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光の差し込まない薄暗い部屋で、翠星石は自らの体に纏っていた最後の薄布を床に落とした。
少し汗ばんだ白い肌が、妖しく ( 略 )

―※―※―※―※―

青い空!広い海!灼熱の砂浜!!

パレオの水着姿の翠星石が!
きわどいビキニの水銀燈が!
露出は控えめな蒼星石が!
胸にパットを3枚も入れた真紅が!

ザッ!と砂浜へと足を踏み入れた!!

「……流石に…暑いわねぇ…… 」
「…うん…やっぱり、暑いね… 」
「ええ…過剰なまでの晴天ね… 」

白い砂浜はさながら蜃気楼の浮かぶ砂漠のようで、浜辺の砂で目玉焼きでも作れそう。

容赦なく照りつける真夏の太陽から身を守るべく、彼女達は日焼け止めを 「全員!突撃ですぅーーー!!! 」
……日焼け止めを取り出す暇も無く、翠星石が海へと走り出した。




◆ ◇ ◆ ◇ ◆  この町大好き! ☆ 増刊号6 ☆  ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 
 
「とりあえず…ここが僕たちの拠点だから 」
そう言い蒼星石が砂浜に突き刺さったビーチパラソルを示す。
「失くしたりしないように、僕たちの鞄は一箇所にまとめて…… 」
そう言いながら、自分と翠星石の鞄を掴んで振り返ったら…

既に真紅と水銀燈は、パラソルの下でトロピカルジュース片手にくつろいでいる。

「……… 」
蒼星石は何も見なかった事にして、全員の鞄をパラソルの下まで無言で運んだ。

◇ ◇ ◇

とりあえず、海で遊ぶ為の準備も整った所で…
蒼星石は、一人で勝手に海へと突撃した翠星石を探す事に。

「翠星石も、すぐに迷子になっちゃうんだから… 」
そう言いながら、周囲をキョロキョロ。

でも、どこにも居ない。

見えるものといえば、3人の小学生(?)が海辺で水をかけ合って遊んでいるだけ。
でも、良く見ると…2人は子供らしく小柄だけど……もう一人は…少し成長した体つきで……
「って!翠星石!? 」
行動の次元が小学生と大差無い姉の姿に、蒼星石は驚きを隠せなかった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 
ほんのちょっと前。

「突撃ですぅ~~!! 」
そう叫びながら海へと走っていた翠星石は…見た事ある人物の姿が視界の端に留まった事に気が付いた。
進路変更。全速前進。目指すは、二人のチビ。
「とぉーーーりゃーーー!! 」
叫びながら海辺でパシャパシャ遊ぶ小学生2人にタックル。翠星石、容赦せん!といった感じで。

予想だにしてなかった突然の攻撃に、ガボガボ海へと沈むチビっ子2人の首根っこを捕まえ、
翠星石は満面の笑みで2人を海面まで引き上げると、元気良く叫んだ。

「チビチビの雛苺にカナ……カナ何とかじゃーねーですか!! 」
久々の、感動的な再会だった。

◇ ◇ ◇

「―――という訳で、カナリアと一緒に来たのー! 」
浜辺で砂の城を作りながら、雛苺が説明する。

「なるほど。チビチビの事情は分かったです。で…チビカナな何でこんな所にいやがるのですか? 」
違和感無く小学生に混ざりながら、翠星石もお城作りに精を出す。

「カナは……その……みっちゃんに連れられて…… 」
金糸雀は泥をこねる手を止め、少し悲しそうに呟く。

「おお!デカ人間(みっちゃん先生)も来てやがるですか!! 」
翠星石は知ってる相手の名前に、嬉しそうに声を上げるが…
それに対し、金糸雀の表情は浮かないものだった。
 
 
「ええ……あそこに…いるかしら…… 」
消え入りそうな声でそう言い、チラッと砂浜へと視線を向ける。

そこには…
『私が考えたセクシーポーズ』を連発し、周囲にシベリアの風を吹かせる草笛みつ(行き送れ)の姿が!!
みっちゃんがポーズをキめる度に、周囲の気温は確実に下がっていく。
周囲のギャラリーからは、驚きや呆れよりむしろ、畏怖の眼差しが向けられ……

「…朝から…ずっと…あそこでポーズをとってるかしら…… 」
うつむき、表情こそ見えないが…金糸雀は涙声で、そう語った。

不意に、金糸雀は頭の上にポフっと手が置かれた感触に気が付く。
そしてその相手は…悲哀に震える声で、それでも優しく告げた。

「チビカナ……てめぇみたいなチビは……悲しかったら泣いたって良いんですよ…? 」

その言葉に、堰を切ったように金糸雀の目からは涙がこぼれる。
何故か、雛苺もつられて泣き出す。
翠星石が二人の頭を、優しく撫でる。
遠くでみっちゃんがセクシーポーズをキめる。

太陽が一番高い時間の事だった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 
「てめぇらも…強く生きるですよ…! 」
ちびっ子2人にそう別れを告げ、翠星石は皆の所へと帰っていく。

「カナは…みっちゃんみたいにはならないかしら!! 」
心に決めた熱い思いを高らかに宣言する金糸雀。
「うぃ!ヒナも『イキオクレ』さんにだけはならないの!! 」
何気にみっちゃんをこき下ろす雛苺。多分、悪意は無い。

2人の遥か後方の浜辺では、みっちゃんがセクシーポーズを惜しげもなく披露している。
かれこれ、5時間ぶっ続けだった。

◇ ◇ ◇

「ふぅー…年長者も大変ですぅ… 」
どこかご満悦の表情で翠星石が「むふー」と、息を漏らす。

とりあえず、迷子になった真紅達を探そうと浜辺をウロウロ。
はぐれたのは自分の方だなんて、ちっとも考えない。

そうしてキョロキョロする内、翠星石が見つけたのは……

あろう事か、ナンパされてる蒼星石の姿!


