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蒼「翠星石、何観てるの――って、ブハッ」

思わず飲んでいたお茶を噴きだしてしまった。
何故ならば翠星石が観ていたのは昔のビデオであって、そこに映っているのは幼い自分自身。
それだけならいいものの、よりによって映し出されていたのは。

翠『そうせいせきはおおきくなったらなにになりたいですかー?』
蒼『ぼくね、おねえちゃんのおよめさんになるー!』
翠『まぁ、そうせいせきかわいいですぅー』

何たる若気の至り――恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

蒼「す、翠星石、何でこんなの観てるのさ!」
翠「ちょーっと、懐かしくなっただけですよ。この頃は蒼星石も素直でよかったですぅ。」
蒼「っ……恥ずかしいから止めてよ!」
翠「い・や・ですぅー」

リモコンは翠星石が持っている。
こうなったら強硬手段しかない。

蒼「止めてくれないならリモコンを奪い取って無理やりにでも止めてやる!」
翠「やめるです、蒼星石!」

そのままもみくちゃになる二人。
何とかリモコンを奪い取りビデオを止めて、ふと気づくと翠星石の上に馬乗りになっていた。

慌てて翠星石の上から下りる。
そして翠星石の様子をそっと窺うと、翠星石はその瞳から大粒の涙を零していた。
翠星石の泣き顔を見るのが何よりも嫌いな蒼星石は慌てて彼女を宥めにかかる。

蒼「す、翠星石。さっきの事は僕が悪かった。ごめんね。だから泣かないで…」

そして翠星石の涙を自身の指でぬぐう。
しかし翠星石は泣き止まない。

翠「ちが…違うです。翠星石が泣いてるのはさっきの事でじゃないです」

蒼星石は驚いた。
では何だというのだろう、最近何か彼女の気に障る事でもしただろうか。

翠「蒼星石は…昔はさっき観てたビデオのように素直に甘えてきてくれたです。
  でも最近はちっとも甘えてきてくれないです」
蒼「それは…人前じゃ恥ずかしいし…年も年だしね?」
翠「しかも最近は『翠星石』って呼び捨てにして、『お姉ちゃん』ってちっとも呼んでくれないです!」
蒼「そ、それは――」

それには理由がある。
蒼星石は翠星石の事が好きだった。
双子の姉としてではなく、一人の女の子として――。
しかし双子の姉妹という事実は変えられない。
だからせめて呼称だけでも、翠星石を双子の姉としてでなく、一人の女の子として扱いたかった。
しかし、このような理由を説明するのはものすごく恥ずかしい。
そもそも自分の姉への想いを吐露することになる。
今までの姉妹としての関係を壊したくなかった蒼星石は、押し黙るしかなかった。
その沈黙を否定的な意味に取ったのか、翠星石の瞳からは一層多くの涙が溢れてくる。

翠「な、何よりも一番悲しかったのは蒼星石がこの前JUMに将来の夢を聞かれたとき、『庭師』って答えたことです!
  蒼星石は…翠星石のお嫁さんが夢じゃなかったですか!?」

蒼星石は気付く。
もしかして、姉は自分が姉に対して抱いているのと同じ気持ちを抱いているのではないかと。
そこで、恥ずかしいけれど覚悟を決めて自分の想いを伝えることにした。

蒼「…翠星石。僕が将来の夢を聞かれたときに『庭師』って答えたのは、庭師になれば君とずっと二人で生きていけると思ったからなんだよ。
  だから、そのーつまりそれは翠星石とずっと一緒にいたいって事であって、だからそのー…」

だんだんと声が尻すぼみになっていく。

蒼「つまり…翠星石のお嫁さんになりたいっていう夢は変わってないという訳であって…」
翠「じれったいです!はっきり言うです!!」
蒼「だ、だから、僕は翠星石が好きなんだ。双子の姉としてではなく、一人の女の子として。
  ずっと、僕と一緒にいて欲しい…」


二人の間にしばし沈黙が下りる。
それに耐え切れなくなった蒼星石が口を開いた。

蒼「あのー…翠星石…?」
翠「…そんなの言葉だけじゃ信用できないです。行動で示して欲しいです」
蒼「行動って…?」
翠「…翠星石にその言葉が真実であるという証にキスをして欲しいです」

途端、蒼星石の顔が真っ赤に染まる。

蒼「そ、そんな…キ、キスなんて恥ずかしいよ…」
翠「誰もいないんだしいいじゃないですか。…それともさっきの言葉は嘘だったですか?」

翠星石の瞳から再び涙が溢れ出す。

蒼「ッ…」

恥ずかしいが仕方がない。
翠星石の手を取り、そこに唇を落とした。
しかし翠星石は不満そうに言う。

翠「誓いのキスなんですから、そんな所じゃダメですぅ」
蒼「他にどこにしろっていうのさ!」
翠「最後まで言わせる気ですか…?」

そう言って翠星石は目を閉じる。

蒼(これは、この流れは唇にしろって事ですか?
  は、恥ずかしすぎる…。でも翠星石が泣く所はもう見たくない。
  覚悟を決めるんだ蒼星石!)


そっと顔が近づき、二人の唇が重なった。
唇と唇が重なるだけのキス。
数秒後、蒼星石は唇を離した。

蒼「…これで信じてくれた?」

そう翠星石に問う顔は真っ赤だ。

翠「フフ…フフフフフ」
蒼「?翠星石?」
翠「そんなに蒼星石は翠星石の事が好きだったですね~」

笑顔を蒼星石に向ける。
この顔には見覚えがある。
翠星石が蒼星石に対し何か悪戯を思いついたときに浮かべる笑みだ。

蒼「え、まさか…」
翠「泣き真似に引っかかるなんて蒼星石もお子ちゃまですね~」

そう言って後手に持っていた目薬を放り投げる。

蒼「ひ、ひどい!僕を騙したんだ!」
翠「蒼星石が勝手に騙されただけですぅ。
  それにしても…蒼星石ったら大胆ですぅ、いくら誰も見てないとはいえキスなんて…」
蒼「は!?それは翠星石がしろって言ったから…」
翠「そこまでされると翠星石としても応えないわけにはいかないですぅ」
蒼「えーと、言っている意味がよく分からないんですけど」
翠「さ、行くですよ、蒼星石!」

そういって蒼星石の手を引っ張る。

蒼「え、どこに行くのさ?」
翠「勿論、翠星石の部屋ですぅ」
蒼「な、何しに…?」

嫌な予感がする。
奇しくもそれは当たってしまう。


翠「翠星石にそんなこと言わせるつもりですか?フフフ」
蒼「え、ちょっと待って、展開が速すぎてついていけないんだけど」

いつの間にやらもう翠星石の部屋の前。
これはまずい。本当にまずい。

翠「両想いってことですし、キスの後にする事といえば一つだけですよ♪」
蒼「ほ、本当に待って、ってちょ…うわあああああ!」

翠星石の部屋の扉は閉められた。
後日、実は録ってあった告白の場面のテープのおかげで暫く蒼星石は弄られ続けたそうな。


終われ

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