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「ねぇ…めぐちゃん。もう、止めましょう?」

しつこい。あっちいって。

「こんな酷い雨じゃない。窓なんか開けてたら風邪ひいちゃうわ」

知らないわそんなの。どうでもいいし。

「それに、朝からずっとそうやって声出して…喉も痛いでしょうに」

…関係ないでしょ。好きで歌ってるんだから、構わないで。

「どうして?こんな雨なのに…」

雨だからよ。きっと今日は、来てくれないから。

「…天使様、だったっけ。でも、なら」

来てくれない。だから、天使様が道に迷わないように、私を見失わないように、歌うの。私はいつまでも、ここにいるから。

「めぐちゃん…」

話はおしまい。時間を無駄にしたわ。只でさえ私には時間が無いのに。もういいでしょ。バイバイまた明日。佐原さんは仕事に戻って。私は歌に戻るから。

「…わかった。わかったわ。でも、でもねめぐちゃん…」

………



め「水銀燈!水銀燈!水銀燈!水銀燈!水銀燈ぉぉぉぉおおおおおおおおおうわぁぁああああああああ!!
ああぁあ…あああ…あっあっー!水銀燈!水銀燈ぉぉぉおおおおうわぁあああああ!!
クンスカ!クンスカ!スーハー!スーハー!いい匂い…
んはぁああ!水銀燈の銀のロング髪クンカしたいよぉ!クンカクンカ!
あぁあ!間違えたペロペロしたいよぉ!ペロペロ!髪髪ペロペロ!カミカミペロペロきゅいんきゅい(ry」
佐「朝からうっさいの。マジでいい加減にして調達」


【雨の】【歌声】


「めぐちゃん?雨が入ってくるから閉めるわよ?」
「あ、待って。もうちょっとだけ開けといて」

病室に入ってきた看護師は、私の答えが意外だったのか、少しだけ表情に戸惑いを浮べた。

「もうちょっとしたら自分で閉めるから。ね?」

作った笑顔でそう告げると、看護師は少し呆れたような表情で
「からだ、冷やさないようにね」
と言い残して病室から出て行った。

扉が閉まる音を聞いてから、私は開けっ放しの窓辺に向かう。

外は雨。

雨が嫌いだという人は多いけれど……
ずっと入院していて屋内だけで生きている私にとって、雨は好きでも嫌いでもない、どうでも良いものだった。


でも、半年くらい前。
天気予報も外れての、突然の夕立が降った日。

その内、看護師が窓を閉めにくるだろう。
まるで他人事みたいにそう考えていた私は、雨だろうとお構い無しに窓辺に寄り添って歌を歌っていた。
自然の奏でるジャズとのセッション、なんて洒落た事を考えていた訳でもなく、本当に、何となく。
何の予告もなく降ってきた雨に、色んな人が慌ててるのを眺めながら、ぼーっと。

そんな時、ふと視線を下げると、病院の軒下で雨宿りしている女の子を見つけた。

その子は水のしたたる長い銀色の髪と、すっかり濡れて肌に引っ付いた学校の制服姿で、雨宿りをしていた。 

―――綺麗な人だな。
目を奪われた、というのが、この場合には最も適した表現だと思う。

私はその女の子を見つけて、歌うのを止めてしまった。

すると、女の子の方も、どこからか聞こえていた歌が消えた事に気が付いたのだろう。
少し首をかしげてから周囲を見渡し……そして顔を上げた。

私と、彼女の視線が交わる。

全く知らない人と、こうして目が合う感じ。
私はとりあえず、笑顔を作ってから彼女に向けて軽く手を振ってみた。

彼女は一瞬だけ驚いたように目を見開いて……それからいかにも不快そうな表情をして、走り去ってしまった。
雨が降り続けている中を。

―――ちょっと怖い子なのかも。でも、変わった子。
―――だって雨宿りしてたのに、雨が上がる気配も無いのに、出て行っちゃった。
―――それとも、よっぽどせっかちな子なのかしら。

遠ざかる彼女の姿を見ながら、私はぼんやりとそんな事を考えたりしていた。


それから数日して、今度は朝から一日中、雨が降ってた日。
その日も私は、ぼんやりと窓辺にもたれながら歌を歌っていた。

そしてその日も、一日中雨だというのに、銀色の髪をした彼女は、傘が無いのか病院の軒下で雨宿りしていた。
 
―――この前は何気なく手を振ったつもりだったけど、ひょっとして彼女は追い出されたと勘違いしたのかな。
―――せっかく雨宿りしてたのに、ちょっと悪い事しちゃったかも。

