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[ARMORED CORE BATTLE OF ROSE]


MISSION no.4[悪魔の兵器]



『トライトン環境開発研究所』と書かれた建物の前に降り立つ二人。
「…普通のビルじゃなぁい」
「いいから、黙ってついてくるです!」
翠星石に連れられ、建物内に入る。
「ちょっと内部見学の許可取ってくるですから、少し待ってるですよ」
そう言って受付へと向かう翠星石。
受付のカウンターや、壁、天井にも、さほど変わったインテリアなどは無く、いたって普通。平凡。
標準的な会社の受付…といった感じであった。
ただ、空調の音がゴウンゴウンと異常にうるさいのが気にかかったが。
翠星石は…受付係と何かを話しているようだ。特に変わった様子は無い。
時々罵声が飛んでくるのを除けば、だが

そうこうしている内に、翠星石がこちらへ帰ってきた。
「ふぅ…。受付が前と変わっていて、説得するのに苦労したですぅ…」
「そう。ご苦労様」
「全く、物分りの悪いやつだったですぅ…。―――そこぉ!非常ボタン押そうとしてるんじゃねぇです!!アタマ吹っ飛ばされたいですか!?」
「…アナタ、一体何を言ったのぉ…?」
「世の中知らないほうが得するって事もあるですよ?」
「……………」





「第8研究室…。ここですね」
「随分入り組んでるのねぇ…。この施設…」
外から見れば普通のオフィスのようだが、中に入ってみるとその予想以上の複雑さに驚いた。
階段を上がり、右に曲がり、下って上ってまた曲がり…。目が回りそうだった。
しかも、記憶の限りではこの通路には一切窓が無かった。
こんな所に地図無しで忍び込もうものなら、警備ロボットに見つかるまで永久に彷徨うことになるだろう。
「…こんな所に人なんているのぉ?」
「いるんですね、これが。人と会うことを極端に嫌う上に、すぐに機嫌を損ねてしまう何とも扱いづらいやつですぅ」
「相当のネクラねぇ…。いえ、引き篭もりかしらぁ?」
「そうとも言うですぅ。じゃ、入るですよ」
ドアノブを回し、扉を開ける翠星石。
小さな部屋だった。よくあるような机が一つ。それに書類のような物の山、山、山…。
その山に囲まれるようにして、机に座りコンピュータのキーボードを叩いている男が一人いた。
「生きてるですか?久しぶりに会いに来てやったですよ」
「誰だ!?…って、翠星石か。ノックぐらいしろよな…。
 今日は何の用だ?今手伝ってほしいことは特に何も―――」
「残念ですが、用があるのは翠星石じゃなくてこっちの方ですぅ」
そう言って、ドアを大きく開ける翠星石。
「ふぅん…。新しいお客さんか?悪いけど僕は―――

 ―――いぃ!?す、水銀燈!?」
「…アナタ、引き篭もりに更に拍車がかかってなぁい…?ジュン…」





「…へぇ、二人は随分昔からの知り合いだったですか」
「一応な。…もっとも、いい思い出なんて何一つ無いけど…」
「あらそう?私は結構楽しかったわよぉ。…アナタの上履きの名前を書き換えたりとか」
「楽しかったのはお前だけだろぉ!?あの時から、僕の名前は『JUM』に変更されたんだぞ!?」
「あらぁ、そんなのは学校の中だけでの話でしょう?言いたいやつには言わせておくのが一番よぉ。…すい…何とかさんみたいに」
「なぁっ!言ったですね、水銀燈!?」
「何も言ってないわぁ。あくまでも『すい』何とかさんよぉ。それとも、自覚があるのかしら?ウフフフフ…」
「…まぁ、無事で良かったよ。3年前に水銀燈は死んだ、ってずっと聞かされてたからな…」
「…一体どこのおばかさんよぉ…」
「…白崎っていただろ?高校の時に理事長をやっていたやつ。一応僕の上司でもあるんだけど…」
「…あのウサギ男…。次に会うときは覚悟しなさぁい…!」
「それで、用ってのは一体何なんだ?」
「あぁ。すっかり忘れてたわぁ…。実はカクカクシカジカで…」

これまでの経緯を説明する水銀燈。
だがやはり、想像していた通りの答えが返ってきた。
「…あのなぁ、ここは一応研究所だぞ?こんな所にACだのパーツだのがある訳ないだろ…」
「そう、残念ねぇ…。じゃ、生物兵器とやらのサンプルでも貰って帰るわぁ」
「ど、どうしてそれを!?生物兵器の情報は、一般には公開していないぞ!?」
「親切な人が教えてくれたわぁ。『すい』何とかさんが…」
「…やっぱり言っちゃまずかったですかねぇ…?」
「当然だろ…。政府にも公開していない極秘事項だぞ…。それを―――うわっ!?」
ジュンの言葉を遮り、爆発音が研究所内に轟いた。
赤いランプが灯り、警告音が鳴り響く。

