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「――ってな感じで水銀燈は楽しい日常に戻りましたとさ、めでたしめでたし。これがだいたい5年前の話、今では金糸雀ちゃんはその道では有名なヴァイオリニスト……本当にすごいわよね」
「ふぅん。でもその水銀燈って子、全然佐原さんに似てないわね。本当に娘さんなの?」
「似てないとはよく言われるけど、そんなに似てない?」
「えぇ、もちろん。……ところで今、娘さんはどうしてるの? 確かニュースだと金糸雀さんは一時帰国中だっていうけど」
「あぁ、なんか今日は金糸雀ちゃんのところに泊まるとか言ってたわ」
「ねぇ、佐原さん。一応母親なのよね? 無関心過ぎない?」
「そうかしら? 」
「そうよ、にしても佐原さんの娘さんって変な子ね、会ってみたいなぁ……でもあの子にも会いたいな、なんだっけ、ですです言ってる子?」
「翠星石ちゃん?」
「そんな感じの子。なんか趣味が合いそうなのよ」
「ふーん。ところでめぐちゃん。そろそろ検査の時間ね、昔話も終わったし行きましょうか」
「えぇ!? もう? 佐原さんの鬼! 三十路ぃぃ!」




  ピンポーン

 ガチャリとドアを開けると綺麗な銀色が金糸雀の目に飛び込みました。 
「久し振りぃ」
「まったくかしら」
少し大人っぽくなった水銀燈は変わらない笑顔を浮かべています。息が止まるほど驚いたのですが、金糸雀はサラリと言葉を紡ぎ出しました。
「取りあえず入るかしら。みっちゃんもそのうち帰って来るから」
「邪魔するわよぉ」
ガチャリと開いたドアはパタンと閉まりました。何度も何度も聞いた懐かしい音でした。



「どぉ? 久し振りの日本は?」
「なかなかかしら。外国でガンガン演奏するのも楽しいけれど、日本でゆったりするのも楽しいもの」
「ふぅん」
金糸雀が出来合いのオードブルを電子レンジに突っ込みます。
「食べていくかしら? 泊まる?」
「そうさせてもらうわぁ。あぁ、そういえば……」
「ん?」
金糸雀はふわりと振り返り、水銀燈と目を合わせます。
「おかえり、金糸雀」
「ただいま、水銀燈」
 ふたりは微笑み合いました。それは時間が経っても変わらない、ふたりの関係を現していました。ふたりはいつまで経っても、やはりともだちだったのです。
「たっだいまー。ケーキ買ってきたわよー。ん? 銀ちゃん来てる? おっひさー」
「お帰りーかしら!!」 
「邪魔してまーす」
 少々赤い顔とほのかな酒臭さを漂わせてケーキ、ではなくみっちゃんが帰ってきました。ほろ酔いです。
「カナが帰ってきました記念プチパーテーはっじまるよー」
「かしらかしらー」
 今にも踊り出しそうなみっちゃんと、楽しそうにはしゃぐ金糸雀につられて水銀燈は思わず笑い出します。
ですがフッと思いだしたような顔をしてポケットをゴソゴソして、くしゃくしゃの紙切れを引っ張りだします。くしゃくしゃの紙はあの時みっちゃんから貰った飛行機のチケットでした。
さらにくしゃり、とチケットを丸めてゴミ箱へポイッとホールインワン。チケットなんて金糸雀に会いに行くのにはもう必要ありません。何時でも何処へでも会いに行けるでしょう。なぜならふたりは

「すーいぎんと! 水銀燈の話も聞かせて欲しいかしら」

 ともだち、だからです。



ものがたりのきろく/
みどりいろのかのじょ おしまい

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