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草笛みつと金糸雀を、依頼のあった町に引き渡す。

ありきたりな礼の文句と、少なくない報酬を受け取っている最中、突然ドアが開いた。
見ると…思いつめた顔をした金糸雀が立っていた。

金糸雀はそのままツカツカと水銀燈に歩み寄ると…
「カナを…一緒に連れて行って欲しいかしら!」
突然、頭を下げた。
「カナは…みっちゃんを…町を守れるくらいに強くなりたいかしら!
だから…お願いします!かしら…」

「ごめんなさいねぇ。足手まといは連れて行けないのよぉ」
水銀燈は目もあわせず、答える。

「カナはこう見えても…こんな時代でも…銃器や火薬を作れる『技術屋』かしら…!
ちょっと来て欲しいかしら!」

―※―※―※―※―

水銀燈が金糸雀に連れて来られてのは、町外れの廃墟の前だった。

おもむろに金糸雀は懐をまさぐり…
見たことも無い形のサブマシンガンを取り出した。
そして、廃墟の壁目掛けて引き金を引く。
小気味よい発射音がして…
反動で金糸雀が尻餅をつく。

銃でぶつけた額をさすりながら、金糸雀が言う。
「これは、カナが一人で、ジャンクパーツから作ったものかしら…もちろん、火薬もお手製かしら。
カナは戦うのは得意じゃあないけど…必ずお役に立てるかしら!」 

金糸雀からマシンガンを渡され、水銀燈も壁を撃ってみる。

思ったより反動も少ない。
集弾性も良い。
何より…
今となっては高級品の銃や弾丸を自前で作れる上、機械の修理までしてこなす。
そんな『技術屋』の存在は、チームにとって魅力だ。

ふと、銃の横の刻印に目を落とす。
『Made in May(5月製造)』と彫ってある。
(メイドインメイねぇ…。さしずめ、メイメイねぇ)

水銀燈は金糸雀の方に向き直る。
「なかなか気に入ったわぁ…。家族にお別れは済んでるぅ?」
ニヤリと言う。

「家族は居ないかしら!でも…みっちゃんに…」
金糸雀がそう答える。

「…出発は明日の早朝。少しでも遅れたら置いて行くわよぉ?」
水銀燈がそう言うと、金糸雀は顔をパッと明るくして町の方に駆け出した。

水銀燈は金糸雀の姿が見えなくなると…
勝手にメイメイと名付けたマシンガンを片手に、煙草を取り出した。 

―※―※―※―※― 

翌朝…

「みっちゃーん!カナは必ず強くなって帰ってくるかしら~!」
(何故か)片方の頬を真っ赤にした金糸雀が振り返り、町に手を振る。
その瞳にはうっすら涙が溜まっていたが、荒野に吹く風がそれを吹き飛ばす。

金糸雀は目に僅かに残る涙を袖で拭き、隣で煙草を咥えている水銀燈に聞く。
「これから…どこに行くのかしら?」
水銀燈はチラッと馬車に引かせた荷台を見て、言う。
「そぉねぇ。お仲間も増えて、久々の羽振りの良い仕事でいっぱい買い物もしっちゃったし…
お家にでも帰るとするわぁ」

「『アジト』ってやつかしら!?」
金糸雀が楽しそうに叫ぶ。
「嫌ぁねぇ…。ならず者じゃあないんだから、ちゃんと『お家』って言ってよぉ」
荒野に名を轟かせたならず者一味のリーダーは、そう答えた。

―※―※―※―※―

馬で数時間。
小さな町の外れにある、建物。

前時代の戦争で、一部が溶けた、コンクリート製の縦に長い住居。

そこは前時代の言う、マンション。
それも、結構小さめの。
随分とボロボロになっていたが、使えそうな部屋が多かったので、根城として使用している訳だ。 

馬を停め、蒼星石が手際よく馬から荷車を外す。
翠星石と薔薇水晶が、両手一杯に荷物を持ち、荷台から出てきた。
「いやー、沢山買い物して疲れたですぅ~」
「えへへ… いっぱい買っちゃった…」
楽しそうに言いながら、さっさと部屋の方に歩いて行った。

