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わざわざ、またショックを受けるために行った様なものだった。
結果はわかりきっていたのに、なんでまた聞いたりしたんだろう。
『友達』か。なんなんだろう。仲がいいってなんなんだろう。真紅は初めてできた『親友』だと思っていたんだけど。
やっぱり、『他人』を心の底から『信頼』するのは無理なのかな。
以心伝心なんてありえないんだ。つながっているとしてもせいぜい蜘蛛の糸程度。
結局は他人は他人にしかなり得ない。
あれ?どうしたんだろう。鞄がやけに重いな。顔を上げて歩くのがつらい。
胃が思い。動悸がする。脈も速いな。頭痛もしてきた。
気のせいかな?気のせいなんだろう。気のせいとは思えないぐらい生々しい痛みだけれど。
ああ。歩くことすらめんどくさい。今すぐこの場にへたり込んで、眠りほうけられたらどれだけ楽だろう。
トン
何かにぶつかった。ボーっとしてたからだ。電柱かな?いや、電柱ならもっと硬いはず。これはひょっとして、人?
恐る恐る顔を上げると、そこにはとても綺麗で、力強い、まさに人々の憧れの中の『女性』がいた。
「どうしたのぉ?相変わらず冴えない顔色ねえ。やっぱり真紅絡みぃ?」
そのとうり。と、答えかけて躊躇った。この人がそんなことをするとは思えないが、真紅と手を組んで僕を嬲る気でないという保証はどこにもないのだ。
けれど、あのときの瞳に写った憎悪は本物だったと思う。『信用』したものだろうか?
それに、返事をするのも億劫だった。
「んん?私が信用出来ないみたいね。ということは、やっぱり真紅に何かされるか、言われたみたいね。」
大丈夫な気がする。たぶん、大丈夫だろう。おそらくだが、大丈夫なはずだ。
騙されても、まだ、『他人』なんだから。気にすることもない。
「取りあえず私の家に来るぅ?」
「うん。そうさせてもらっていい?」
「んっんー。質問に質問で答えるのはおばかさんだけよ。もちろんいいわよぉ」
そして、僕は水銀燈の家にお邪魔させてもらい、これまでの経緯を大体話した。
笑うなら笑ってくれ。たしかに僕が間抜けだったのだろう。
いつの間にか、けだるさは去り、僕は水銀燈相手に熱心に話していた。
水銀燈はとても聞き上手だった。

 

「…なるほどね。そりゃ、人を信頼できなくもなるわね。真紅は昔から、ずっとそうだったのよ」
「え?やっぱり、中学校も一緒だったの?」
「小学校も、中学校も一緒だったわぁ。仲がよかったのは小学校までだったけどね。」
「君も、真紅と仲がよかったのか。」
「そうよぉ。最初は、本当の姉妹みたいに思えたわぁ。
少しわがままだけど、思いやり深くて、友達思いの優しい人だと思ったわぁ。
………初めはね。
私、重い病気にかかった従姉妹がいるの。いやいた、というべきかしらぁ。」
「それって…」
「ええ。一つ年上で、とてもやさしくてね。
そりゃもうドラえもんとのび太くんぐらいなかよかったんだから。…あ、私がドラえもんよぉ?
その子、めぐっていうのよ。めぐ、とっても歌がうまかったんだけど、私が小学校に上がって、すぐくらいに発病してね。
入院してる病院はそんなに遠くなかったんだけど、それでもやっぱり小学一年生にはちょっと危ない距離だったわねぇ。
やっぱり、親に一人でお見舞いに行くのは禁止ちゃってね。それでもこっそり行ってたんだけどぉ。
放課後毎日いそいそとどっかに消えて、誰ともろくに遊ばないんじゃ友達なんか出来やしないわよねぇ。
めぐの事は大好きだったけど、それでもやっぱりさみしかったわぁ。そんなときに、真紅にあったのよ。
いえ、この表現は少し違うわね。真紅に声をかけられた、って言うほうがより正確かも。
あ、小学校の間はずっと一緒のクラスだったの。
1学年2クラス、クラス替えも二年に一回しかない学校でね。
卒業するまでにほとんどのこの性格とか、特長とか、友人とか大体わかっちゃうようなところなの。
今はどうか知らないけどね。

 お見舞いに行き始めて一月ぐらい立ったときだったかしらねぇ。急いでめぐのお見舞いに行こうとしてたのよ、いつもどうりに。
ランドセルしょって、教室を飛び出しかけたときに、金髪の女の子が話しかけてきたの。
なんで毎日毎日急いで帰るのかって。はっきりいって、めぐが重い病気にかかってるなんて信じたくなかったのよね。
それで、その時めぐが入院してるからお見舞いに行ってるって行っちゃったら、それを認めてしまうわけでしょう?
それが嫌で嫌でたまんなかったの。だから、“従姉妹のお姉ちゃんのところに遊びに行ってるの”としか言わなかったのよ。
“そうなの。わたしもそのひとにあってみたいのだわ”
“だめよ。めぐにめいわくじゃないの”
“そんなことないのだわ”
“とにかく、ダメなものはダメなの!”
私ももちろん来ないでって何度もいったんだけど、あの強情で、他人のことなんか気にしない奴を追い返せるわけもないじゃない。
結局病院までついてこられてね。
“めぐって、びょうきなのかしら?”
“……………”
“どうなの?”
“そうよ!おもたいびょうきなの!”
そういった後、おもいっきりわんわん泣いたわね、確か。
看護婦さんに患者と間違われてどこがいたいの?っとか聞かれたっけね。
“そうなの。いいわ。これから、わたしもおみまいいっしょにいってあげる。ちょうどいいわ。”
そのときはなんでそんなことしてくれるのか、何がちょうどいいのかぜんぜんわからなかった。
いまならはっきりわかるけどぉ。お見舞いに一緒に行く自分のことをやさしいいい子だとおもわせるためだったんでしょうね。
それからは、毎日一緒にめぐのところにお見舞いに行ってくれたわねぇ。
めぐは、たぶん真紅の目的に気づいてたんでしょうけどわたしに友達が出来たってそれはもうすごい喜びようだったわぁ。
ほんとに、いつ発作がくるかわからないのに、あのはしゃぎ様は……。

