのは11時半だった。
 まあ、無事に帰れたわけなのだが……

 ――水銀燈にねちっこく説教された挙句、私は紅茶5ヶ月抜き、金糸雀にいたっては卵焼き1年抜きを言い渡されたのはいうまでもない。






別氏による設定インスパイア


J「おい、水銀燈!真紅のやつ様子が変じゃないか?」

銀「あぁ、5ヶ月の紅茶禁止を言い渡しちゃったからねぇ。禁断症状かしらぁ」

J「お前どうしてそんなこと・・・真紅が可哀想じゃないか!」

銀「私は正当な理由を持って罰を与えてるのよぉ。可哀想でも私から紅茶をあげられないの。
  まぁJUMが真紅に紅茶をおごってあげるなら目をつぶるけどぉ」

J「ど、どうして僕がそんなこと・・・」

銀「あらぁ、真紅のこと好きなんじゃなくてぇ?」

J「そ、そんなわけあるか!様子が変で気になっただけだからな!」

とかいいつつ放課後真紅と一緒に帰ろうと誘うJUM。大変わかりやすい。

J「真紅・・・紅茶5ヶ月禁止なんだってな・・・」

紅「えぇ、でもしょうがないもの。私がミスしてしまったのだから」

J「水銀燈は僕が真紅におごるなら目をつぶるっていってたから。
  午後ティーぐらいしかあげられないけど・・・」

紅「ありがとうJUM。気が利くのね。」

J「ふ、ふん。お前が大人しくしてると調子が狂うからな!
 別にお前のことなんか好きでやってるんじゃないから勘違いすんなよ!」

紅「あら残念。私はJUMのこと好きだったのに」

J「え・・・ほんt紅「冗談よ」」

J「こ、こいつー!」

なんだかんだで仲がよくなっていっている二人。

銀「あんたたちがいつまでももたもたしてるのみると、イライラするのよねぇ」

仕掛け人が遠くの電柱の影から聞こえないようにつぶやいた。

二人が幸せになれますように。

終わり。

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