「やさしいてんし」
銀「ばーらすいしょぉ♪」
薔「……なーに…?」
ぷにっ
銀「うふふ♪ひっかかったわぁ♪」
薔「……むー…」
薔薇水晶が振り返った瞬間、水銀燈は薔薇水晶のほっぺをつっついたのだ。
ジ「お、おい…水銀燈、薔薇水晶にちゃんと謝れ」
銀「やぁよ~♪つぎは、すいせいせきをいぢりにいこぅ~っと♪」
そう言うと、水銀燈は他のみんながいるリビングに向かった。
ジ「あ、水銀燈!……ったく……」
巴「薔薇水晶、大丈夫?」
薔「…だいじょうぶ…、…ばらすいしょう……つよいこだもん……」
どうやら悔しかったらしく、涙目の薔薇水晶だが、一生懸命涙を拭いている。
「絶対泣いてない」と、主張している様に。
そんな薔薇水晶を、巴は優しく微笑んで、頭を撫でた。
巴「うん、良い子ね。…水銀燈、悪い子じゃないんだけど…よく他の子に悪戯するのよね」
ジ「まぁどれも軽い程度だけど……少し、怒った方が良いよな…?」
巴「うーん………」
「びえぇぇぇぇぇん!!」
二人の耳に聞こえた、かん高い泣き声。
ジ「!?…今の、雛苺か?」
巴「どうしたのかしら…、…行ってみましょう」
二人は急いで、雛苺や、他のみんながいるリビングに向かった。
ジ「雛苺!どうしたんだ!?」
二人がリビングに入ると目に入ったのは、大泣きしている雛苺と、それをなだめている水銀燈と金糸雀。
雛苺の向かい側に、暗い顔で俯いている翠星石。
どうすれば良いのか分からず、困った顔をしている真紅と蒼星石だった。
巴「一体何があったの?」
蒼「…すいせいせきとひないちごが、さんじのおやつとりあってて…」
紅「そのうちけんかになってしまって、すいせいせきのが、ひないちごのほっぺをたたいてしまったの…」
巴「そっか……」
事情を把握したジュンは、翠星石に視線を向ける。
ジ「翠星石、…本当なのか?」
翠「…………」
肯定もしなければ、否定もしない。
本当の事であり、本人も認めているのだろう。
ジ「翠星石、雛苺に謝ろう。な?」
翠「…………」
翠星石は黙ったままだった。
ジ「翠星石ッ」
翠「!…………ふぇ………」
翠星石の瞳に涙が溜まり、翠星石は泣き出してしまった。
ジ「!?…わ、悪い!な、泣かせるつもりは……」
翠「うぅ……ひっぐ……」
翠星石の涙は止まらない。
周りは只、オロオロしていた。
銀「………」
その様子を見ていた水銀燈は、立ち上がり、翠星石に近付く。
翠「………?」
銀「……さっき、ひないちごがいってたわ。「すいせいせきがおこったのは、ヒナがすいせいせきのこと、ばか!っていっちゃったから」って」
翠「…………」
銀「「だから、すいせいせきだけがわるいわけじゃない」って」
翠「……うぅ……」
銀「おたがいあやまって、おわり。それでいい?」
翠「……はい、ですぅ…」
先程二人が喧嘩していた時。
怒った雛苺が、翠星石に「ばか!」と言ってしまい、翠星石はそれに怒って、雛苺を叩いたのだ。
翠星石は、自分だけが責められている様に感じて、泣き出してしまったのである。
翠「………ごめん、なさい……」
雛「ひ、ヒナも…ごめんなさい…」
二人は漸く仲直りを果たした。
ジ「ごめん、…怒鳴ったりして…悪かった……」
翠「…、……」
翠星石は無言でジュンに抱きつき、再び泣き始めた。
―――――
の「へぇー、そんな事があったのねぇ」
子供達が寝静まった後。
帰ってきたのりを加えて、三人で今日の出来事を話していた。
の「凄いわねぇ、水銀燈ちゃん」
巴「やっぱり、一番お姉さんなのね」
ジ「僕より水銀燈にまかせた方が良いような……」
の「まぁまぁ、ジュン君。これから頑張っていけばいいじゃない」
ジ「…うん。ありがと」
の「ボソッ……水銀燈ちゃんはいつか、優しい天使さんになれるかもねぇ…♪」