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「まずは一曲披露かしら~!」
 声高々にバイオリンを構え、曲を演奏しだした。
 最初は静かにだったが、それは次第に激しく音量も大きくなっていき、ついには音が衝撃波となって舞台上を駆け抜ける。
 そのうるささで耳と頭に激痛が走り、衝撃波に飛ばされないよう堪えるのに必死だ。
「カナのバイオリンテクはどうかしら? たっぷりご賞味あれかしらー!」
「クッ…! 最っ低な曲ですね…!」
 翠星石は吹き飛ばされないよう姿勢を低くし、激痛を堪えてスィドリームを金糸雀へと撃ち放った。
 放った銃弾は金糸雀の居る方へと真っ直ぐ飛んで行き、このまま直撃するかと思われた。
 だが金糸雀はそれに気付いて体勢を少しずらし、日傘で体を隠すと銃弾は日傘に弾かれてどこかへと飛んでいってしまった。
 あんな日傘に弾き返されるなんて、翠星石はそれが納得行かず更に撃ちまくった。
 しかし弾はいくら撃っても日傘に防がれ、金糸雀にダメージを与える所かバイオリンを止める事すら出来ない。
「そんなの、この日傘の前じゃ小雨も同然かしら~」
「黙ってるですぅ!!」
 尚も撃っていると不意に金糸雀の姿が布人形に変わり、それが銃弾で吹き飛んでいった。
 とりあえず演奏が止まって辺りを見渡すが金糸雀の姿が無い。
「どこに…!」
「か~しらしら! ここかしら~!」
 何の前触れも無く上から笑い声が聞こえ、そこを見ると金糸雀が日傘を広げて飛び回っていた。
 翠星石は舌打ちをして銃を向けるが、高速で飛び回る金糸雀になかなか狙いが定まらない。
「今度はこっちの番かしら!」

 

 金糸雀は体に反動をつけて回転させると、日傘に乗って翠星石目掛けて落下してきた。
 日傘に乗ってるとは思えないような速度で、翠星石は咄嗟にそこから避けたものの落下の衝撃波で体が吹き飛ばされてしまった。
「ぐっ…!」
「あら、大した事無いかしらね~」
「ふざけんじゃねえですぅ!!」
 挑発に刺激され、翠星石は飛び起きて如雨露を構えて金糸雀へと突っ走っていく。
 金糸雀はそれに慌てる事無く日傘を広げ、それを盾のように体を隠して翠星石の攻撃を防ぐ。
 いくら傘を切っても何かを斬る感触は無く、日傘の周りだけ空気の流れが違うように如雨露の軌道が変わってしまうのだ。
「ふっふ~ん、太刀筋は全体的に大振りかしら。繊細さが感じられないかしら~」
「だったらこれならどうですか!」
 日傘の内側に腕を滑り込ませ、持っていたスィドリームを中の金糸雀目掛けて撃ちまくる。
「かしらっ!」
 今度こそ銃弾は金糸雀の脇腹に当たり、悲鳴とも取れるような声を上げて腕の力が一瞬弱まった。
 その隙を見逃さず日傘を如雨露で弾くと、無防備になった金糸雀へと斬撃を仕掛ける。
「ぐっ…! ちょっとマズイかしら…!」
「さっきまでの調子はどうしたんですか? このまま一気にカタをつけてやりますよ!」
 脇腹を押さえている金糸雀への攻撃は当たる寸前でかわされて深く切り込めず、致命傷を与えるまでいっていない。
 しかし攻撃は確実に当たっていき、ダメージも蓄積していく。
 攻守は完全に入れ替わり、金糸雀は防戦一方だ。

 

「クッ…!」
 ダメージから一瞬金糸雀の体勢が崩れ、いざトドメを刺そうと一気に如雨露を振りかぶる。
 もうこのまま終わる、翠星石は思ったがそううまくいくことは無かった。
 金糸雀はバイオリンの弓を取り出してそれで翠星石の攻撃を受け流した。
「なっ!?」
 まさかあんな細い棒一本で弾かれるとは思わず、一瞬の動揺が翠星石に走った。
 それを金糸雀は見逃さず、バックステップで距離を取って日傘で体を隠したまま翠星石を見据える。
「ファイヤー!」
 その瞬間日傘の先端部分が開き、そこに溝が彫られているのに翠星石は気が付いた。
 ライフリング、それを一瞬で理解して横へ飛び跳ねる。
 翠星石がそこを離れたと同時に金糸雀の日傘から無数の銃弾が発射されて床をえぐっていった。
 尚も金糸雀は銃弾を乱射していき、翠星石はそれから避ける為に舞台の上を駆け回っていく。
 やがて翠星石は舞台袖にあった音響装置に身を隠し、金糸雀はそこで銃撃を中止し日傘を下げた。
「銃を使えるのはこっちも同じかしら~! か~しらしらしら~!」 
 勝ち誇ったように高笑いを浮かべて日傘を肩に掛け、再びバイオリンを首に当てた。
 させるものか、と音響装置の影から身を乗り出して銃を撃つがそれは日傘でかわされてしまう。
「そんな所にいたって無駄かしら! スピーカーごと壊してあげるかしら! 攻撃のワルツ!!」
「あぐっ…! 耳が…!」
 再び金糸雀のバイオリンによる音波攻撃が始まり、耳と頭に激痛が走る。
 衝撃波は音響装置が盾になって防いでいてくれてるものの、このままではいつまでもつか分からない。

 

