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一三一四時、盗賊アジト内指令テント

シュボッ!
今日何本目かしれないタバコに日を点ける。一時期は禁煙も試してみたが、こんな稼業ではするだけムダだと悟に終わったさ。
「フー…まったく…」
ため息も何度目か。ため息一回に付き何秒か寿命が縮まるとか聞いた事もあったが知った事か。こちとらヨボヨボのジジィになるまで生きたいとも思わん。
「ベジ兄貴、連絡です」
「…今度は何だ?」
「ポイント・チャーリーまで誘導していた三人のうち二人をロスト、もう一人は誘導コースを外れ逃走中」
おいおい勘弁してくれ…
「ポイント・ゴルフのローゼンメイデンには強力な応戦に会い一時撤退を余儀なくされたと」
せめて頭を押さえるくらいしろってんだ…
「それと、初めに向かわせた遊撃隊は死者ゼロながら全滅したとのことです」
「…ローザ・ミスティカは?」
「まだ発見できていません」
「・・・」
「・・・」
あー、頭が痛くなってきやがったぜ…ストレスで俺の自慢のヘアスタイルが保てなくなったらどうしてくれる…!?
「すんなりいかん事も想定していたが、まさかここまで手こずるとはな…
だがまぁ、時間いっぱいまではローザ・ミスティカの探索を続けさせろ。それ以外の奴らは…ここまで散り散りになられちゃ仕方ない、殺傷を禁じる。そのかわり、奴らに探索させないよう任意に迎撃しろ」
「は」
部下は俺の指示を聞くとテントから出ていった。まだ時間はあるとはいえ、さすがに見つからない事も考えなきゃいかんかもな。残り90分を切ったら全員探索に回すなり…やれやれだ。そうなる前にとっとと見つかる事を祈るぜ、まったく… 


『ザー…殺傷を禁じ…ザザ…スティカの探索を続…ザ…任…迎撃せよ…ブツン!』
「ふぅん…」
小型無線傍受器のイヤホンを耳から抜く。音質の悪さは否めないものの、必要な情報は手に入った。
ガサガサ…
「ふ~、どう?水銀燈」
「ええ、知りたい事はわかったわぁ。まだあいつらも見つけてないみたいね…あと、真紅達も無事みたいよぉ。そっちは?」
「言われた仕掛けは終わったよ。あと少し細工したけどね。雪華綺晶も自分でポイントを見つけて待機してる」
「そう…宝探しを先んじられたのはシャクだけど、ここまで制圧されてちゃねぇ」
双眼鏡でアジトを見渡す。あのハゲがいるからにはここが本拠地なだろうが、それにしてもかなりの数だ。
「漁夫の利を狙うのも仕方ない、か。あ、金糸雀達は?」
「そう言えばまだ連絡して無かったわねぇ。ちょっとしてみてくれる?」
「オッケー」


ザー
『こちらローズ4。ローズ2聞こえる?』
「バッチリかしら~。順調に“ジュンに向かって”進んでるわ」
そう言い切る金糸雀の手には簡易ビーコンが握られていた。発信器のある位置の方角と大まかな距離しかわからないが、それなりには役に立つものだ。
だがもちろん、それは見つけたいものに発信機が取り付いていればの話しなのだが…
「でもまさか、ジュンの体に発信機を埋め込んでるとは思わなかった」
薔薇水晶の言葉に金糸雀が嬉しそうに胸をはる。
「ふふん!カナが伊達や酔狂でジュンの体をいじくりまわしてた(怪盗乙女新人訓練養成学校参照)と思ったかしら?」
「うん。皆そう思ってた」
「ひ、酷いかしら…」
大きなリアクションで落ち込んだ後、直ぐに思い直して元気を取り戻す。自分がジュンに発信器を埋め込んだからこそ、こうしてチームβに無線機を届けられるのではないか。
「こ、こちらローズ2!チームβと合流次第また連絡するかしら!」