私はそんな風に考えて、今日は彼女の姿を病室から眺めながら歌うだけにしておいた。

暫くして看護師さんが窓を閉めに来たせいで私の歌は終り……
そして程なくして、彼女はまたしても土砂降りの雨の中を渡って帰っていった。

そんな風に、雨が降るたびに雨宿りに来る女の子。
私はいつしか、声も、名前だって知らない彼女の事が気になるようになってきた。



その日も、朝からずっと雨だった。

―――あの子、今日も来るかな。
ちょっとした期待感みたいなものを胸に、私は窓辺に寄り添う。
話した事もない相手との、私にとっては不思議と心温まる、ちょっぴり変わったひと時。
長い入院生活の中での、ちょっとした楽しみ。
私は窓辺にもたれながら、彼女を待っていた。

そうして待つうち……私は変なものを発見した。

病院の塀に遮られてよく見えないけれど、傘のてっぺんが動いているのが見える。
そして、雨が降っているのにその傘は閉じられて……
それからすぐに、彼女はいつもと同じように雨宿りに来てくれた。

彼女はいつもと同じように、傘を持っていない。
でもよく見ると、彼女の髪も、服も、あまり濡れていなかった。 

「折りたたみ傘?」
小さく呟いてから、不意に笑みがこぼれた。
彼女は雨宿りに来ているフリを続けながら、その実、ずっと私に会いに来てくれてたんだ。

―――本当はとっても優しいのに……不器用で素直じゃないんだから。

そう思うと、いつか浮べた作り笑いなんかではなく、自然と笑顔が浮かんでくる。

私はその日も、いつもと同じように歌を歌った。
私はその日、彼女の為だけに歌を歌った。




そして今日も、雨が降っている。

病院の塀から、今ではすっかり見慣れた彼女の折りたたみ傘のさきっぽが顔を覗かせている。

きっと、もうすぐ来てくれるだろう。
とっても綺麗で、とっても優しくて、ぜんぜん素直じゃない、私のお友達が。


そして彼女は、いつもの場所で雨宿りを始める。
私は、いつものように歌いだす。



【雨の】【歌声】







有栖川大学病院の中庭にて。
佐「ちょっとめぐちゃん!傘もささずにどうしたの!?風邪でも引いたら…」
め「佐原さん…どうせ私は長くないのよ?佐原さんならよく知ってるでしょ…
だのに今更風邪ぐらい、結果的に何も変わらないわ…」
佐「めぐちゃん…」
め「放っておいて」
佐「…。じゃあめぐちゃん、傘を持ってきたから、ここで一緒にいてあげるわ。あなたが病室に戻りたくなるまで…ね?」
雨に打たれて座り込んでいるめぐを自分の傘の防御エリアに入れる佐原看護師。
め「頼んでもないのに勝手に…」
佐「いいのよ、気を使わなくても」
め「…」
佐「…」
雨は降り続けています。
め「佐原さん…」
佐「…どうしたの?」
め「雨は…この世界の汚れや塵を一晩で洗い流してくれるわ…」
めぐが見ているのは、中庭のレンガで覆われた広場に降る雨が傾斜に従って流れ、音をたてて排水溝に流れ込む様子です。
佐「…」
め「なのに、雨は人の心までは洗ってはくれない…こうして、雨に打たれても。生まれてきてから今までの自分を、
積もらせてきたものを、洗い流してはくれないの…」
佐「めぐちゃんは詩的な子ね…」
め「…何でもないわ。やっぱり今のは忘れて…」
佐「過去のことを思っちゃダメよ。後悔ばかりで…自分を嫌いになっちゃうから。」
め「?」
佐「未来のことも思っちゃダメ。不安…取り越し苦労…息が詰まっちゃうわ。」
め「…」
佐「恐怖に駆られて、今この時を生きられなくなっちゃうのはもったいないわ。今、そう今を生きられれば、
生き活きしていられるのよ。過去があるから未来が生まれ、未来があるから過去を気にする。そうして、
『今』はその狭間で押しつぶされて消えてしまう…。あなたが生きているのは、過去?未来?」
め「…」
佐「なんちゃって。柄にもないことを言っちゃったわね。ごめんなさいね」
め「…佐原さん、カウンセラーに転職したらいいんじゃない?」
佐「それは褒め言葉?ふふっ、めぐちゃんに褒められちゃったぁ」
め「馬鹿なこと言わないで。…ほら、部屋に帰るわよ」
佐「あら、戻る気になったのね?じゃあ暖かいシャワーも浴びてね」
め「言われなくても浴びるわよ」
佐「めぐちゃんいい子ね。ようし、これからいっしょに、生き活きする造!!」
め「…」
二人は、一つの傘の下でゆっくりと歩を進めています。めぐは、自分の頬を流れるのが雨なのかそれとも別の何かなのか分かりませんでした。
その夜、めぐの病室から、部屋の主の心なしか明るい歌声が漏れているのを、巡回していた佐原看護師が微笑んで聴き入っていたそうです。
【雨の】【歌声】