「しぶといかしら、クレッシェンド!!」
 掛け声と共に一層音と衝撃波が強力になり、もはや銃で牽制する事も忘れ両手で耳を押さえるしか出来ない。
(クソッ、あのバイオリンを何とかしないと攻撃どころじゃ…!)
 音響装置の影から金糸雀を覗き見ると、不意に音響装置から異音が微かに聞こえて来た。
 みるとそれは既にヒビだらけになっていて、細かく欠け始めている。
(ヤバッ…!)
 そして次の瞬間、装置は木っ端微塵に砕け散り、激しい衝撃波と欠片が翠星石を襲った。
 欠片が体に当たり、衝撃波と音で全身にダメージが走る。
「ぐあぁっ!!」
 翠星石の体は吹き飛び、そのまま後ろにあった壁に思いっきり打ち付けられた。
 衝撃で肺中の空気が搾り出され、視界が一瞬霞む。
「ゲホッ…!」
「ふぅ~ん、カナのバイオリンテクにうっとりしてくれたようかしらね~」
 痛みに堪えて目を開けると、金糸雀が日傘をクルクル回転させながら近付いてきていた。
 翠星石は歯を食いしばって立ち上がると、その金糸雀を睨む。
「そろそろコンサートも終盤かしら。最後までご清聴ありがとうかしら~!」
 変わらずの様子でバイオリンを構え、今まさにトドメを刺さんとする。
 翠星石は如雨露を構え、足と手に力を込める。
「お前みたいなふざけたやつにやられたら…死んでも死にきれねえんですよ!!」

 

 足へ力を込めて一気に金糸雀への距離を縮め、如雨露の突きを放った。
 しかしそれは見切られたように日傘でかわされしまう。
「無駄無駄かしら~!」
 だがこうなる事は予想出来ていた。真の目的はバイオリンの演奏をさせないことだ。
 そのまま構わず如雨露の斬撃を続けていき、金糸雀は少しずつ後ろへと下がっていく。
 しかしこれでは唯の時間稼ぎに過ぎない。ここから一気に逆転できる方法は…。
 やがて二人は舞台にまで戻って行き、金糸雀は攻撃し続ける翠星石に苛立って日傘を翠星石に向ける。
「喰らえかしら!」
 掛け声と共に日傘が火を噴き、無数の銃弾が放たれた。
 咄嗟に避けたことで銃弾は頬を掠っただけに終わり、翠星石はさっきと同じように舞台上を駆けて銃弾を避けていく。
 そして今度は舞台上にあったグランドピアノへと身を隠し、金糸雀を陰から覗き見る。
「隠れても無駄だってのが分からないかしら? やっぱり頭は悪いかしらね」
 金糸雀の言う通りこれではさっきの繰り返しだ。
 何か無いかと辺りを見渡すと、金糸雀のちょうど真上に巨大なシャンデリアが吊るされているのに気が付いた。
(あれですぅ!)
 翠星石は二丁の銃を構えてピアノの陰からそれに向けて撃ち始めた。
 それを金糸雀は理解できず、ハテナマークを浮かべた表情で翠星石を見た。
「何やってるかしら?」
 金糸雀がバイオリンを首に当てた、その瞬間。
 ガキン、と音がしてシャンデリアを支えていた鎖が銃弾で吹き飛んだ。

 

「ビンゴ!」
「え?」
 支えを失ったシャンデリアは真っ直ぐ下へと落ちていき、金糸雀もその影に気が付いて上を見ると驚愕の表情を浮かべた。
「か、か、か、かしら~!!」
 動揺している間にシャンデリアは落ちて行き、それを避けきれなかった金糸雀は衝撃で思い切り吹き飛ばされた。
「きゃああぁ!!」
 そのダメージは強烈で金糸雀の体が宙に舞い、そのままグランドピアノに体を打ち付けてしまった。
「がはっ…!」
「形勢逆転、ですね」
 激痛で起き上がれない金糸雀に翠星石は近付いて行き、スィドリームを構えて見下ろす。
 その影に気付き、金糸雀は翠星石を見上げた。
「クッ…!」
「どうです? まだ続けるんですか?」
 翠星石の指が引き金に掛けられ、金糸雀は悔しそうに表情を歪めたかのように見えた。
 しばらくそうして睨みあっていると、金糸雀の表情が少しずつ変化していった。
「くっくくく…」
「?」
「あーはははは! 合格かしら~!」
 いきなり笑い出した金糸雀に翠星石は理解できず、一瞬呆気に取られてしまった。
 尚も金糸雀は笑い続け、たっぷり数十秒は笑い続けるとその場に立ち上がる。
「ここまでやられるとは思わなかったかしら。スタイリッシュじゃ無かったけど、ギリギリで合格かしらね」
 変わらぬ様子で向けられている銃口を指で逸らして続ける。
「まあもうちょっと遊んであげてもいいんだけど…お腹が空いたから帰るかしら~」
「お前、ふざけんじゃ…!」

 

 ふざけた事を言い出した金糸雀へスィドリームを撃とうと引き金へ指を掛ける。
 だがその瞬間に周りはコンサート会場から一転、元のエントランスホール二階へと戻っていた。
 辺りを見渡しても金糸雀の姿は無く、翠星石は溜息を吐いてスィドリームをホルスターに戻す。
「…次はこうは行かないですよ」
 逃した事を後悔しつつ、懐からメダルを取り出し扉にはめ込んだ。
 するとガチャリと金属音が聞こえ、扉は何の抵抗も無く開かれた。

 

MISSION3 clear

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