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膨大な宿題からすでに解放されている夏の朝ほどすがすがしいものはありません。
とりわけ、川遊びに出かけるとなれば尚のことです。今日も快晴。真紅と雛苺は
麦わら帽子をかぶり、手をつなぎながら、小高い山際を流れる清流を目指して、
田んぼの間を通る砂利道を縫って歩いていました。途中、無人の野菜販売所で、
真紅は大きなスイカを買いました。さびたパイナップルの缶詰の空き缶が備え付けて
ありましたが、値札も何もなかったので、いくら払えばいいのか分からない真紅は、
とりあえず500円玉2枚を缶の中に入れておきました。やがて、草いきれがむんむんする
土手を越え、角が取れた石に埋め尽くされた川原に着いたときの雛苺の喜びは
すさまじいものでした。
雛「ねーねー真紅、もう川に入っていい~?」
真「待ちなさい雛苺、まずは慌てず騒がず準備運動をするのよ」
雛「うぃ~」
…とまあ、こうして、やっと避暑地へ来て避暑らしいことができた姉妹なのでした。
「あ!お魚がいるの~」
雛苺は、浮き輪に身をうずめつつ川に入り、はしゃいでいます。そんな妹を微笑ましく
見ながら、真紅は、さっき買ったばかりのスイカを冷やそうと、たわわに実った果実を
水辺につからせ、流されないように石で固定し、そのかたわらに腰をおろして足だけ水に
つけて一休み。このきれいな清流は、幅が30メートルあるかないかの大きさで、向こう岸は
小高い山が立ち、涼しげな緑色の竹林がサラサラと音を立てて広がっています。そこから
聞こえるセミの大合唱。自然に抱かれてる…って感じですね。そんな安心感、
開放感に包まれ、足の心地よい冷たさも手伝い、真紅はうたた寝の世界に引き込まれて
しまうのでした。ここから見る景色に、どこか既視感を覚えながら…
つづく

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最終更新:2009年08月05日 21:01