 わたしが風邪を引いたときはめぐが心配しないように言伝をしてくれたりもしたっけ。
そのとき、めぐからのお見舞いの品で、ヤクルトがあって、乳酸菌は風邪の特効薬ですって入っててね。
わたしはすっかりそれを信じ込んじゃって。3本立て続けに一気飲みしたら本当に風邪が治っちゃったときは驚いたわねぇ。
…なかなか、めぐの病状はよくならなくって、小学校の間中ずっと通い続けたのよ。
その間、ずっと真紅は黙ってついてきてくれて。小学校6年生の、えーっと、秋の始まりかけたころだったかしらね…。
お見舞いに行ったらめぐが病室から消えてるのよ。
……あの時は本当にのどから体がバラバラになるんじゃない勝手ぐらい泣いたわぁ。
その時、真紅がなんていったと思う?
“あら。めぐは死んでしまったみたいね。残念だわ”
“ぐすっ、めぐぅぅぅーー!!!”
“全く、あんなにいい小道具はそうそう見つからないって言うのに。せめて卒業式まで持ちなさいよ。役に立たないんだから”
“うわぁぁあああぁぁぁ!!!!!ああああぁぁぁぁぁぁ!!!ぁぁぁぁぁぁ!ぁぁぁ…?ひっく、し、じんくぅぅ、い、い、いまなんt、て?”
“だから、新しいアクセサリーを探さないとっていってるの。
重病に倒れた少女のお見舞いに毎日通う慈悲深い少女って演出、なかなか気に入っていたのだけれど。死んでしまったならしょうがないわね。
本当に。よくも今死ねたものよ。卒業式までが無理ならせめて冬休みまで持たせればいいのに。渡しの迷惑も考えてほしかったわ。”
“なに…いってるんだかよくわかんないんだけど…”
“はぁ……。めぐもめぐならあなたもあなたね。こういってるの。小道具が一つなくなったわね。って。”
“あなた…めぐを何だと思っていたの!?”
“私を心優しい少女に見せるためだけに生きていた死にぞこない。まあいいわ。なにしろ、哀れな水銀燈がいるんですもの。
従姉妹を失った親友を慰める心優しき少女。なかなかいいと思わない?”
“…思うわけないでしょ…なんなのよあんた……めぐが死んだのよ?…”
“それがどうかしたっていうの?第一、あなたこそ何様のつもりなの?そんな髪と目してて、誰のおかげで今までいじめにあわなかったと思っているの?
感謝されこそすれ、恨まれる覚えはないわね”
そういって去っていったのよ。信じられる…?」

これはひどい。おそらく僕の受けた行為より何倍も。
6年。水銀燈はそんなに長い間欺かれ続けていたのか。
「酷い…ね。でも、そんな目って?」
「ああ。今はカラーコンタクト入れてるの。さすがに小学生でカラーコンタクトは親が許してくれなくて。ほら」
そういってコンタクトをはずしてくれた目は、鮮血を浴びたルビーのように妖しく輝いていた。
とても、とても綺麗だった。
「綺麗な目だね」
「そういってくれる人もいるけど、不気味だって言う人のが多いのよ。でも、ありがとう。
髪のほうは染めてみたこともあるんだけど酷くあれちゃって。幸い今は脱色する人もいるからまあこまらないわぁ。」
なんて明るくて、美しく、優しい人なんだろう。
時々瞳にほとばしる憎しみはまるで羅刹のようだけれど、その瞬間でさえやはり美しい。
それに比べて僕は…
「なんだか、情けないことで落ち込んでたみたいだね、僕は。君の話を聞いたら、へこんでちゃダメだったわかったよ。」
「何言ってるの。あなたはいままで『友情』に憧れ、何よりも大切なものとして想い描き、大切に抱いてきたんでしょう?
十何年信じてきたものを崩されたんだから、ひょっとすると私以上の衝撃だったのかも。
わたしはもともと一人が好きなほうだったからあんまり真紅に裏切られたときも、確かにショックだったけどあなたほどの衝撃は受けてないと思うわぁ。」
「でも、めぐさんが……」
「ああ、それなんだけど…」
「たっだいまー!あれー、水銀燈、誰かお客ー?ひょっとして彼氏!?」
「お帰りなさい、【めぐ】」
「え?あ、おじゃましてます。…めぐさんってなくなられたんじゃ?」
「ああ、違うのよめぐ。蒼星石も真紅に騙されたっていうもんだから、小学生のときの話をしてあげてたのよ。」

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