『非常事態発生!非常事態発生!「コードA」がCブロックを破壊し、逃走中!非戦闘職員は速やかに退避せよ!繰り返す―――』
「あらあら…。その『極秘事項』とやらが逃げ出したみたいねぇ…?」
「まずい…。この事が外に知れたら、クビじゃ済まない…!」
現在、生体兵器の開発は全面的に禁じられている。
理由は簡単。自己修復・自己増幅が可能な戦闘兵器。そんな物が量産されれば、平和になれてしまった政府を叩き潰すなど雑作も無いことだからだ。
クーデターを何よりも恐れる政府は、そういった類の兵器を厳しく禁止してきた。
ただ、人間用の武装や、AC、MTに関連する兵器まで禁止してしまうと、今度は自衛の手段が無くなってしまうので『特例』として許可されていた。
「で、どうするです?来た道を急いで戻るですか?」
「無理だ。多分、通路の隔壁が全て降りてきている。ここの隔壁は、こんな事態に備えて戦車の主砲でも突破できないようになっている」
「…それって…。閉じ込められたってことぉ…?」
「心配するな。ここには職員専用の通路やエレベーターが至る所に配置されてる。…こんな風に」
そう言うと、ジュンは机の脇にあったボタンらしき物を押した。
そして、パシュッ!という音と共に、部屋の壁に切れ目が入り、左右に開いた。その先はエレベーターらしき部屋となっていた。
「こいつで地下30階まで移動する。ついてきてくれ」
「地上からは5階建て程度に見えたですけど…。本体は地下にあったんですね…」
「ま、そういうことだ」
エレベーターの扉が閉まり、地下深くへと潜行する。





地下90m。ろくに照明すらついていない狭い通路を、小走りで移動する。
未だに上からはドォン、ドォンという爆発音が聞こえてくる。
恐らく警備システムが作動し、脱走した生体兵器を駆除しているのだろう。
「でも不思議ですね…。どうして隔壁が閉鎖されているのに移動できるですか?」
「『コードA』は隠密行動を目的に開発された。知らぬ間に敵施設の奥深くに入り込み、自爆する。後には何も証拠は残らない。
 それをコンセプトに開発を進めてきた。やつらは今、通気口からダクトを伝って移動しているはずだ」
「なんでアンタがそんなこと知ってんのぉ…?」
「一応、僕はこの研究所の所長を務めているからな」
「あの引き篭もりが随分出世したものねぇ…」
「引き篭もりは余計だろ…。…ここだ。着いたぞ」
目の前には、かなり頑丈そうな扉があり、物々しい雰囲気を醸し出している。
ジュンはIDカードを差込み、扉のロックを解除した。

ゆっくりと扉が開く。そして、三人は中へと入っていく。

「ここは…?」
「…メインコンピュータールーム。ここなら、研究所内に設置されたあらゆるセンサー類の情報を、一度に見ることができる」
「画面やらメーターやらがいっぱいで目がチカチカするですぅ…」
翠星石の言うとおり、部屋の中にはとんでもない数のディスプレイと計器類が配置され、明滅を繰り返していた。
「…誰がこんな部屋を作ったのかはわからない。研究所ができた当初から、いつの間にか存在していたそうだ」
そう言いながら、中央の少し大きめのコンピュータを操作するジュン。
引き篭もりなだけあって、機械の扱いには長けているようだ。
そして、そこに表示された所内のデータを見て、ジュンは驚愕した。
「…これはまずい………」
「…え?どうしたですか?」
「コードAは…、『AMIDA』は…メインエンジンルームへ向かっている…!」
「えぇええ!?………って、どのくらい危ないんですか?それ」
「そうだな。例えば、外部からのショックでメインエンジンが暴走して、爆発したとしよう。その場合―――
 ―――街が一つ消えてなくなる」
「なんですとぉおお!?」
「危ないってレベルの話じゃないわねぇ…。それ…」
「そう。そこで、だ。―――水銀燈。翠星石。君達に『手伝ってほしいこと』ができた。
 時間がない。移動しながら説明するぞ」





ジュンの立てた作戦はこうだ。こことメインエンジンルームは繋がっている。
ここからエンジンルームに急行し、そこで『AMIDA』をACで待ち構え、迎撃する。
余程大出力のエンジンらしく、エンジン本体が2、30mはあるため、メンテナンスはいつもMTでこなしている。そのため、多少なりとも動き回れるスペースはあるらしい。
幸いにもAMIDAの移動速度は遅く、エンジンルームへ到達するにはまだ時間がありそうだ。

