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「表紙のうら」
もうすぐ夏休み。今日は一学期最後の日曜日。
真紅は、自宅の大きなキッチンで、さっき届いた宅配ピザをお皿に移し替えているところです。
中学校三年生の真紅は、この間珍しく家に帰って来れたお父様に「夏の間はお父さんの田舎の別荘に行きなさい」と言われ、出発日である終業式の日を心待ちにしていました。
仕事の忙しいお父様と一緒に行けないのが残念ですが、真紅には小学校四年生になる妹、雛苺が一緒です。気丈に見えて案外寂しがり屋な真紅にはいつでも心強い存在です。
そんな事を考えていると、背後の居間から雛苺の陽気な鼻歌が聞こえてきました。
出発の日まであと五日もあるのに、雛苺はお気に入りのリュックサックに色々なものをつめこんでいます。おやおや、下着まで…気の早い事です。よほどうきうきしているのでしょうね。
「雛苺、今のうちから下着をカバンに入れてしまったら、出発の日まで着替えがなくなってしまうわよ」
真紅が声をかけてやると、雛苺は、「う~…分かったの」と残念そうに下着類を元に戻し始めました。
「うふふ」真紅は思わず笑みをこぼしました。本当に楽しいのは、もしかしたら別荘のある田舎で過ごす日々よりも、こうしてその日々を待ちわびてうきうきできる今なのかも知れません。
居間のテレビでは、真紅の大好きな「くんくん探偵」の特別編が流れており、折しもくんくんが「犯人はあなただ!」と磯野家の頭が寂しい家長を糾弾しているところでした。蒸し暑い夏の夕暮れの事です。
つづく

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