「こちらローズ4、了解。…でも水銀燈、勝算はあるのかい?」
数も装備も段取りも向こうが勝っている。そんな状況は今までも有ったが、メンバーとの連絡が出来ないのはかなり痛い。
「はっきり言って高いとは言えないけど…仕方ないでしょう。まずは奴らが見つける前に金糸雀達がチームβに合流してもらわないとねぇ」
「そして奴らが見つけ次第僕らはここを足止め、その間に彼女達が発見場所に襲撃して奪い返す…」
「問題はタイミングねぇ。正直、奴らがここまで人員を裂いて探し回ってるのに見つからないなんて思わなかったわぁ。ホント、一体何処にあるかしら…」
「確かに僕らだけじゃ時間切れだったかもね。どのみち、かなり難しい仕事になったわけだど」
「…今は待ちましょう。チャンスが来るまでじっくりとね…」
そう言うと、水銀燈は再びイヤホンへと手を伸ばした。


同時刻、ポイントゴルフ、チームβ

「ふ~…ま、もう追い払ったとみて間違いないですね」
無作為に乱射したり耳をすませてみても、隠れている様子は見受けられなかった。
「さて、と。じゃあこれからどうします真紅?…って、どうしたですか?」
「どうしたもこうしたも…ジュンがいなくなったのよ!途中で振り落とされたらしいの…まったくこの忙しい時に…!」
「はぁ!?じゃあ…じゃあジュンはまだあの崖の上に居るですか!?」
「今は解らないけど…多分そうなの」
先程の真紅同様、翠星石も苦々しくその崖を見上げる。
「キ~!あのどバガチビ人間!!居るならとっとと落ちてこいです~!!」
ぷすん
「あ、あれ…?」
カチン、カチン、カチン。
如雨露のトリガーを引いても水が出ない。川に繋いでいるのだから水切れではないし…何か詰まったのだろうかと川の方を見てみると、
『ぷはっ!は~、は~…掴まる物があってよかった…ていうか警部!いい加減しがみつくの辞めてください!』
『わ、私が泳げないの知っててそーゆー事言うの!?乙女に抱き着かれてるんだから有り難いと思いなさい!』
『誰が乙女ですか、誰が!まったく…ん、コレはホースですかね?なんでこんなところに…あ』
「・・・」
『・・・』
まるまる三分間、完全な沈黙がその場を支配した。


同時刻、サメ地区のどこか

「はぁ、はぁ…とりあえず巻いたかな…」
なんとも迂闊だった。まさか車から振り落とされるなんて…
「周りの兵隊みたいなのからは見つからなかったからよかったけど…完全に真紅達と離れちゃったなぁ…ん?」
待てよ、真紅達と離れたってことは…
「僕…今一人で迷子に…?」

~回想~
(場所も状況もあの船とは全然違うため、僕では状況把握もままならない。
万が一、一人はぐれてしまったら事だ。獰猛な未開の原住民に捕らえられ、怪しげな儀式の生け贄にされる事だろう)
~回想終わり~

「あ…は…あはは…いやぁ、マイッタマイッタ~…でも慌てるな桜田少年!迷子になった時の鉄則は、慌てず騒がすその場から動かない事だから…」
ガサガサ!
「ぎゃああああああ!!!」
ダダダダダ!すて~ん!ゴロゴロゴロ…アッー!!どしーん…
カメレオン「・・・」 

