Another RozenMaiden
          第6話 拒絶 

翌日。ピンポーン。玄関のチャイムで目が覚める。
JUM「またかよ。うるさいなぁ。」時計が指すのは、8時30分ピッタリだ。
JUM「やっぱり8時30分か!」既に真紅たちが来ているのだ。
ベッドから飛び起きると、急いで着替えを済ませる。
部屋を出て階段に向かう途中、水銀燈の部屋の前で足が止まる。
JUM「水銀燈・・・・・。」昨日のことがある。きっと、まだ水銀燈は怒っているだろう。
水銀燈の部屋に背を向ける。ほぼ同時に、再び玄関のチャイムが鳴る。
JUM「うるさいな!今行くよ!」僕は自分の置かれている状況を思い出すと、
慌てて階段を降り、玄関の扉を開けに向かう。
雛「JUM。おはようなのー。」扉を開けると同時に、雛苺が飛びついてくる。
遮る者が居ないので、今日もまた腕を掴まれる。
紅「8時30分を4分回っているのだわ。昨日より3分だけ成長したわね。」
真紅が愛用の懐中時計を取り出して言う。
JUM「成長したって・・・・まぁ、ありがとう。」
真紅に軽く苦笑いを返す。果たして喜んで良いのやら。
金「ひょっとして、JUMは今日も起きたばかりなのかしらー?」
JUM「今日もなんだ。ごめん。」寝癖が無い分だけ、昨日より時間は掛からない。
しかし、迷惑を掛けることに変わりはない。
紅「それなら、すぐに食事を済ませて頂戴。今なら、まだ時間があるのだわ。」
JUM「ありがとう。そうさせて貰うよ。」珍しく、真紅が好意的な発言をしてくれる。
しかし、いつ真紅の気が変わるか分からない。僕は急いで家に戻ると、居間へ向かう。
相変わらず水銀燈の姿は見えないが、食卓には一人分の食事が用意されている。
食事と一緒に僕専用の箸が置かれている。
そこから察するに、この食事は僕の分なのだろう。
紅「水銀燈はどうしたの?JUM。」真紅が紅茶を啜りながら訪ねてくる。
JUM「それが・・・・・。」


蒼「水銀燈は、もう出かけたようだね。」
言いかけた僕の台詞を遮り、蒼星石が代わりに答える。
JUM「何で分かるんだ?」水銀燈は熱を出して寝込んでいたはず。
蒼「玄関に、水銀燈の靴は無かったよ。」鋭い蒼星石の指摘。
気づいていない僕が馬鹿なだけだろうか。
翠「その程度に気づかないなんて、チビ人間はバカなヤローですぅ。」
そういえば、食事も一人分しか用意されていなかった。
既に食事を終え、水銀燈は学園に向かったのだろう。
JUM「気づいていたなら、もっと早く教えてくれよ。」
翠「そ、それはチビ人間が気づくのを・・・・・待っていてやったのですぅ。」
翠星石は突っ込むのが得意だが、突っ込まれるのには弱い。
蒼「そういえば、昨日と同じだね。」言われて初めて気が付く。
昨日と同じ状況となのだ。僕の脳裏に不安がよぎる。
とにかく学園に向かい、真偽を確かめなければどうしようもないだろう。
紅「無駄話をしている時間は無いのだわ。JUM、もう食べないのなら出発よ。」
真紅が僕たちの会話を遮る。真紅の方を向くと、既に出発の準備を整えていた。
紅「では出発よ。」そう言うと、有無を言わさず出発する真紅たち。
JUM「ちょっと待ってくれよ。」僕はまだ半分も食べ終えていないのだ。
朝食の残りを一気に胃へと流し込む。
蒼「そんなに急がなくても大丈夫だよ、JUM君。」
一人残ってくれた蒼星石がフォローを入れてくれる。だが、余り時間は無い。
最後の残りを口に詰め、水を飲んで強引に胃へと送る。
JUM「待たせたな。」
蒼「それじゃ急ごうね。JUM君。」蒼星石が笑顔を返してくれる。
水銀燈を見つけるためにも、僕は学園への道を急いだ。


