質屋のお客達(返済編)その4
予定としては白崎さんに薔薇水晶を見てもらうという方向でいいかな。
あの人仕事してないし。なのにやり手っぽいし。薔薇水晶にアッガイネタで悪戯しても無傷で生存できる人だし。
あの人以外には考えられないな。またあとで連絡するか……が…その前に……。
「こんなところにきて大丈夫なんですか?めぐさん。」
「いいのよ。桜田君が心配することはないわよ。病院抜け出すのは私の特技だしね。」
はたしてそんな特技を持っている人間はこの世に何人いるんだろうか……深く考えるといっぱい居そうで怖い…。
「病院を抜け出したことはいいとして病気の方は大丈夫なんですか?」
あれなんか矛盾してる気がする。病院を抜け出さなければ病気の心配をすることはないわけで。
だからって病院にいても100%安全というわけでも…。
「大丈夫よ。病気はもう完全に完治したの。今は退院に向けての準備段階ね。」
「あ~だから水銀燈がお金を借りにきたわけですね。手術代ですか。」
「そう。今日ここに来たのはそのためなのよ。」
つまりお金を返しに?病人がお金を持っているんだろうか?
「今のうちにはっきり言うけど私は一銭も持ってないわ。」
それは胸を張ってまで威張ることではないんですけど……。
「じゃあ何しにきたんですか?」
「お金がないから賭けをしにきたのよ。単純にコイントス。私が勝ったらお金をチャラにするの。私が負けたら…」
「唐突に何を…」
「水銀燈が脱ぐわ。」
はい?コノヒトハイマナニヲイイマシタ?水銀燈が脱ぐ?靴をですか?
「意味は語感のままに思えば良いわ。あと投げるのはあなたね。」
「はぁ。本当にやるんですか?」
「やるわよ。運試し運試し。私は10って出てる方ね。」
なら必然的にその反対側が僕か……ってなにをやってるんだ僕は…。断じて。断じて水銀燈に釣られたわけじゃないぞ。めぐさんが強引にすすめるからもうやるしかないんだ。うん絶対そうだ。
「早く早く。」
子供のように10円玉を見つめるめぐさんを見ながら10円玉を弾き素早く伏せる。結果はというと……10と出てない方。つまり僕の勝ちである。
「残念ながら僕のかt」
「ゴホッゴホッ……」
「えっ。めぐさん…口から血が…。」
「いいのよ。ゴホッ、気にしないで。結果は?」
「僕のかt」
「ゴホッゴホッ、」
なんだこのリミット技は……卑怯だ。選択肢があるのにその選択肢を選ぶと無限ループするゲームのように………。
「め、めぐさんの勝ち…です。」
「本当?ならお金はチャラってことでいいわね。」
「…はい。」
「よかった。じゃあ水銀燈の指輪持っていくわね。また私が退院した時にでも会いましょう。」
手を振るめぐさんを見送りながら僕はあの人は天使の笑顔で悪魔のような行いができる人っと……本気で…そう思ってしまった。果してあの赤いのはなんだったのやら……。
続く