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13ぺーじめ
草木も眠る丑三つ時。
薔薇十字児童養護施設の一室、少女達が眠っている部屋で、布が擦れる音がしました。
部屋に並んでいる二段ベッドの一つ、その二階で、ある少女が体を起したのです。
少女は、自分の寝床から降り、真下のベッドに潜りこみました。
「お姉ちゃん…」
何か、怖い夢を見たのかもしれません。
薔薇水晶は、安らかな寝息を立てている双子の姉の雪華綺晶に、そっと抱きついたのでした。薔薇水晶には、寂しくなるとこうする習慣があったのです。
・・・・・・・・・・
不意に、閉めてあった網戸が開く音がし、部屋の床に差し込む月の光が人影を映し出したのを見た薔薇水晶の驚きは、尋常なものではありませんでした。
「嫌っ!!」
そう叫んだ薔薇水晶の声は、側にいる雪華綺晶と、反対側のベッドで眠っているもう一組の双子を起こしてしまいました。
雪「う…ん、何ですの…?」
翠「ほぁ?もう朝です?」
蒼「あれれ…?誰だい?」
眠い目をこすりつつ起き上がった少女達は、窓の側に水銀燈が立っているのを見ました。
銀「あらぁ…ごめんなさぁい、起しちゃったぁ?」
蒼「起しちゃったぁ?って…」
翠「一体こんな時間にどこに行っていたですぅ?」
雪「もしかして…結菱邸に行ってたんじゃありませんの?」
一同「!!」
銀「ええ、そうよぉ…」
翠「水銀燈…もしかして、寝る前に私が余計な事言ったから…そんな無茶をしたですか?」
銀「そんな事はないわよぉ…それに真紅にはちゃんと会えたんだし」
蒼「真紅に会えたの!?」
銀「ええ、それで…」
雪「お話した、そうですわね?」
薔「私達の事…?」
銀「その通りよ」
雪「で…どうでしたの?」
翠「そうですそうですぅ、真紅は何と?」
銀「ふふっ…気になるぅ?」
薔「じらすの…?」
雪「その様子だと…ちゃんと分かってもらえたんじゃありません?」
銀「ええ…そうよぉ。私、話しているうちに自制がきかなくなって真紅に酷い事を言ったりしたんだけどぉ…
ちゃんと受け入れてくれたわぁ。拒絶なんてされなかったわよぉ?」
蒼「良かったね…」
雪「そうですわ」
銀「…でもごめんなさぁい、勝手に行動しちゃってぇ…」
蒼「そんなことは無いよ、むしろありがとう」
翠「ですぅ。で、これからどうするんですぅ?」
銀「もちろん、これから一緒に遊ぶわよぉ」
雪「佐原先生が戻ってくるのはいつでしたっけ?」
蒼「確か…お盆が明けてからだったと聞いたよ?」 
銀「結構長いのねぇ」
薔「…2週間近く…」
翠「そりゃいいですぅ。で、明日…いやもう今日ですか、何するかは真紅と話し合ったですか?」
銀「いいえ、とりあえず明日から一緒に遊びましょお、ってだけは約束したけどぉ」
翠「…だったら、この翠星石に良い考えがあるですぅ」
雪「へえ、何ですの?」
銀「教えてよぉ」
翠「ひひひ、それは…」
少女達は、新しい友達ができた事に、皆一様に喜びを感じていました。
そして、この夏が、自分達のかけがえのない思い出になるであろうことも難なく予感しました。
そんな興奮の中、ただ一人、蒼星石だけは、嬉しさに身を震わせつつも、双子の姉が言いだした考えとやらに、
一抹の不安を感じていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その頃、結菱邸でも、真紅はいまだ眠りに就く事ができずにいました。
むろんそれは、新しい友達ができた喜びと興奮のせいです。
これからどうなるのかしら…真紅の胸は膨らみました。
悪夢にうなされていた白崎執事がベッドから盛大に転げ落ちた音も、真紅の耳には入りませんでした。
つづく

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