「ふぅ…」

病院の窓枠から顔を出してみても、風が顔を撫でることなくジクジクと肌を湿らせるだけ。気温は低いはずなのに汗ばむ。これだけ時化ってればカビも生えるわ。

快適とは無縁のこの時期。そして、何もかもが中途半端なこの時期。暑くて涼しくて、雨も降ったりやんだり。死にながら生きてる私とそっくり。

でも、あの曇り空だけは好きになれない。同族嫌悪かしら。いっそ雨になればいいのに。雨雲は黒く、その色は私を救ってくれるから。

なのに今日も灰色の空。絵にもならない。あんな空は飛びたくない。私にとってはまるで牢。さしずめ、同じ色のこの部屋のように。

だから私はじっと待つ。窓を閉めてじっと待つ。窓を背にしてじっと待つ。膝を抱えて瞳を閉じて。この曇り空を割いてくれる、黒い太陽を。

ガラガラ…

「はぁい、こんにちは。ちゃんとカビてるぅ?」
「…いらっしゃい、水銀燈」

雲の切れ間から現れる、綺麗で眩しい、私の黒い太陽を。


【雲の】【切れ間から】


めぐ病室
銀「こんにちはめぐぅ…って寝てるわねぇ」
チリ~ン
銀「あらぁ、風鈴が下げてあるわねぇ。涼しい音ねぇ」
め「スースー」
銀「でもせっかく冷房効いてるんだから、窓は閉めましょぉか」
め「…う…うん…」
銀「…めぐったらうなされてる…やっぱり窓は開けましょぉ」
チリ~ン
め「スースー」
銀「やっぱり風鈴が鳴ってたほうが良いのねぇ。まるで子守歌ねぇ」
め「スースー」
銀「もっと鳴らしてあげましょぉ」
チリンチリン…チ…リンチ…リンチリンチリンチリンチry
め「SATSUGAIすっぞぉ!!フォー!!!」
銀「ひっ!い、今の寝言なのぉ!?」
【風鈴の】【子守歌】


め「と、言うわけで土用の丑の日は頭文字が"う"の食べ物を食べると良いと言うことらしいので
  普通ならウナギと言うところをあえてターメリックたっぷりのウコンカレーにしてみたわ♪」
銀「……」
め「まぁちょっと失敗して水っぽくなっちゃったんだけど♪」
銀「……」
め「あ、絶対に2文字目と3文字目を伏せ字にしちゃダメよ
  ゲロみたいな飯どころかゲ○みたいな飯になっちゃうから♪」

銀「……あんた絶対そのネタを言うために作ったでしょ……」



佐「は~…夜勤はこたえるわ~。見回りも疲れるし」

カラカラ…

佐「めぐちゃんはちゃんと寝てまちゅかね~…寝顔は良いのよ寝顔は。花瓶投げないから。チューでもしちゃおうかな~…って居ない!?掛け布団ごと!?そんな!一体何処へ!?」
?「…くー…すー…」
佐「え、寝息…?何処…何処なのめぐちゃん!?」
?「むにゃむにゃ…ぐー」
佐「ベッドの近く…?でも、ベッドは空なのに…やだ、やめてよ私そういうの嫌いなのよ恐いのよ!めぐちゃん…お願いだから見つかってよ…」
げし
?「ぐが」
佐「え、今…何か蹴ったような…まさか!」バッ
め「ん~…つめたぁい…ぐー…」
佐「………」


め「で、暑いからベッドの下で寝てたんだけど、何故か翌朝起きたらベッドが無くなってて布団の上で寝てたの。どうやって運び出したのかしらね。にしても酷い仕打ちだわ。ねぇ、訴えたら勝てると思う?」
銀「…やめときなさい」



め「水銀燈…今夜は月が綺麗ね」
銀「そぉねぇ」
め「でも私の人生にツキなんて無かったわ」
銀「…(ここ笑うトコロ?)」
め「月光には人を狂わせる力があるっていう話知ってる?」
銀「えぇ…狼男とかでしょぉ」
め「私もいっそ狂ってしまいたい…月の光を浴びながら死ぬのって美しくない?」
銀「やめてよぉ…」
め「そしてその光に導かれて…」
銀「もぉ!いい加減にしなさいめぐぅ!怒るわよぉ!?」
め「水銀燈、私が死ぬのは嫌?」
銀「当然よぉ…」
め「じゃあお願いを一つ聞いてもらえるかしら」
銀「何よぉ…」
め「月を見ていたら思い出したの。月ではバニーガールがお餅をついているって言うでしょ?
  私、水銀燈のバニー姿見てみたいわ」
銀「前言撤回、貴女一度死ぬべきだわ」
【月光の】【下で】

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