水銀燈も荷台でゴソゴソした後、両手に荷物をかかえながら言う。
「金糸雀、ついてきなさぁい…案内してあげるわぁ…」
そこまで言い、自分の荷物を見る。
「…蒼星石が…」
そう付け足すと、先程の二人と同じようにさっさと歩いていった。

蒼星石は、少しため息をつき、
「金糸雀、ついて来て。案内してあげるよ」
と言った。

―※―※―※―※― 

「ええっと…ここが君の部屋になる…のかな」
一つの部屋の前で、蒼星石が言った。

ドアを開けると…
そこはどう見ても、廃材置き場だった。

「その…片付ければ、結構住みやすいと思うよ…?」
フォローを入れる蒼星石を尻目に、金糸雀が部屋に駆け込んだ。

「みっちゃんの部屋と比べれば、綺麗なものかしら!
それにこのジャンクパーツの山…カナにとってはお宝の山かしら~」
そう言い、早速、廃材の山にダイブする。

「全部頂いちゃって、本当にいいのかしら~!」
金糸雀がジャンクパーツの山から、ひょっこり首だけを出す。

「はは…は…」
蒼星石は苦笑いしか返せなかった。

―※―※―※―※― 

「ここは…僕の双子の姉の、翠星石の部屋だよ」
そう言い、蒼星石がドアを開ける。

中から、病院のような、独特の消毒液の匂いが広がる。

どう見ても診察室にしか見えない部屋で、翠星石がテキパキと、棚に買って来た薬をしまっていた。

そして、蒼星石の顔を見るなり、すごい速度で駆け寄ってきた。
「どどどどーしたですか!蒼星石!指でも怪我したですか!?」
「いや、金糸雀を案内してる所だよ」
その一言で初めて気が付いたらしく、翠星石は金糸雀に視線を移す。
そして…
「チビカナ…てめぇが怪我した時は、ツバ塗って自分で治しやがれですぅ」
ニヤリと笑う。

「は…はは…」
蒼星石は、また苦笑いをしていた。

―※―※―※―※― 

「ここが僕達のリーダー、水銀燈の部屋…」
そう言い、蒼星石はノックして扉を開ける。

中には、この時代では超がつく高級品であるオーディオ機器が並び…
地震かと思う程の爆音が響き渡っている。
スピーカーなんて爆発しそうな勢いで跳ねている。

部屋の壁は壁で…
一面に銃火器が飾られ、家具は黒一色で統一されてる。
部屋の中央に、巨大な革張りのソファーが置かれており、そこにドカっと水銀燈が座っていた。
部屋の至る所にハリネズミが…いや、違う。
ハリネズミに見えたのは、吸殻がぎっしり刺さった灰皿だった。

「…とても…その…刺激的なお部屋かしら…」
金糸雀が辛うじてそう呟く。
「…うん。…僕もそう思う…」

天井を見ながら、水銀燈がプカーっと煙を吐く。
そして、「文句があるなら出て行け」と言うかのように、手をヒラヒラさせる。

「…根は、優しい人なんだよ…?」
そう言いながら、蒼星石がドアを閉めた。
金糸雀は、何も答えなかった。

―※―※―※―※― 

「…気を取り直して…。
その隣が、薔薇水晶。チームの狙撃手の部屋さ」
そう言い、蒼星石がドアをノックする。

反応が無い。

蒼星石はため息をつき、ドアを開けた。

部屋一面に人形が置いてある。
くたびれた、可愛いのか可愛くないのか、そんなデザインの人形。
ここだけ、やけにメルヘンだ。

そして…
部屋の主、薔薇水晶は、水銀燈の部屋がある方の壁にピッタリと耳を当てていた。
「ハァハァ…銀ちゃん…」

蒼星石と金糸雀は、生暖かい視線を送るも、薔薇水晶は気が付かない。
一人で壁に密着しながら、悦にひたっている。
「…」
「…」
「ぁぁ…銀ちゃん…ハァハァ…」

二人で無言でドアを閉めた。

閉まったドアの前で、蒼星石が呟く。
「本当は…とても頼りになる子なんだよ…」
「だ…大丈夫! 大丈夫かしら!」
何が大丈夫なのかは分からないが、金糸雀にはそう答えるしかなかった。