「ちょっと待つです。…ここにACが無いって言ったのはおめぇじゃなかったですか?」
「…それは…そう…だが……」
「でも、どうせ私達がそのACに乗るんでしょ?だったら隠しても無駄じゃなぁい?」
「確かにな…。―――仕方ない。教えよう。…この研究所は表向きは何をしていることになっていた?」
「『環境開発』ですぅ」
「そう。じゃあ、裏では?」
「『生体兵器の研究』…で、いいのかしらぁ?」
「その通り。………でも、実はそれも建前なんだ」
「…へ?」
「おっと…着いたぞ」
再度扉を開けるジュン。先ほどの扉よりも少し大振りだった。
「ここって…」

そこは、どう見てもACのガレージだった。中央には、今まで一度も使用されていないであろう、ピカピカのACが1体あった。
しかし、そのACは、はっきり言って『異様』と呼べる形状であった。
「なんだか、マネキンみたいですぅ…」
「のっぺらぼうだし、とても戦闘兵器には思えないわぁ…」
そのACには、武装や装甲と呼べるようなものは何一つ装備されていなかった。
関節やコックピットがむきだしであり、ACどころか兵器と呼べるかすらも怪しいものであった。
ジュンは、それを気にもせず再び話しだす。
「―――ここの本当の目的は、『生体ACの開発』…。遥か昔に人類が挑戦し、そして失敗した禁断の技術だ」

生体AC―――。生体兵器の特徴である自己修復が可能なその兵器は、事実上無敵とも言える戦闘力を誇る。
―――ただし、理論上は。
意思を持つとも言われるそれは、開発段階から少しでもミスをおかせば、取り返しのつかない事態を巻き起こす。
遥か昔に開発を行った人間がいたという。だが、当時の技術などで成功するはずがなく、結果として、人類が初めて滅びかけた「大破壊」と呼ばれる事件が起こった。
まさに、それは『悪魔の兵器』だった。

「そんな物騒な兵器で暴れまわるつもりぃ…?冗談じゃないわぁ…」
「けど、今はそれしか方法が無いんだ。改良を重ねたAMIDAは、並みのMTやACでは太刀打ちできない程の戦闘力を手に入れてしまった。
 ―――そして、多分、脱走したのはAMIDAだけじゃない…。AMIDAだけじゃ研究所の壁をぶち破ることは不可能だ…」
「…よくわからんですけど、『策士策におぼれる』ってやつですね」
「『自業自得』ともいうんじゃなぁい?」
「何でもいい。…時間がない。水銀燈。お前が乗ってくれ。お前がこの中で、一番ACの扱いに慣れているんだ」
「…この際仕方がないわぁ…。後できっちり貰うものは貰うわよぉ?」
「…ありがとう。水銀燈。僕はメインコンピュータールームに戻り、もしもの場合の脱出路の確保を行う。
 翠星石は、そこのAC用エレベーターで地上へ戻り、自分のACと水銀燈のコックピットを持ってきてくれ」
「地上へ戻る方法があるなら早く教えやがれですぅ!」
「教えても良かったけど、通常のエレベーターのシャフト内には、多分AMIDAがうようよしているぞ?
 うっかりエレベーターで挟んで大爆発させたいなら止めないけど…」
「う…やっぱり遠慮するですぅ…」





「ふぅ…。持ってきてやったですよ」
AC用エレベーターを使い、水銀燈のコックピットと自分のACを運んできた翠星石。

「よし。…水銀燈。このコードを向こうのACのコックピットに繋いでくれ」
そう言って、ジュンは水銀燈に直径1cmほどのケーブルを渡した。
生体ACのコックピットに乗り込む水銀燈。
「…えぇと…これかしらぁ?あ、うまく繋がったわぁ」
「よし。今、メイメイのデータをそっちへ送った。これで起動・操縦の方法は前と一緒になったはずだ」
「わかったわぁ。…メイメイ、聞こえるぅ?とりあえず機体をセーフモードで起動よぉ」
『了解。セーフモード起動』
グォングォンと聞きなれた起動音を耳にし、少しばかり安心する水銀燈。
「OKよぉ。メインシステムを起動しなさぁい」
『了解。メインシステム、戦闘モード起動』
「(やっぱり、私はもう、戦うことに慣れてしまったのかしらねぇ…)」
物思いに耽る水銀燈。しかしその時、機体の起動音が変化し始めた―――。

先ほどまでのグォングォンは消え、代わりにフィィィイイという聞いたことのない音が鳴り始める。
その音は徐々に大きく、甲高くなっていく。
そして、機体が大きく揺れたかと思うと、次の瞬間、ACの表面全体が装甲で覆われた―――!
「な……なに…?これぇ………?」
頭部も既にのっぺらぼうではなく、コックピットにもカバーがつき、完全なACの形をとっていた。


そして、それは水銀燈の愛機、「クヴェックズィルバーランペ」と、寸分違わぬ姿をとっていた―――。


To be continued...

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