紅「JUM。どうしたの?早く教室の扉を開けて頂戴。」
教室前。中に入ることを躊躇う自分が居る。
JUM「ああ・・・・。」蒼星石の話が本当なら、水銀燈はここに居るはずだ。
学園に来た以上、教室に入るのは避けられない。
自分にそう言い聞かせると、意を決して教室の扉を開ける。
JUM「おはよう。」教室の中に入ると蒼星石の言葉通り、水銀燈の姿があった。
水銀燈は僕に気づいていないらしく、こちらを振り向こうとはしない。
ゆっくりと、水銀燈の隣である自分の席に腰掛ける。
チラリと横目に水銀燈の様子を伺う。
水銀燈は表情一つ変えていない。僕を無視しているのだろうか。
JUM「水銀燈・・・・・。」覚悟を決め、僕はゆっくりと水銀燈に話しかける。
銀「何よぉ?」水銀燈がこちらを向く。明らかに不機嫌、といった表情だ。
JUM「昨日は・・・・ゴメンな。」
銀「だからぁ?」水銀燈は目を細め、更に嫌悪感を露わにする。
JUM「僕が悪かった。すまない。」とにかく、昨日のことを謝らなければ。
銀「うるさいわねぇ。私に話しかけないでよぉ。」
席から立ち上がり、いきなり僕の頬をはたく水銀燈。
JUM「うわっ!」突然のことに僕はバランスを崩し、椅子から転げ落ちてしまう。
紅「JUM!」その光景を見ていた真紅が、こちらに駆け寄ってくる。
紅「水銀燈!JUMに何てことをするの!」僕と水銀燈の間へ割って入る真紅。
JUM「いいんだよ。悪いのは僕なんだから。」
立ち上がると、僕は水銀燈と対峙する真紅を静止する。
紅「で、でも・・・・・。」僕の制止に真紅が横に退く。
真紅が退くと視界が開け、水銀燈の表情が見える。
僕を睨みつけるその瞳に、うっすらと涙が溜まっているように見える。
僕がその瞳を見つめると、水銀燈は顔を逸らし、
銀「ふん。真紅とでも仲良くやってなさぁい。」
そう言うと水銀燈は教室から出て行ってしまった。


放課後。水銀燈は朝のHR前に教室を出て以来、ついに戻ってくることはなかった。
JUM「・・・・・・・。」水銀燈がどこに行ったのかは分からない。
誰も居ない教室で僕は水銀燈の帰りを待っている。
蒼「JUM君・・・・・。」どうやら、誰も居ないわけではないようだ。
JUM「蒼星石。まだ居たのか?」
声のする方を見ると、教室の隅に蒼星石が立っている。
蒼「今、教室に戻ったんだよ。・・・・JUM君こそ帰らないの?」
教室の両扉は閉じている。開いた音も聞こえなかった。
蒼星石は、ずっと教室に居たのだろう。
JUM「もう帰るよ。ここに居ても、もう来ないだろうしな。」
既に水銀燈は、家に帰ったのかも知れない。そう思えてくる。
蒼「・・・・・・。」僕の言葉に、何故か蒼星石は俯いてしまう。
反応がないので、取り敢えず僕は荷物を纏め始める。
蒼「JUM君が帰るのなら、僕も帰るよ。」
荷物を纏める僕の様子に気づいたのか、蒼星石も慌てて荷物を纏め始める。
JUM「そうか。それじゃ、久しぶりに一緒に帰るか。」
折角の機会だ。蒼星石に水銀燈のことを相談するのも良いだろう。
蒼「うん。」蒼星石の表情が急に明るくなる。
蒼星石が荷物を纏め終わったのを確認し、話を切り出す。


JUM「蒼星石。相談したいことがあるんだ。」
蒼「うん・・・・・。いいよ・・・・・・。」
蒼星石の表情が暗くなる。何か悪いことを言ってしまったのだろうか?
蒼「・・・・・もしかして・・・・水銀燈のこと?」ゆっくりと蒼星石が口を開く。
JUM「良く分かったな。さすが蒼星石だ。」図星だった。
同じ教室に居れば、早朝の事件を見ているだろう。当然のことかも知れない。
蒼「JUM君の顔に書いてあるからね。」蒼星石の表情が明るくなる。
蒼「もう遅いから、帰りながらでもいい?」
しかし先程までの明るい表情に比べると、今の蒼星石の表情はどこか暗い。
JUM「それじゃ、行こうか。」このまま、ここに居ても進展しないだろう。
蒼「うん。」僕は蒼星石を促すと、二人で教室を出る。
そんな二人のやり取りを見ている者がいた。


銀「・・・・・JUMぅ。」
JUMと蒼星石が連れ立って教室から出るのを見てしまう。
JUMが教室に残っているのは知っていた。
でも、蒼星石まで教室に居たのは予想外だった。
その上、二人で一緒に出て行ってしまうなんて。
嫌われよう。そう決心したはずなのに、涙が止まらない。
窓の外を見る。もしかしたら、校庭をJUMが通るかもしれない。
すると、校庭にJUMが蒼星石と並んで帰宅している姿が見える。
銀「そんな・・・・・・、嘘よぉ。」
私はJUMを拒絶するようになり、わずか1日。
たったそれだけの間に、蒼星石にJUMを奪われてしまった。
銀「JUMぅ。どうしてなのぉ・・・・。私を捨てないでよぉ・・・・。」
私は人目も気にせず声を上げて泣いた。
紅「水銀燈。貴女はまだJUMのことを・・・・。」
私のそばを通る人影。私はそれを気に留めることもなく泣き続けた。
Another RozenMaiden 第6話  拒絶 終

Another RozenMaiden 第7話  疑惑 に続く。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2006年03月26日 11:52