―※―※―※―※― 

「そしてここは…」
蒼星石がドアを開ける。

コンクリートの打ちっぱなしに、ベッドと机があるだけ。
机の上にも、照明とノートが何冊も置いてあるだけ。
これまでの部屋と違い、生活感が一切感じられない部屋だった。
そのせいだろうか…部屋はどことなく薄暗い。

「ここは…独房かしら…?」
金糸雀が思ったまま呟く。

金糸雀の肩に、背後からそっと蒼星石の手が置かれる。

「ここは…僕の部屋だよ…」

肩に置かれた手に、ミシミシと力がこもる。

金糸雀は…
怖くて振り向けなかった。

背後では…
蒼星石の赤い方の目だけが、ギラリと光っていた…

―※―※―※―※― 

「…と、これで全員かな。
まあ小さいながらも、ちょっとは名の知れたチームだよ。
何か分からない事はある?」
蒼星石が、ニッコリと金糸雀に尋ねる。

「ハッ!ハヒィ!?だ…大丈夫かしら!!」
金糸雀は挙動不審に答える。

「掃除や料理は当番制で、後は好きにしてくれてかまわないよ。
何か分からない事があったら、何でも僕に聞きに来てね」
そこまで笑顔で言い、少し視線をギラつかせる。
「僕は…あの独房にいるから…ね…」

「ヒィ!?」
金糸雀がガタガタと震える。

蒼星石は、フッと真顔に戻り、そっと付け足す。
「そうそう、料理といえば…水銀燈の料理には気を付けた方がいい…。時々彼女は…」

その時、自室からヒョイっと水銀燈が廊下に顔を出した。
「蒼星石ぃ。新しい子が入ったんだし、久しぶりに私がご飯つくってあげようかと思うんだけどぉ?」

蒼星石は綺麗な笑顔を貼り付けて答える。
「そうだね…。どうしても、と言うなら、止めないけど…」

蒼星石の含みを持った言い方に気が付かないのか、
「よ~し、張り切っちゃうわよぉ~」
と言いながら水銀燈は部屋に引っ込んだ。

―※―※―※―※― 

割り振られた自分の部屋の前で、金糸雀は少しうつむいていた。

(うぅ…変な人ばっかりかしら…可哀想なカナ…これから大丈夫かしら…)

そして、ドアを開ける。
そこには、廃材やらジャンクパーツやらが山積みにされている。
途端に金糸雀の目が輝く。

「お宝の山かしら~!!」


普通の人間が見れば、ただのゴミ山に、楽しそうに金糸雀は飛び込んだ。




 

―after story―

ジャンクの山から照明を作り上げ、その下でさらに何かを作っていると、ノックが聞こえた。
「金糸雀ぁ。ご飯ができたから、一緒に食べましょうよぉ~」
やけにご機嫌の水銀燈の声が聞こえる。

「今行くかしら~!」
そう答えて、造りかけの装置を床に置いた。

水銀燈に案内され、食堂としている部屋に行く。

そこには…
まるで故人を悼むような表情の薔薇水晶。
虚ろな瞳でテーブルを見つめる翠星石。
何かに耐えるように膝の上で拳を震わせる蒼星石が居た。

(??)
訳が分からないながらも、金糸雀もテーブルにつく。

そして…奥から水銀燈が、楽しそうに鍋を持って登場した。

(何かしら…?)
そう思い、鍋を覗き込んだ金糸雀の表情が『ピシッ』と音を立てて石化する。

鍋の中には…肉や野菜。そして…
煮えたぎるヤクルトが入っていた。

天使のような笑顔の水銀燈が、悪魔の所業としか思われない鍋をテーブルに置く。

…ここからが本当の地獄だ……。

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