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夜、今日もいつもとかわらない退屈な一日
そのはずだった
彼女が訪ねて来るまでは・・・

ピンポーン

「はーい今開けますよっと・・・」
ガチャッ

「JUM・・・久しぶりかしら」


そこにいたのは僕が愛したひとだった

「カナリアっ?急にどうしたんだよ・・・」

「ちょっとJUM!まさか女の子をずっと玄関に立たせておく気かしら?」

「えっ?あ、ああ悪い。そうだよな・・・あがれよ」

「おじゃまするかしらー」

そう言ってリビングにあがっていった彼女の横顔は大人になったように見えて
なぜだか少し惨めな気持ちになった



「今お茶いれるよ」

「ありがとうかしらー」

返事をしながら彼女は勢いよくソファに座った
昔彼女がいつも座っていた場所に

(あれからもう二年もたつのか・・・なんだかあっという間だな)

紅茶をいれながらそんなことを考えていた




僕たちは昔付き合っていた
毎日のようにケンカをし、次の日には何事も無かったように仲直りする
いつもそんなことの繰り返しだった





「ほら、紅茶」

「いただくかしら」


その時になって僕はようやく大きな変化に気付く
まったく・・・一目で気付くようなことなのにさっきはなぜわからなかったのだろう


「髪・・・切ったんだな」

僕の見たことのない髪形
肩の下まであった髪は今では肩の上におさまっている

「遅いかしらー!そういうのは見たらすぐ言ってあげられるようにならないとモテないかしら」


彼女はそんなことを笑いながら答える
まるで僕たちが付き合っていた事実がないかのように



「悪い悪い。でも似合ってるよ」

「ありがとうかしら!」


二年もたてば誰だって変わる
他人を見れば素直にそう思えるのに


それなのになぜだろう?


自分はどうなのかと考えると
なにも変わっていない気がする
なにも成長していない気がする



「それで・・・JUMはあれからどんなことがあったかしら?」

「どんなって・・・特別なにかあったわけじゃないよ。仕事に行って帰ってきて寝るだけ。その繰り返しだったかな」

「へえ・・・なんだか意外かしら!JUMは見た目はあれだけど優しいから彼女がいると思ったかしら」

「見た目はあれってどういうことだよ」

「ふふ・・・ごめんかしら」

「まったく・・・そういうところは全っ然変わらないな」

「あー!それどういう意味かしら!!」

そんな会話で僕たちは笑った
不思議と違和感はなく、あのころにもどったように感じられる




僕たちが別れたのはほんのささいなことがきっかけだった

いつもと同じ内容のいつもと同じケンカ
もうなにが原因だったのかも思い出せない

ただいつもと違ったのは仲直りできなかったことだけだ

特別なにかあったわけじゃない
ただお互いに意地をはってしまい
自分から謝ることができなかった

今考えればふたりともただ子どもたったんだろうと思えることなのに


僕たちの関係は終わった





その後も僕たちは時間がたつのも忘れて話続けた
内容は他愛のないことばかり
そんな会話を続けている時
僕はふと気付く

「その服の色・・・」

「えっ?」

「まだ好きなんだな・・・玉子焼き色」

「もう!玉子焼き色じゃないかしら!!・・・うん。カナはまだ好きかしら。・・・こんな色が好きなんてやっぱり子どもっぽいかしら」

不安げな顔で聞く彼女に僕は答える

「そんなことないよ。カナらしい色だしその色はよく似合ってると思う」

「JUM・・・JUMにそういってもらえるとなんだか安心するかしら」

そういって笑う彼女を見ていると
懐かしい気持ちに包まれた気がした

「今日ね、久しぶりにJUMを見てびっくりしたかしら」

「僕だって驚いたよ・・・二年ぶりだしな」

「うん。でもそれだけじゃなくて・・・JUMすっごく大人っぽくなってたから・・・カナ不安になったかしら」

「・・・」

「なんていうかJUMが大人になったようにカナも成長したのかしらって・・・」


・・・同じだ


「今日ね、JUMに大事な話があってきたの」

なんだ・・・そうだったのか

「やっぱり言わないで帰ろうとも思ったけど・・・それじゃ二年前と同じことかしら」

みんな不安なんだ

「・・・JUM」

不安を抱えながらでも
前にすすんでいくしかないんだ


「私たち・・・やりなおせないかしら」


そんな不安、いつになっても消えることはないんだから


「なあ、二年前・・・最後にカナリアが僕に聞いたことおぼえてるか?」

ああそうだ。単純なことなんだ

「・・・わすれられるわけないかしら」

彼女がそばにいるだけで

「あの時はなにも言えなかったけど今ならちゃんと答えられる」

時間も距離もあっという間に縮んでいく

「カナリア・・・僕とずっと一緒にいてほしい」


そう言うと

涙のあとさえもう見えないその顔に

懐かしくて新しい微笑みが浮かんだ


fin


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