「たたたた大変ですぅ!!蒼星石に変な男が言い寄ってるですぅ!! 」
大切な妹の為。
翠星石は何とか蒼星石を助ける方法を少ない知恵を絞って考える。
 
さて、こんな時にはどうするか?
 

1.可憐な翠星石は突如として蒼星石を助けるアイディアを思いつく
2.真紅と水銀燈が来て助けてくれる
3.助けられない。現実は非情である 


知らない人が苦手な翠星石としては、2にマルを付けたいところだが…
そんなタイミング良く真紅達が来てくれるとも思えない。
「ここは…1番しか無いですよ!! 」

そう叫ぶや否や、走り出す!
砂に足を取られて、派手に転ぶ!いきなり失敗。

「あ…ああ……蒼星石が…… 」
目に涙を浮かべながら、ナンパされ困った表情の蒼星石へと手を伸ばす。
そんな暇があれば立ち上がった方が早いのに、本人は到って気が付かない様子。
浜辺に倒れたまま、届くはずのない手を蒼星石へと伸ばす。

ウルウルにじむ視界で、翠星石が彼方の蒼星石を見つめていると……
どこからともなく、ひょっこりと水銀燈が現れ、ナンパ男を軽くあしらっている。
真紅が蒼星石に説教を始めている。多分、『貴女も、嫌な時はちゃんと言うべきなのだわ』とかだろう。

翠星石は……
立ち上がり、転んだせいで付いた砂を軽く払うと、3人の所へと歩み寄る。

「いやー、本当ならこの翠星石が華麗に登場して助ける予定でしたけど、まさかこんな事になるとは…。
 ま…まあ、蒼星石を助けてくれた事には感謝せん訳でも無いですが……次は無いと思いやがれですぅ!
 そもそも!てめーらも来るのが遅いですよ!蒼星石に万が一の事でもあったら ―――― 」
さっきまで半泣きだった事も忘れ、ペラペラと喋る。

蒼星石も真紅も水銀燈も、苦笑いを浮かべていた。
 
 
◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「その……さっきのお礼という訳じゃあないですが……えっと…その…
 あーー!もう!カキ氷位なら奢ってやるから付いてくるですぅ! 」

勝手に一人でプリプリ怒り出した翠星石に率いられ、皆で浜辺をテクテク。
そうして4人は、海の家までやって来た。


「そうですねぇ……水銀燈には……黒のイメージで、アズキですぅ! 」
そう言い翠星石は、宇治金時を水銀燈へと手渡す。

端に乗っかってる白玉は、蒼星石を直接助けた水銀燈への、翠星石なりの感謝の気持ちだろう。

「真紅には、情熱的な赤が似合うですよ!という訳で、氷イチゴですぅ! 」
余計な親切というのか…味のバランスが崩れるほシロップで真っ赤になったかき氷を高々と掲げる。

真紅は少し顔を引き攣らせていたが……翠星石も悪気があってした訳ではないので、何も言わなかった。

「そして私は、少し怪しげな蛍光グリーンが素敵なメロンシロップですよ! 」
言いきると同時に、翠星石はカキ氷をシャクシャクと食べ始める。

「え…?あの…僕は…? 」
蒼星石が小さな声を上げた。

「ナンパされるような不良な妹なんて、翠星石は知らんですぅ~ 」
翠星石はプイっとそっぽを向き、頬を膨らませる。

蒼星石はカキ氷が無い事よりも、翠星石の態度に寂しそうに表情を曇らせた。

と…
そんな悲しそうな蒼星石に顔を近づけ、翠星石はパァッと笑顔を見せ…

「なーんて、冗談ですよ!蒼星石にもちゃんと用意してあるです! 」
そう言い、背中に隠していた最後の一個のカキ氷を蒼星石の目の前に突き出した。

「青いですぅ!何だかよく分からんですが、とにかく青いですよ!!ブルーハワイですぅ!! 」
翠星石は「青い」「青い」とやたらに強調しながら、カキ氷を蒼星石へと差し出す。

蒼星石もその勢いに押され、ブルーハワイをぱくりと一口。
不思議な味。伝わってくるのは、翠星石の不器用な優しさと…不可解な甘みと、謎の添加物の存在感。

何だか複雑な気分になり…やっぱり蒼星石が浮かべたのは、苦笑い。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


おやつタイムも終わり、再び4人は海へ。

くんくん探偵の絵の描かれた浮き輪で、プカプカと水面を漂う真紅。
そんな真紅を転覆させようと、虎視眈々と狙う水銀燈。
小さな貝殻を見つけて、ロマンティックな乙女の世界に浸る蒼星石。
拾ったヒトデを手裏剣みたいに投げる翠星石。

夏の海辺に、少女達の楽しそうな声がいつまでも、太陽が地平線にかかるまで続いた。

 
 
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 



そして……


朝から、かれこれ12時間。
素敵な殿方から声をかけられるのを待ち、セクシーポーズを繰り返していた『あの人物』は……

始めは、すぐにでも素敵な出会いがあるだろう、と考えていた。
これは何かの間違いだ、とも思った。
だが…誰も声をかけてくるどころか、近寄って来すらしない。

あまりに虚しいので…


―――― その内みっちゃんは、考えるのをやめた…。 







     
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