「い…いてて…生きてるよな、僕…」
見上げれば鬱蒼と繁った木々が。とりあえずまだ天国じゃなさそうだ。
「う~ん…これからどうするか…お」
すこし辺りを見回すと、洞穴のような入口を見つけた。とりあえず入ってみるか。今の転落でちょっと傷が出来たから、その手当もしたいしな。
ジャリ…ジャリ…
入口こそ草木にまみれ入るのに苦労したが、入ってからは比較的楽に進むことができる洞窟だった。いや、というより…
(なんだろ…自然の洞窟にしちゃ妙に整備されてるような…)
ちょっと辺りが暗くなって来たと思ったら、壁にランタンのような物が着いていた。これは完璧に人が居た痕跡だ。
ザ…
「!」
前から音がする。もしかして、まだ人が使ってるのか…?
(どうしよう…ただの現地人ならいいけど…ゲリラとかだったらマズイ…)
逃げようか、とも思ったが、音がどんどん近付いてくるのでもう時間がなさそうだ。なら…とりあえず携帯しているデイザー(使いこなせるかは怪しいが)もあるし、ここは様子を…
ザ…ザ…
「ゴクリ…」
近い。もうそこの曲がり角まで来てる。僕は音を立てないようデイザーを構えながらにぎりしめ…
「!?」
意外や意外、現れたのはなんと黒髪の女の子。いや、てかそれよりも!
「は、裸ぁ!?…ゴフッ!」
僕の声が洞窟内に響き終るより、その女の子の拳で意識を失う方が早かった。 


一三四二時、ポイントゴルフ、チームβ とみつ警部達

「はぁ…まさかヤツ等に助けられるなんてね…」
警部と貸してもらったタオルで体をふく。
「まぁ緊急ですし。それで、これからどうします?」
今はお互い状況を整理しようという事で、会話が聞かれない程度に離れて陣取っている状況だ。
「とにもかくにも巴ちゃんとの合流が先決よね。まぁ本来ならその場で取っ捕まえてやりたいとこだけど…」
警部が渋るのは当然だ。手錠も無ければ捕まえたところで日本や現地警察に手渡す手段もないのだから。
「現実的には今後の為の情報収集、もしくは交渉カードになるものが作れれば及第ってところね」
「彼女達は協力してくれますか?」
「ああ、それは大丈夫」
私が一番心配していた事をあっさりと肯定された。
「何故です?」
「だって、このままほっとかれたら私達死んじゃうかも知れないじゃない」
「・・・」
「“死人は出さない”ルールは出来れば守りたいでしょ。それに私達にはアジトの場所の地図があるし、取引としては成立するわ」
自分達を情けなく思うのはさておき、昨日泊めてもらった民家の人に頂いた地図が、まさかこんな形で役に立つとは。彼女達をローザ・ミスティカに近づけるかもしれない行為ではあるが、この状況を打開するには致し方ないか…


「で、どーするです?一応助けてやりましたが」
立場的にはこちらの方が有利なのだが、ほって置くのも気が引けるし、万一死なれたら後味が悪い。
「ジュンを探したいけれど…こんな山の中では埒があかないし、まずは現状把握とチームαとの接触を優先しましょう」
真紅の言葉に二人も頷く。
「うい。チームαが追っ手を振り切ったなら最初のアジトに着いたハズなの」
「でもそこは敵が占拠していた…この様子では他も同じでしょうね。なら…」
「まーあの水銀燈なら、というか数が違い過ぎますし、横取り策に出るでしょうね。真っ向勝負は避けるハズですぅ」
「…どの道、どうしてもチームαとの通信手段が不可欠ね。通信機は向こうが2セット持っているから私達を探しているハズ。本来ならここで待っていたいけれど…」
ここなら車もあるし、目立つ事は簡単なのだが…
「また敵が来るかもしれないのよ」
「ですねぇ。んじゃあ、あいつらアジトの地図を持ってるような事言ってましたし、情報収集も兼ねて行きますか」
「そうね。例えあの怪物剣士と合流されても、ここで戦うのが無意味なのは承知でしょう」
「うい、了解なの」

互いの話しがまとまった所で意見交換。結果、真紅の案通り皆で一番近いアジトへ向かうことに。
「それではよろしくなのだわ…みつ警部?」
「こちらこそ…真紅さん?」
「うっふっふっふっふ…」
「んっふっふっふっふ…」
「・・・」
二人から立ち上るオーラにたじろぐ白崎を見て、翠星石は何故か『ああ…今頃ジュンはどうしてるですかねぇ…』なんて思ったりしていた。


