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「翠星石、今日一緒に帰らないか?」
「え、ええ?か、帰ってやらないこともないですけど…」
「本当か?よかった、じゃあ、放課後な」

「なあ、翠星石。」
「な、なんですか?」
「今日の蒼星石、なんか変じゃなかったか?いつも口数は少ないほうだけど、なんだかどよんとしてたっていうか…」
「え?あ、ああ、そうでしたね。なんだか、昔に戻ってしまったようなそんな感じがしましたね…。」
「昔?昔って、蒼星石も引きこもりだったのか?」
「ああ、ジュンは引きこもりだったんでしたっけ。いや、そうじゃないんです。」
「じゃあ、なんなんだよ?昔も今と同じいつもニコニコしてるいい奴だったんじゃないのか?」
「そうでしたね。ジュンは、高校に入ってからの蒼星石しか知らなかったんでしたね」
「どういう意味だよ」
「高校に入るまで、蒼星石はものすごくネガティブだったんですよ。」
「ん?でも、雛苺たちは、昔からいいやつだったっていってたぞ?」
「ひとあたりはよかったんです。物腰も柔らかで。でも、そうですね、全身から悲壮感が漂ってるっていうか、翳っているっていうか。
なんていうか、いつも影に立っているような感じでしたね。例えば、こんなことが何回もあったんですよ」

 

“「蒼星石、どうしたんですか?」
「うん。また、ラブレターを渡されたんだ。」
「そ、そうなんですか。」
「ずっと好きだった人なんだけどね。」
「よかったじゃないですか!」
「ふふ、それがね、他のある女の子に、渡すか、こっそり鞄かどこかに入れといてくれっていうんだよ」
「それは……」
「この前のバレンタインデーも、クラス中の女子のチョコレートを配って回ったんだよね…
挙句の果てに僕が手作りチョコを渡そうとしたらそれ誰の?って訊かれちゃってさぁ…あれはきつかったなぁ…」
「そんなことがあったんですか…」
「前も遊園地に男子誘ったら彼女連れてこられてさ…彼女いい人だったんだけど、ライバル視すらされなくて…」
「そんな男には蒼星石はもったいないですぅ!」
「ねえ、翠星石。僕が中学校、いや、小学校も通して男子にかけられた第一声のほとんど占めてる言葉知ってる?」
「へ?いや、知らんですけど」
「教えてほしい?」
「そりゃまあここまで引っ張られたら気になりますね」
「それはね…『ねぇねぇ、翠星石さんに、これ、渡しといてくれない?いやあ、なんだか直接渡すのは照れくさくって』
大体こんな感じだね。言い回しは多少変わるけど。
ああ、あとはこの後に、君って翠星石さんの双子の弟なんだよね?
とか、君はなんとなく女の子って気がしなくて、声かけやすかったんだ。
とか、それにしても、女装癖のある弟がいるなんて知らなかったな。とかがくっつくんだよね。」
「………え、えっとぉ……」
「…部屋にいるからしばらく入らないで。話しかけないでね…。………うううぅ…ぅぅううぁぁぁあああああああ!!!!!!」
ダダダダダダダダダダ…     ”

 

「……嘘だろ?」
「実話なんです。
普段は明るく見えるんですが、何かがきっかけでスイッチが入ると二時間ぐらいブツブツ何かつぶやき続けるんです。
しかも、いってることが途中から支離滅裂になっていくんですよ。
それ以外にも、デパートとかで道の真ん中を僕なんかが歩いてたらダメだよ。
とか、どうしよう。あそこの女の子たちが笑ってるのは、きっと僕を笑ってるんだ。
とかよく言ってましたね。高校に入ってからはなくなりましたが。」
「…よかったじゃないか」
「ところが、喜んでばかりもいられないんですぅ。今まで、臨界点を越えたら一気に吐き出していたものを、ずっと溜め込んでるんです
もし、なにかで臨界点を超えて、なおかつそのまま溜め込んでいたら…
きっと、蒼星石の心は溜め込んだ感情に引っ張られて、押しつぶされてしまうです。」
「…なんとかならないのか?」
「それができたらとっくにしてます!…大丈夫です。蒼星石は変わりました。それに、とても賢い翠星石自慢の妹です。
一人で悩み続けるような馬鹿な真似はしませんよ。」
「……そうか?」
「どういう意味ですか?」
「賢く見えるやつほどおろかだってことだよ。じゃあ、また明日な」
「このドチビメガネ!蒼星石に向かって何を言ってるんですか!…大丈夫に決まってるですよ。あたりまえですぅ。きっとそうです。
そうに決まっています。蒼星石みたいに、やさしくて賢くてそれに、それに……!蒼星石が、酷い目にあうわけがないんですぅ。
あんなにすばらしい妹の悩みなら、あっという間に解決するですぅ。
きっとそうにきまってます。きっときっときっときっときっと、きっと…」

 

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