一三五二時、サメ地区のどこかの洞窟内
コト
「どうぞ。粗茶ですけど」
「あ…ドモ…」
ずずず…
「・・・」
えっと、どうして僕はこんな場所でお茶をすすってるのだったか…?
たしかこの部屋の入口で彼女に出会い頭に殴られて…目を覚ましたら彼女が僕を看病してて…あ、それで殴ってしまったお詫びにとお茶振る舞われてるんだったっけ。
「あの…それで、君はどうしてこんな場所に?」
お互い黙っているのもアレなので話題を振ってみる。聞けば仲間とはぐれてしまったと言うが、普通こんな女の子がこんな国に来るとはちょっと思えないよなぁ。
「それは…すみません、禁則事項です」
「禁則事項?」
「はい。関係者以外には話せない規則なので」
随分硬いセリフだけど…何かの組織の人なんだろうか。
「えっと…じゃあ名前は?」
「柏原巴です」
あ、名前はいいんだ。
「へえ、じゃあやっぱり日本人なんだ。実は僕もそうでさ、名前は桜田ジュンっていうんだ」
「そうですか」
「うん…あはは…」
「・・・」ずず~
「・・・」ずず…
あれ?何この初めての合コンでいっぱいいっぱいになってるような空気。名前を名乗ったのは一瞬マズイと思ったけど、無反応なので良しとするするが。
「あ…で、なんで君はあんな格好を…?」
話すネタも無くなりとりあえず聞いて見たが…いや、ダメだろ僕!下着姿を見られた事を振り返しちゃ!
「ケガの治療に服を脱いでいたので…」
「ケガ?」
改めて彼女を体を見てみると、あちこち服に血の跡が。
「だ、大丈夫なのか!?」
「あ、はい。応急処置はしましたから」
だが足の傷なんかは布で縛ってある程度の処置だ。医療品は持ってないのか…よし!
「じゃあ今度は僕がお詫びに治療してあげるよ。簡単な医療キットは持ってるからさ」
「え…?別に構いませんけど…」
ここで引き下がる訳にはいかない。頑張れ僕!下着姿を見た揚句介抱されっぱなしじゃは僕の立場がない!
「いいからいいから!お礼みたいなものだし!じゃあほら、足出して」
「あ…」
布きれを取ると傷が見えた。ん、結構深いな…てか、これ弾痕じゃないか!?さては流れ弾にでも当たったのか…
「ちょっとしみるけど我慢してな」
「ん…!」
僕は雛苺から教わった方法で手際よく処置を施していく。ふっ、僕をただのヘタレだと思ったら大間違いだぜ!
「よし、足はこんなもんかな。他には…って、どうかしたか?」
「あ!いえ…その…」
見上げると、顔を赤くして指をお腹の位置で絡ませている。何のポーズだコレ?
「何でも…ない…です…」
「あ、そう。じゃあ次は腕だな」
「あ、はい…」

「…よし、じゃあこれで終わりな」
しばらくして大体の手当が終わった。他の傷は見た目ほどたいしたことなかったので、手持ちの医療品でこと足りた。
うん、こういう技術は身につけておくもんだな!なんか調子出てきたし!…が、彼女はと言えばなんだか顔が赤いまま小さくなってちょこんと正座している。もしかして僕…なんかマズった?
「そ、そういえばここって何なんだろうね!人が作った物置みたいだけど!」
とりあえずそこら辺にあるものをガチャガチャ見て回ることに。よし、彼女の意識もこの部屋に向けられているぞ…!
「わ!なんか宝石みたいなのもあるし、これなんか…ん?」
乱雑な部屋の中で、妙に綺麗に陳列されているモノの中の一つに僕の意識が集中する。これに僕は見覚えがある…だって…この形って…まさか…
「ローザ…ミスティカ…?」 

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